いま我々はニュージーランド大使館にいる。しかも服装はビジネスカジュアル。
経緯はこうだ。ニュージーランドが国をあげてゲーム産業を支援しているという情報を得たので、関係者に話を伺いたいと連絡すると、返答は「ニュージーランド大使館に来てほしい」。大ごとになってしまった。
ちなみに、ニュージーランド産のゲームとしていま注目なのが、トレーディングカードゲーム『フレッシュ&ブラッド』(FaB)。賞金総額およそ3億2000万円(200万米ドル)のワールドツアーが開催され、2026年からは日本でも本格的にイベントが実施されている。
ゲーム大国の日本に住む私たちからすると“国がゲーム産業を支援する”のは気になるし、その取っ掛かりとして『FaB』の話を聞きたいと思っていたが、そもそもニュージーランドでのゲーム産業はどういう規模なのだろう。ピンと来ていない。
まずはその辺からも聞いてみたい。

通された会議室がまたまじめな雰囲気なんだ。
おもに説明してくれたのは『FaB』のLegend Story Studios(LSS)で日本カントリーマネージャーを務める安田健太郎氏。
取材には東京エリア担当の大村晃輝氏、大阪エリア担当の遠藤友郷氏と吉内雄大氏も同席。記事内では安田氏がたくさんしゃべっているように見えるが、実際は各人の得意分野をちょいちょい補足してもらっている。
何はともあれ、まずは世間話から。

LSS 日本カントリーマネージャーを務める安田健太郎氏。
安田
本日はよろしくお願いします。私、少し前までニュージーランド大使館の商務官だったんですよ。
いきなり気になる情報が出てきたぞ。
大使館を辞めてゲーム会社に入りました
安田さんは2026年3月までニュージーランド大使館 貿易経済促進庁の商務官として勤務。在籍中から個人的な情熱でゲーム産業に力を入れていたらしい。縁があってLSSに半年ほど出向し、2026年4月から転職したとのこと。
というのも、『FaB』の日本語版がリリースされた2年ほど前から、日本での動きが活発になってきたから。日本国内に合わせた展開は国内で主導したほうがやりやすい。LSSとして本格的に日本に人員を配置してマーケティングを始めたのが2025年の秋くらい。
――なぜLSSで働こうと?
安田
ニュージーランドが好きなんですよね。ニュージーランドは人口550万人の小さな島国です。島国なので盛んなのは一次産業なんですよ。ミルクや食肉、ここ数年で日本でよく見るのはマヌカハニー。有名なのはやっぱりキウイフルーツですね。ご存じゼスプリはニュージーランドのブランドですから。で、国をより豊かにしていくとなると、一次産業だけでは限界があります。じゃあどこを伸ばしていくかとなったときに挙がるのがアグリテック。一次産業のテクノロジーですね。広大な自然があるので、それをうまく活用する産業、たとえば映画産業が入ってきたり。映画のロケ地として有名なんですよ。『ラストサムライ』であったり『ロード・オブ・ザ・リング』であったり。そこでノウハウを培って、Wētā FX(ウェタ・エフエックス)という会社ができました。デジタルマッピングの会社でして、その技術を応用したのが『アバター』なんですね。『アバター』で大成功して、最近だと『アベンジャーズ』などにも技術が活用されるようになりました。一次産業に代わる産業の軸としてエンターテイメント産業が盛り上がっています。テクノロジー関係で、そこに付随する形でゲーム産業にも力を入れていったんです。具体的なゲームタイトルですとGrinding Gear Gamesの『Path of Exile』や『DREDGE』ですとか。『DREDGE』のBlack Salt Gamesなんて4人くらいのスタジオです。それが爆発的にヒットしたことで、いまではいくつかの(ニュージーランドの)ゲーム会社といっしょになってさまざまな企業をリードして、各地に出展する取り組みを進めています。わかりやすいニュージーランドの特徴というと、ハカ(※)がありますよね。ラグビーのニュージーランド代表が試合前に披露するので、日本ではハカも有名だと思います。ラグビーは唯一、爵位をあずかれるスポーツ(※)なんですよ。いくらゴルフやサッカーがうまくても“Sir”の栄誉はもらえない。ラグビーで成績を残して偉大な人物であると認められるとナイトの勲章を授かれるんですね。なのでラグビーって、じつは上流階級のスポーツなんです。プレイヤーは誇りを持ってプレイするものですし、逆に誇りがないとプレイする資格がないとも言える。彼らニュージーランド人の気質として、フェアネスがとても尊重されています。ラグビーをはじめ、対戦競技はうまくフィットしているのかなと思います。

