1997年6月20日にプレイステーションで発売された、『ファイナルファンタジー』(以下、『FF』)シリーズ初のシミュレーションRPG『ファイナルファンタジータクティクス』(以下、『FFT』)。歴史に埋もれた真の英雄ラムザの戦いを描いた重厚な物語と、多彩なジョブとアビリティによる戦術性に富んだバトルが多くの人を魅了し、シミュレーションRPGとして初のミリオンセラーを記録し話題となった。
そんな不朽の名作が2025年9月30日(Steam版のみ10月1日)、オリジナル版のスタッフの手により、『ファイナルファンタジータクティクス - イヴァリース クロニクルズ』として蘇る。本作は、オリジナル版を忠実に再現した“クラシック”と、現行のプラットフォームに合わせて各種要素が最適化された“エンハンスド”の2バージョンを収録。
とくにエンハンスドはフルボイス化となっているうえ、オリジナル版の脚本を手がけた松野泰己氏みずからがシナリオを加筆・調整。往年のファンも新鮮な気持ちで楽しめる内容となっている。
今回ファミ通.com&電撃オンラインでは、本作及びオリジナル版の開発メンバーでもある前廣和豊氏、皆川裕史氏、そして今作のCo.ディレクターの横山文子氏にインタビューを実施。メディアツアーにて『FFT - イヴァリース クロニクルズ』を実際にプレイしたうえで、追加されたボイスや進化したシステムなど、とくに気になったポイントをうかがった。インタビューを最後まで読めば、開発陣が『FFT』を現在によみがえらせるために、細部まで手を抜かずに作り上げた熱意が伝わるはずだ。
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なお、本作の開発経緯とふたつのバージョンの特徴や魅力、新要素などの基本的な情報は2025年6月のインタビューで訊いている。まだ読んでいない方は、こちらもぜひチェックしてほしい。
前廣和豊(まえひろかずとよ)
オリジナル版『FFT』にゲームデザイナーとして参加。その他の代表作としては『FFTアドバンス』のプランナー、『FFXII』のコンバットディレクター、『FFXIV』のシナリオ、『FFXVI』のクリエイティブディレクター&原作・脚本などを担当。本作ではディレクターとしてゲーム全体の統括を行いつつ、作中のテキスト執筆やプランナー的役割なども担う(文中は前廣)。
皆川裕史(みながわひろし)
オリジナル版『FFT』のアートディレクター。『FF』シリーズでは『FFXII』のディレクターや、『FFXIV』、『FFXVI』のアートディレクターなどを担当。本作ではアートディレクターを担当しつつ、キャラクタードッターとして現場でのデータ作成も手がけている(文中は皆川)。
横山文子(よこやまあやこ)
クリエイティブスタジオ3(CS3)所属のゲームデザイナー。本作ではCo.ディレクターとして開発に参加。ディレクターの前廣氏をサポートし、開発スタッフとの橋渡しの役割を担う。また、『FFT』を現代に蘇らせるにあたり、現代に合わせた遊びやすさも追求。本作以外では、『FFXVI』のリードゲームデザイナーなどを担当している。(文中は横山)。
オリジナル版のマスターデータがなく、開発は手探りのスタートに
――具体的なお話をうかがう前に、メディアインタビューが初となる横山さんの簡単な経歴と、本作でどのような分野を担当されているのかを教えてください。
横山
CS3所属になってからは、『ドラゴンクエストビルダーズ2 破壊神シドーとからっぽの島』のイベントを担当し、その後は『FFXVI』でリードゲームデザイナーを担当していました。本作では前廣がディレクターとなるにあたり、『FFXVI』から続く形で私も共同ディレクターという形で参加しています。
具体的な仕事としては、全体をチェックしながら細かな指示を出しつつ、前廣がスタッフと直接話すことが難しいタイミングでは、現場の意見を取りまとめて報告したり、前廣の指示を現場に伝えたりもしていました。
――まさに右腕として前廣さんを補佐されていたのですね。それでは、ここからは本作に関していろいろとうかがえればと思いますが、まずは今回実際にプレイしてみて、本当に遊びやすくなっていることを実感しました。
前廣
ありがとうございます!
