2016年6月14日に配信されるや“非対称の対戦マルチプレイヤーゲーム”として世界中から絶大な支持を集めた『Dead by Daylight』(デッド・バイ・デイライト/DbD)が2026年で10周年を迎えた。 開発元であるBehaviour Interactiveは、10周年を記念して世界中から数千人のファンを迎えてのスペシャルイベントを実施、記念配信などを行い、ジェイソンが登場してのチャプターの詳細や『SILENT HILL f』、『ディアブロ』とのコラボなど、注目の新情報を続々と明らかにした。
『Dead by Daylight』の10周年に合わせてファミ通.comではクリエイターにインタビューする機会を得た。ここでは、『Dead by Daylight』の顔とも言うべきマシュー・コート氏と、シニア・クリエイティブ・ディレクターのデイブ・リチャード氏へのインタビューの模様をお届けする。

Mathieu Côté 氏(マシュー・コート/写真左)
Behaviour Interactiveパートナーシップ責任者
2011年にBehaviour Interactiveに入社し、受託開発タイトルを中心に、外部スタジオ向けのゲーム制作に携わる。その後、ごく小規模なチームで『Dead by Daylight』の立ち上げを任される。Behaviour Interactiveのパートナーシップ責任者として、これまでに数々の著名なキャラクターおよびフランチャイズとのコラボレーションを主導。
Dave Richard 氏(デイブ・リチャード/写真右)
『Dead by Daylight』シニア・クリエイティブ・ディレクター。
『Dead by Daylight』では構想段階から開発に深く関わり、現在の世界的ヒットホラーゲームへと成長するまで、あらゆるフェーズにおいて中心的な役割を果たしてきた。現在は、『Dead by Daylight』におけるコンテンツ制作全体を統括する。
ジェイソンとのコラボには、大いなるオマージュが込められている
――まずは10周年おめでとうございます! プレイヤーたちも、これほど長いあいだずっと自分の好きなゲームを遊び続けてこられたことを心からうれしく思っているのではないでしょうか。おふたりにとって『Dead by Daylight』を10年間続けてこられたということはどんな意味を持つのでしょうか?
マシュー
まず、ずっとこのゲームを遊んでくれてありがとう! コミュニティーの一員でいてくれて、本当にありがとう。それが何よりすばらしいことです。僕たちにとって、少なくとも僕にとっては、自分が心から愛するゲームに、これだけの年月、すばらしい仲間たちといっしょに取り組み続けられることを、信じられないほど幸運で恵まれていると感じています。これは唯一無二のことで、本当に感謝しています。
――10年前に『Dead by Daylight』を始めたとき、今日この地点にたどり着くことは想像していましたか?
デイブ
まったく想像していませんでした。計画していたことではないんです。僕たちの夢ですらなかった。たくさん夢は見ていたけれど、そこまで大きな夢ではなかった。最初は30人のチームでした。それがいまや450人の規模になっています。信じられないことです。
――では、10年前は自分たちが何年続けられると思っていましたか?
デイブ
当初は古い業界のモデルを想定していました。ゲームを1本リリースして、そのあといくつかのDLC(ダウンロードコンテンツ)を出す。3本、4本、5本くらいDLCを出して、それでひと区切り、という感じです。だから、1年、もしかしたら2年くらいかな?
マシュー
知っておいてほしい大事なことは、僕たちはこれをライブサービス型のゲームとしてリリースしたわけではない、ということです。アーリーアクセスとか、そういう形ですらなかった。ただ1本のゲームとしてリリースして、それで完成。もうつぎに進む準備ができていた。提供できた内容に満足していました。アイデアはあったし、続けることもできたけれど、それは本当に最初からの計画ではなかったんです。
――10周年に合わせてついにジェイソンが『Dead by Daylight』にやってきますね。最初期からゲームにいて象徴的な存在であるトラッパーはもともとジェイソンから着想を得ていたのではないかと思うのですがいかがですか?
デイブ
そうですね、トラッパーはあの象徴的なキャラクターから少し着想を得ています。彼だけではないけれど。ジェイソンを思い浮かべるのは、彼が原型、つまりもっとも広く知られたスラッシャーだからです。トラッパーは、いろいろなスラッシャーをひとまとめにして、僕たち自身のオリジナルキャラクターに落とし込んだような存在でした。
だから、ついにジェイソンが『Dead by Daylight』にやってくる――本当にごく初期のころから、彼は僕たちの世界に居場所を持つにふさわしいと感じていたので――それは最高の気分です。それに尽きます。

