『FFT』を遊び尽くしたファンにこそ遊んでほしい。『ファイナルファンタジータクティクス - イヴァリース クロニクルズ』レビュー。オリジナル版をベースにユーザービリティが格段に向上

byジャイアント黒田

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『FFT』を遊び尽くしたファンにこそ遊んでほしい。『ファイナルファンタジータクティクス - イヴァリース クロニクルズ』レビュー。オリジナル版をベースにユーザービリティが格段に向上
 『ファイナルファンタジータクティクス(以下、『FFT』)が令和の時代に蘇る――。

 第一報を聞いたとき、主人公ラムザの冒険を思い出して心が踊った一方で、正直に言うと、買うかどうか悩みもした。というのも、筆者はシミュレーションRPGが大好物。1997年6月20日にプレイステーション(以下、PS)で発売された『
FF』シリーズ初のシミュレーションRPGである『FFT』は、源氏シリーズを盗もうとして小数点以下の確率(と信じていた)に数時間挑んだ(※)。

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※:源氏シリーズについて知らない方は下記の記事をチェックして!
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画像は『ファイナルファンタジータクティクス - イヴァリース クロニクルズ』のクラシックバージョンのもの(詳細は後述)。
 もちろん、新たなキャラクターやジョブ、イベントなどを追加したPSP用ソフト『FFT 獅子戦争』(2007年5月10日)も主力メンバーのBrave(ブレイブ)を上げるなどしてやり込んだし、2011年に配信されたiOS版も購入しており、これまでに何度も『FFT』をプレイしてラムザの壮絶な戦いを体験してきた。
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10年以上ぶりにロードした『FFT 獅子戦争』のデータ。ラムザの育成が一段落し、満足して終えた記憶がある。なによりも3代目PSPが起動したことにビックリ!
 そして2025年9月30日(Steam版のみ10月1日)に発売予定の本作『ファイナルファンタジータクティクス - イヴァリース クロニクルズ』は、オリジナル版のスタッフも開発に参加。オリジナル版を忠実に表現した“クラシック”と、現行のプラットフォームに合わせて各種要素が最適化された“エンハンスド”の2バージョンが収録されており、エンハンスドはフルボイス化にあわせてオリジナル版の脚本を手がけた松野泰己氏みずからがシナリオを加筆調整するなど、ファンのツボを押さえた作りになっている。
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左がクラシックで右がエンハンスドのプレイ画面。比較すると、エンハンスドでの進化が如実にわかるだろう。
 これは欲しい! 欲しいんだけど、中学生の息子を夏期講習に通わせたり、壊れたテレビとドラム式洗濯機を新調したりして、妻が管理する我が家の財布の紐は固くなっている。これが目下の悩みのタネ。さて、どうやって妻を説得したものか……と思案している筆者のもとに、ファミ通.com編集部から『FFT - イヴァリース クロニクルズ』のメディアツアーの取材依頼が来た。これは渡りに船ということで5時間近くプレイしたところ……。
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妻のことはひとまず考えないことにした。
 我慢できなくなって予約しちゃいました! 『FFT』を何度もクリアーしているうえ、妻の了承を得るという難題を抱える筆者が、どうしてそれでもなお本作を購入しようと思ったのか。前フリがちょっと長くなってしまったが、ここからはメディアツアーで体験できた本作の魅力をお伝えしたい。

 なおメディアツアーのリポートは2本の動画でも公開している。こちらもあわせてチェックしてほしい。

▼【FFT】『ファイナルファンタジータクティクス - イヴァリース クロニクルズ』先行公開プレイ映像(1)。“エンハンスド”バージョンのバトルを解説

▼【FFT】『ファイナルファンタジータクティクス - イヴァリース クロニクルズ』先行プレイ映像(2)。ボイス付きのイベントシーンを一挙公開

注目のエンハンスドはオリジナル版をベースにユーザービリティが大幅に上昇

 結論から言うと、エンハンスドはめちゃくちゃ快適!

 メディアツアーではエンハンスド、クラシックの両方でゲームを最初からプレイ可能だったほか、チャプター3“炭鉱都市ゴルランド”のオーラン救出戦をプレイできた。なかでもエンハンスドではフルボイスでますますドラマティックになった重厚なストーリーを、気軽にプレイできるようにうまく調整されていると感じた。
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 とくに好印象だったポイントは下記の5つ。

