2026年7月22日から7月24日にかけて、パシフィコ横浜ノースならびにオンラインにて開催された“CEDEC2026(Computer Entertainment Developers Conference 2026)”。こちらはCESA(コンピュータエンターテインメント協会)主催による、日本最大のゲーム開発者向けカンファレンスだ。
当記事では同イベント3日目、2026年7月24日に行われたレギュラーセッション“♪ NANA-NANANANANA-NA-NA-NA、塊魂ここにあり! 素敵ソングのつくりかた”についてお伝えしていく。講演者の皆さんのプロフィールは以下の通り。
講演者プロフィール(セッション紹介ページから引用)
- 矢野義人氏/バンダイナムコスタジオ テックスタジオ 第1グループ サウンド部
- 三宅優氏/MIYAKEYUU STUDIO
- Shogo Nomura氏/2nd STAR PRODUCTION

講演者の3名。左から順に、Shogo Nomura氏、矢野義人氏、三宅優氏。
講演開始のそのとき、矢野氏はおもむろに歌った。そう、講演タイトルにも入っているあの曲のあのフレーズを。
♪ NANA-NANANANANA-NA-NA-NA……

おなじみ王様も駆けつけてくれた模様。
『塊魂』について知らない人には、すでに置いてけぼり感が出ているかもしれない。そんなアンハッピーな皆さんは、『ワンス・アポン・ア・塊魂』アナウンスメントトレーラーなどを見てハッピーな気分になってから、以下のリポートをご一読いただければと思う。
『塊魂』シリーズ最新作でも多数収録された、新曲の素敵ソング。長年のシリーズ展開のなかで、これらの素敵ソングがどのように作られてきたのかが本講演では明かされた。
※当記事の画像はすべて、アーカイブ画面から切り出したものとなります。受け継いだものと刷新したもの

まず、『塊魂』とはなにか。塊を転がして大きくするアクションゲームである。以上。実際このノリでファンに愛され、20年以上続いている大人気シリーズだ。昨年2025年には『ワンス・アポン・ア・塊魂』と『塊魂 Rolling LIVE』がリリースされた。本講演ではこの2タイトルを中心に、素敵ソングのつくりかたが解説されている。
まずは三宅氏から、『ワンス・アポン・ア・塊魂』の素敵ソングについて解説された。三宅氏が初めて『塊魂』を知ったときにはゲームの画面はなく、テキストといくつかの画像があったのみだったそうだが、その中に三宅氏が「このゲームは絶対おもしろくなる!」と確信した絵があったという。

三宅氏による、その画像の再現メモがこちら。
最初は小さな塊が、最終的には富士山に乗っかるサイズになるという一枚絵。ということは人も、クルマも、ひょっとしたら星も巻き込めちゃうんですか? と気づいてしまったという。サウンドで全面協力しようと、三宅氏がひそかに心に誓った瞬間だった。
なお、CEDEC2024の講演では、三宅氏はさまざまな課題を解決するかたちでサウンドプランを考え、実践していった流れを解説した。具体的にどのようなサウンドディレクションになったかというと、
- 10人のボーカリストを採用
- インハウス作家陣がゲーム用にちゃんとイチから作る
- いろいろな趣向の人も、どれか好きなものが入るようにバラエティを持たせ、ゲームの世界観を歌う
こういった手法が思い浮かんだとのこと。今回の講演ではこの音楽企画のなにがよかったのかを分析し、そこからなにを残し、なにを刷新したかにフォーカスしていくという。

では実際に、なにが新しかったのかの図。
有名なボーカリストを起用するというよくある方法に留まらず、10人という多くのコンポーザーに依頼。ゲームの世界観をゲームをしっかり理解しているハウスコンポーザーが作るという点が非常に重要だったという。
“作家×歌い手×ジャンル”というかけ合わせで効果の倍増を狙うのは、以前の講演でも触れたという三宅氏の手法だ。『ワンス・アポン・ア・塊魂』では従来の考えかたが一定の効果を得られたと考え、まだ実践できていなかったゲームに寄り添うような演出面の拡充を狙ってみたとのこと。
では実際に、どのような新要素を実装したのか。まずは14アーティストに依頼し、ちょうどよくボーカル曲を増やしてみたという。


