●「個人的な見解で語らせていただきます」(對馬)

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 2011年9月6日〜8日の3日間、神奈川県のパシフィコ横浜・国際会議センターにて、ゲーム開発者の技術交流などを目的としたCEDEC(コンピュータエンターテインメントデベロッパーズカンファレンス) 2011が開催されている。

 その開催初日に複数実施されたDeNA協賛のセッション。その中から、“Mobage SDKについて(仮)”及び“Mobageにおける大規模分析基盤とその活用”と題したふたつのセッションを、本記事にてまとめてお伝えしよう。

 まず“Mobage SDKについて(仮)”。同セッションで登壇したのは、Dディー・エヌ・エーのCTO室に所属する對馬正氏。「弊社が公表している情報をもとに、私が個人的に語らせていただきます」と挨拶するや、Mobage SDK(Mobageのソフトウェア開発キット)についてこう述べた。

「Mobage SDKとGREE SDKではどこが違うのか? たとえばニンテンドーDSとPSPはどう違うのか聞かれれば、ハードウェアが違うからSDKも違います。しかし、MobageもGREEも同じフィーチャーフォンやスマートフォンといった端末を使っている。……個人的な見解ですが、9割いっしょだと思います(笑)」(對馬)

 そう冗談交じりにコメントした對馬氏は「技術的に優位性はない。その代わりMobage SDKは瞬発力で勝負している」と、残りの1割について説明。そして、これまでMobage SDKは法人のみ開発者登録ができていたところを「これから個人の開発者の登録が可能になります!」と発表。利用に関しては無償で提供されるとのこと。ちなみにこの個人での登録が可能になったことについては「デジタルコンテンツの開発者を育成していきたい。その思いから無料にしています」(對馬)との考えを示した。

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 そのほか「これまではフィーチャーフォンとPCだったのが、スマートフォンになることでさまざまなサポートがついてきます」と、Mobage SDKの全体像を図で説明したり、“Webページを更新するような手軽さでゲームを更新できる”、“Webページからアクセスできない端末固有の機能を利用する”などのngCoreのコンセプトを紹介。さらにゲームプラットフォームの変遷(アーケードゲーム全盛時代はコンテンツ勝負だったが、家庭用ゲーム全盛時代はある種作って売ってしまったもの勝ちの風潮も少なからずあり開発力はアーケードゲームのころより落ちている。そしていまは、クラウドゲームやブラウザゲーム、そしてスマートフォンネイティブアプリに分岐している)に触れ、「これからの時代は昔のアーケードゲームのようにコンテンツ勝負になってくると思う」(對馬)と自身の見解を示した。

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●分析専門グループとHadoopの導入

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 ディー・エヌ・エー データマイニング部部長の山田憲晋氏によるセッション“Mobageにおける大規模分析基盤とその活用”では、Mobageの分析活動の変遷から話がスタート。同社では、ゲーム立ち上げの際に企画者1名、エンジニア1名がペアになって1タイトルを作る方法を取っていて(例外もある)、互いに納得するまで作り込んでリリース。運用フェーズに入っても、プラスアルファでエンジニアをひとり加えて分析をしながらチューニングを繰り返すという方法を過去とっていたと山田氏は説明した。しかし、この方法はエンジニア過多になり、必然的にエンジニアが不足。分析こそできるが深堀りした分析は時間も人でも足りなく難しかったとした。

 「そこで分析チームを導入しました」(山田)。社内に分析専門のグループを作り、どういうときにユーザーは課金したくなり、どういうときに飽きてしまうのか? ゲームごとにどういうユーザーがいるのかを時間をかけて分析グループが誕生したことにより、いままでできなかった分析をマクロな視点でできるようになったという。

 が、分析グループと現場とで意見が食い違ったり、分析グループが必要とするログが集まらないなどの問題も。そこで方針を変え、重要なタイトルには分析グループのメンバー自身が開発チームのメンバーの一員となり、現場のスタッフが何を考えて、どういうところで困っているか、必要としているかを、分析グループのメンバーがが深く関わることにより、よりよい分析ができるようになった。

 そして現在では、分析メンバーを大きくゲーム分析系エンジニア・アナリスト、プラットフォーム系エンジニア・アナリスト、分析基盤エンジニアに分類。ゲーム系が開発チームに入り、プラットフォーム系や分析基盤エンジニア(分析するための基盤を作り、ライブラリを作り、運用する)とパイプを持つなど、それぞれに特化した3つのグループがうまく連携しているとのこと。

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 続いて、分析に欠かせないものとして“Hadoop”という名前を出した山田氏。これは大規模なデータの保存、分散処理を簡単に実現するためのJavaソフトウェアフレームワークで、さまざまな大手企業でも分析やログ収集などに採用されているもの。使用メリットとしては、“重い処理や時間のかかる処理時間を高速化できる”、“プログラムの改修不要”、“開発の容易さ”、“処理効率のよさ”、“高い耐障害性”などが挙げられた。ちなみにHadoopが導入前は1日あたりの情報量が膨大でデータ転送だけで半日かかったり、各バッチにも負担がかかるなど、さまざまな問題点があったそうだ。しかし現在はHadoopを用意して、同社の分析エンジニアが自由にクラスタにアクセスでき、必要データを活用した分析できるようになったという。とくに有用なデータはデイリーなどでまとめ、メンバーが見ることも可能。ステータス系の情報もデータベースに蓄積され、定期的にHadoopクラスタに
送り込むこともできるので、この環境が整ったことで分析メンバーもより分析しやすくなったと、山田氏は説明した。

 このほか、『怪盗ロワイヤル』におけるユーザー離脱率の抑制のための分析やイベント活性化の分析に関する事例なども紹介され、同社がいかに分析を重要視しているのかが伝わってきた。

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