『ファイナルファンタジー タクティクス』(以下、『FFT』)に出会う時期がいまでよかったのかもしれない。
もし中学生のころに出会っていたらヤバかった。間違いなく詠唱の練習はしていたし、歴史の授業を聞きながら妄想の世界へ意識を飛ばしていただろう。『FFT』はあまりにも劇薬すぎる。
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冒頭のムービーからすごい。ゾクッとくる単語だらけで痺れる。
そう思ってしまうぐらい、初見で触れる『ファイナルファンタジータクティクス - イヴァリース クロニクルズ』(以下『FFT - イヴァリース クロニクルズ』)は、“ロマンの塊”だった。現実、理想、責務、運命、その狭間で懸命にあがく人々の姿と、痛烈に響くセリフの数々。国家の陰謀と神話の真実。そしてなにより、あまりにもかっこよすぎる詠唱の文言。
ここまで濃厚なファンタジーを浴びたのは久々だ。しばらくこのゲームのことが頭から離れそうにない。
一瞬、だからこそ高密度。極限状態だからこそ生まれる会話の厚み
『FFT - イヴァリース クロニクルズ』は2025年9月30日(Steam版のみ10月1日)発売のシミュレーションRPG。つまりゲームとしての根幹はバトルシミュレーションにあるわけだが、筆者としてはその部分以上に“セリフ”に魅せられることが多かった。
街での探索などはないため、会話のシチュエーションはほぼイベントシーンと戦場に限定される。だからこそ、言葉ひとつひとつに籠められる思いの強さに身を焼かれる。
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“エンハンスド”バージョンだとフルボイス。どの演技もキャラクターの中に通う“血”を感じられるすばらしいものになっている。
『FFT』の舞台となる国家・イヴァリースは、大戦の敗北と王の病死により内政が大きく揺らいでいた。その揺らぎは次第に大きくなり、ついには権力を持つ二大将軍がぶつかり合う“獅子戦争”と呼ばれる内戦までもが引き起こされてしまう。しかしその裏には暗躍する組織があって……というのが、おおまかなストーリー。つまりやっていることはドロドロの内紛であり、身内同士で腹を切り合うような、おぞましい戦いである。
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前提から救いがない。侵略する敵国との戦いとかならまだスッキリしたのかもしれない。
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主人公であるラムザは、そんな戦乱の世でも戦わずに事態を解決できないか模索する。
そういった経緯もあってか、人にもよるが、だいたいの登場人物は戦いたいから戦っているというわけではない。ある人はただ正義のために。またある人はただ力のために。ただ国のために、ただ誰かのために……。それぞれの理念や生まれ、立場などさまざまなものが絡み合った結果、戦うという手段をとっているだけだ。
時間をかければ戦わない道に行けるのかもしれないが、そうはならない。そのためには血が流れすぎていて、納得する着地点なんてものはすぐに見当たらない。
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貴族と平民のあいだにも大きな格差が生まれている。
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世の中の変革のため、戦いは必要だと割り切る者。
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富のために戦乱を望む者もいる。
そもそも主人公であり、プレイヤーの主観として善を解くキャラクターであるラムザ自身、貴族階級の非常に偉い家柄の出身である。この世界、戦場において、彼の言葉は“甘ちゃんの貴族様が喋る都合のいいお言葉”として受け取られてしまうわけだ。
言っていることは正しくとも、正しいだけでは意味がない。しかもその“正しさ”を語るのが貴族ならなおさら――。この構造が、物語自体の無常さに拍車をかけている。
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『FFT』には、家柄や支配者・被支配者を意識させるような話が非常に多い。そもそも獅子戦争自体、ひいてはそれにまつわる陰謀だなんだもすべて、“誰がこの国を支配するか”という話につながってくる。物語のテーマが“支配”である……とまで大きなことは言わないが、そういった話題が多いのもある種必然と言うべきだろうか。
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序盤の辺りはとくに苛烈。平民出身の者から「神は誰にも平等なはず」という発言を受けての言葉である。
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でもこいつにしてみれば、貴族らしい行いをしないラムザのほうがおかしく映る。この視点の違いが切なくもおもしろい。
命のやり取りをしている最中、人は何かを着飾ることができるのだろうか。
この物語におけるセリフはどれもが“はだか”。極限の状態だからこそ、その人間の歴史や価値観のすべてが凝縮され、装飾のはがれた、血の通った文言が飛び交う。戦時ゆえに本編中で戦う人の数も多く、それだけたくさんの“人生”をプレイヤーの顔面にぶつけてくる。