――なお、現時点(インタビューは7月後半に実施)で、すでに開発としてはマスターアップされている段階なのでしょうか。
前廣
開発は基本的には終わっていて、現在はSteam版の最終調整を行っています。ですので、問題なく9月30日の発売日に皆様のもとへお届けできると思います。
横山
さまざまなチェックも終わっているので大丈夫です!
――以前のインタビューでは、本作が長い期間コツコツと作り続けてきたタイトルであることをうかがいましたが、開発全体を振り返っていちばんたいへんだったことや、印象に残っていることはなんでしょうか。
前廣
もっともたいへんだったのは、オリジナル版の完全なマスターデータが存在しなかったことです。いまでこそ、開発中のバージョンを正確に管理できるツールがあるのですが、当時はそういったものがありませんでした。ですからオリジナル版を開発したときは、まず日本語版のマスターを出して、バグが見つかったらそれを修正しつつ、つぎに英語版を作って上書きする……といったやりかただったんです。
いまある管理ツールを当時使うことができれば、正確なオリジナル版のデータ(日本語版のマスターデータ)をすぐに出せたのですが、そうもいかなかったので、現存するさまざまなバージョンを解析するところから始めました。なかには、どうしてもわからないデータもあって、そういったものはオリジナル版をプレイしながら、確認していきました。
皆川は昔、アーケードゲームをコンシューマーに移植するときに「プレイしながら“目コピ”をしたことがある」と言っていましたが、最初はまさにそんな感じで進めていましたね(笑)。
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皆川
以前別の会社にいたときに、アーケードゲームをコンシューマーに移植する仕事をしていたことがあったんです。そのときも詳細な資料があまり用意されていなかったため、ドットの位置を再現するときはアーケードゲームの筐体を持ってきて、実際にプレイして見ながらコピーをするのが、わりとふつうでした(笑)。
――それを令和の時代にやったと(笑)。
前廣
まさにそうです(苦笑)。
――なるほど。横山さんはいかがでしたか?
横山
自分はオリジナル版が発売されたときに学生だったので、もちろん開発には関わっていませんし、チームに合流することになってから初めて『FFT』を遊んだのですが、本当にすばらしいタイトルだと思いました。作り込まれた世界観やシナリオに感動して、「この作品を現代によみがえらせることができるんだ」、「その仕事に私が関わることができるんだ」と、ものすごくうれしかったのを覚えています。
実際に開発がスタートしてからの感想としては、ふたりとは違ってフラットな感覚で関わることができたことが、結果的によかったと思っています。ふたりはオリジナル版を開発した苦労があったからこそ、本作を「こうしたい」というこだわりがありましたが、私は当時のことを知らないので、「こうしたほうがいまのユーザーは遊びやすい」といったことを客観的に提案できたことで、結果的にそれがよいシナジーになったと感じています。
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――たしかに、それは横山さんならではの視点ですね。つぎに皆川さんが印象に残っていることは何でしょうか?
