ラウラー氏が実行したシステマチックな制作方法とは?

 アメリカ・サンフランシスコのモスコーニセンターで開催中のGDC(ゲーム・デベロッパーズ・カンファレンス) 2012。このGDC 2012において、Obsidian Entertainmentのオーディオ・ディレクター、スコット・ラウラー氏が、『Fallout:New Vegas (フォールアウト:ニュー・ ベガス)』を例に、オープンワールドでの音楽作りについて語った。

『Fallout:New Vegas (フォールアウト:ニュー・ベガス)』に学ぶオープンワールドの音楽の作りかた【GDC 2012】_01
『Fallout:New Vegas (フォールアウト:ニュー・ベガス)』に学ぶオープンワールドの音楽の作りかた【GDC 2012】_02

 『Fallout:New Vegas (フォールアウト:ニュー・ ベガス)』は、一人称視点のオープンワールドRPG。プレイ時間は何百時間にも及ぶため、音楽をプレイに適応させ、新鮮さを保つ必要があったとラウラー氏は語る。

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 音楽がゲーム内容に合わせ、シームレスに変化し、自然に感じられること。ラウラー氏はそれを目標とした。音楽はオープン、雄大、粗野、孤独といったイメージの、“未来のサウスウエスト”をテーマとした。ラウラー氏は作曲家のイノン・ツゥール氏とともにアイデアを出し合い、ロケーション・ベースのミュージック・システムを採用することにした。ロケーションに音楽を結び付けて、象徴的なテーマを作る。これによってプレイヤーを誘導し、どのように探索するかを伝えることができる。

 そうして作られた『Fallout:New Vegas (フォールアウト:ニュー・ ベガス)』の音楽は、大きく5つに分けられる。

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Incidental Music(偶発的な音楽)
砂漠の中を歩くときに、つねに音があるのはおかしい。ゆえに、5~15秒のシンプルな音楽や音を間隔を空けて鳴らすようにしたという。

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Location Music(場所の音楽)
ロケーションに由来する音楽で、3つの層で構成される。ロケーションに近づくと、わずかなメロディーが聞こえ始め、近づくにつれてその曲はどんどんと深みを増す。離れていくと、だんだんとメロディーが薄れていくという仕組みだ。また、昼と夜でメロディーも変化するようになっており、夜は弦楽器の音が少なくなっている。

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Battle Music(戦闘の音楽)
いついかなる場所でも戦闘がおこりうる本作。戦闘に突入すると、短い音のイントロが流れてパーカッションの激しいメロディーとなり、戦闘が終了するとアウトロが流れて終わる。

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Hostile Music(敵意のある音楽)
その場所がプレイヤーに対し敵意のある場所であった場合に流れる音楽。“explore(不気味な環境音)”、“tension(ピアノを使った緊張感のある音楽)”、“battle(パーカッションを使った激しい音楽)”の3つのレベルに分かれており、プレイヤーの状況に応じて、このレベルが切り替わって音が鳴る。

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Scripted Music(筋書き通りの音楽)
もっともベーシックなタイプの音楽。プレイを始めたときの最初の音楽や、ゲーム内のカジノのテーマ曲など、決められた場所で鳴るもの。

 こうして作られたサウンドを管理するためのツールも用意した。音楽データの基本的な情報を管理する“Music Sets”、そのロケーションからどれだけ離れていれば、どのレベルの音が鳴るかを設定する“Location Marker”、Music Setsをどこでどのように使うかを設定する“Location Controller”の3つだ。

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 以上のシステムを使うことで、ラウラー氏はゲーム全体の音楽を容易に設定することができたという。データを入れた後は、シーンに応じて調整するだけで、3日ほどで完成したというのだから驚きだ。オープンワールドのゲームを作るうえで、このノウハウは大いに参考になりそうだ。

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▲質疑応答では、イノン・ツゥール氏も登壇した。