2016年6月14日に配信されるや“非対称の対戦マルチプレイヤーゲーム”として世界中から絶大な支持を集めた『Dead by Daylight』(デッド・バイ・デイライト)が2026年で10周年を迎えた。 『Dead by Daylight』の10周年に合わせてファミ通.comではクリエイターにインタビューを実施。ここでは、『Dead by Daylight』にてプリンシパル・ゲームデザイナーを務めるジャニック・ヌヴー氏にお話をうかがった。

ジャニック・ヌヴー 氏
『Dead by Daylight』プリンシパル・ゲームデザイナー
2011年Behaviour Interactiveに入社。2016年後半から『Dead by Daylight』チームに加わり、以後現在までDLCパッケージの制作に携わる。『Deady by Daylight』のクリエイティブチームから出されたアイデアに基づいて、キラー(殺人鬼)のパワーやそのアビリティを形づくる役割を担当。幼いころから大のホラーファンである知見を活かし、オリジナルのコンセプトから、著名な外部ホラータイトルを基にしたものまで、幅広いキャラクターを同作品の世界へと送り出している。
新しいキラーを作るときは、毎回新鮮で目新しいものにすることを考えなければならない
――ジャニックさんは『Dead by Daylight』のプリンシパル・ゲームデザイナーということですが、まずは具体的に何をされているのかを教えてください。
ジャニック
僕の仕事は、キラーのコンセプトを聞いて、それをゲームに組み込むためのゲームメカニクスを開発することです。つまり、そのキラーがゲーム内でどう機能するのかを、基本的にゼロから作り上げる、という感じですね。
だから僕は、どんなタイプのキャラクターになるかを決めるわけではありません。たとえばライセンスものだったり、あるいはチーム――クリエイティブ側――が、大きな斧を持った別種のホラーキャラクターが欲しい、という要望に応えたりとか、とにかく彼らがコンセプトとして欲しがるものは何であれ、僕はそれを軸にして作り込んでいきます。
――『Dead by Daylight』の世界の中ではルールがあると思いますが、必ずしもつねにそのルールに従うわけでもなく、いわば既成概念にとらわれずに考えなければならない部分もあるのではないかと思います。その点について教えていただけますか?
ジャニック
根本的には、『Dead by Daylight』とは何かという土台を尊重しなければなりません。ベースとなるゲームを壊すことはできない。それは重要な核となるルールです。でも、それ以外はいわば何でもありなんです。考えかたは開かれていて、それこそ、新しいことや新しいアイデアとして何ができるのかを探っていきます。
いちばん難しいのは、すでに存在するシステム――たとえば飛び道具や罠――をベースにしながら、新しいアイデアを生み出していくことです。新しいキラーを作るときは、毎回それを新鮮で目新しいものにすることを考えなければならない。それがつねに大きな挑戦ですね。
――10周年記念キラーのジェイソンはマチェットと、それに加えて、投げ棒を使って人を串刺しにしますよね? このアクションはゲームとしてはいままでにないものですが、すぐに採用が決まるのですか?
ジャニック
はい。まさにそうです。アイデアを考え始めるとき、ライセンサー――IPホルダーと組むときですが――彼らには考えがあって、僕たちは自分たちが探求したい方向性やアイデアを伝えます。そして彼らがそれでよくて、とくに問題がなければ、そのまま進めていく、という感じです。