だから『FFT』のセリフは脳裏にいつまでも焼き付くのだろう。好きなセリフの話をしだすと数時間では収まらない――まずゲーム性以前に、そういう魅力を持ったタイトルだ。
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「好きなキャラは?」「好きなセリフは?」とか言い出すともう止まらない。スクショを貼りながら語らせてほしい。
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ガフ・ガフガリオンが大好きです。別に短絡的で粗暴な人間というわけじゃなく、戦場で老いたがゆえのリアリズムを持っていて、大局的にも物事を見ている。そういうところがたまらない。
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雷神シドさんも好き。力に対しての向き合いかたなど、ほかの為政者とスタンスの違いを感じられるのがいい。
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「“恐怖”という黒い染み」という言い回しがとてもいい。
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このメリアドールのセリフも……とかやっていると本当に終わらなくなる。それぐらい“語りたくなるセリフ”が多い。
「俺は歌と踊りで戦争を終わらせる」もアリ。自由度の高いバトルシミュレーション
もちろん、セリフに血が通っているように感じさせてくれるのは、戦場自体の苛烈さがあってこそ。『FFT』の要である戦闘システム、バトルシミュレーションがあってこそだ。
高低差のあるマップで、射程や移動力、敵の配置などを意識しながら味方全体を指揮していく感覚。これがあることで、プレイヤー側にも“多くの人間が関わる大規模な戦場”という認識が自然に持てる。
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高低差のわかりやすい斜めからの視点が特徴的。
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現代向けに最適化された“エンハンスド”バージョンでは、地面を見下ろして範囲などがよりわかりやすくなる“タクティカルビュー”もある。倍速などもあるため、戦闘はかなりやりやすい。
戦闘のシステムとしては「必要最低限のものが全部あるな」という感じ。シンプルにまとまっており、動かしやすい。筆者は情報でしか知らないものの、“移動のやりなおし”やタイムラインの設置など、いくつか従来の『FFT』から改善された部分もあるようだ。目新しさ……というと難しいが、いまの時代に初見でプレイしてみても、不便さを感じる部分はとくになかった。
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移動をやり直す機能なんかは「これ、昔なかったんですか……? ホントに……?」と、無い時代の想像がつかないほど便利。
ジョブや装備といったビルドに関する部分は、どこまで遊んでも「遊びつくせた」とは思えないほどの組み合わせがあり、考えるのがとても楽しい。先ほども書いた通り根幹のシステム自体はシンプルなので、プレイしていて複雑さを感じないのもいい点だ。
やれることはたくさんありつつ、複雑さからくる窮屈さも感じない。自由度が高いというより、実際に“自由”というか。かなり好き放題遊べてしまう。
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ジョブの数はひとキャラクターにつき19種類(固有職などを除く)。男性限定の吟遊詩人、女性限定の踊り子を分けると20種類。
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魔法やアイテムの使用などは、すべてジョブ固有の“アビリティ”という扱い。
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ひとつのキャラクターには、ジョブ固有のアビリティ+4種類のアビリティが装備できる。この組み合わせが非常に悩ましく、楽しい。
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キャラクターは自由に雇ったり解雇が可能。それ以外にもストーリーの進展で固有のジョブを持つネームドキャラが仲間になったり、モンスターを仲間にできたりする。
最終的に筆者は、敵全体を弱体化させる“踊り”と、味方全体を強化する“詩う”を持つキャラクターを3人。そこに味方が使ったありとあらゆるアビリティを模倣する“ものまね士”を加えた、歌って踊るだけで敵がどんどん壊滅していくパーティーで遊んでいた。
アビリティの演出がすげー挟まるわ1回の戦闘は超長くなるわと欠点は多かったものの、敵をメッタメタに弱くしながらこちらがムキムキになっていく姿を見るのがとても楽しい。ある程度ターンが経過したら、あとは虫の息になった敵をぷちぷち潰していくだけなのも爽快だった。
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「戦争がイヤになったので歌と踊りで平和を目指します」という絵面にも見えなくは……ない……?
