何でもいいからいちばんになれ――稲船敬二氏がヒューマンアカデミーでセミナーを実施

2011年10月8日、ヒューマンアカデミーの東京校舎で稲船敬二氏によるセミナーが行われた。

●新しいことをするには自信が必要不可欠

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 全国のヒューマンアカデミーで2011年7月から行われている“ゲームサーキットフォーラム”。これは、大手メーカーのスタッフや著名クリエイターを招き、同校の学生だけでなくゲーム業界に興味がある高校生に、プロの現場の様子や、クリエイティブのノウハウ、心がまえなどを伝える、業界の次世代を見据えた試みだ。2011年10月8日に東京校舎で行われたセミナーでは、株式会社comceptのCEO/コンセプターである稲船敬二氏が登壇。講演は、日本のゲーム業界ひいては日本という国の問題点に鋭く切り込みつつ、モノ作りにおいて大切なことを論じるという、刺激的な内容となった。ちなみにゲームサーキットフォーラムの公式サイトでは、今回の講演に“ゲーム業界の歴史とビジネスモデルの変化”というタイトルを付けらていたが、稲船氏は基本的に講演を行う際は、始まる直前まで何を話すかは決めていないそうだ。いわく「会場にいる人たちの顔を見てから考えて、あとはマイク1本で勝負するんです」とのことで、今回の講演も相手が学生たちということで、話題は“いい会社とは?”という話題からスタートした。

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<若者は“気にしい”になるな!>
 稲船氏の経歴については改めて詳しく説明する必要もないだろう。カプコン時代に『ロックマン』や『鬼武者』、『デッドライジング』など数多くのヒットシリーズを生み出し、2010年11月に同社を退社した後は株式会社コンセプト、株式会社インターセプトを立ち上げ、ゲームだけでなく幅広いメディアでのモノ作りに取り組んでいる。また、先日行われたマーベラスAQLの新作発表会では、新会社立ち上げ後初となるコンシューマータイトル『海王』を発表。カプコン退社から約1年の時を経て、コンシューマー業界でもいよいよ本格始動を迎えたというわけだ。

 さて、そんな輝かしい経歴を持つ稲船氏は、ヒューマンアカデミーに通う学生たち同様、専門学校からゲーム業界に入った。「専門学校卒の星、大学だけがすべてじゃないというみんなの希望になりたい(笑)」と半ば冗談めかした感じで学生に語りかけつつ、会社を選ぶ際には「たくさんお金を持っているからとか、有名であるからとか、そういったことでは選ばないでほしい」と助言する。稲船氏は、会社も人間と同様に表の顔と裏の顔があると説明。そして、我々には目があるから「ついつい表面だけを見てしまいがちである」としたうえで、「でも、裏は見えないからどうでもいいわけではない。見えないからこそ、見なければいけないものがあるんです」と、しっかり調べることの重要性を説く。幸い現代は、インターネット上に情報が潤沢にある。稲船氏が業界に入ったときと比べれば、情報量の差は倍どころの話ではないだろう。しかし、そういった調べかたについて稲船氏は「ネットに書かれていることや、会社説明は建前が多い」と注意を促す。では、どうやって調べればいいのか? 稲船氏の答えは非常に地道かつ堅実、ともすればアナログとも取られかねないものだった。そう、「実際に会って話す」というものだ。その理由について稲船氏は“空気感”の重要性を強調する。例えれば、“バカ”という言葉。本来はマイナスの意味を持つ言葉だが、会話の中ではそうとは限らない。「親しみを込めて言う“バカ”もある。また、大阪人が言う“アホ”は相手を侮辱する“アホ”じゃない。ほとんど挨拶みたいなものです(笑)」。これを会社に当てはめれば、ネット上などに書かれていることとたとえ同内容でも、実際に担当者から聞いて、その空気を感じれば受け取る印象はかなり変わる、ということだろう。

