【ファミ通GREE Vol.2】レベルファイブとグリーのトップが夢の対談 

レベルファイブの日野晃博社長とグリーの田中良和社長による夢の対談が実現。レベルファイブのGREE参入の経緯や、ソーシャルゲーム業界における今後のビジョンを聞いた。

●コンシューマーゲームとソーシャルゲームの雄が、本音を語り合う

 2012年3月21日にグリーとレベルファイブが共同発表会を開催。レベルファイブがGREE Platformに参入することを発表した。そこで、『ニノ国』シリーズや『イナズマイレブン』シリーズなどを輩出した家庭用ゲーム業界のトップクリエイターであるレベルファイブの日野晃博社長と、SNS“GREE”を創立した創業者、グリーの田中良和社長による夢の対談が実現。レベルファイブのGREE参入の経緯や発表タイトルの詳細に迫りつつ、ソーシャルゲーム業界における今後のビジョンを聞いた。聞き手は、ファミ通グループ代表の浜村弘一。
(この対談記事は、2012年3月22日発売のファミ通GREE Vol.2に掲載されたものです)


-------------トップクリエイターのGREE参入の動機------------------


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グリー代表取締役社長
田中良和 氏

浜村 家庭用ゲーム業界に彗星のように現れ、大手メーカーへと成長したレベルファイブの日野さん。ソーシャルゲームプラットフォーマーとして産業自体をゼロから一気に立ち上げたグリーの田中さん。お互いをどのように見られているのか聞かせてください。

田中 僕は子どものころからゲームを遊んでいて、当時はいろいろな新規ゲームメーカーがつぎつぎと誕生するという時代でした。そういう時代は終わったのかな、と思っていたところにレベルファイブさんが急成長されました。その原動力になったのが、秀逸なストーリーと高度なゲームシステムを融合させたクオリティーの高いゲームを作られてきた日野さんの力だと感じていました。

浜村 よく分析されていますね。

田中 加えてたくさんの作品を、日野さんひとりでいろいろ担当されているというのは、本当にすごいことだなと思います。当然映像やゲームデザインなど、各分野の担当がいると思いますが、最終的に日野さんの強いリーダーシップが発揮されるからこそ、作品の質が高いんだと思います。これだけ仕事をされていて、「いつ寝ているんだろう」って(笑)。

浜村 ゲーム業界では「日野さんは何人いるんだ?」という話があるほどですから(笑)。では、日野さんはいかがですか?


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レベルファイブ代表取締役社長/CEO
日野晃博 氏

日野 これまで僕は家庭用ゲーム業界の人間として、ソーシャルゲームやモバイルの業界に対抗意識を燃やしていました。そういう気持ちで、過去に僕らもモバイルの分野に挑戦してきましたが、思うようにはいかないことが多かった。そのとき初めて、この世界にはゲーム業界とは違うノウハウがあって、僕らもキチンと尊敬しなければならない力を持った人がいることに気付きました。その中でも田中さんはとくに突き抜けている人だな、という印象を持っていました。

浜村 今回の参入もそういった気持ちの変化から始まったのでしょうか?

日野 いろいろな経験を経て、「GREEでゲームを作りたい」と心の底から思えたのがいちばんの理由です。ビジネスで成功したいという気持ちもありますが、それよりも学びたい気持ちが強いです。そのためには、この世界の最先端のことを知っている田中さんといっしょにやることが近道だなと感じました。

浜村 その言葉は、家庭用ゲームのクリエイターが思っていても言えなかったことですよ。それをこういった場所で言える日野さんはすごい。この言葉を聞いていかがですか?