熱弁をふるう安田氏。

(……どんどん難しい話になってないか?)と戦慄する編集者ミス・ユースケ。
安田
あと、ニュージーランドの特徴としてはダイバーシティ。多様性ですね。先ほど人口は550万人とお伝えしましたが、めちゃくちゃ他民族なんですよ。まず、ニュージーランドはオランダ人が見つけた国と言われていますが、正確には先住民であるマオリ族が見つけているんです。マオリ族が海からやってきたとき、島の上に白い雲がたなびいていて、そこから“アオテアロア”という名前をつけたんですね。意味は“白く長引く雲のある島”。それがマオリ族の言葉でニュージーランドっていう意味になります。先住民がいて、オランダ人がやってきて、白人種がやってきて、さらにさまざまな人々がやってきた。その多様性を担保するために、マオリ族と対話をして作られたのがワイタンギ条約(※)です。いろいろなことがあったと言われていますけど、平和に多様性を追及した条約ということで、締結した日はいまでも祝日になっています。ニュージーランドは白人種がだいたい半分くらい。マオリ族がおよそ17%、ほかはアジア人に中東人にいろいろな人がいます。なぜ彼らがニュージーランドを選んだかと言うと、多様性を認めてくれるからなんですね。「他者と異なっていても、それはおかしいことじゃない。それはあなたのいいところであり、伸ばすべきことだ」という考えが根底にある。公式に多様性が認められてる例として、ニュージーランドの公用語は英語とマオリ語と手話なんですよ。公共的な番組になると、手話での対応もしているんです。私たちの、あ、私たちのと言うとちょっと違うかもしれませんけど、ニュージーランドは女性に初めて選挙権が与えられた国でもあるんですよ。女性と男性が平等じゃなかった時代に、初めて平等にするためにステップを踏んだ。多様性と平等性をとても大切にしているからこそ伸びてきて、注目されている国なんだと思います。また、ジャシンダ・アーダーン(※)という女性の前首相がいらっしゃいました。女性の首相で、なおかつ育休を取ったことが話題になりましたよね。国民の指示が爆上がりでした。コロナ禍のたいへんな時期でもありましたし、クライストチャーチのモスクで銃撃事件があった際も、首相がリーダーシップを発揮して国をまとめ上げたのは、多くのものを認める土壌があったからなのだと思います。ニュージーランドは、お伝えしたとおり公平性や多様性を大事にしていて、あとは挑戦心もめちゃめちゃ強いんですよ。初めてヒマラヤに登った人はじつはニュージーランド人なんですね。エドモンド・ヒラリーという登山家で、この人はお札にもなっています。冒険心の強さですよね。この国を目指して冒険してきた人の血が流れているわけですからマインドセットがしっかりと残っているのでしょう。
※ハカ(Haka):ニュージーランドの先住民マオリ族の伝統的な民族舞踊。足を踏みならし、身体を叩き、大きなかけ声とともに踊る情熱的な儀式。ラグビーのニュージーランド代表(オールブラックス)が試合前に行うものがとくに有名。
※爵位:“New Zealand Order of Merit(ニュージーランド功労勲章)”の最高位など、国への多大な貢献を果たした人物に授与される。呼称として、受章者は名前の前に“Sir(男性)”、“Dame(女性)”の敬称を付けることができる。
※ワイタンギ条約:1840年2月6日にニュージーランドの北島ワイタンギで、イギリス王室の代表と、先住民族マオリの首長たちの間で締結された、ニュージーランド建国の礎となった条約。
※ニュージーランドの政治家で、同国の第40代首相(在任:2017年 - 2023年)を務める。政界を引退後も 2025年5月、大阪・関西万博のウーマンズパビリオンの開幕式に登壇し、女性の地位向上について語るなど、ジェンダー平等などの分野で活動している。