親子で遊ぶケースがけっこうあるというマーケティング結果もあり、この2~3世代が楽しめる人選と音楽ジャンルは絶妙になった。
講演内では実際に、3曲のボーカル曲について実際のゲーム映像と曲を上映しつつ紹介。さまざまな時代に行くという世界観から民謡を取り入れたり、この世にはないものをいっしょに作ってみたり、アイドルにドゥンと言わせたかったりと、なんだかよくわからないが素敵なきっかけでさまざまな趣向に沿った曲が生まれたようだ。

ドゥンってなんだろう。発案者の三宅氏にもわからないらしい。
また、作家全員からヒアリングをし、やりたい方向がある勢、こちらから指定したほうがいい勢、よいディレクションしか受け付けてくれない勢に作家陣を分類してからアサインと発注を行ったのも、曲の方向性をバラけさせるいい作用になったという。
さらにほかの音楽企画についても、インスト曲やゲーム演出用サウンドの拡充も実施。ムービーシーンは本編と同じトーン&マナーになるようにベテラン勢に担当してもらったり、リミックス枠を設けてさらに曲バリエーションを広げたりと、多種多様な手法が採用された。

大量の企画がつぎつぎと紹介される中で、ボイススクラッチ音が世界2位の人のものだったなど、さらりとすごい情報が公開された。
過去作から踏襲した部分については、メイツのボイス、巻き込まれボイスなど、おなじみの効果音や演出が選択された。変えないほうがいいと考えた部分は変えない、という形をとったわけだ。
このように踏襲と刷新を図っていった結果、『ワンス・アポン・ア・塊魂』は過去いちばんのボリュームとなるにいたったという。
『塊魂』らしさとは、洗練された歪さ
休憩も兼ねて気軽に聞いてほしいと、矢野氏からの“ゲームをプレイするお客さんに楽しい気分になってほしいと思い実装してみたサウンド演出3つ”の紹介を挟みつつ(実際のゲーム映像と合わせての紹介ありきだったので当記事では泣く泣く割愛)、講演では続いてNomura氏による『塊魂 Rolling LIVE』についての解説が行なわれた。
『塊魂 Rolling LIVE』の作曲は、バンダイナムコスタジオの内製で担当。『塊魂』が生まれた当時のスタッフが内部にほとんど残っていない状態で“明るくて、ちょっと変だけど、それがクセになる”という、あの空気をどうやって出すのかが第一の課題だったという。

結果、『塊魂』らしさとは自由さであるというのが出発点となった。
自由さとはなにかも考えた結果、仕様の中で各クリエイターが「やってやるぞ」と個性をむき出しにする(ただしタイトルに合わせてトーンは揃えていく)こと、担当した人の音色やコードなどの「好き!」を突きつめた結果“洗練された歪(いびつ)さ”が生まれることと定義付けられたという。
こうした“尖り”の感覚は、いまなおサウンドチームにも受け継がれていると改めて確認できたという。それぞれの好きが突きつめられることであの空気になる、という作りかたそのものが『塊魂』らしさだったというわけだ。

チームが生み出したどこか尖ったままの楽曲たちに、自然と『塊魂』らしさが宿っていた。
つぎの課題として、“令和の『塊魂』”らしさを出したいという点が浮上した。前作から14年が経った令和の世では、サブスクリプションや動画サイトが一般化し、誰もがあらゆる音楽に一瞬でアクセスできる。いわば、リスナーの耳が自由になってきている。
サウンドチームはむしろこれは『塊魂』にとって追い風と考え、先述の“洗練された歪さ”を前面に出していった。過去作プレイヤーには『塊魂』らしさを伝え、新規プレイヤーには新鮮に音楽を聴いてもらうという両立がしやすい世の中になったと考えたという。