  1. コンバットタイムラインで敵味方の行動順がつねに可視化され予測しやすくなった
  2. アビリティのチャージタイム(CT)も見直され詠唱が必要な魔法などを当てやすい
  3. 俯瞰モード(タクティカルビュー)のおかげで敵味方の位置を把握しやすい
  4. 移動をやり直すことができてストレスフリー
  5. 早送り機能のおかげでバトルのテンポがアップ
 コンバットタイムラインは、画面左側に追加された情報。オリジナル版やクラシックでは、アビリティを使う際に別のウィンドウで行動順を確認する必要があったが、エンハンスドではコンバットタイムラインに表示される。
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オリジナル版やクラシックでも行動順を確認できるが、コンバットタイムラインでつねに確認できるエンハンスドは、格段にプレイしやすい。
 行動順がつねに可視化されることで予測が立てやすくなったうえ、アビリティのチャージタイム(CT)が見直されたことで、詠唱が必要な魔法などが当てやすくなった。発売後は、詠唱が長くて扱いにくかった召喚魔法を使うのが楽しみだ。

 また、エンハンスドにはタクティカルビューと呼ばれる視点が用意されており、ボタンを押している間は俯瞰視点でマップを確認できる。『FFT』はタクティカルRPGを売りにしているだけあって高低差の激しいステージも用意されており、高い場所から弓で狙うといった戦術が楽しめるいっぽうで、敵味方の位置を確認しにくいといった欠点も……。
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体験できた“炭鉱都市ゴルランド”のステージも高低差がある。
 だが、タクティカルビューのおかげで敵味方の位置を把握しやすいうえ、たとえ間違った場所に味方を移動させても、移動をやり直せるようになったのでストレスフリーだった。ボタンを押しているあいだだけ、早送りできる機能も非常に便利。会話やアビリティの発動時に早送りが自動的に解除される仕様で、見逃すのを防いでくれるのも頼もしい。
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タクティカルビューではボタンを押しているあいだ俯瞰視点になる。

名作が遊びやすくなった。そりゃあおもしろいに決まっている!

 快適になったプレイで改めて気づくことができたのは、『FFT』のシナリオやタクティカルRPGとしての完成度の高さ。オリジナル版の発売から30年近く経つが、いまプレイしても古臭さはまったく感じない。

 むしろ豪華声優陣の巧みな演技でフルボイスになったことで、ラムザを中心とした魅力あふれる登場人物たちの生き様を描いたストーリーはますますドラマティックになっていると感じたし、戦略性の高さはそのままに快適さが増したバトルは“沼りそう”な予感しかしない。細かいところだが、目がパチパチ、口がパクパクと動くアニメーションも、キャラクターに命を吹き込むうえで、声と合わせていい仕事をしていた。
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筆者の推しキャラはアグリアスとオルランドゥ。追加されたアビリティの詠唱ボイスにニヤニヤが止まらない。
 ゲームを最初からプレイした際には、序盤とはいえアビリティやジョブを組み合わせる楽しみも思い出すことできた。先述した通り、CTのバランス調整が行われているので、エンハンスドでは新たなジョブやアビリティ、組み合わせの活躍にも期待できる。
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 エンハンスドは3つのプレイスタイル(難易度)が用意されており、いつでも変更できるのもうれしい。“炭鉱都市ゴルランド”をカジュアル(イージー)、スタンダード(ノーマル)、タクティカル(ハード)でそれぞれクリアーしてみたが、シミュレーションRPGに慣れている筆者はタクティカルがちょうどいいかも。
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 また、機能が大幅に強化されたブレイブストーリーは、懐かしさも相まって見ていて飽きない。とくに情報が整理された“情勢”は非常に見やすく、『FFT』のファンからすると、膨大な情報がわかりやすくまとまった資料的な価値も高いと思ったほど。
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“情勢”では、さまざまな登場人物たちの思惑が錯綜するストーリーを、時系列で振り返ることができる。
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人物や地理、用語なども見やすくまとめられており、非常に読みやすい。

未経験者はもちろん『FFT』を遊び尽くしたファンにこそ遊んでほしい

 つまり筆者はオリジナル版や『FFT 獅子戦争』を何度もプレイしていたからこそ、快適にプレイできるエンハンスドの虜になり、もう一度ラムザとなって冒険することを望んだというわけだ。

 それに環境が変わってプレイすると、新たな発見もあった。かくいう筆者は、ラムザの父バルバネスの姿に、年老いた父親の姿を重ねてグッときた。さらに時間が経ってからプレイすると、今度は成長した息子にラムザの姿を重ねるのかもしれない。
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ラムザとバルバネスの別れのシーン。おじさんになり、すっかり弱くなった筆者の涙腺はすぐに崩壊した。声があるのはズルい。
 重厚なストーリーや戦術性に富んだバトルが楽しめる本作は、シミュレーションRPG好きにオススメのタイトルだ。『FFT』を初めて遊ぶ人にうってつけだが、筆者は『FFT』を遊び尽くしたファンにこそ遊んでほしいと思った。当時の感動を、快適な環境でふたたび体験することができるのだから。

 この記事を読んで本作に興味を持った方は、メディアツアーと同時に実施された開発者インタビューも必見。『FFT』をプレイしたいという欲求がさらに高まるはずだ。
※掲載されている画面写真はすべて開発中のものです。内容・仕様は予告なく変更される場合があります。
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