田中 率直にうれしいですね。

浜村 しかも、今回ビッグネームをドン!と3タイトル発表された。衝撃を受けたのですが、これも意気込みの表れでしょうか。

日野 タイトルに関しては僕が決めたというよりも、田中さんの"熱い気持ち"だと思っています。どうしてもこのタイトルがGREEに必要だ、という熱意ですね。交渉を進める際、コンテンツの価値をちゃんと認めて理解してくれているということが伝わってきました。コンテンツの価値は各ブランドにかけたコストでもありますが、重要なのはユーザーの方たちに広げるためにかかった時間なのです。田中さんは家庭用ゲームにも理解がありますし、コンテンツの価値もわかっている。そういう人といっしょにやりたいと思いました。


----------もっとおもしろいゲームをもっと多くの人に届けたい------------


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浜村 今回発表された3タイトルは、レベルファイブさんの中でもじっくりと時間をかけて育ててきたタイトルですよね。

田中 日本のゲーム業界全体にとっても重要なタイトルだと思っているので、成功させた気持ちが強いです。レベルファイブさんの作品を実際にプレイしてみると、ユーザーさんを楽しくさせる仕組みや快適なインターフェースといったものがとても優れています。そこがすばらしい。しかも、通信機能を使ってコミュニケーションを楽しむ要素も盛り込まれています。ただ、完全にネットワーク化されたスマートフォンのような端末を想定して作られてはいないと思うのです。

日野 そういう作りにはしていませんね。

田中 最近、レベルファイブさんの作品に限らずゲーム全般に対して、「もっとおもしろくできるのでは」、「もっと多くの人に遊んでもらえるのでは」と思うのです。家庭用ゲーム機の場合、ネットワーク機能が付いて相当おもしろくなったと思いますが、全員に同じネットワーク環境があるとは限りません。そういった制限があるということは、クリエイターの方たちが本当に作りたいものが作れないのではないかなと。それがスマートフォンによって、完全にネットワークで全員がつながる環境があれば、もっとおもしろいゲームが生まれるだろうと思うのです。

浜村 なるほど。「もっと多くの人に遊んでもらえる」というのは?

田中 たとえば、家庭用ゲームを遊んでいて、忙しくて1週間くらい遊べない状態が続くと、そのまま自分の生活から忘れそうになります。でも、友だちから「最近遊んでないの?」と声をかけられると、再開するきっかけになりますよね。それにゲームは友だちから勧められて始めることが多いと思うのですが、ソーシャルゲームの場合、日常的に友だちから招待が送られて来る仕組みがあります。だからこそ、いままで以上に多くの人に遊んでもらえるようになると思うのです。

浜村 ソーシャルグラフが張り巡らされると、確かにそういう効果が発生しやすい。

田中 だから、家庭用ゲームをプレイしていて、日野さんのような日本が誇る優秀なクリ
エイターがもっとおもしろいゲームを、もっと多くの人に遊んでもらえるような環境を作りたい、という想いが強いのです。


------------ソーシャルゲームの常識の半歩先を見据えた作品を------------


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浜村 それはワクワクしますね。開発はどのような体制で行われているのでしょう?

日野 僕らのモバイルチームで方向性を決めて、それをグリーさんに見ていただくという形で進めています。ただ、先ほど話したように、僕もグリーさんとの企画会議などにも参加して勉強をさせてもらっています。僕らが一方的に作りたいものを作るのではなくて、共同で開発しているという感じです。

浜村 家庭用ゲームは発売したら開発は終わりですが、ソーシャルゲームは運営も重要な要素。この部分は学ぶしかないですよね。

日野 ユーザーの声を聞きながらゲーム内容を変えるという作りかたは、家庭用ゲームではできないことですからね。

田中 いろいろなデータをもとに、ユーザーの求めているものに作り変えることも重要で
すし、ただユーザーの意見を100%真に受ければいいわけでもありません。それに今後
は家庭用ゲームで培ったノウハウや概念が活きる時代になると思っています。

浜村 表現力が上がると、ゲームクリエイターの技術力、企画力が活きてきますよね。

田中 配信後の運営が大事だから配信前の世界観などはどうでもいいとか、世界観が大事で配信後は何も修正しないとか、オールオアナッシングで捉える人がいますが、僕は両方やることが大事なのだと思っています。

