週刊ファミ通編集部は、創刊40周年企画の一環として、レベルファイブの日野晃博社長にインタビューを実施。本記事では、その中から2026年6月9日に配信開始されたスマートフォン向けタイトル『イナズマイレブン クロス』と、2026年6月11日に発売された『イナズマイレブン 英雄たちのヴィクトリーロード Nintendo Switch 2 Edition』のパッケージ版に関する内容を先行公開する。 なお、インタビュー全文は週刊ファミ通2026年7月9日増刊号(2026年6月25日発売)に掲載。レベルファイブの現在と未来、そしてオンラインイベント“LEVEL5 VISION 2026 匠”で発表されたタイトルについてもお話をうかがったので、ぜひチェックしてほしい。
日野晃博(ひの あきひろ)
レベルファイブ 代表取締役社長/CEO(文中は日野)
『イナズマイレブン クロス』はおもしろくも、ぶっ飛んだ作品
──『イナズマイレブン クロス』(以下、『イナイレクロス』)は、主人公・汐沢 陽が監督の立場からチームを導いていくという内容になっています。監督が主人公というのは、『イナズマイレブン 英雄たちのヴィクトリーロード』(以下、『イナズマV』)の流れを汲むものなのでしょうか?
日野
じつは『イナズマV』とは関連がないんです。『イナイレクロス』はスマートフォン向けのタイトルで、そこまで細かいアクション操作はできないので、選手やチームを育てることに集中するゲームにしています。となると、役割は監督が自然なのかなと。監督の主人公が続くのはどうなんだろうとは思いましたが、また違ったキャラクター性で監督を楽しんでもらえるはずです。
──『イナイレクロス』はいわゆるパラレルワールドの設定なのでしょうか?
日野
そうですね。パラレルワールドがテーマになっていて、おもしろくも、ぶっ飛んだ内容になっています。シリーズのいろいろなキャラクターたちが歪んだ次元からやって来て、目の前にいるのは皆さんがよく知る吹雪士郎でも基山ヒロトでもありません。それを正していくというわけです。
──なるほど! それで豪炎寺や鬼道もあんな感じなのですね(笑)。最初に『イナイレクロス』の映像を観たときは衝撃でした。これ、どういうことなの!? と。

日野
彼らをもとに戻していくことになるのですが、その変わる前の状態がだいぶぶっ飛んでいるんです(笑)。きっと『イナズマイレブン』シリーズのファンの方はめちゃくちゃ楽しんでもらえると思うのですが、このぶっとび具合を楽しむためにはシリーズの知識が必要なところではあるので、新しく触れる人の印象がどうなるのかというのはちょっと気になっているところです。
──キャラクターがまったくの別人格になるような感じですか?
日野
いえ、もっと過激ですね。「こんなことしていいの?」というレベルです。
──『イナズマイレブン』のファンだったら、これぐらいしても大丈夫だよねと振り切ったと。
日野
ファンの方によろこんでもらえるのは確実なんじゃないかと思ってはいるのですが、とにかく過激なんです。『イナズマV』と同じようなことをしてもおもしろくないですし、また違うエンターテインメントとして楽しんでいただこうと。
──『イナズマイレブン』シリーズが好きな人たちは、皆さんそれぞれ思い入れがあると思うので、反応が楽しみですね。
日野
まさに、その思い入れがある人たちこそ楽しめると思っています。何より、僕たち自身が楽しんで作っていて、こんなことが起こったらおもしろいよね、ぶっ飛ぶよね、みたいなものをたくさん用意しています。ぜひ遊んでみてください。
『イナズマV』は会社の力をすべてつぎ込んだ
──『イナズマV』は2025年11月14日に発売されましたが、このたび2026年6月11日にNintendo Switch 2 Editionのパッケージ版が発売となりました。改めてこのタイミングで『イナズマV』についてお聞かせください。まずは何より、しっかりとファンに届けられたことについてはいかがでしょうか?
日野
この表現が正しいのかわかりませんが、ようやくトンネルから抜け出せた感じです。『イナズマイレブン』が大好きな人たちを本当に長いあいだお待たせしてしまったので、その責任は強く感じていました。この作品を完成させるために、会社の力をすべてつぎ込んだと言っても過言ではないです。
──発売後の反響としては、やはりストーリーの評価がとても高かったように思います。
日野
「感動した!!」と多くの人に言ってもらえて、うれしかったですね。作った甲斐があったなと。