【左】ニュージーランドの地図を見せながらすごい勢いで説明する安田さん。/【右】地図に書かれていた鯨がかわいい。

たいへんな現場にお邪魔してしまったのかもしれない。
ニュージーランドは温泉と地震が多い。日本との共通点
――……。
安田
どうしました?
――ニュージーランド、お好きなんですね。
安田
すみません。なかなか止まらなくて。
――落ち着いて呼吸をしたいので、話のレベルを下げさせてください。国民は何を食べてるんですか?
安田
ポテトです。あとはチーズにお肉、サーモン、有名なのはラム肉ですね。2700万頭の羊がいますので。
――人口550万人に対して、羊が2700万頭。バランスがおかしいような。
安田
ちなみに、私は大使館にいた頃は羊毛の担当でした。いま来ているスーツもニュージーランドのウール製で、日本のニッケさんという会社が作ってくださっています。2700万頭とはいえ、これでも半分になったんですよ。化学繊維が出てきたから。産業を変えないと食べていけないので、テックに移ったり、広大な土地があるのでワインを作ったり、羊から牛に切り替えたり。世界のおそらくトップ10に入るミルク企業のフォンテラというところがありまして、日本国内のお菓子とかバニラアイスとか、あれ、ほとんどニュージーランドの粉ミルクを使っているんですよ。あとはそうですね、ティッシュも有名です。ネイピア地方で作られているんですけど。
――ネイピア……。あ、ネピア!?
安田
そうです。王子製紙様のネイピア地方での事業がもとになっているんです。
――へぇー。お世話になっております。

安田「ちなみに、ネイピアは北側の島のこの辺です」
安田
みんなの知らないところにニュージーランドでございます。使い捨てのプラスチック製注射器を作ったのはニュージーランド人(※)ですし、世界一早い市販の車を設計したのはニュージーランド人(※)。バンジージャンプもニュージーランドが発祥(※)ですね。健康法としてのジョギングを作ったのもニュージーランド人(※)です。いろいろなところを支えていることも多いと思うのですが、欲がないんですよ。使い捨て注射器なんて特許を取っていたら億万長者だと思うんですけど、その人が言ったのは、「いや、これは世界を救うためだから僕には(特許権は)不要だよ」と。こういった気質があるのも、コミュニティを支えていこう、みんなで幸せになるのがいちばんだという発想があるからだと思います。
――かっこいい……。おかげでニュージーランドのことがよくわかりました。
※ニュージーランドの活躍:取材時は「へぇー」と感心しながら話を聞き、帰って調べたら関連情報がいろいろ出てきた。
安田
まだ全然ですよ。どこからいきましょう。歴史をイチから話しましょうか。まずはですね、山間部がとても広くておもな居住地は北側。オークランドですね。こっち(南極側)にはめっちゃペンギンがいます。世界でいちばん美しい散歩道があったり、ワインもおいしいです。政治の中心は首都のウェリントン。クライストチャーチという街も有名ですけど、大きな地震があって人が離れてしまって。いま物価が上がっているので、安いクライストチャーチに帰ってきているみたいですね。いまニュージーランドは家が足りてないんですよ。人口は550万人くらいだけど大工さんがいないから家がない。
――ゲームの取材で「家がない」と聞いたのは初めてです。
安田
そうだ、日本人が好きなポイントとして温泉があるんです。国土の広さは日本から北海道を省いたくらいなんですけど、たくさん活火山がございまして。タウポという街は温泉で有名です。コロマンデロっていうところがあるんですけど、そこは温泉が湧くビーチなんですよ。ちょっと掘ると温泉が出てきます。火山と地震が多いのは日本と似ていますね。地震対策などで使われる免震ゴムってあるじゃないですか。あれじつはニュージーランドでも大きく発展していった技術なんです。地震が多いわりに、日本とは建築様式がぜんぜん違うんですよね。レンガ造りが多くて、クライストチャーチで大きな地震があったときはレンガの教会が崩れて大ごとになってしまった。だから多くの技術者たちが日本にやってきて建築様式を学んでいるんですね。免震ゴムが生まれたのも、レンガの建築物が多かったから。崩れないようにするにはどうすればいいかと研究が進んだようで。やはり、(開拓当初に)西洋の人が来たというのもあるでしょうね。オランダであったりイギリスであったり、地震がほとんどない国の人たちなので、レンガ様式が広がったのだと思います。いまは大きなビルは免震構造じゃないと作ってはいけないルールもできています。地震が多いのでやはり温泉が多い。温泉が多い=地熱発電がすごく盛んなんですね。地熱で作った水素を自動車用の燃料にしたり、各種の機器を運用したり、そういった技術開発も進められています。