 なおこれは会社を見るときに限った話でもない。稲船氏は、昨今海外へ出ていく若者が減っているというデータと、その原因のひとつがインターネットで何でも調べられるという考えの蔓延にあるとしたうえで、「調べられるんだからいいじゃん、と思うのは大間違い」と断言する。たとえ海外発のニュースなどを見たところで、それはあくまでただの事実であり“空気感”までは得られない。そしてくり返しになるが、“空気感”がなければそれは完璧に正しい情報とは言えないのだ。モノ作りにおいては、情報以外の点においても海外に目を向けないことには問題がある。日本の内需には限りがあるという点だ。ことゲーム業界においては、高齢化によって主要ユーザーである若者が減り、内需はさらに拡大しづらい状況。稲船氏がつね日ごろから海外進出の重要性を訴える背景には、こういった考えがあったわけだ。

 ところで、空気感にはもうひとつの意味がある。いわゆる“空気を読む”の意味での空気感だ。稲船氏その点において「自分は人が言いたくないこと、言われたくないことに触れられる」と、ある意味で空気が読めていないようだ。しかし、同氏はそれが悪いことだとはもちろん考えていない。「日本のゲーム業界がまずいというのはみんな気づいているはず。なのに、みんな空気を読んで言わない。そこで俺が“ダメなんだ!”と言うと、海外かぶれだとか言われてしまう」。稲船氏の伝えたいことはつまり、大阪弁で言うところの“気にしい”になるなということ。「言ったあとの空気を想像して言わない人が多い。“気にしい”が多いんです。新しいことをやるとき、“人がこう言ってるから”とか“人がこう思うから”といったことを考えて立ち止まってはいけない。自分がどう思うか? で前を向いていくことが大切なんですよ」。

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<ジョブスの「Stay hungry、 Stay foolish」を俺はやっている>
 “気にしいを”やめ、新しいことに挑戦する意義を学生に伝える例として稲船氏は、先日亡くなったアップルの創設者であるスティーブ・ジョブズ氏の功績に触れる。ジョブス氏の訃報は本国アメリカだけでなく、日本でも大ニュースとなった。稲船氏はジョブス氏の死が世界に与えた衝撃は「一企業の創設者の死としては異例」とし、公人であるダイアナ王妃や世界的ミュージシャンであるジョン・レノンの死に肩を並べるものだったと話す。また自身の経験としては、アップルとライバル関係にある某メーカーの人間とつい先日会ったときに、ライバルにも関わらずその人がジョブス氏の死を心から惜しんでいたことに衝撃を受けたという。「ライバルにそこまで言わせてしまう人間というのが世の中にはいるんです」。なぜジョブス氏はそんな人間になれたのか? 稲船氏は、ヒット商品を生み出すという以前に、つねに新しい物を提供し続けてきた姿勢に、その理由があると持論を展開する。そして、ゲーム業界を例に、つぎのように語った

「売れるゲームを作っているだけではジョブス氏のようにはなれない。ヒット作の続編がダメなわけではないが、続編は安定した売上げのために出すという理由にどうしても寄りがちになる。それはそれで大事なことです。しかし、同時に新しいものを作り出さない限り、前に進むことはできません」(稲船)

 さらに、今回の講演に出席した学生たちのような若い層がそういった考えを持たなければ「日本のゲームは本当に死んでしまう」とも告げる。「俺はいくらがんばったとしてもあと10年そこそこしか一線にいられない。でも、きみたちはこれから30年、40年がんばるんです。だから、小さな人間になってはいけない。ヒット作の開発チームに入れたらラッキー、なんて思ってはいけない。それを超えるものを自分で作らなければいけません」。稲船氏が理想とするゲームクリエイターのハードルはかなり高いようにも感じられるだろう。しかし、同氏は「できる」と力強く言い切る。過去を乗り越えるということは、歴史上くり返されてきたのだから。稲船氏は“重要なのは数ではないが”と前置きしたうえで、全世界で1000万本売れるソフトを作ろう、という気持ちを持つよう学生たちに伝える。「1000万本売れたタイトルが過去にあるのだから必ずできるはずなんです」もちろん実現するには並大抵の苦労では足りないし、努力したから1000万本売れるというわけではない。しかし、そういった気持ちでモノ作りに臨むというのは確かに大事なことだろう。

