崎元仁氏らベイシスケイプの作曲家陣が総登場! “ベイシスケイプ トークイベント”リポート【4starオーケストラ】

ゲーム音楽フェス“4starオーケストラ”の開催3日目に行われた、“ベイシスケイプ トークイベント”。崎元仁氏を始めとする、ベイシスケイプの作曲家たちが総登場し、トークセッションを行った。

●ベイシスケイプメンバーの何でもありトーク!

 “4年に1度の開催”をコンセプトとするゲーム音楽フェス“4starオーケストラ”。最終日となる2011年10月2日には、崎元仁氏が代表を務める音楽制作会社ベイシスケイプによる“ベイシスケイプ トークイベント”が開催。ベイシスケイプに所属する7人の作曲家陣が、おのおのの作曲スタイルやふだんの生活などについて、セッション形式でトークをくり広げた。

■トークセッション1 工藤吉三氏・千葉梓氏
 最初のセッションでは、ベイシスケイプに所属する若手作曲家、工藤吉三氏と千葉梓氏が登場。工藤氏がディレクションを担当した、2011年10月1日に発売されたばかりのCD「朧村正 音楽集 変奏ノ幕」を例に、ディレクションの仕事は何かということについて語った。

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▲ほぼ同じ時期に入社し、世代も同じなのに、「話題は宇宙世紀とGガンダム以降ぐらい合わない」(工藤氏)なのだとか……。

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▲工藤氏は、ベイシスケイプ公式サイトのコラム内でも「朧村正 音楽集 変奏ノ幕」について語っている。気になる人はチェック!

▲千葉氏はファミ通.comでもおなじみ、声優の長谷川明子の曲「Fateful Actor」や「おにぎりマーチ」を作曲している。

 ディレクションの仕事は、料理の世界で例えると、料理人たちにバラバラにイタリアンや中華を作らせるのではなく、まずは「イタリアンを作る」と決め、その中で個々がどんな料理を作るのかを提示することだという。ちなみに、ディレクションのやりかたは人によってさまざまなようで、「崎元さんはかなり任せてくださるタイプ」(工藤氏)、「並木さんは入社初期にいろいろ教えてくださって……そのときには精神修行だと思ってやって、と言われました」(千葉氏)とのこと。

 ここで「朧村正 音楽集 変奏ノ幕」の曲の中から、千葉氏が手掛けた曲「落花流生」が紹介された。これは、アルバムの最後に収録されるということで、工藤氏からは「エンディングに値するような、静かな感じ」とオーダーがあったと語った。

 また、「メロディー派? 雰囲気派?」という議題について、ふたりとも「場合によりけり」と回答。工藤氏は「最初からメロディーを聴かせてしまうと、引かれてしまう場合があるので……」と言いながら、「グランナイツヒストリー オリジナル・サウンドトラック」(こちらも2011年10月1日発売)の曲の中から、「Assault of Brave Flame」を紹介した。この曲は、最初はあまりメロディーを入れずリズムメインにし、聴いている人の耳を慣れてきてから“ボディブローのように”メロディーを叩きこむ曲になっているとか。サウンドトラックを購入した人は、ボディブローがどこで来るか、注目して聴いてみてほしい。

 最後に、ふたりから「ベイシスケイプ内でもっとも若いとはいえ28歳になりました。これからいろいろがんばろうとバタバタしているので、温かい目で見守ってください」(工藤氏)、「いろいろなゲームやアニメの曲を書かせていただいていますが、まだまだ修行中ですので、もっとベイシスケイプの曲を聴いていただけるようにがんばります」(千葉氏)と来場者へのメッセージが送られ、セッション1は終了となった。

■トークセッション2 阿部公弘氏・金田充弘氏
 続いてのセッションで登場したのは、ベイシスケイプ作曲家陣の中で中堅に当たる阿部公弘氏・金田充弘氏。ベイシスケイプが設立されてから、デモテープを送って採用された最初の世代だという。

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▲工藤氏によると、かなり朝型であるらしい阿部氏。始発も動いていない時間に自転車で出勤してきたという逸話も。

▲金田氏のデモテープはボーカル入りだったとか。聴いてみたいです!

 楽曲をアレンジすることをどう捉えているか? という議題では、金田氏は「ひとつのゲーム内で、あるメロディーをアレンジするときは、おもに場面場面をよりよく演出するためにアレンジします。一方、アレンジアルバムを作る際は、いいメロディーをどう聴かせるか、を大事にします」と回答。阿部氏は、「ゲーム内でのアレンジの場合は、使われるシーンやキャラクターをイメージして曲の性格付けをします。アレンジアルバムの場合は、BGMからどう脱却するか……ファンを裏切らない範囲で、どうゲームの世界を広げるかを考えます」と答えた。

 また、金子氏は“言葉としての音楽”と“雰囲気としての音楽”についても語った。音楽からゲームのストーリーを伝えるのが“言葉としての音楽”、ゲームの中でユーザーの記憶に残る演出をするのが“雰囲気としての音楽”とのことで、例として『グランナイツヒストリー』の曲の中から、2曲を紹介した。1曲はゲームのタイトル画面で流れる曲、もう1曲が辺境地で流れる曲で、前者が“言葉”、後者が“雰囲気”の例。前者はゲームの世界を伝える曲で、そのメロディーをほかの曲にも渡していく。後者はメロディーよりも、「怪しい土地にいる」という気分をユーザーに味わわせることを重視していると述べた。