「ニュージーランドおもしろいねー」という話が盛り上がる。何の取材に来たのかわからないが、何だか楽しかったのでよしとする。
安田
日本と似ている点としては高齢化が進んでいます。ただ、移民政策も相まって移民の人たちが増えた。だから家が足りないというのもありますね。おじいちゃんおばあちゃんといっしょに暮らす選択肢がないんですよ。日本だと二世帯住宅という考え方はふつうですけど、向こうではそういう文化がない。19歳を超えたら出ていかないと周りからちょっと冷たい目で見られるんですね。ただ現状では住む家がないので、海外に出ていくしかない状況になりつつあります。
――ゲームの話も大事ですけど、ニュージーランド自体に興味が出てきました。
安田
まだ10%くらいです。
――戸愚呂弟みたいなこと言うじゃん。
そろそろゲームの話をしよう
安田
カードゲーム産業も育っていますね。少し前と比べて6000倍(※)以上の規模に。
※6000倍:デロイト トーマツが発表した2022年の“Deloitte Fast 50”によると、ニュージーランドのカードゲーム産業は前年と比べて6416%の収益成長を達成している。
「いま何て言った?」
――ん?
安田
6000倍です。

――(感度だって3000倍なのに?)
安田
すごいですよね。わけがわからないレベルの成長率。これもやはりニュージーランド人の冒険心がなせる業だと思います。ジェームス(※)は自分でゲームを5年間かけて練り上げた。あ、ジェームスというのはうちのCEOなんですけど。これもやはりニュージーランド人のマインドセットだと思います。
※ジェームス・ホワイト:Legend Story Studios社CEO。『Flesh and Blood』のクリエイターでもある。
これは『FaB』シルバーエイジデッキ。コモンとレアの基本カードで構築されるカジュアル向けの公式フォーマットである。
安田
ゲーム……というより、おたく産業と言われるもの全般ですかね。いままでは「うーん……」と言われがちなときもあったと思います。そういう固定観念がなくなって、むしろ注目されて、国を支えるような産業になってきた。ニュージーランドは日本とは別のアプローチで認めていて、サポートする環境が整っています。だからこそゲーム産業が伸びてきたんでしょうね。
――きっと、ニュージーランドとゲームの相性がいいのでしょうけど、どういう理由があると思いますか?
安田
コミュニティが強いのもありますが、西洋文化が強いので、自分の意見をオープンに話すんですね。チームのメンバーにも言うんですよ「Speak up.」と。自分の意見を言ってごらん、という意味ですね。「Stupid questionはないんだよ」って。意見交換が頻繁に起きるので、“いっしょにいいものを作ろう”という土壌はあるのかなと思います。




2026年1月に開催されたイベント“コーリング:秋葉原”の様子。しっかりと盛り上がっていることがよくわかる。
安田
もうひとつの理由は人口ですね。ニュージーランドは550万人しかいないので、いくらそこに打っても、大きなビジネスとしては成り立たない。だから、彼らのマインドセットはつねにグローバルを相手にしてるんですね。ここ(国内)で争うわけじゃなくて、協力して外にいる怪物を倒そう、みたいな。
――やはり国としてもゲームを応援しているのでしょうか。国策の一部と言いますか。
安田
少なくとも私が商務官だったころは、間違いなくゲーム産業を国策としてサポートしていました。現在は当時の業務から離れているので、明確に断言はできないですが、流れはあると思います。とくにコロナ禍の際は、すべての産業がストップしたので、その中で動かせる産業として、ゲームの注目度が高かったんですね。
――なるほど、世界情勢とタイミングが合致したと。
安田
コロナ禍で世界的にオンライン化の流れが進んだ中で、ジェームズは対面でのコミュニケーションにこだわりました。『FaB』の名前の由来は“血肉”なんですけど、ここに「対面でプレイしてほしい」という意向が込められています。対面でプレイするからこそコミュニケーションが生まれる。私たちのモットーである「ゲームをプレイして世界を見る」を実現できる。フィジカルから生まれる感覚は大事です。
安田
『FaB』をプレイするために日本に来るプレイヤーも多いです。私たちニュージーランド人らしい“旅をする”、“挑戦する”、“コミュニティを大事にする”という側面は、非常にこのゲームに反映されています。
――しれっと「“私たち”ニュージーランド人」と仰いましたね。

