我が青春のアドレナリン・ブースター

初代のXboxでプレイした人は、最初のロード画面でもう、けっこうグッときたりするのではないだろうか。暗闇に青いリングが浮かび上がるのを待つ懐かしい時間……があっという間。リメイクされた映像を見るまでもなく、その速さに10年という年月の進歩を感じる人もいると思う。

ちなみに、「俺の中ではまだ9半周年ですよ!」という時間に正確な人もいるかもしれないが、いろいろ面倒なので(笑)、ここは「10周年!」で通させてほしい。何はともあれ、いまこうして『Halo(ヘイロー)』の新作が世界中で同時期に楽しめるのはうれしいことじゃないですか!

日本語版の『Halo(ヘイロー)』が発売されたのは2002年4月。

祝10周年オールスパルタン感謝祭! 『Halo: Combat Evolved Anniversary』インプレッション_01
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▲「LOADING…」の文字が浮かび上がるロード画面。再びチーフが目覚める。

シリーズ伝統の両A面スタイル

『Halo(ヘイロー)』シリーズが成功を収めた一要因として、シングルプレイ(キャンペーン)とマルチプレイ(対戦)がともに独自の魅力をそなえ、どちらもきっちりおもしろかった……という点が挙げられると思うが、もちろん本作でもその伝統は守られている。

本作は、映像や音楽をリマスターした『1』の“キャンペーン”と、『Halo(ヘイロー): Reach』のマルチプレイシステムを使って『1』や『2』のリメイクマップで対戦できる「Halo: Reach Anniversary マルチプレイヤー」モードの2本立て。ある意味、『Halo(ヘイロー)』シリーズのキャンペーンとマルチプレイ、それぞれの歴史のハイライトをリメイクしてカップリングさせた“Halo(ヘイロー)10周年記念ベスト(盤)”とも言えると思う。

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▲シリーズの原点となった戦いが、より美しくドラマチックに蘇る。

よって結論から書いてしまうと、何かしら『Halo(ヘイロー)』シリーズにいい思い出、あるいは興味がある人は、こんな駄文など読んでないでいますぐプレイを始めるべき。ベスト盤だけにサービス満点。値段も安いし、ちょっとくらい不満があったとしてもいいじゃない。とにかくオススメなのだ!

……ではやっぱり終われないそうなので、以下、本作で追加された新要素を中心に、いろいろ駆け足でインプレッションを続けておきたい。

過去と未来をつなぐ“キャンペーン”

凶悪なエイリアンに目をつけられた人類が、急場しのぎに上陸した惑星(初見)で、もっと大ピンチになる……というストーリー(だから、さっき駆け足と)が楽しい“キャンペーン”モード。それ本来の魅力はひとまず省くとして、今回、新たに追加された注目ポイントはおもに4つ。

まずは、グラフィックとBGMのリマスター。前者は(イベントシーン以外)いつでも1ボタンで新旧のバージョンを切り替え可能。後者も、随時オプション画面から好きなほうを選択できる。

このグラフィック・スイッチは、古いファンほど楽しめること間違いなし。とくに人間まわりなんて、ほとんど別人レベルの印象の変化である。術前、術後を比べてニヤけてもいいし、これはこれで、やっぱり好きだなぁ、とオリジナル版の魅力を再確認するのも楽しい。

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▲クラシック艦長(左)とリマスター艦長(右)。グっと若々しく。
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▲ゲーム開始直後から1ボタンでグラフィックモードを切り替えられる。

ふたつめは、各レベルに新設された“ターミナル”。マップのどこかに隠された(隠されていない場合もあり)その装置を起動することで、完全新規のイベントムービーを観賞できる。

まだほとんど具体情報の出ていない『Halo 4』のストーリーにも絡んでいるというこの新映像、「じつは裏でこんなことも起きていた――」という10年越しの新事実だったり、見慣れないキャラが姿を見せたりと、『Halo(ヘイロー)』ファンにとってはかなり見ごたえのある内容となっている。

初代『Halo(ヘイロー)』というと、とにかく迷いやすいマップ(後述)でも有名だが、ある意味この「ターミナル」は、「逆に、もっと隅々までマップを探検させてやろう」という開発者からの挑戦状とも取れるかもしれない。「迷ってるんじゃなくて、探してるんだ!」くらいの気分で、ぜひマップを駆けずり回り、コンプリートを目指してみてほしい。

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▲“ターミナル”では完全新規のムービーが登場する。ファン必見!

Kinect(キネクト)& 3Dテレビへの対応

3つめは、Kinect(キネクト)の併用によるボイスコマンド機能と“ライブラリー”モードだ。

前者は、リロードやグレネード、フラッシュライトの点灯といった一部アクションを音声で行えるというものだが、素直にボタンを押したほうが早い&確実だったり、ときによっては何度も「リロード!」とか気持ちを込めて言わないと実行してくれないという屈辱的な気分を味わえたりするので、まぁ、おまけ程度に考えるのがよいのではと思う。

だが、後者の“ライブラリー”はあなどれない。こちらは、キャンペーン中に“解析”と声を発することでスキャンモードが発動。“スキャン”した敵や武器、乗り物の情報を“ライブラリー”に追加していけるというもので、『Halo(ヘイロー)』ファンの知識欲や収集欲をくすぐるものとなっている。ただ、こちらはいまのところKinect(キネクト)専用機能の様子。この原稿を書いているときも、夜中にひとりで「スキャン! スキャン!」と連呼していたらいろいろ不安な気持ちになったので、ふつうにコントローラー対応もしてくれたらいいなーと思いました。

