『FFII』の人気曲がピアノアレンジに! 植松伸夫氏参加のレコーディングを直撃取材

『FFII』の人気曲「反乱軍のテーマ」がピアノアレンジで復活! 植松伸夫氏が参加するレコーディングの模様を独占取材!

●植松伸夫氏渾身のディレクションの果てに……

 2011年8月某日、都内の音楽スタジオでスクウェア・エニックスのとある曲のレコーディングが行われた。それは、人気RPG『ファイナルファンタジー』(以下、『FF』)シリーズの中でもとくに人気が高い、『FFII』の「反乱軍のテーマ」のピアノアレンジバージョン。なんと、この「反乱軍のテーマ」のピアノアレンジバージョンが、“スクウェア・エニックス ミュージック サンプラーCD Vol.6”に収録されるというのだ。しかも、このレコーディングには、『FF』シリーズの楽曲で知られる植松伸夫氏が参加するという。それを聞いていてもたってもいられず、ファミ通ドットコム編集部の記者が音楽スタジオへ直撃! レコーディングの模様を取材させていただいた。

 今回レコーディングされる曲は、前述のとおり「反乱軍のテーマ」のピアノアレンジバージョン。今回のために新たにアレンジされた同曲を、ピアニストがその場で演奏し、ディレクターの要望に応えながら、1曲に仕上げていくというものだ。今回のアレンジとピアノ演奏を担当したのは、ゲーム音楽をピアノアレンジして演奏するピアニスト集団“ピアコンズ”として有名な中山博之氏(通称ショパンさん)。そして、レコーディングのディレクションを植松伸夫氏が務めた。

01
02

▲譜面を前に、中山氏へ指示を出す植松氏。レコーディングは終始和やかな雰囲気で行われた。

▲今回レコーディングされた「反乱軍のテーマ」の譜面。アレンジは、中山氏の手によるもの。

 レコーディングは、中山氏が見事な演奏をくり広げるものの、植松氏がさらなるリクエストを出すという、とても高度なやり取りのくり返し。ひとつひとつの音はもちろん、細部の弾きかたにまでこだわる職人気質に溢れたレコーディングとなっていた。

 レコーディング終了後、今回の曲について植松氏、中山氏にミニインタビューをさせていただいた。

03

▲作曲家の植松伸夫氏(写真左)と、ピアニストの中山博之氏。

――今回、「反乱軍のテーマ」をピアノアレンジすることになったきっかけを教えてください。
植松 スクウェア・エニックスさんから「『FFI』、『FFII』、『FFIII』の楽曲をピアノアレンジしたアルバムを出したい」というお話をいただいて。その1曲目として、今回「反乱軍のテーマ」のレコーディングをしていたんです。

――『FFI』、『FFII』、『FFIII』の数ある楽曲の中から「反乱軍のテーマ」を選んだ理由は何でしょう?
植松 いろいろとやりたい曲はあったんです。やりたい曲を選んでみたら、『FFI』から6曲、『FFII』から6曲、『FFIII』から12曲と、24曲近くなっちゃって。でも、アルバムはCD1枚でしたので、そんなには入らず、泣く泣く曲を切っていったんです。その中で、「反乱軍のテーマ」は、“Distant Worlds”という『FF』のオーケストラコンサートツアーでオーケストラアレンジをしていたんですが、まだピアノアレンジはなかったんですね。もともと個人的に思い入れがあって好きなメロディーラインでもあったので、今回のピアノアレンジに入れるといいかなと思って選んだんです。

――なるほど。アルバムの制作は順調に進んでらっしゃるんですか?
植松 まだ1曲目ですからねー(笑)。でも選曲は終わって、アレンジに取り掛かってるんだよね?
中山 も、もちろんです。
植松 まだアレンジ終わってるの1曲だけどね(笑)。

――中山さんがすべての曲をピアノアレンジをして、すべて弾かれるんですね?
中山 はい。
植松 アレンジした本人が自分で演奏したほうが、何を表したいかわかりますし、ベストに違いないですよね。