皆川
開発全体の感想としては、「甘く見ていた」です(苦笑)。オリジナル版は僕が駆け出しくらいの頃に作ったタイトルで、当時と比べるといまはかなり経験を積んでいます。だから大丈夫だろうと思って開発を始めたのですが……想像していた以上にたいへんでした。
とくに、“オリジナル版をもとに『FFT』を現代によみがえらせる”からこその苦労が多かったです。完全新作の場合はいろいろなことを自分の判断で決めやすいのですが、本作はオリジナル版から変えてはいけない部分の線引きが難しくて……。かつての自分はそれらに対する正解を知っていたはずなのですが、なにしろ30年近く前のことですから、忘れてしまっていることも多い。ですからもう一度プレイし直したり、いろいろ調べたりして、正解を思い出したり再確認するのにかなり時間を使いました。
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――『FFT』は思い入れの強いファンが多いタイトルですし、“譲れないこだわり”はそれぞれにありそうです。
前廣
月日が経っているからこそ、自分なりの『FFT』像というものが、ファンの方々それぞれの頭の中にあると思います。そのため本作を作るにあたって「どこを残して、どこを新しくするのか」は、スタッフ全員が苦労した部分ですね。
横山
開発スタッフの中にも当時プレイヤーとして遊んでいた『FFT』のファンは多かったですね。参加する中で、それぞれが強い思い入れやこだわりを持っていると感じていました。
皆川
逆に、オリジナル版の開発に携わっていないスタッフたちからは、「皆川さんならわかりますよね」と聞かれることが多かったです。もちろん覚えていることに関してはすぐ答えていましたが、意外と思い込みで勘違いしていることもあり……。ちゃんと確認したうえで勘違いに気づいてからは、偉そうに解説したりするのは控えました(苦笑)。
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豪華キャスティングで実現したフルボイスのストーリー
――ストーリーについては、フルボイスになったことでますますドラマティックになっていると実感しました。ボイスの収録で印象に残っていることなどはありますか?
前廣
先ほども、ファンの方それぞれに自分なりの『FFT』像があるというお話をしましたが、キャラクターの声のイメージも、プレイヤーの皆さんごとにバラバラだと思います。もちろん全員のイメージとマッチさせることはできませんが、できるだけ多くの方のイメージと食い違わないようなキャスティングを実現するために、松野さんとも話し合って決めていきました。
音声の収録は松野さんにディレクションしていただき、我々はそれをサポートさせていただく形で進めていったのですが、声優さんの中には当時『FFT』をプレイしていた人がけっこういて、作品に対する解像度が非常に高いんですよ。それもあって、こちらの期待以上に前のめりに収録に臨んでいただけました。
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――汎用キャラクターのボイスも種類が多くて驚きました。除籍するときのボイスもちゃんと収録されていたので、別れにくくなりそうです(苦笑)。
横山
多くの声優の方でたっぷりと収録しています。編成画面では除籍時のセリフのほかに、特定のボタンを押すと聞けるセリフもかなりのパターンを収録していますし、モンスターも種族ごとに別々の鳴き声を用意しました。
前廣
固有キャラクターは、ストーリーの進行によってもセリフが変わりますよ。
――セリフといえば、息遣いや、セリフとセリフの“間”もすばらしかったです。
前廣
息遣いや“間”のほとんどは、演じていただいたものをそのまま使っています。今回出演した声優の皆さんは、物語やキャラクターを非常によく理解されている方が多く、そういった “間”なども自然と演じていただきました。とくにラムザ役の立花慎之介さんには、ラムザの心の変化を巧みに演じ分け、ストーリーの進行に応じて成長するラムザを見事に表現していただいて、収録現場でも、松野さんと驚いていたくらいです。
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――ボイスに合わせて、フキダシ内のキャラクターの目や口が動く演出もよかったです。3Dではなくイラストだけに、こちらも苦労されたのでは?
皆川
目や口の動きはさじ加減がたいへんでした。『FFT』のキャラクターの表情は、かなり特徴的にシンボライズされています。ですからふつうにアニメーションさせるとヘンになってしまうのですが、かといってさりげなくやりすぎると表情がわからない。そこで担当のデザイナーに目と口の動きを何パターンか作ってもらい、試行錯誤をしながらいまの表現に落ち着きました。
――これも細かい変更点ですが、エンハンスドでの主人公の名前がラムザで固定なのは、フルボイス化においてしっかりラムザの名を呼んで、ストーリーを体験してほしいからですか?