――ゲームとしても新しいものを実現するために開発チームとは話し合うものですか?
ジャニック
それは場合によりますね。イエスでもありノーでもある。それが、キャラクターの見た目や印象に影響する場合は、彼らに伝えなければならないと思います。たとえば、まったく新しいエフェクト、火とか酸とか、プレイヤーや見た目に影響するものの場合は、チームに伝えることが重要です。でも、こういうたぐいのもの、とくに今回のケースでいう投げ棒については、さほど問題がありませんでした。僕たちがそれを投げる、というアクションを考えていることは知っていたけれど、ダメージや押し戻しといった効果については、実現が難しいことではありませんでした。
――ジャニックさんが決めることはどこまでになりますか? キラーの能力から、パーク(perk)の能力まで決めるのでしょうか?
ジャニック
まず、プロトタイプの段階があります。IPホルダーがいる場合でも、オリジナルの場合でも、僕たちはピッチ(提案)から始めて、全員が合意したらプロトタイピングを始めます。これがだいたい、2、3ヵ月くらい続きます。そしてプロトタイプが完成すると、本格的にキラーの制作に入ります。僕が決めるのは能力だけで、パークはほかのチームが考えます。
――プロトタイプの制作は順調に行くものなのでしょうか? 長く時間がかかったりするものもありますか?
ジャニック
場合によります。プロトタイプによってはほかよりうまくいくものもあります。たいていプロトタイプの終わりごろにはいいところまで見えていて、コンセプトの80〜90%くらいは確立できています。そしてそれが重要なのは、これを使って、すべてのアーティスト、アニメーター、VFX、サウンドの担当者に、実装に向けて何を準備すべきかを伝えるからです。だから、もしそこを間違えると、大きな影響が出てしまうんです。
プロトタイプを通して、リード(責任者)たちに現在の方向性を伝えなければなりません。たとえば何か大きな変更があったとか、新しいアイデアが出てきて実装したいとか。そこでは、リードやライセンサーとの、いわば行ったり来たりのやりとりが行われます。僕はアイデアを提案し、引っ張っていく立場ですが、最終的にはそれらはやはりライセンサーと、リードのクリエイティブチームによって承認される必要があります。
――新しいキラーはつねに登場し続けます。彼らのために新しいパワーや新しい動きを考え続けるのは難しいのではないですか?
ジャニック
はい(笑)。間違いなく。数が増えれば増えるほど複雑になって、それぞれを唯一無二に感じさせるのは難しくなります。でも、クリエイティブチームが新しいコンセプトのキャラクターを持ってくるのが上手で、いわば僕たちを新鮮な方向へ導いてくれるんです。
――10周年で、ジェイソンを『Dead by Daylight』に迎えますが、それがどのように始まったのか、詳しく教えていただけますか? 彼の能力のアイデアがどう生まれたのかについて。
ジャニック
社内では、チームで、このキラーについて何年も議論してきました。このキャラクターをゲームに入れたらどうなるか、彼が何をするのか、といったことをですね。

――ジェイソンの能力を考えたのはジャニックさんなのですか?
ジャニック
ええと、ある意味では、はい。ちょっと、もしかしたらおもしろい話かもしれませんが――もともと、ジェイソンが何をするか、何ができるかを話していたとき、何年も前ですが、複数のパワーを持つキャラクターにしたかったんです。それでけっきょく、僕たちは……その考えていたものを、リッチに使うことにしたんです。
リッチの後で、ジェイソンを『Dead by Daylight』に迎えることが決まり、僕たちはジェイソンについて改めて考えたんです。複数の効果を持つパワー、というアイデアを依然として頭に残したままで。ただ、何というか、それを実現するために、別のやりかたで考えよう、という感じでした。
でも、ジェイソンについて考え始めたとき、最初のプロトタイプでは、リッチに似たものがありました。飛び道具を使えたり、罠を使えたり、テレポートを使えたり。でも、それはあまりに似ていて、しかも複雑に感じられたので、代わりにそれらをもっとうまく統合する方法を考えたんです。