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適当にバフをかけたら召喚術の広範囲大ダメージでドカン。ものまね士もあわせてもいっちょドカン。相手は度重なる弱体化で足が遅く範囲から逃げきれないため綺麗に決まる。
これは過去の名作ならではだが、“昔強かった組み合わせ”を調べて試してみるのも楽しい体験だった。筆者がお世話になったのは、いわゆる“格闘忍者”。通常攻撃の火力がものすごいことになるビルドで、だいたいの敵を一撃(正確に言えば二撃)で葬り去れる。そのぶん耐久に難はあるのだが、そもそも敵が即死するのであまり問題にはならない。
あまり絵面的な派手さがないために常用することはなかったが、戦闘が厳しいときには頼るようにしていた。
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二刀流状態になっているため、このダメージが2回入る(合計1910ダメージ)。ほかのビルドだと単発で300ダメージ出ればかなり強いほうである。
アビリティを覚えるには“ジョブポイント”というものを稼ぐ必要があり、これらの稼ぎかたも先人の知恵に頼っていた。具体的には“ためる”と“ギルを盗む”を使った方法だ。
どういう形であれアビリティを使って、その結果なにかが起こればジョブポイントがもらえるので、敵の体力に干渉しない“ギルを盗む”を使ったり、自身のステータスを上げる“ためる”を使いまくることで、1回の戦闘でポイントを荒稼ぎできる。敵に弱体化を施しておけばより安全。
敵を1体だけにして、弱体化をかけて取り囲んでからひたすらためるためるためるためる……ギルを盗む盗む盗む盗む……やっていること自体はワンパターンだが、これはこれで楽しい。なによりさまざまなアビリティを使えるようになるのはそれだけでゲームがおもしろくなるので、そういった面でも、こういった情報に手軽にアクセスできるのはありがたかった。
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囲んでひたすら“ためる”をしている図。囲まれている側はどういう心境なのだろうか。
あと、戦闘と言えばやはり詠唱については外せない。戦闘中は魔法やアビリティを使う際に、ランダムで詠唱セリフが表示される。しかも “エンハンスド”バージョンであればボイス付き。つまりはあの大塚明夫氏(オルランドゥ伯 役)による呪文の詠唱が聞けちまうっていう寸法である。最高。
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呪文の詠唱=かっこいいという図式を心の奥底に抱えて生きてきた筆者にとって、この要素はまさにパラダイス。冒頭で「中学生のころなら危うく詠唱の練習をするところだった」と書いたが、正直この年になってもまだまだ詠唱はしたい。なんならこの原稿を書き上げた後にカラオケで練習してやろうか真面目に考えているレベルである。
どうせならネームド以外の操作キャラクターたちも詠唱してくれたらうれしかったのだが、ぜいたくは言うまい。間違いなく、『FFT』でいちばんテンションが上がった要素だ。
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大塚氏による“トード”の詠唱を聞きたいがために、キャラクター的にはまったく適性のない黒魔法も覚えさせた。最高でした。
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シンプルな詠唱で言えばやっぱりバハムートが最高だろうか。「胸中に眠る星の火を!」かっこよすぎる……!
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佐藤利奈さん演じるアグリアスの声も良くってェ……低くて凛としててぇ……とか言い出すとまた終わらなくなってしまう。
『FFT』で世界を“浴びる”
詠唱もセリフもそうだが、とにかく『FFT』は“この世界”を直に浴びるような体験がすばらしい。『FFT - イヴァリース クロニクルズ』から追加されたフルボイスも、本作の没入感をより高めてくれている。これは筆者が本作からのプレイヤーだからかもしれないが、ボイスへの違和感はまったく覚えなかった。
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何度も言うようだが、ガフガリオンは本当によかった。セリフ、演技ともに最高だった。
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今際の際などに出る、“声にならない声”の演技もとてもいい。ボイスによって、物語体験の質は何段も上がっていると思う。
本筋についての話に終始していたが、『FFT - イヴァリース クロニクルズ』は枝葉の部分、いわゆるフレーバー的なお遊びであったり、ギャラリー的な要素であったりも充実している。
おもしろかったのが“儲け話”。世界の各地で受けられる簡単なクエストのようなもので、キャラクターを3人、しばらくのあいだ派遣すれば報酬がもらえるというもの。本筋に絡んでくる要素ではないものの、依頼達成時のテキストが読み物としておもしろい。ある儲け話の中に出てくるキャラを見て「あー、こいつなんか怪しいな……」と思っていたら、別の儲け話で捕まった報告が載るなんてことも。
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これだけギル(お金)を貯め込んだ人が腐敗しきった貴族制を建て直す……? ホントにぃ……?