――ひとつ確認させてください。これはジェイソンという存在とのコラボなのか、それとも『13日の金曜日』シリーズとのコラボなのでしょうか?
マシュー
ジェイソンです。このライセンスは複雑なものなんです。今回我々が達成できたのは、ジェイソンがこの世界にやってくる、ということ。そして僕たちにとってすばらしい機会なのは、彼を迎え入れて、ほかのどこにも存在しない『Dead by Daylight』ならではの独自バージョンの彼を作り上げられる、という点です。
――ファンとしては伝説的な場所、クリスタル・レイクがマップとして出るのかを期待していると思います!
デイブ
いまのところはありません。ファンとして、その気持ちはよくわかりますよ。僕自身、本当に、本当にそれを実現したかった。もしかしたら、いずれは……。わからないですけどね。
マシュー
そういうことです。「絶対にない」とは言わない、ですよね?
――私のようにトラッパーを愛用しているユーザーも多くいます。ジェイソンと比べて、どうやってふたりを見分ければいいでしょう?
マシュー
ふたりはとても、とても違いますよ。共通する要素はありますが、まさにその理由から、ジェイソンについてはまったく別のところに焦点を当てることにしました。なぜなら、新しいキラーを登場させるたびに、ゲームに何か新しいものをもたらすゲームプレイを持ち込む必要があるからです。
デイブ
ジェイソンに対してごく初期に抱いていたアイデアの柱のひとつは、彼がマップ上にあるもの、いる場所の周りにあるあらゆる種類の物を使って、いかに創意工夫してサバイバーを殺すか、ということでした。だからごく早い段階から、彼にもベアトラップ、ハチェット、銛(もり)を持たせたいと思っていました。つまり、ほかのキラーがすでに使っているようなアイテムを、新しいやりかたで使わせたかった。それは実際にジェイソンを手にするよりずっと前の、ごく初期の構想でした。そして10年が経ち、僕たちはチームとして、スラッシャーであるジェイソンをどうすればもっと独自の存在にできるかを改めて考え直し、別の方向に進むことに決めたんです。
つまりジェイソンは、彼が人を驚かせる――ジャンプスケア――という点がすべてなんです。彼はあるモードに入ることができて、そこでは姿を消し、霧の中に入り込み、ものすごい速さで動き回って、パッと飛び出してくる。これは映画で見られる姿を反映しています。彼はつねに歩いているのに、いつも角の向こうにいる。まるでテレポートしているかのように。
――スキルの名前を見たときジャンプスケアという言葉があって、これはきっとジェイソンへの敬意を込めたオマージュなんだろうなと思いました。
デイブ
まさにその通りです。彼が出入り口を突き破ってきたり、角にぱっと現れたり、誰かを窓から放り込んでそのあと自分も突っ込んでくる、そういう場面を僕たちは目にしますよね。そういうたぐいの出来事を、窓枠の乗り越えや板(パレット)、そのほかマッチ中のさまざまな物を通して再現したんです。
――テストビルドでは、彼はものすごく強いですね。
マシュー
彼はとても強くある必要があります! そうですよね? つまり……いちばん大事なのは、彼を相手に戦うのが楽しいことです。そして、彼は怖くなければならない。それが重要なんです。

『Dead by Daylight』は永遠に続くもの。つぎの10年を見据えて
――さて、今回は10周年で、これからの1年、周年に向けたいろいろな取り組みが発表されました。でもプレイヤーとして、まだこの先にもっとサプライズや発表があるかもしれない、と考えてもいいでしょうか?
マシュー
はい。そして今年の残りについても、もちろん、いくつかのサプライズはポケットに忍ばせてありますよ。
――今回は10周年ということで『Dead by Daylight』の未来についてお聞きしたいです。具体的に、この後、どれくらい先まで計画を立てているのでしょうか?
デイブ
僕たちはいま、ゲームの見た目やツールを刷新するという大きな取り組みの最中にあります。これは少なくとももう10年を見据えての計画です。だから、10年というこの節目に立ったいま、僕たちの頭の中では、少なくとももうつぎの10年に向かって進んでいます。
マシュー
僕の心の中では『Dead by Daylight』は永遠に続くものです。わかりますか? 死は逃げ道ではない(Death is not an escape ※作中の標語)。でも、もっと具体的に言うなら、そうですね、つぎのリリースのカレンダーや、これから何を出していくかを見ると、いまのところはおそらく2028年くらいまでは見えています。