2024年6月にリリースされた『Dead by Daylight:ダンジョンズ&ドラゴンズ』のキラー、リッチ - ヴェクナ。
――なんとなくリッチが強い理由がわかりました(笑)。
ジャニック
おもしろい話なのですが、もともとシニア・クリエイティブ・ディレクターはリッチに10個の呪文(スペル)を持たせたいと言っていたんです(笑)。プロトタイプでは6個まで持っていて、僕たちは「もう十分、十分だ」と言いました。
でも、ジェイソンについては、飛び道具――というのも、もともと彼はハントレスに近かったのですが、あるときデザイナーのひとりが、「フック(鉤)を取り出してサバイバーに撃ち込めたらおもしろいんじゃないか」と言ったんです。みんなで笑って、そしてすぐに真顔になり、「おお、もしかしたらこれはいいかも」と思ったんです。だから冗談から始まったんですよ。
――ジェイソンもそうですが、ライセンスと結びついている新しいキラーを考えるとき、どのくらい原作を土台にしてアイデアを組み立てるのですか?
ジャニック
それはとても重要なことだと思います。個人的に、ライセンスものに取り組むときは、プレイヤーが、映画やライセンス、つまり自分が知っているそのキャラクターを操っていると感じられるようにしたい。その能力が、映画の中で彼が起こす効果から来るものとして、『Dead by Daylight』内でメカニクス的に説明される、というふうに。そうすれば、プレイヤーが知っているものと釣り合いの取れたものに感じられるんです。

――そこにいるおふたりはKADOKAWAの貞子チームの人たちです(※インタビューに同席していた)。『リング』の貞子はご存じですよね?
ジャニック
もちろんです。1998年のファンタジア映画祭で、カナダで初めて上映されたときに観ました。いちばん最初に怖がった作品でした。すごくオタクっぽいけど、大好きなんです(笑)。
――もちろん、そのときは、彼女を『Dead by Daylight』に加えることなど考えてもいなかったと思いますが……。
ジャニック
(笑)。ええ、まったく。
――では、貞子をキラーとして加えるにあたって、もともとのアイデアはどんなものだったのですか?
ジャニック
じつは僕はこのキャラクターには関わっていないんです。それはとても残念でしたが。でも、覚えているのは――呪いと、ループの中にVHS(ビデオテープ)を盛り込むことが重要だった、ということです。それは、プレイヤーが彼女と対峙したときに、ある種の絶望的な状況に置かれている、と感じられるようにするためのものでした。
――貞子がキラーのとき、サバイバーに付く呪いのゲージに、7つの段階があるのが、すばらしいアイデアだと思いました。
ジャニック
ええ、ええ。原作では呪われると7日間で死にますからね。
――これはちょっと限定的な話なのですが、聞かせてください。『Halloween』のマイケル・マイヤーズ、キラーのザ・シェイプについてです。彼の能力の多くがリワークによって刷新されましたが、昔のもののほうが好きだという人もいます。ジャニックさんはどうですか? どちらのほうが好みですか?
ジャニック
うーん、いい質問ですね。これはあくまで僕個人の意見ですが、昔のものにノスタルジー(郷愁)を感じることはありますよね。チームを困った立場に置きたくはないのですが……新しい攻撃は、このキャラクターのテーマに合っていないのかもしれません。
僕は新しいキラーのコンセプト制作に取り組むのが役割ですが、それらのキラーをアップデートする担当は別にいます。僕は彼らにフィードバックを伝えられるし、彼らも僕に助言を求めますが、僕には彼らがやることについて決定する権限はまったくないんです。
――とはいえリワーク後のザ・シェイプは強いですよね(笑)。
ジャニック
はい、それはそう思います(笑)。
――私はトラッパーの大ファンなんですが……ひとつお願いをさせてください。どうか彼をもう少しだけ強くしてもらえませんか?
ジャニック
彼は、どうだろう、どこまで言っていいかわかりませんが、いずれ、近いうちにアップデートが予定されています。それは話には上がっているんです。
――では、彼は強くなるのですか!?
ジャニック
そうだといいですね。僕が思うに、くり返し個人的な意見ですが、このキラーに何をするにしても、彼の罠の設置のプロセスをもっと簡単で速くして、マッチを通してもっとスムーズにする必要があると思います。
――ええ、まさに! 罠を設置するのって、時間がかかりすぎるんですよ。
ジャニック
わかります、わかります。
――どうもありがとうございました!