ニュージーランドが好きすぎる安田氏。
――日本でもコロナ禍をきっかけにデジタル(オンライン)での試合に移行しようとしたゲームは多いですけど、結局、流行ったのはフィジカルを大事にするアナログゲームなんですよね。『ポケカ』だってそうですし。
大村
やっぱり対面で遊んでほしいんですよ。そうそう、すごく好きなジェームスの考えがありまして。ショップさんへの感謝の言葉があるんですね。「毎日ドアを開けてくれてありがとう。だからこそプレイヤーはすてきなゲーム体験ができている」。まずはカードショップ様に感謝という考え方ですね。お店を開いてくださっていることは何よりもありがたい。
大村
『FaB』で人生が救われた方もいると思います。そういう人がひとりでも増えてもらえれば。僕たちの言葉として「トレーディングカードをひとつの共通の言語として、人と人とをつなぐ」。そういったものを私たちは提供したいんですね。それが人を救うことになると思いますし、私たちがコミュニティを拡大するのは、幸せな人たちを増やしていくお仕事のひとつだと思っています。

安田
最近、いろいろなゲームがオンライン対戦に移行していく中、対面プレイを重視した。コロナ禍も乗り越えて、いまの『FaB』の成長につながっているのは、ジェームス自身がそういった発想を持ってるからでしょう。
安田
それこそ『DREDGE』のクリエイターたちが実際に日本に来て、京都のビットサミットであったり、東京ゲームショウにも出展したりするんですね。なんでわざわざ行くの? と聞くと「そこに行かないとわからないから」と。まずは相手を理解する。つぎに自分たちを理解してもらう。この姿勢は大切だと思います。
――なるほど。では、『FaB』とはどんなカードゲームなのでしょうか。
遠藤
通常、対戦型のカードゲームには運要素が多くありますよね。そこに価値があるゲームも多いです。『FaB』にも多少はあるんですけど、運の要素が極限まで排除されているんです。カードゲームに運要素がないということは、それこそ格闘ゲームと変わらないような、実力一本勝負になります。そこがほかのカードゲームと大きく違うところです。
安田
実際、トーナメントにおいても上位に進出する人が毎回同じ方が多い傾向にあります。確実に実力が出ていることになるでしょうし、このゲームの独特なところなのかなと。
――ランダム性があまりないということは、ゲームとしての性質が違うんですね。
遠藤
もちろん、運の要素をあえて排除しない設計のカードゲームもおもしろいです。ジャイアントキリングが起きたらテンションが上がりますし、想定できないからこそのよさもある。ただ、「運で負けちゃったな」と気になる人もいますよね。そういう人たちが、最終的に行き着くカードゲームが『FaB』と言われています。その流れがまず発生したのがアメリカでした。

安田
世界のカードゲーム市場を見ると、もっとも大きいのはアメリカ、日本は2番になります。アメリカの方で先にヒットしたので、おそらくそこが成長率6000倍の起爆剤なのだとと思います。
――まさにさっき話に出た、挑戦心というか「強いところから倒しに行く」みたいなのが、ニュージーランドの攻め方だなと感じました。日本の市場は『ポケモンカードゲーム』(ポケカ)と『遊戯王』だらけなのに、そこに入り込もうとはなかなか考えられないと思うんですけど、やっぱりそこもCEOの挑戦なのでしょうか?
安田
そうですね。CEOのジェームスは「トレーディングカードゲームと言えば日本でしょ」と思い入れが強くて「日本で成功することが本当の意味での成功なんだ」と言っています。彼自身、ニュージーランドで『遊戯王』のディストリビューター(卸売業者、代理店)をやっていたんですよ。自身でイベントを開催するレベルで。日本には莫大な金額を投資していますし、彼と私たちにとっては大きな挑戦ですね。
――その考え方が各種産業の発展につながっているわけですね。自然が多くて、一次産業からテクノロジーの企業になり、ゲーム産業が活発になっているあたり、日本とも似ているような気がして、ニュージーランドにはシンパシーを感じます。本日はありがとうございました。


「カードパック持ちましょうよ」「どれ持つ?」とわいわいする一幕もありました。