前廣
はい。ラムザの名前はオリジナル版や、本作のクラシックバージョンなら自由に変更できますが、エンハンスドでは固定です。『FFT』は発売されてから長い時間が経つ中で、他作品とのコラボなどを通して“ラムザ”というキャラクターが固定化されていきました。ですからエンハンスドではプレイヤー=ラムザであることをより印象付けるためにも、松野さんとも話し合って名前を固定にしています。その影響もあって、冒頭の語りのシーンの流れは少しだけ手を加えました。
――ほかにもストーリー関連では、ブレイブストーリーが充実していて好印象でした。
前廣
ブレイブストーリーは、オリジナル版で収録していたものを見やすくしたいと考えて改善しています。あと、オリジナル版ではチュートリアル担当だったダーラボン(王立士官アカデミーの教官)も出番が増えています(笑)。
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――とくにブレイブストーリー内で閲覧できる“情勢”は、ラムザを取り巻く複雑な人間関係が整理されていてわかりやすかったです。『FFXVI』のヴィヴィアンレポートを思い出しました。
前廣
スタッフの多くは『FFXVI』を担当しましたから、ヴィヴィアンレポートに似ているところはあるかもしれません。『FFXVI』は主人公・クライヴを中心にした物語だったので、彼にフォーカスを当てる形で構成すれば、時系列や変遷も見やすくまとめることができました。いっぽうで『FFT』はラムザが主人公であるものの、周囲で様々な出来事が起こります。いろいろ試行錯誤した結果、ラムザを中心にしつつもプレイヤーにいちばん届けやすい形として、情報量をコントロールして時系列にまとめることにしました。
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――ひさしぶりにプレイするにあたって、時系列順にチェックしましたが、非常にわかりやすくて物語を思い出しやすかったです。いっぽう、クラシックバージョンについては、バトルもブレイブストーリーも本当に当時のままという印象です。前回のインタビューでも、“当時のままに見せる”ために苦労されたとうかがいました。
皆川
クラシックは、記憶の中にある『FFT』をいまの解像度の高いモニターで見るとこうなるだろうとイメージして、それ以上あまり味付けしないというディレクションを行いました。モデルも一部のディティールを調整していたりはするのですが、角張った状態はあえてそのまま残しており、うまく当時のままの表現ができたかなと感じています。
現代に合わせて便利な機能やさまざまな要素を実装
――つぎにバトルについてうかがいます。エンハンスドではかなり細かいところにも手を加えられていて、とくに印象的だったのは、連戦するステージでも途中でワールドマップに戻れるようになっていたことでした。
前廣
これで、ウィーグラフ(※)戦などの難所で詰むこともなくなったかと思います。
※『FFT』のチャプター3において、リオファネス城の3連戦の2戦目に登場する強敵。ラムザが一騎打ちで戦うことになるうえ、たとえ勝利してもつぎの戦闘が控えている。オリジナル版ではすべての戦闘に勝利しないとワールドマップに戻れないため、連戦前のセーブデータを残しておかないと、育成不足の場合に詰んでしまう可能性があった。――エンハンスドでは安心してセーブできますね(笑)。ほかにもエンハンスドの戦闘では、移動をキャンセルできたことと、ボタンを押しているあいだ戦闘を早送りできる機能が快適でした。
前廣
移動のキャンセルは当時からもっとも要望の多い点のひとつでしたし、僕自身もニコニコ生放送の番組企画(※)でひさしぶりに『FFT』をプレイしたときに、いちばん気になったところでした。いまの時代に合わせて『FFT』を蘇らせるなら、移動のキャンセルは絶対に必要だと思ったのです。また、早送り機能に関しては、くり返し戦闘を行うゲームなので、必要なところだけ早送りしてもらえたらと考えて実装しています。
