今回は、米・ロサンゼルスにあるThat's No Moonのスタジオにて行われたタイトル説明会の内容をお届けする。
また、チーフ・クリエイティブ・オフィサーであるテイラー・クロサキ氏と、ゲームディレクターのジェイコブ・ミンコフ氏のふたりにインタビューを敢行。本作の開発経緯や、会場でデモプレイを見て記者が気になった点について訊いた。

自分たちが思い描く理想のゲームを目指して設立
最初から“自分たちが思い描く理想のゲームを作る”という目的のために立ち上がったスタジオだからこそ、国内外から最適な人材を厳選してチームを編成することができたのだとクロサキ氏は語る。クロサキ氏とミンコフ氏は、前職を含めて18年以上にわたりともにクリエイティブなパートナーシップを築いており、今回発表された『Crossfire』はその集大成となる。
スタジオが重視しているのは、キャラクター主導のシングルプレイ型のストーリーゲームであること。過去のプロジェクトの経験から、物語とゲームデザインがシームレスに融合することを目指して開発されたという。
Unreal Engine 5(UE5)をはじめとする最先端のテクノロジーを駆使しているが、単にグラフィックの美しさを目指すためだけではない。プレイヤーをその世界に没入させ、キャラクターの微細な表情やニュアンスを表現することで、より洗練された物語体験を提供するためである。


単なる二元論ではないストーリー
物語はふたりのキャラクターを中心に展開する。
- レイラ:プレイヤーが操作する主人公。 進歩や変革、革命を信じる革命家・傭兵。
- クロス:レイラと行動を共にするノンプレイヤーキャラクター。 現状維持や安定を重んじる。
タイプの異なるふたりであるが、過酷な状況下で生き残るために協力せざるを得ない強いプレッシャーに直面することで、徐々に互いへの理解を深めていく絆が描かれるという。
従来の箱型カバーシステムからの脱却
たとえば、従来のゲームでは、プレイヤーがエリアに入った瞬間ちょうどいい高さの箱や柱……いわゆるカバーポイントが不自然に配置されているのがひと目でわかってしまった。 これではプレイヤーに「これからここで戦闘が始まる」とネタバレしているようなもの。
また、プレイヤーの動きも、“カバーに張り付く(姿勢を低くする)”か“カバーから離れる(姿勢を高くする)”という、二択のシステムに縛られていた。その結果、ゲームのステージはどれも似たような四角い箱が並ぶ不自然な空間になり、アートやデザインの自由度は大きく制限されていた。
そこでThat's No Moonでは、従来のカバーシステムに替わる形で、“アダプティブ・カバー”を開発。これはUE5の“Nanite(ナナイト)”と呼ばれるポリゴン数の制限を気にすることなく処理できるテクノロジーを用いたもので、ゲーム内に自然な環境を構築できる。
また、プレイヤーは遮蔽物に直接触れていなくても、遮蔽物との距離や周囲の地形、敵の視線などを自動的に計算し、状況に応じてキャラクターが自動的に最適な隠れる姿勢をとる。スタジオでは実際に数千時間にも及ぶモーションキャプチャーデータを収録し、 地形に合わせてキャラクターが姿勢を変えながら移動するリアルな挙動を再現したのだという。
人気IPを再構築
会場ではジェイク・コントゥ氏によって1枚ずつ手描き(ハンドペインティング)されたというキービジュアルが公開された。デジタル全盛の時代において、クラシックな芸術性を大切にするスタジオのこだわりを見ることができた。
UE5との出会いが出発点