 終わりの言葉として、金田氏は「朝早くから来ていただいてありがとうございます。ベイシスケイプの活動にもっと興味を持ってもらえたらうれしいです」、阿部氏は「こんなに多くの方に来ていただけるとは思いませんでした。自分たちの曲がこのようなイベントで演奏されるよう、もっとがんばろうと思います」と来場者たちに感謝の意を述べた。

■トークセッション3 崎元仁氏・岩田匡治氏、並木学氏(ビデオレター)
 小休憩の後に始まったトークセッション3は、並木学氏のビデオレターからスタート。本当は会場に来るはずだったのだが、どうしても都合がつかず、やむなく映像での登場となったという。並木氏は「ゲーム音楽を聴くのが好き、演奏するのが好き、作曲するのが好きと、いろんな人がいますが、それぞれがゲーム音楽を盛り上げようとこのようなイベントを行うのは素敵なこと。楽しまなければ損なので、憧れの作曲家や、自分が好きな曲の話をしている人がいたら、積極的に話しかけてみてください」とメッセージを送った。

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▲2011年10月26日には、並木氏が音楽を手掛けた『ブラックロックシューター THE GAME』のサウンドトラックが発売されるとのこと。

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▲貴重な並木氏の作曲風景も公開! 崎元氏も「見たことがない」とか。

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▲崎元氏(左)と岩田氏(右)。

 続いて、崎元仁氏・岩田匡治氏が登壇。長年ともに仕事をしてきたふたりならではの、絶妙な掛け合いの一部を抜粋して紹介しよう。

司会 ゲーム音楽がさまざまな形で取り上げられるようになったいまについて、どう思いますか?
崎元 うれしいなー。あれ、終わっちゃいますか(笑)。でも僕らがゲーム音楽を始めたときは、業界も小さくて、まさかこんな規模になるとは思っていませんでしたね。
岩田 うん。
崎元 僕たちただのゲーム好き野郎でしたしね。
岩田 ゲーセンで曲を録音してきて、家で聴いていたりしましたね。もちろん雑音入っているんですけど。親には「お前の聴いている音楽はおかしい」って言われました。

崎元 なぜか僕たち、クラシック系って思われますが、そんなことないですよね。
岩田 申し訳ない。
崎元 プログレのようなテクノのような、よくわからないものやってましたね。
岩田 音が鳴ればおもしろかったので……。

崎元 ゲーム音楽を始めたころは、僕は高校生でしたね。
岩田 僕と彼は、ある家でいっしょに作業をしていて……ある日、彼が突然着替え始めて。「今日卒業式なんです」って言って、他人の家から卒業式に行ってました。

崎元 ゲームを出そうと思ってコミケに応募して、無事に通ったのに、ゲームが間に合わなかったことがありまして。
岩田 お客様から予約までとったのに。曲はできてたので、曲だけカセットに入れて、ダビングして、それだけ持っていきました。土下座でした。
崎元 できてないゲームにお金を払う人がいるとは思わなかったので……。

司会 作曲するなら、いまと昔、どちらがいいですか?
岩田 いまですかね。いまはコンピュータ1台でなんでもできちゃいますが、昔は機材を買い集めないと音が出なかったんです。
崎元 やっぱりいまのがいいですよね。機材を買うのは本当に大変で。僕はデジタルシンセの世代ですが、岩田さんはアナログシンセの世代ですよね。
岩田 でも高かったので、カタログ見てヨダレたらしてただけ。ときどきショールームに行って、いじってみると、音が鳴らない。やっと鳴ったと思ったら、プー。
崎元 あんな時代には戻りたくないですね。

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司会 ファンの皆さんからの質問です。作曲、編曲、演奏のどれが好きですか?
崎元・岩田 演奏はないですね。お聞かせできない。
崎元 どっちですかね、作曲と編曲。
岩田 どれもなし、はだめですか。
崎元 家でごろごろしてたい……。……作曲にしておきます。
岩田 まあ作曲ですかね。

司会 こちらもファンの方からの質問です。作曲はどのように学んだのですか? 教えてください。
崎元 学んでません……。
岩田 できないまま業界にもぐり込んで、少しずつ覚えました。申し訳ない。
崎元 僕らプログレとかテクノとかやってた人間ですが、クライアントがオーケストラ書けって言ったんですよ。仕方ないから調べながらやりました。作曲家って、なんでも書けなきゃいけないんだなーって。僕らいつから作曲家になったんですかね。まあ……なんとかなります。

司会 最後にひと言お願いします。
岩田 申し訳ありませんでした。
司会 岩田さん謝ってばかりじゃないですか(笑)。
岩田 こんなにいらしていただけるとは思わず、緊張してとんでもない話しかできませんでした。ベイシスケイプをこれからも見守ってください。
崎元 大学の講義室みたいなこの会場で、もっと実のある話をすればよかったのかな(笑)。もう遅いですが。皆さんの顔を見ながらお話ができる、こういう機会がまたあればいいなと思います。

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 3セッションをもって、トークイベントは終了。最後にトークイベントの出演者が総登場し、崎元氏は来場者に向けて、「ベイシスケイプのメンバーは、みんな僕とは違う感性で曲を作っています。ぜひみんなの曲を聴いてください」と語った。