浜村 いままでのゲーム業界の一歩先の考えかたかもしれませんね。いま世界観を構築することにかけてレベルファイブはゲーム業界でトップクラス。そこの意識が完全に変わったというのは、期待が膨らみますね。

田中 僕らは日野さんが作るような世界観をなかなか構築することはできません。こちらも勉強させてもらうことがたくさんあると思います。今回の両社の取り組みは、グリーに
とっても大きな出来事ですね。

浜村 しかも、『レイトン教授』シリーズのように、世界で通用するコンテンツを持っている。グリーさんが世界進出されるうえで、すごく魅力的な会社ではないですか?

田中 グローバルに通用するストーリーやキャラクター作りは誰もができることではありません。今回の3タイトルを皮切りに、レベルファイブさんのコンテンツを世界でもっと売り出していきたいなとも思っています。

浜村 ソーシャルゲームの分野でも大きなムーブメントが起こりそうですね。

日野 そうなるように学びたいですね。ただ、ものすごいスピードで変化するソーシャルゲーム業界ではいまの常識に合わせたものを作ると、できたときには遅れた感じになるかなと。もっと先のことを意識して作らないと通用しないとは考えています。

浜村 クリエイター魂を感じる言葉ですね。

日野 いまのスマートフォンのレベルだと、僕らがゲーム機で作っているデータをそのまま使えるくらいだと思います。ゲーム性は変えなければなりませんが、ゲーム機に負けない内容のものはできそうですよね。

田中 レベルファイブさんのゲームは、コミュニケーション要素を重要視したものが多いので、ソーシャルゲームに向いているのじゃないかなと。そういう意味で今回の3タイトルは大きな可能性を秘めていると思います。

日野 僕らはゲームを作るとき、「子どもたちに広がるように」といったテーマを持って取り組んでいます。キャラクターの設定なども心の葛藤が生まれるように考えてきました。たとえば、かっこいいキャラがいたらそれをいじめるキャラがいて、それによってお互いのキャラのファンどうしの会話が生まれるようにと。そういう仕掛けをGREE上で展開できれば、さらにコンテンツがヒートアップする可能性はあると思います。


------------トップクリエイターの本気の作品が生まれる----------------


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浜村 その可能性は大きいと思います。本当にGREEでの活躍が楽しみです。

日野 ありがとうございます。今回自分の中で大きいのは、本当の意味で「やりたくなった」ということなのです。クリエイターにとって"やりたくなるもの"と"やらされているもの"とでは、クオリティーがまったく違います。GREEというプラットフォームは、家庭用ゲームのクリエイターも「やりたくなる」レベルであることは間違いないと思います。

浜村 ニンテンドーDSを見て、『レイトン教授』シリーズのような新ジャンルを生み出した。そんな日野さんが「やりたくなった」という言葉を聞くと、期待せざるを得ない。

日野 将来的には今回発表したタイトル以外に、オリジナルタイトルもやりたいですね。

浜村 おっ、それはすごい! 

田中 うれしいですね。ゲームファンとしても、ぜひ作っていただきたいです。

浜村 同感です(笑)。では、最後に読者に向けてメッセージをいただけますか?

田中 今後ソーシャルゲームは、より世界観やストーリーが大事になるフェーズになると思うので、今回のプロジェクトをぜひいっしょに成功させたいと思います。加えて、レベルファイブさんがいままで挑戦してきた映画やグッズ化といったコンテンツの横展開に関しても勉強させてもらいたいと思っています。

日野 今回の発表は、長く家庭用ゲームを作ってきたクリエイターとして、ソーシャルゲームをゲームのひとつの進化と認めたアクションだと捉えてもらってかまいません。大事なコンテンツをGREEに出すと決めたということは、「本気でやる」ということなので、ぜひ注目していただきたいなと思います。