歪だからこそ、自由なリスナーの興味を引きやすい。令和のサブスク時代に『塊魂』サウンドはぴったりだった。
こうして第一の課題を経て、いざ作家陣が歌ってもらうアーティストを選定する前には、サウンドチーム全員の作家性の分析が行なわれた。また、タイトルの世界観として“王様がファンに向けて配信している”という部分を踏まえ、インターネットに親和性のある人物を中心に選定していったという。

こうして作家とアーティストをニコイチで考えた実例として、『ステキナノカデパレード』が紹介された。

結果、このようななんだかすごい曲になったという。講演ではゲーム画面と曲を流しながら解説され、実際ものすごく宇宙を感じた。
ディレクション面では、まず明確にジャンル感のわかる音は避けたという。これによりジャンル感や作法感を薄め、独特な耳触り感というテクスチャを生み出していった。
つぎに、当たり前に使っていた音を見直した。キックやギターなどを誰でもツールで自由に使え、生成AIも台頭してきた昨今だからこそ、ふだん使わない音をあえて使ってみたり、ふだん会議で使っているマイクでコップを叩いてみたり、さらにはギターの代わりにふだんの話し声を思い切り歪ませて使ってみたりしたという。

まとめとしてはいろいろとやってみた結果、シンプルな形に収まったという。
素敵ソング、その“深淵”とは
講演では続いて、『ええじゃええじゃないか』と『彗星日和』の2曲を中心に“素敵ソングの深淵”についての解説がされた。えらく物騒な表現だが、要するに実際の制作過程についての解説だ。
まずは矢野氏が作詞作曲を担当した『ええじゃええじゃないか』について、壇上では実際にサビ部分を流しつつ、矢野氏からその制作過程が語られた。

アーティストだけでなく、曲に合うステージもまた考慮されていたという。

結果として方向性もしっかりと固まっていった。“ライライライ”という歌詞の意味については、三宅氏ですら初耳だという。
続いてはNomura氏が『彗星日和』を解説。テーマは“宇宙スケールの圧倒的な愛!愛!愛!”ということで、あまりに題材のスケールが大きすぎて、歌詞や音色、テクスチャーだけでは表現しきれないと氏は考えた。そこで音楽の構造的な部分からアプローチを試みた結果生まれた表現が、“繰り返される増4度/減5度の転調”だったという。
ふつうのボーカル曲で、最後のサビは半音転調するといったケースは多い。増4度/減5度の転調は、これらと比べてかなり違和感が際立つ。カラオケで言えば、キーを+6するようなものだ。

こちらも実際に曲を聴きながら解説。解説だけだととんでもない曲の印象だが、実際に聞くと浮遊感がある、とてもさわやかな曲だった。

檀上では譜面とキーボードを取り出して、実演奏とともにさらに詳細を解説。歌のセオリーからかけ離れた、ワープのような転調が実感できた。
講演総括“素敵ソング、それは愛の賜物”
講演の最後は、“素敵ソングを作るために必要なこと”で締められた。なにやらどこからともなくエンディングテーマ『愛しているから』が流れるとともに、不思議な感動を伴うスライドが流れていく。
「素敵ソングを作るために必要なこと」
「クリエイターそれぞれの考えかたは違っていても」
「なぜか『塊魂』っぽいサウンドになる」
「不思議ですね」
「それはきっと」
「20年以上変わらず」

「愛のあるモノづくりを継承しているから」
「今後もさまざまな商品や作品から学び、リスペクトし、モノづくりを続けていきたい」ときれいにまとめつつも、このあと衝撃のエンディングロールを迎えることになった当講演。
なにが起きたのかについては、つまびらかにしないが、そもそも実際の楽曲とともに解説している部分が多い講演だったので、テキストと画像だけの当記事ではその詳細どころか、魅力を半分も伝えられていないのである。まことに申し訳ない。