――マシューさん、あなたは過去に何度もこう言ってきました。「『Dead by Daylight』の続編をリリースする予定はない」と。この言葉はいまでも変わりがありませんか?
マシュー
100パーセントそうです。僕たちがいま取り組んでいるのは、要するに、新しく改良された『Dead by Daylight』です。別の製品を作るつもりはありません。この新しいゲームに、すべてのプレイヤーをいっしょに連れていきたいんです。だからみんなが途切れることなく体験を楽しみ続けられて、これまで何年もかけて買ってきたものをすべて持ち越せて、まったく新しいバージョンの『Dead by Daylight』でそのまま遊び続けられる。
いまでも毎日、たくさんの新しいプレイヤーがやってきます。『2』を作る価値はないんです。「『Dead by Daylight 1』をプレイすべき? それとも『Dead by Daylight 2』を?」なんて問いをプレイヤーに抱かせたくない。そんな問いは決して生まれません。これはひとつの大きな大家族なんです。みんなが同じものをプレイすべきです。
――『Dead by Daylight』の開発チームは約450人が携わっているということですが、開発チームはいまどのように分けているのですか?
デイブ
この大家族の中には、当然ながら、実際にみんながプレイするゲームを作るプロダクション部門があります。でも、それを支えるほかのあらゆる部門もあるんです。マーケティング、PR、ブランド担当、コミュニティーを扱うチームすべて、プレイヤーデータ、それからもちろんQA。そしてプロダクションの中には、たとえばキラーを担当するサブチームがあります。だからチャプターがあって――いつでもつねに3つのチャプターを、それぞれ別のチームで進めています。それからイベントにはイベント専用のチームがつくし、モードにもそれぞれ専用のチームがつきます。つまりアーティスト、サウンドデザイナー、デザイナー、プログラマー、エンジニアまで揃った、フルメンバーのクルーですね。
マシュー
それと、これは会社の文化の問題なのか、会社の育ちかたの問題なのかもしれませんが、僕たちはプログラミングをする人と、ブランドやプレイヤーデータを担当する人とを、あまり大きく区別しません。みんながいっしょに座って、みんながいわばいっしょに働いている。すべてが同じひとつの集合体の一部なんです。
――ここまで大きな組織だと、これだけは守りたい、保ち続けたい、というように決まっていることはありますか?
デイブ
もちろんあります。当初、僕たちはこの『Dead by Daylight』を、本当に小さなチームで、どちらかというとインディーゲームスタジオのような雰囲気で、とても有機的な形で始めた、ということです。誰もがゲームの創作に対して発言権を持っていた。そして今日でも、この規模になっても、ディレクターとして僕たちは扉を開け放っていて、チームの全員からアイデアやフィードバックを取り入れています。
マシュー
僕が言いたいのは、僕たちが大切にし続けようとしている価値観についてです。ごく早い段階から確立した、コミュニティと交わす対話のトーンのひとつに、尊重、そしてゲームの中での包摂(インクルージョン)と表現(レプリゼンテーション)がありました。これはつねにとても重要なものでした。そして成長するにつれて、もちろんそれを実践する中で本当にたくさんのことを学んできましたが、それが僕たちにとって重要であることは一度も変わっていないし、これからも変わることはありません。
――すばらしいですね。ところで私たちはKADOKAWAの一員ですが、貞子のコラボレーションをとても誇りに思っています。そして、おそらくご存じかと思いますが、『リング』貞子の生みの親である鈴木光司氏が先日亡くなりました。貞子は、日本のホラージャンルを代表するキャラクターです。おふたりにとって、彼女が『Dead by Daylight』に登場していることは、どんな意味を持ちますか?
デイブ
彼女はまさに伝説です。日本でどれくらいの人が認識しているかわかりませんが、貞子は北米でも古典的な存在なんです。フレディやジェイソンといったキャラクターに匹敵するほど伝説的な、誰もが知る、認知されたキャラクターです。だから、このキャラクターが『Dead by Daylight』に加わるのはすばらしいことだし、彼女はものすごく怖い。間違いなく、信じられないほどの名誉です。

――おふたりは『リング』の映画をご覧になっているかと思います。そこでお聞きしたいのですが、おふたりにとって、貞子のいちばん怖いところはどこですか?
デイブ
僕が最初に見た『リング』はアメリカ版です。オリジナル版はその後で見ました。僕にとっていちばん怖いのは……あれがウイルスである、という点です。つまり、自分が助かるために、誰かを呪いに生け贄として差し出して、ひとつの命を費やさなければならない。その道徳的なジレンマこそが、僕にとっていちばん怖い部分です。
マシュー
それと、僕がホラー映画で何より好きなのは、ホラーだけでなく、物語からもうひとつ別の核となる感情が立ち上ってくるときです。貞子には共感があります。とりわけ父親として、彼女に対する共感、そして彼女をこの邪悪な霊にしてしまった、彼女が経てきたすべてのことに対する共感がある。それもまた、この映画の唯一無二で興味深いところです。
――最後の質問です。10年間ともに歩んでくれたプレイヤーたちに伝えたい言葉はありますか?
デイブ
ええ、もちろん! みなさん全員が僕たちのゲームを遊んで、この世界を築き上げることに参加してくれていることに、心から感謝しています。なぜなら、僕たちはこのコミュニティーを『Dead by Daylight』という家族の一員だと考えているからです。ゲーム開発者として、クリエイターとして、これは唯一無二の、人生を変えるような経験です。そして僕たちは、みなさんの誰ひとりとして、何かと引き換えにするつもりはありません。
マシュー
プレイヤーの皆さんだけでもないんです。『Dead by Daylight』にインスパイアされた人すべて、コンテンツクリエイターをフォローして、僕たちのゲームにまつわるコンテンツをもっと作るよう後押しする人すべて。ファンフィクションを書いたり、ファンアートを描いたりする人、コスプレをする人。彼らはみんな、僕たちのインスピレーションの一部であり、この世界の一部であるだけでなく、アンバサダーでもあるんです。そのことに、僕たちはとても感謝しています。みなさんのおかげで、私たちの人生は大きく変わりました。