※2018年5月に放送された“ファイナルファンタジーXIV プレゼンツ「ファイナルファンタジータクティクス」実況プレイ”のこと。『FFXIV』の大型アップデートであるパッチ4.3にて、『FFT』や『FFXII』の舞台となるイヴァリースをモチーフにしたクロスオーバーコンテンツ“リターン・トゥ・イヴァリース”の第2弾、“封じられた聖塔 リドルアナ”が実装されるのを記念して配信された。![[IMAGE]](https://cimg.kgl-systems.io/camion/files/famitsu/51058/aae566253288191ce5d879e51dae1d8c3.jpg?x=767)
――早送り機能は、イベントやアビリティの発動時に自動的に停止するのも、かゆいところに手が届いていると感じました。
前廣
本作は、戦闘時に発生するキャラクター同士の掛け合いがかなり追加されています。早送り機能を使っていてもそれらを見逃さないように、自動的に解除するようにしました。アビリティに関しても詠唱ボイスを追加しているのですが、それも聞き逃さないようになるかと思います。
横山
なお開発スタッフの中には、ボタンを押しっぱなしにしているあいだに早送りになるのではなく、一度ボタンを押したらずっと早送りにしてほしいという意見もありました。その気持ちももちろんわかるのですが、プレイヤーが意識して早送り機能を使ってほしいというこだわりから、現在の仕様になっています。
――あえてプレイヤーが自分の意志でコントロールできるようにしたと。あとは、戦闘中にコンバットタイムラインで敵味方の行動順を確認できるのが非常に便利でした。こちらを実装した経緯を教えてください。
前廣
CT(チャージタイム)というバトルシステムは『FFT』の特徴のひとつではありますが、オリジナル版では戦闘を中断して、メニューを開いて行動順を確認する必要がありました。本作では、行動順を考えて使用するアビリティや対象を選ぶという、CTのバトルシステムの楽しさはそのままに、より直感的で遊びやすくしたいという思いから、コンバットタイムラインを実装しています。
皆川
本作のプロジェクトが立ち上がったときに試作したサンプルの戦闘画面にも、コンバットタイムラインが最初からありました。当時はマウス操作でもプレイしやすいように、もう少し大きく表示するなどしていましたが、基本は大幅に変わることなく、いまの形になっています。
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――Steam版ではキーボード&マウス操作にも対応しているとうかがいました。
皆川
最後の追い込みでなんとかマウス操作を追加しました。ただしオリジナル版のマップデザインは、もともとマウス操作を想定したレベルデザインになっていません。とくにトンネルのような横穴のあるマップでは、マウスで横穴の中にあるマスをクリックさせるのが難しくて……。そういった特定の場所ではキーボードと併用することでマウスでも操作できますが、やはり基本はコントローラーのほうがプレイしやすいと思います。
――ちなみにコンバットタイムラインのおかげで行動順を予測しやすくなったことに加えて、魔法や弓のチャージなどがオリジナル版よりも早く発動するようになったように感じました。こちらは実際に発動時間を調整しているのでしょうか。
前廣
使い勝手の悪かったアビリティについては調整を加えています。
横山
とくに召喚魔法は使いやすくなっていますよ。
前廣
召喚魔法以外にもCTの長かったアビリティに関しては、オリジナル版よりも使いやすくなっています。ただ、開発段階では弓のチャージを強化しすぎてしまい、敵陣に弓使いが多いと絶対に勝てない、という事態も発生しました(苦笑)。味方も弓使いさえいればいいという状態だったので、再度見直してそれぞれのチャージごとにベストな時間にしています。
要望を受けて源氏装備が盗めるように調整!
――エンハンスドでは、オリジナル版よりも有用なアビリティが多くなりそうですね。ほかには、マップを俯瞰視点で確認できる機能も追加されていますが、どのような経緯で実装したのでしょうか?