儲け話を達成することで、財宝や秘境に関する情報が手に入る。これもフレーバーだけで、実際にアイテムとして手に入ったり、訪れたりすることはできない。あくまで雰囲気だけのものだ。
でも、こういう情報からしか得られない栄養がある。「こんなアイテムがあって、こんなところに秘境があって……」という情報を糧にして、自分の脳内に『FFT』の世界がどんどんと広がっていくのだ。それがなんとも心地いい。
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ほかの『ファイナルファンタジー』シリーズで登場したアイテムなども財宝として登場する。
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この森は“チョコボ臭い”のだとか。どうにかしてその匂い、嗅ぐことはできませんか……?
こういった情報は、“ブレイブストーリー”という、“後世から見たラムザの記録”としてまとめられている。ほかにもイヴァリースの地図を用いて、どのタイミングでどの勢力が動いたのかを示してくれる“情勢”や、過去のシーンを回想できる“紀行”などもこちらで確認可能。とくに情勢は、「いまどういう状況だっけ……?」というのを一目で確認できるのでありがたい。話の理解がしやすいと、物語への没入感もより上がる。
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情勢は本当にわかりやすい。図があることで、より情報が頭に入ってくる。
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過去のシーンを見直して、「あー、そういえばここで不穏な会話をしていたな」と確認しにいくのが好き。
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対応する遺物を持っていれば読み物も楽しめる。どこまで楽しませる気だ。
思えば幼少のころより、こういった世界を堪能させてくれるコンテンツが好きだった。マンガでも、ゲームでも、アニメでも、少しの描写の後ろにある無限の広がりを思うのが好きだった。
『FFT』は、そういった世界の見せかたが上手い……というか好き。このゲームの、世界の見せかたが好きだ。戦場で交わされる、その人の人生が凝縮されたような言葉の数々。イヴァリースという架空の国が持つ何百年もの歴史と、その裏にある仄暗い真実。フレーバーテキストから香る、ゲーム内では描写されない秘境の数々。そのどれもが“異世界のロマン”という黄金の輝きをもって、プレイヤーを『FFT』の世界へと引き込んでくる。
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冒頭にこのゲームのことを“劇薬”と書いたが、それはこの世界があまりにも魅力的かつ、実体を感じられるからこそ。中学生のときに「そうか、歴史って勝者が作るから……」みたいなことを意識し始めると、恐らく妄想の海にダイブしてマトモに歴史の授業なんざ聞いてはいられない(か、逆にそういう痕跡がないか無限に調べ始めるか)。あと暇な時間を使って詠唱をノートに書き留めたりもしただろうし、カッコいい言いかたを考えたり、オリジナルのロング版詠唱も考えたことだろう。『FFT』にハマって帰ってこられなくなる姿が容易に想像できる。
いま書いていて、「でも、そういうのがいちばん楽しいしな」と思ってしまった。そう考えると、逆に中学生時分に触れていたほうが良かったのか……?
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この詠唱だと短いと思うんですよね。多分なんか長いのもあるんじゃないか。
いや、なにも遅くはない。いまからでも『FFT』の沼にどっぷりつかることだってできるはずだ。せっかく『FFT - イヴァリース クロニクルズ』という形で出会えたのだから。ひとまず3日ほどかけて、ガフガリオンのためにも“闇の剣”の完全詠唱でも考えてみることにしようと思う。
まあそういった与太話は置いておいおくとしても、現代に『FFT』が蘇って、こうして触れることができて、沼につかる算段も整って……というのは本当にうれしい。「気になっているが契機がなかった」という理由で触れていないゲームなどごまんとある(自慢することでは決してないが)ので、「最新ハードで遊びやすくなったよ!」という形で契機を与えてくれるのは、筆者のようにやりたいコンテンツが無限に溜まるタイプのゲーマーにとっては大変ありがたい
それが極上の出会いであればなおさら。間違いなく『FFT』は、筆者の生涯に刻まれるゲームになった。
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『FFT - イヴァリース クロニクルズ』の発売は2025年9月30日(Steam版の発売は10月1日予定)。まだプレイしていない方がいれば、これを機にぜひともこの世界に触れてほしい。筆者のような世界観に心奪われるタイプであれば、間違いなくハマるはずだ。