――中山さんにお願いした理由は、中山さんでしかできない何かがあるということなんでしょうか?
植松 最近会ってなかったから。

――(笑)。
中山 ありがとうございます! うれしい(笑)。
植松 (笑)。いや、アレンジができて、ピアノも弾けるという人は、なかなかいないんですよ。譜面を書くのはうまいけど、楽器の演奏はそうでもないとか。楽器はうまいけど、編曲させるといまいちとか。両方のレベルが高い人は、自分のまわりに……キミ、名前なんて言うんだっけ?
中山 ショパンです。
植松 中山くんだろ!(笑) このインタビュー、“ショパン”って書くの? “中山”って書くの?
中山 中山でお願いします。ショパンはマズイ(笑)。

――(笑)。中山さんは全曲のアレンジ、演奏を任されることを聞いたときはどう感じましたか?
中山 『FFI』から『FFIII』は、まさに好きな世代で、リアルタイムに遊んでいましたし、ピアノで曲を弾いていたしで、全部任せていただけると聞いて、本当にうれしかったですね。これから演奏する曲も楽しみでしょうがないです。

――個人的にあの曲を弾きたいといったご希望はあるんですか?
中山 希望もありますが、すべて小学校時代に遊んで聴いていた曲なので、どの曲が来ても大丈夫です!
植松 ただ、『FFI』、『FFII』、『FFIII』で有名な曲はどれもオーケストラなどの、何かしらのアレンジをしてしまっているので、選曲が難しいんですね。かといって、これまでアレンジされたことのない渋い選曲でアルバムを作っても、果たして何人のお客さんが喜んでくれるかわかりませんし(笑)。ですから、どうしても主だったものしか入れられないんですよね。でも、ちょこちょことマイナーなものも入れていきますので、お楽しみに。……ちなみに、小学校のとき『FFI』から『FFIII』の全部の曲を弾いてたの?
中山 いえ、みんなに喜ばれる曲だけを(笑)。
植松 エンターテイナーだね(笑)。

――学校で演奏していると、友だちから尊敬の目を集めませんでしたか?
植松 「中山すげー」って?
中山 そうなんですよ。唯一、ヒーローになれるときでした(笑)。

――(笑)。ちょっとお話を戻しますが、「反乱軍のテーマ」について、どのようなアレンジにしようと思われましたか?
中山 まず勇ましさを出そうと思いました。あと、メロディーを何度も聴きたいというのがあったんですが、アレンジをしていく都合上、音がどんどん増えていくので、そうするとメロディーがだんだん目立たなくなってくるんですね。そこで、もう一回メロディーが出てくるときは、譜面を難しくして音を厚くしつつ、カッコよくしながらメロディーが流れるようにしています。
植松 ファミコン時代の曲なんで、ワンコーラスが短いんですよね。結局、今回の曲は何分くらいになったんだっけ?
中山 3分強ですね。
植松 せめて3分くらいは欲しいなあと思っていたんですけど、ファミコン時代の曲はワンコーラスが30秒くらいなので、それをどう3分に引き延ばすかが難しいんです。ただ引き延ばして、曲が薄くなるのもイヤだし。どうなるのかなって思ったんだけど、激しい和音と流れる旋律で……。
(突如、スーツの胸ポケットから財布を出す中山氏)
植松 ……なんで急に出したの? 
中山 いや、膨らんじゃって……。
植松 あ! (撮影している)写真を気にしたの?(笑)

04

中山 (急に話を戻して)そうそう、薄くせずにアレンジするのが大変なんですよ!