――スタジオの設立がちょうどUE5のリリース時期※と重なりますが、やはりあのテクノロジーを見て「このゲームを作ろう」と決断されたのですか。
もしEpic GamesがNaniteという仮想化マイクロポリゴン・テクノロジーを生み出していなければ、私たちがいま作っているようなグラフィックは表現できず、まったく別のゲームになっていたでしょう。UE5との出会いこそが、私たちのイノベーションの出発点でした。
私は研究論文やSIGGRAPH(CGの国際学会)の発表をチェックするのが大好きなオタクなのですが(笑)、12年ほど前に“Phase-Functioned Neural Networks(フェーズ機能ニューラルネットワーク)”という論文を目にしました。これは、複雑なモーションマッチングシステムを使って、三人称視点のキャラクターが複雑な地形をシームレスにナビゲートできるようにする技術です。
UE5の技術力を見た瞬間、私は「みんな、聞いてくれ! あの論文の技術をいまこそ実装できるぞ!」とチームに声を掛け、このゲームの開発へと本格的にコミットしました。
しかし、私たちが目指したのはその先です。このテクノロジーのポテンシャルを最大限に引き出すために、ゲームづくりの根本的なプロセスから変える必要がありました。単に見映えをよくするだけでなく、テクノロジーによってこれまでにない新しいプレイ体験を生み出すこと。それこそが、私たちがもたらす最大の革新だと考えています。
――『クロスファイア』というIPを題材にするという構想はどのタイミングで生まれたのでしょうか。
彼らは「君たちが本当に情熱を注げる、作りたいものを自由に作ってほしい」と言ってくれました。もちろん彼らが『クロスファイア』の生みの親であることは知っていましたし、彼らとディスカッションを重ねる中で、私たちが温めていたテーマと完璧に合致したのです。
私たちが長年描きたいと考えていたのは、単純な“善vs悪”の物語ではなく、異なるイデオロギーを持つ人々がどのように共存し、協力していくかという複雑な人間ドラマでした。
スマイルゲートに「『クロスファイア』の根底にあるのも、どちらかが100%正しくてどちらかが悪いというわけではなく、それぞれが己の正義のために戦う物語ですよね?」と確認したところ、「その通りだ」と。その瞬間に、このIPこそが自分たちの描きたい世界を表現する最高の舞台だと確信しました。
――オリジナルはマルチプレイ専門のシューターですが、それをシングルプレイ専用の作品に落とし込む上で、親和性の低さや苦労は感じませんでしたか。
『クロスファイア』の核とは、対立するふたつの陣営がそれぞれに大義名分を持って戦っていること。そして、時には共通の脅威に立ち向かうために、敵どうしが手を組んで協力しなければならない局面に立たされることです。この魅力的な設定さえあれば、FPSであろうがTPSであろうが、最高の体験を提供できると信じていました。
――本作はシングルプレイ専用ソフトとして発売されます。「価格に見合うボリュームがあるか」という点がプレイヤーにとっては気になるところかと思うのですが、現時点で話せることはありますか。
マルチプレイのゲームと“1ドルあたりのプレイ時間”で競うことは不可能です。あちらには終わりがありませんからね。しかし、シングルプレイには独自の価値があります。
たとえば『The Last of Us』を遊んだ人で、「クリアーまで〇〇時間だったから、この金額は見合わない」と不満を言う人はいないでしょう。なぜなら、他では得られない極上のプレミアムな体験、キャラクターとの深い感情的な結びつき、そして人生観が変わるような物語を体験できるからです。それと同じように、クリアーした後に友人と熱く語り合いたくなるような満足感のある体験を目指しています。
――デモ映像を拝見する限り、かなり手応えのあるゲームに見えました。ストーリーを楽しみたいプレイヤーが、難易度の高さでつまずいてストレスを感じてしまう懸念はありませんか。
ただし、難易度を下げるのにも限界を設けています。ゲームがかんたんすぎて緊張感がなくなってしまうと、プレイヤーがキャラクターに感情移入できなくなってしまうからです。
物語の中でキャラクターたちが「お前は宿敵だが、この過酷な状況を生き延びるために手を組むしかない」と深刻に話しているのに、ゲームプレイ自体がボタン連打で勝てるほどかんたんだったら、プレイヤーは嘘臭さを感じて物語を信じられなくなってしまいます。物語に説得力を持たせるためにも、一定の難易度の壁は必要だと考えています。
また、本作の目玉である“アダプティブ・カバー”や、さまざまな戦術的選択肢をプレイヤーに自発的に使ってもらうためにも、適度な手応えは不可欠です。かんたんすぎると、物陰に隠れる必要すらなくなり、ただ突撃して敵を殴るだけの退屈なゲームになってしまいますからね。
――アダプティブ・カバーはボタンひとつで周囲の状況を計算し、キャラクターが自動で最適なカバー姿勢をとるシステムとお聞きしました。自動化されることで、プレイヤー自身が自分の判断で身を隠したという手応えや、ゲームを攻略している感覚が薄れてしまうことはありませんか。
私はそうした戦術的なゲームの魅力を、もっと多くの人に、手軽に味わってほしいと考えました。複雑な操作をシンプルに削ぎ落とし、誰もが直感的にタクティカルシューターの快感を味わえるようにする、それこそがアダプティブ・カバーの目指すところです。
自動化によって手応えが薄れるどころか、むしろ逆だと考えています。プレイヤーに求められるスキルは、面倒な姿勢変更のボタン操作ではなく、「周囲の環境をどう分析するか」という知的な判断になります。プレイを重ねるうちに、プレイヤーは「あの遮蔽物の形なら、レイラはこういう姿勢で隠れられるはずだ」と、周囲の景色を見ただけで直感的に理解できるようになります。
敵を見つけ、周囲の環境を分析し、最適な場所を選んで身を隠すというのは、子どものころにやった“かくれんぼ”で最高の隠れ場所を見つけたときのような興奮と快感をもたらします。ボタン操作はシンプルでも、脳を使って危機を乗り越える戦術的なおもしろさはしっかりと残っています。
――戦闘中に相棒のクロスへ「あそこへ移動しろ」「敵を撃て」といったコマンドを出すことはできるのでしょうか。
本作では、相棒であるAI(クロス)を自律的に行動させています。彼は自分の意思で動き、時にはプレイヤー(レイラ)を助ける選択をします。そうすることで初めて、プレイヤーは彼をひとりの人間として認め、感情的な絆が生まれるのです。
ストーリーの中でも、彼とレイラはつねにベタベタしているわけではありません。異なる価値観を持っているため、時には意見が対立し、クロスがこちらの思うように動いてくれない瞬間もあります。そうした関係性のダイナミズムや、お互いに歩み寄っていくプロセスこそが、この物語のドラマなのです。
プレイヤーはレイラと完全に感情をシンクロさせているため、クロスと衝突したときは「お願いだから味方してくれよ!」と焦り、彼が再び手を差し伸べてくれたときは「よかった、助かった!」と心の底から安堵するはずです。命令を聞くだけのロボットではなく、血の通った人間との信頼関係を、ゲームプレイを通じて体験してほしいと思っています。
――本作は追加のDLCやシーズンパスなどの運用は予定されていますか。
――ありがとうございました。最後に、つぎの新情報が出るタイミングなどについて教えてください。