 ここで稲船氏は再びジョブス氏の話題を取り上げる。同氏の言葉で有名なものに「Stay hungry、 Stay foolish(ハングリーであり続けろ、愚かであり続けろ)」というものがあるが、これが日本人には足りないと稲船氏は考えているのだ。一方で、自分自身については「ジョブス氏にそれを問われたら、「俺はやってるよ」と自信を持って言える」という。それぞれ解説すると、ハングリーについてはほかの講演でもよく言っているが、稲船氏は自身の現状に満足したことはない。フーリッシュについては、よく取り上げられる過激な発言の数々で体現している。業界の先輩から発言について怒られることもあるそうだが、稲船氏は決してやめない。「言いたいことも言えない社会はよくないと思っている」ことに加えて、たとえば“このままでは日本のゲーム業界がダメだ”という発言が特定の誰かを傷つけることはない、と考えているからだ。むしろ、自身としては業界を応援しているつもりでいる。だから、稲船氏は発言において“Stay foolish”なのだ。

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<君たちは自信のハードルが高すぎる>
 ジョブス氏の言葉について“自分はやっている”と断言する稲船氏。じつに自信満々だ。実際「俺は自信の塊なんです」と胸を張るほどだ。一方で、ともすればこういった態度は他人の反発を招いてしまうこともある。日本では“謙虚”な姿勢が重宝される面もあるので、人前で自信を押し出すのは避けたいという人も少なくないだろう。ここで稲船氏は学生たちに“自分に自信がある人は手を上げて”と呼び掛ける。謙虚さが邪魔をしたのだろうか、ひとりも手は上がらない。これを見て稲船氏は、先日某大学で行った講演でも同様の結果になったことを述べるとともに、「なぜ自信があると言えないのか、俺にはわからない。君たちは自信のハードルが高すぎる。誰と比べているの?」と、学生たちの自信の置きどころに問題があると指摘。「誰だっていちどは褒められたことがあるでしょう。それが自信です。難しいことを考える必要はない。自信なんて自分で決めていい。みずからを信じると書いて自信。自分で自分を信じないで誰を信じるんですか」。

 さきほどから続くキーワード“新しいこと”をするうえでは自信が必要不可欠である、と稲船氏。自信がないと自己主張ができなくってしまい、その点でもクリエイターとしての歩みを止めることなると忠告した。併せて、自身の体験談として、カプコンの若手社員に「なぜ新しいゲームを考えないんだ?」と聞いたら「考えていいんですか?」と返ってきたエピソードを紹介。自己主張ができないとこういった思考に陥ってしまう恐れがあるのだろうか。また、そもそもの話として「新しいことというのは止めようがない。自然と脳から出てきてしまうもの。むしろ出すぎて上司から拒否されるくらいじゃないといけない(笑)」とも語った。いずれにせよ重要なのは自信である。では具体的に、どうすれば自信が持てるのか? 結論を出す前に稲船氏は高校1年になる息子の話を始めた。

 「うちの息子はびっくりするくらい勉強できない」という。一方で、自分がやりたいことには貪欲で、何でもかんでもチャレンジするという積極性を持っているという。そんな息子の行動を稲船氏は決して邪魔をしないようにしている。たとえそれがバカげたことでも「やりたければどうぞ」と言う。なぜなら、自身も母親からそのような教育を受けたからだ。

 幼いころから絵が好きだった稲船氏は、勉強をほとんどせずにずっと絵を描いていた。母親は、いま自分が息子にそうしているように、好きなことをやるのを阻害しなかった。それだけでなく、絵の道具だけはつねに揃えておいてくれたという。そんな方針もあってか、画力は自然と上達し、小学校では毎年のように絵のコンテストで学年トップを獲得することになる。そして、これが稲船氏の自信の原点になった。勉強はしていなかったし、何よりも勉強をがんばっている人はたくさんいるから競争率は高い……ならば、ほかの自分が得意な分野でいちばんになればいい、というわけだ。