――(笑)。
中山 あまりに元のメロディーから逸脱するのはマズイと思ったので、「あの部分から来てるんだな」ってわかるように努力しました。あと、オーケストラではなくピアノなので、音色がひとつなんですが、そこを高さや伴奏でうまくバランスを取って作りました。
植松 大変よくできました。
中山 ありがとうございます。……星で言うと、何点くらいでしょう?
植松 ふたつ半! ……中途半端だな。ふたつくらいかな。
中山 じゃあ、次回までにもっと……。落ち込んじゃうんで。
植松 (笑)。

――ちなみに、今回のアレンジに関して植松さんから要望などは出されたんですか?
植松 いえ、あまり。中山くんが作ってくれたものをチェックして、一ヵ所だけ「間を開けてくれ」って言ったくらいかな。あんまり「こんな感じにしよう」って指示をしすぎると、せっかくの彼の羽ばたく翼が汚れちゃうんで……。
中山 いいたとえをありがとうございます!
植松 ほかで使うなよー!(笑)

――レコーディング中はいろいろと中山さんに指示を出されていましたが、ディレクション中の植松さんは厳しいのでしょうか?
植松 いや、厳しいわけじゃないんですけどね。彼、ミスをしても自己申告しないから(笑)。
中山 いやいやいや(笑)。 
植松 演奏するプレイヤーとディレクションする人は注意する部分が違いますし、ディレクション側のほうが客観的に聴けるんですよね。彼は、演奏することに一生懸命ですから。でも、僕はそんなに厳しくないと思いますよ。厳しい現場は嫌いなんです。みんなピリピリしちゃいますし。僕が若いときは、まわりのスタッフが全員年上だったのでやりづらかったんですよね。僕からお願いをしても、何を言われるかわからなくて。それがイヤだったので、もし自分が主導権を握れるようになったら、ああいう雰囲気をやめようって思っていたんです。やっと念願叶いました(笑)。

――今回のレコーディングは、笑顔のこぼれる和やかな雰囲気でしたね。ちなみに、『FFI』、『FFII』、『FFIII』のピアノアレンジが出たら、今後の展開が気になりますが……?
植松 それは、スクウェア・エニックスさん次第ですね(笑)。
広報 2012年は、『FF』25周年ですから……。

――期待しています! では、最後にサンプラーCDを聞く方にメッセージをお願いします。
植松 こんなのまだ触りですから! まだまだスゴイですよ! ねえ、中山先輩?
中山 期待してください(笑)。
植松 じつは、ピアノアレンジで『FFI』、『FFII』、『FFIII』の曲をやろうというアイデアは昔からあったんですが、僕もスクウェア・エニックスを辞めたりして、機会を逸していたんですね。でも、『FF』25周年というちょうどいい機会があって、ピアノアレンジのアルバムが出せるというのは、とてもうれしいです。僕としてもやり残した、心残りのことでしたから、だから、僕も完成を楽しみにしています。皆さんもぜひ期待して待っていてほしいですね。
中山 僕にとって『FFI』、『FFII』、『FFIII』の曲は、とてもメロディーが懐かしくて、いまでも好きな曲なんです。その曲がピアノで、しかもアレンジされて甦るという、とてもおもしろい内容になっているので、ご期待ください。

05
06

 インタビューにある通り、今回の楽曲は2012年に迎える『FF』生誕25周年記念を先取りした企画のひとつだという。『FF』シリーズ初期作品の中には、『ピアノ・コレクションズ』が発売されていないものもあるため、今回のレコーディングを聴く限り、初の『ピアノ・コレクションズ』化を期待せざるを得ないが……。この曲が、『FF』シリーズ25周年企画がどんどんと広がっていく布石となることを期待したいところだ。

 なお、この曲が収められた“スクウェア・エニックス ミュージック サンプラーCD Vol.6”は、東京ゲームショウ2011で出展される“スクウェア・エニックス ミュージック CDショップ”でCD・DVDを購入した人に配布されるという。同CDには、今回レコーディングされた「反乱軍のテーマ」だけでなく、『Cafe SQ』や『ファイナルファンタジー零式』、『ファイナルファンタジーXIII-2』など、今後発売予定のCD・ゲームからの楽曲が集められている。『FF』ファンはもちろんのこと、スクウェア・エニックスの楽曲が好きな人は、東京ゲームショウ2011でぜひチェックしよう!