皆川
『タクティクスオウガ 運命の輪』や『タクティクスオウガ リボーン』のように、マップを上から見下ろすことができると敵の位置などを把握しやすいと思ったのですが、いざ本作でやろうとすると予期しない問題が起こってしまい……。ですから本作では利便性を第一に考えて、マップの見た目や雰囲気とは切り離す形で俯瞰視点を考えました。
横山
そのうえで、ボタンを押したときだけ俯瞰視点になるような仕様にしています。たしかに高低差のあるマップでは敵味方の位置関係を確認しにくい場面もあるのですが、高低差のあるマップだからこそ、“高台に陣取って弓で狙う”といった攻略を楽しむことができます。本作でも基本はオリジナル版と同じように遊んでもらいたくて、あえて常時俯瞰視点でプレイできるようにはしていません。
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――戦闘ではクリスタルの継承画面も見やすくなっていると感じました。
前廣
ご指摘の通り、オリジナル版ではひとつひとつアビリティをチェックする必要があったのに対し、本作ではクリスタルで継承できるアビリティが一覧で表示され、わかりやすくなっています。
また、戦闘に関して言えば、本作を発表した際のインタビューに対する国内外のファンの皆さんのお声の中で、「源氏装備を盗めるようにしてほしかった」とのご要望を非常に多く頂戴して、また、オリジナル版のディレクターである松野さんもそのようにおっしゃっていたので、エンハンスドバージョンにて盗めるように調整を行うことにしました。発売日当日のパッチにて反映されますので、ぜひともオンラインに繋いでいただいて、パッチを当てていただければと思います。
――なんと! それはオリジナル版のプレイヤーとしては感無量です……。ほかに気になった変更点は、ワールドマップで動かなくても、敵と任意でエンカウントできるようになったこと、トロフィーや実績のような“アカデミーレポート”が追加されていたことです。それぞれ実装の経緯を教えてください。
横山
敵との任意エンカウントは、私がどうしても実装したかった機能です。オリジナル版だと、味方を強化したいときに敵と遭遇するまでワールドマップを行ったり来たりする必要がありました。このエンカウント方法はいまの時代にはそぐわないと考えて、エンハンスドではワンボタンの“敵を探す”で、プレイヤーがいつでも自由に敵と戦闘できるようにしています。
前廣
ちなみに、オリジナル版には進入方向に応じて、出現する敵が変わるという仕様がありました。ですからフィールドを動かずに敵とエンカウントできる仕様に変更しながら、過去に進入した方向に合わせて出現する敵を変える仕様を再現するのは、けっこうたいへんでしたね。
――アカデミーレポートを追加した経緯はいかがでしょう。
前廣
アカデミーレポートは、まさにトロフィーや実績と同様の要素です。トロフィーや実績がないNintendo SwitchやNintendo Switch 2のプレイヤーにも、ほかのハードのプレイヤーと同じ体験をしてほしくて、エンハンスドに追加しました。ちなみに、プレイステーション4、プレイステーション5、Xbox Series X|S、Steamの場合はトロフィーや実績とリンクしており、アカデミーレポートを獲得すると同時に解除されます。なお、クラシックバージョンにはアカデミーレポートやトロフィー、実績はなく、エンハンスドのみになります。
――新たなやり込み要素としても楽しめそうですね。それでは最後に、発売がますます楽しみになったファンや読者に向けて、メッセージをお願いします。
横山
くり返しになってしまいますが、本作ではより多くの人にすばらしいシナリオと、タクティカルなバトルを楽しんでもらいたくて、決定版と言えるベストな形を目指しました。オリジナル版は28年も前のタイトルですが、シナリオやキャラクターには現代の人でも共感できるところがたくさんあると思います。オリジナル版を遊んだことがある方も、『FFT』を初めて体験される方も、楽しんでいただけたらうれしいです。
皆川
オリジナル版は日本語版を作ったあと、英語版を作り、いろいろなプラットフォームで開発したので、全世界の皆さまのもとに届けるまで時間がかかりました。ですが本作は、複数のプラットフォームで同時展開をしますし、ボイスは日本語と英語、テキストは日本語、英語、ドイツ語、フランス語に対応しています。どのプラットフォームでも共通の体験が楽しめますので、いちばん遊びやすいと思う環境で堪能していただければと思います。
前廣
30年近く前に松野さんを中心としたスタッフが作り上げた『FFT』を、横山たちのようにこれから活躍していくスタッフの力を借りて、現代に再構築しました。オリジナル版を遊んだファンの方はもちろん、これまで『FFT』に触れたことがない方にも手に取っていただいて、タクティカルRPGの楽しさを感じていただければと思います。複数のプラットフォームに対応したぶん、皆様のプレイスタイルに合ったものを選びやすいと思いますので、自分の好きなハードでじっくり楽しんでもらえるとうれしいです。
※掲載されている画面写真はすべて開発中のものです。内容・仕様は予告なく変更される場合があります。