 もはや結論はこの話でほとんど出ている。自信を持つには、誰かと比べる前に自分と真剣に向き合えばいいのだ。ただし、その際は注意が必要であると稲船氏は語る。「自分のダメなところなんてどうでもいい」。同氏の考えでは、自分のダメなところはあとで直せばいいのだ。それよりもいいところを磨く。それによって、新たにできることも見つかってくるはずだからである。稲船氏は具体的な方法として“自分のいいところをメモ帳に10個書く”という手段を学生たちに伝授。「何でもいいから、自分の中でできることを考えて、いちばんになることを思い浮かべてください」と、呼び掛けた。

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<積極的に意見を交わした質疑応答>
 講演では十分な時間を設けての質疑応答も行われた。自信を持つように、という言葉の成果が早くも出たのか、学生たちからはつぎつぎと質問が飛び出すことに。以下、そこでのおもなやり取りを項目ごとにわけてお届けしよう。


質問:続編を作りたいと思うゲームは?
稲船氏は最初に、“続編を作りたくないゲーム”について説明。それはクリエイターがやりきった作品だという。自身で言えば『ロックマン エグゼ』シリーズがそうで、もはや同作でクリエイターとしてやる要素はないと判断したそうだ。一方で、『ロックマン DASH』シリーズはずっと続編をやりたかった作品で、カプコンを退社する前に『ロックマン DASH 3』を立ち上げている。しかし、ご存知の通り同作は開発中止が決定。「正直まだ作りたいと思っている」と稲船氏は語ったが、すでに会社を去っているため、カプコンから依頼が来ない限りは改めて開発することが不可能だ。この件で同氏が強く抱いたのは「クリエイティブを自分の物にしたい」という思い。ゲームクリエイターは作品を作れば“作った”という事実が一生残る。しかし、それが自分のモノであるという“権利”はふつう得られない。稲船氏は『ロックマン DASH 3』の開発中止をきっかけにこれを変えたいと考えた。そこで、先日発表された『海王』では発売・開発元であるマーベラスAQLの権利表記のほかに“KI”(Keiji Inafune)と自身が原作であることを証明する表記も入れたのだ。「クリエイターにとって作品は子ども。戸籍上もちゃんと子どもにしたかった」。マーベラスAQLと組んだ理由のひとつには、この原作権を認めてくれたからという点もあったという。ちなみに、もしまだカプコンにいたらという前提で、『鬼武者』シリーズの続編もそろそろ作りたいとも稲船氏は語っていた。

<質問:ソーシャルゲームの盛り上がりをどう思うか?>
「ゲームはゲームです。ジャンルが違うだけ、という感覚で見ています」と答えた稲船氏。ただし、これはあくまで遊ぶ側の視点。作り手としては、やはり違いがあるようだ。まずは開発が短期間で済むという点。そして、もっとも異なるのは開発のあとに運営がある、ということ。運営についてはPCやコンシューマーのオンラインゲームにもあることだが、ソーシャルに関しては運営の比重がより大きい。そのため、行き過ぎれば「お金を取りに行っているだけのゲーム」になってしまうという危惧もあるそうだ。稲船氏はいままで開発を重視する道を歩んできたので、その点においては両者のバランスが取れた「もっとおもしろいものができるという自信」があるそうだ。また別の質問でオンラインゲームでしか実現できない遊びとは? という質問もあった。これについては、「“おもしろい”だけでなく“くやしい”という感情を刺激するところはうまいと思う」と回答。それがうまくできているのはグリーとモバゲーで、世界的に見ても珍しい例であると説明した。海外には両社よりも大きなメーカーはあるが、稲船氏から見て「いいか悪いかは別として、海外はタダで遊ばせすぎている」そうだ。日本企業のマネタイズ能力、海外のソーシャルゲームのおもしろさを組み合わせれば、いいゲームができてくると思うと持論を述べた。