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▲解析モード時は、スキャン可能(未スキャン)な対象物が赤く表示される。スキャンしたデータは、“ライブラリー”内に蓄積されていく。

最後の4つめは、3Dテレビへの対応である。個人的に、これまで3D映像でゲームをすることにはさほど前のめりではなかったのだが、これが思いのほかよかった。

おもに主人公の視界前方2~3メートルくらいにいるキャラクターが飛び出して見えるように感じたのだが、思っていたよりも全然、目が疲れないことにまず驚き(※個人の印象です)。比較に適した3Dゲーム経験がないので断言はできないが、さすがはプレイアビリティにこだわる『Halo(ヘイロー)』というか、3D映像でも無理なくプレイを続けられる立体加減のように感じた。

そして少なからず感動したのが、手に持っている武器の実在感! 今回のプレイでもっともテンションが上がったのが、ニードラーでリロードした際、「シャキン!」と鋭い針が手前に伸びてきた瞬間だったことを素直に白状しておく(笑)。ほかにも、目の前にあるアサルトライフルのインジケーターだったり、スナイパーライフルの細長さだったり、「いままでずっと、こんなもの持ってたのか!」といちいちうれしくなる印象の変化。実用性は薄いが、ファンサービスとしては充分アリ。『Halo(ヘイロー)』ファンの人は、ぜひ一度(でいいと思う)試してみてほしい。

“Halo: Reach Anniversary マルチプレイヤー”

執筆タイミング的に、マルチプレイヤーまわりはまだほとんど遊べていないのだが、駆け込みで数戦、マッチメイキングに飛び込んでみた。『Halo(ヘイロー)』シリーズの対戦マップの中でも、とりわけ評価の高い初期マップの数々――個人的にいちばん遊んだ気がするHigh Noon(旧Hang 'Em High)、アーチの上のロケランをほとんど取らせてもらえなかったBattle Canyon(旧Battle CreekまたはBeaver Creek)など、どれも素直に懐かしい。『Halo(ヘイロー): Reach』ユーザー* とのクロスセッションも可能とのことで、ロードアウトによる新しい戦略を研究するもよし、10年まえの条件設定にして当時のスキルを競い合うもよし、といったところだろうか。

要“Halo: Reach アニバーサリー マップ パック”(1200 MSP)

近年のシリーズ作品同様、本作でも“キャンペーン”のオンライン協力プレイやサバイバル協力戦の“ファイアファイト”、マップ・カスタマイズモードの“フォージ”など、すべて楽しめる点も一応追記しておく。

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▲『1』の人気マップをリメイクしたHigh Noon(左)とBattle Canyon(右)。

10年経っても変わらない最初の味

今回、久しぶりに初代の“キャンペーン”をプレイして、やっぱり『1』の世界がいちばん好きだなーと感じた。閉鎖的な艦内→広い大地→夜間の行軍→美しいビーチ……といったレベルマップのメリハリなど、シリーズ随一のようにも思う。Halo(ヘイロー)に初上陸し、一気に世界が開けた瞬間など、初めてコキリの村からハイラル平原に飛び出したときに匹敵するワクワク感として筆者の脳内に強く刻まれている(ということを10年まえにもどこかで書いた気がする)。

そして、やっぱり迷うなーと感じた(笑)。1面のメンテナンス通路で、2面の脱出艇の捜索で、3面の夜道で、ちょっと気を抜くと迷う、迷う。序盤からマップが広大なうえ、一定時間経たないと(≒迷わないと)つぎの目的地へのヒントマーカーが表示されないため、どうしても進行方向を見失いやすくなる。

ただ、この道に迷う=同じマップに長時間滞在することで、その世界のイメージが強く記憶される……それもまた、10年まえに『1』をプレイした多くの人の『Halo(ヘイロー)』原体験でもあるように思う。迷えない『1』など『1』ではない。開発者はそう考えて、あえてマップ問題には手を加えなかったのかも……と(笑)。まぁ、今回はオンラインでもフレンドと協力プレイできるので、ふたりでグチりながらドライブとかすれば、その広さもまた楽しい旅の助けとなるのではないだろうか。

まずは、これまでのシリーズファンを最重視した、10周年記念同窓会用のお祭りソフト。だが、近年のシリーズ作から入った人は、より手ごたえのある『Halo(ヘイロー)』として楽しめるだろうし、これが初『Halo(ヘイロー)』になる人は、10年まえのプレイヤーが味わったものとほぼ同じ楽しさなり厳しさなりを追体験できる仕上がりになっていると感じた。

よく言えば風通しがよく、悪く言えばまだところどころ荒削り。まだまだ“洋ゲー”で、野性味たっぷりのシリーズの原点……パーティーはもう始まってますよ。

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▲ともすると戦ってる時間よりも移動してる時間のほうが長くなる『1』のキャンペーン。それもまた味。

▼筆者プロフィール
遠藤栄慧 
フリーのライターときどきエディター。元ファミ通Xbox編集者。少しまえに、Xbox公式サイト内の「Halo Universe Guide」もお手伝いさせてもらいました。完全ネタバレなので注意が必要ですが、旧『Halo(ヘイロー)』三部作のストーリーを予習・復習・補習などしたい人は、ぜひチェックを!(⇒サイトはこちら