──『イナズマV』のストーリーを作り上げるうえで、いまの若い世代はもちろんのこと、当時のファンにも響くものを作るのはとても難しかったのではないかと思います。そのあたりはいかがでしょうか?
日野
小学生のころに『イナズマイレブン』に触れた世代が大人になり、そんな彼らが見ても“感じるもの”を届けないといけない。ですから、単なる子ども向けではなくて、大人目線でのドラマも必要だと思っていました。当時夢中になってくれた人も、その評価というのはあくまで小学生の目線であって、彼らが10年、15年、20年と歳を重ねていまの『イナズマイレブン』を見たとき、同じような感情しか生まれなかったら、きっと「幼稚だな」と思われてしまう。とは言っても、大人目線を意識しすぎると子どもにはチープに見えてしまうだろうし、『イナズマイレブン』でもなくなってしまう。大人のドラマと青春熱血、そのバランスはとても難しかったですね。
──その絶妙なバランスは、『メガトン級ムサシW(ワイアード)』(以下、『ムサシ』)のリリースが途中にあったのがよかったような気もします。大人っぽさとファンタジーのバランスと言いますか。
日野
それはそうかもしれないですね。『ムサシ』は心のリハビリでした(笑)。お客さんと向き合うというのはどういうことなんだろうと、『ムサシ』の開発を進めながら答えを探していたんです。売上が大きく期待できるからがんばるのではなく、期待して待ってくれている人がひとりでもいるのなら全力を尽くす、そうならないとダメなんだと。当時、YouTubeでレベルファイブの作品についていろいろなことを発信してくれる人たちがいたのですが、その子らのために作っていると言っても過言ではなかったですね。これこそがエンターテインメントの基本で、誰かのために作らないといいものにはならない、僕はそう思っているんです。
──改めて気付かされたと。
日野
忘れていたわけではないのですが、もっともっとイメージしないとダメなんだということですね。思い起こせば、“お母さんが遊べるゲームを作ろう”と言って企画したのが『レイトン』でしたし、誰かをイメージして作ったものはやっぱりヒットするんです。『ムサシ』では、待ってくれている人たちをイメージして、どういうことをすればよろこんでもらえるか、感動してもらえるかをとことん考え抜く、ということを実践していきました。リリース後にそれをポジティブに受け取ってくれている姿を見て、これなら『イナズマV』も作れるなと……。
──ものすごく手応えがあったわけですね。
日野
そうですね。『イナズマV』はプロジェクトが紆余曲折あったので、長いこと作っていたイメージがあるかと思うのですが、純粋な開発期間はそれほどでもないんです。それはやはり、『イナズマV』にとっての“誰か”が明確にあったからです。
──その“誰か”に対して、「期待に応えなくては」というプレッシャーはありませんでしたか?
日野
プレッシャーはなかったわけではないのですが、ある時期からは“自分が納得できるものが作れていない”という焦りのほうが大きかったです。仮にお客さんが納得できるものであったとしても、それではダメなんだと。自分で認められるものをちゃんと作っていく、というのが第一でしたね。
──それがいまのレベルファイブ全体の方針でもあり、2026年以降のタイトルラインアップにもつながっていくわけですね。
日野
はい。会社のスタッフにとっても、『ファンタジーライフi』や『イナズマV』のマスターアップを通して、自分たちが納得いく形でリリースしたものが感動を与えたり、評価されるというのは重要な体験でした。うちの若いスタッフはこういう成功体験があまりなかったので、つぎのタイトルの開発に入るうえで影響はかなり大きいと思います。
──『イナズマV』でファン層も拡大していますよね。主人公の笹波雲明もものすごい人気です。
日野
雲明は、プロット段階の社内意見では、プレイヤーに“好きになってもらえるかを不安視されていたキャラクター”だったんです。
──そうだったのですか?
日野
僕は最終的なイメージが頭にあったので安心していましたが、スタッフは全貌がわからず、(プレイヤーに)嫌われる可能性があると心配していました。

──主人公でありながらサッカーができないという境遇は新しいですよね。監督どうしの頭脳対決という構図は最初から決めていたのでしょうか?
日野
そうですね。初期プロットでは監督ではなくマネージャーだったのですが、やっていることが監督そのものなので、ストーリー的に監督と呼ぶようにしました。今回は、華やかな舞台でスポットライトを浴びる人ではなく、陰で支える人が本当にすごいというドラマを描いています。でも、最終的には雲明も表舞台に出てきてしまうので、そのコンセプトは薄れてしまったんですけど(笑)。
──今回は主人公が監督ということで、“監督AIモード”という新要素も綺麗に連動していますよね。
日野
じつは、監督AIモードは事前の計画にあったものではないんです。監督を主人公にしたストーリーはだいぶ前からできていたのですが、開発の終盤に「こういうのもやれないか」と侃侃諤諤(かんかんがくがく)とやって、なかば強引に入れ込んだ要素のひとつが監督AIモードなんです。
──てっきり、監督らしさを演出する仕組みとして入れたものだとばかり……。
日野
テストプレイをしていく中で、『イナズマV』の試合は難しいと感じる人もいるかもしれないね、という話になり、せめて一度勝利した相手に対してはオートで戦えるようにしましょうと。
──でも、敵チームの強さを実際に体感できるというのは、ゲームならではとも思います。
日野
強さを表現するための最終戦のシーソーゲームは、アツいながらもユーザーを戸惑わせたようです。負けイベント的に点を取られるときと、自分のプレイのせいで点を取られる区別がわかりづらく……(笑)。
──RPGの負けイベントのように、演出的に負けるのかと思いきや、そのままゲームオーバーになってしまうという(笑)。
日野
その最終盤のバトルについては、どうしても難しいという場合はべつの選択肢を試してほしいですね。
──最後に、だいぶ気が早いのですが次回作についてはいかがでしょうか?
日野
すでに制作に入っている部分はありますが、いまは『イナズマV』のアップデートに注力する感じですね。最新のアップデートは『新たなるキックオフDLC』というタイトルです。これまでに寄せられているゲームシステムに関する細かい不満はほぼ解消していると思いますし、Nintendo Switch 2 Editionのパッケージ版発売やこのDLCを機に新しいお客さんにも遊んでいただきたいと思っています。