<質問:オリジナリティーとは?>
稲船氏の答えは「ほかとまったく違うものという意味でのオリジナリティーは存在しない」というもの。とは言え、同氏は今回の講演でも“新しいもの”の必要性を説いてきた。どういうことか? その点については、絵の具を例に説明した。12色の絵の具があった場合、それをそのまま使えば誰が描いても同じ色合いの絵ができあがる。しかし、絵の具は混ぜることであらゆる色を作り出すことが可能だ。稲船氏の考えるオリジナリティーとはそういうことである。また、組みわせる際に重要なのは「メロンに生ハムを乗せる」くらいの意外性。「どう考えてもイケてない組み合わせだが、食べてみるとこれがおいしい(笑)。ビックリするくらい合っている」。とは言え、単純に意外性があって人が思いつかないようなものであればいい、というわけではない。「足したときにどんな相乗効果を生み出すか? そこまで考えられる人が、オリジナリティーを得られる」のだ。

<質問:チームで動く際に気をつけることは?>
稲船氏の会社は全体で20数人と決して大きくはない。そのため、自社開発は難しく必然的に外部と組むことが多いそうだ。そのときにいちばん気をつけるのは、“外注”という呼びかた、考えかたをなくすというもの。これはユーザーにも当てはまることであるという。いわく「外部制作だからダメ、内部制作だからイイという考え」を開発者もユーザーも抱きがちであると指摘する。外部といっしょに仕事をするときは“パートナー”と考えるべきとし、また外で仕事をしているだけでありいっしょのチームという意識を持ち、情報を隠すようなことがあってはいけないのだ。ちなみにカプコン在籍時からその考えはブレておらず、また実績も残している。たとえば『ストリートファイターIV』は外部に開発を任せたが、ご存知の通り国内外で非常に高い評価を得た。外部といっしょに開発するときは「上から見ない」ということを徹底するべき、と稲船氏。「内部が偉くて、外部が偉くないということはない。ちゃんと協力すればスピードも早くできるし、クオリティーも高くできる」。

<質問:ゲームを作る際にもっともこだわる点は?>
一定の部分だけに力を入れるのはダメだと思う、と返す稲船氏。こだわるのは悪いことではないが、そのこだわりによって納期が遅れるということがゲーム業界には多々あるという問題を踏まえての回答だ。一方で、開発以外の部分であれば、プロモーションにはこだわっているという。さきほども述べた通り、稲船氏の会社はまだまだ成長段階だ。そのため、おもにプロモーション展開において「自分たちができないことをほかでやってもらえるのならば、よろんで受ける」という姿勢を一貫しているそうだ。具体的には某ゲームへの出演など。さらには過激な発言にも若干その意識は現れている。いわく、自分の発言がネットで取り上げられるのは、自身および会社のこれ以上ないPRチャンス。とは言え、ネットでは心ない発言も見られるが……その点に関しては、反応があるというだけで「俺は好かれているんだ!」と前向きに考えるようにしているそうだ。

<質問:企画を立てる際に気をつけることは?>
「コントローラの操作方法から始まるような企画書はダメ。ハード、テクノロジーの話が先に来るのもだめ」とダメな企画書の例をまず挙げる、では、何が書かれていればいいのか? そこはシンプルに「どんなおもしろいことをさせてくれるのか?」だという。そのほかダメな例としては、テクニカルな部分だけ詳しくて、世界設定などは人に任せたりおざなりになっているもの。逆も然りで、要するに遊びの部分と設定の部分で偏りがあるもの。得意不得意は誰にでもあるが、それでもひとりですべてを考えなければ企画書の統一性がとれなくなってしまうから。その人が描くコンセプトがすべて、というわけだ。また、稲船氏は企画という仕事を「いちばんおもしろいけど、いちばんつらくて、いちばんわりに合わない仕事」と表現。しかし、最初の“いちばんおもしろい”があるから、やめられないそうだ。

<質問:人生でいちばんの失敗、挫折は?>
失敗したらその経験を活かす、という考えのため、稲船氏は失敗や挫折はほとんど覚えていないという。新しいことへ挑戦するには、失敗に怯える時間はないということだろう。それに通じる話として、「成功も反省しなければいけない」と語る。なぜ成功できたのか? という点を反省および分析することで、それがさらなる成功につながるのだ。成功はゴールではないのである。


 なお、稲船氏の講演は2011年12月18日の午後1時から、ヒューマンアカデミー大阪校でも実施予定。興味のある人はぜひとも参加してみてほしい。