Bungie新作『Marathon』国内独占アルファテストレビュー。CSにも対応するPvPvE脱出系シューターの魅力と開発が抱える課題がハッキリ見える結果に

byいーさん

Bungie新作『Marathon』国内独占アルファテストレビュー。CSにも対応するPvPvE脱出系シューターの魅力と開発が抱える課題がハッキリ見える結果に
 『Halo』や『Destiny』といった名作シューターを手がけてきたBungieが、新作『Marathon』を2025年9月24日にリリース予定。1990年代に展開されたBungie初期のタイトルを現代に蘇らせた作品だが、単なるリメイクや続編ではなく、PvPvEのエクストラクションシューター(脱出系シューター)として再構築されている点が特徴だ。

 本稿では、ゲームの概要に加え、南北アメリカ限定で開催されたアルファテスト版をプレイした独占インプレッション、そしてBungieが現在直面している課題について詳述する。

 なお、リリース時の対応機種はプレイステーション5(PS5)、Xbox Series X|S、PCとなっている。
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惑星タウ・セティIVを舞台にしたランナーの生存戦略とゲーム概要

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 舞台は2893年の惑星タウ・セティIV。プレイヤーは"ランナー"と呼ばれるサイバネティックな傭兵となり、危険なゾーンへ潜入。資源を収集し、AI制御の敵やほかのプレイヤーチームと交戦しながら、貴重な戦利品を確保して脱出ポイントを目指す。

 エクストラクションシューターというジャンルは、『
Escape From Tarkov』(エスケープ フロム タルコフ)のようなコアゲーマー向きか、カジュアルに寄せたタイトルのふたつの傾向に分かれる。『Marathon』には『Apex Legends』を彷彿とさせる3人1チーム制やキャラクター固有のスキル、死亡後のリスポーンといったバトルロイヤル的な要素も取り入れられており、カジュアルなプレイヤー層をターゲットにしていると見られる。

 最大で6チーム、合計18人のプレイヤーが同一マップにスポーンし、各マッチは25分以内の制限時間で展開する。このジャンル特有の仕様として、死亡時には獲得した戦利品を含む装備の大部分を失うという高いリスクが存在し、これが毎回のプレイに強い緊張感を与える。

『Destiny』の系譜を継ぐランナーシステムとヒーローシューター的アビリティシナジー

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 プレイヤーは、試合開始時にそれぞれ固有のアビリティを持つランナーを選択する。アルファテスト段階では、Locus、Glitch、Blackbird、Voidの4名が使用可能で、それぞれタンク、機動性、偵察、ステルスといった基本的な役割に分類される。
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 Locusはシールドやミサイルを駆使、Glitchは二段ジャンプなど機動性に秀で、Blackbirdは周囲の敵を探知するスキャン能力を持つ偵察系、そしてVoidは透明化やスモーク展開を得意とするステルス役だ。『Destiny』の経験者であれば、タイタン1名、ハンター3名といった構成を想像すると理解しやすいだろう。

 ウォーロックがどこに行ったのかは考えてはいけない。製品版のローンチ時には、さらにふたりのランナーが追加される見込みなので、多分そこにウォーロックの系譜があると期待しよう。
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 チーム編成やアビリティの連携が戦術の鍵を握る。たとえば、Voidはスモークに触れると自動的に透明化するが、このスモークは敵味方を問わず効果を発揮するため、Voidが3人いればひとりが展開したスモークで全員が透明化できる。敵のVoidも透明になるため強力無比だが利敵行為になりかねないリスクも孕んでいる。
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 本作のユニークな点として、プレイヤーが倒されるとまずダウン状態になり、追撃を受けて初めてデスとなる。しかし、デスした味方はどのランナーでもその場で蘇生が可能だ。リスポーン不可であったり、特定の蘇生ポイントへ移動する必要があるといった制約はない。蘇生には時間を要するものの、比較的容易に行えるので、倒されてしまっても逆転のチャンスは残っている。

探索と戦闘、そして脱出をくり返すコアゲームプレイ

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 マップ内にはAI制御の敵が配置されており、プレイヤーにとって大きな脅威となる。Bungie作品らしい巧妙かつ厄介な動きでプレイヤーを翻弄し、集団で襲い掛かる戦法を得意とする。そして、ほかのプレイヤーチームとの遭遇が最大の危険要素だ。PvPvEの環境下では、プレイヤー同士の戦闘中にAIが乱入するケースもあれば、逆にAIと交戦中の別チームを奇襲する好機も生まれる。
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 ゲームの基本的なサイクルは、建造物を探索し、AIの敵を排除し、ほかのチームからの不意打ちを警戒しつつ脱出ポイントへ向かうことである。戦利品は宝箱や敵から入手でき、これらを納品することで任務の進行や永続的なアップグレードがアンロックされる。
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 死亡すると装備の大部分を失うリスクがあるものの、装備を失ったプレイヤー向けに基本的な武具を提供する“スポンサーキット”という救済措置も用意されている。そのため、ナイフ一本で戦場へ赴かなければならない状況は少ない。

 ただし、簡単な任務をソロでこなす際には、あえて軽装で挑む方が効率的な場面も存在する。
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 『Destiny』シリーズではコミュニティの力を結集して謎を解くギミックがあったが、本作にも謎解き要素があるようだ。 また、エリアによってはランダムイベントが発生して強力な敵が徘徊する代わりに美味しい報酬がもらえたりもする。

Bungie印の卓越したガンプレイと武器カスタマイズ

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 実際にアルファテストに参加して、『Marathon』という作品が持つポテンシャルと課題点が明確になった。

 まず称賛すべきは、Bungieの真骨頂とも言える銃撃戦のクオリティだ。銃声、リコイル、着弾感、各武器の個性など、射撃に関するあらゆる要素が心地よく調整されており、撃つこと自体の爽快感は特筆に値する。
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 本作にはアサルトライフル、サブマシンガン、ショットガン、スナイパーライフルといった標準的な武器カテゴリーが存在する。各武器にはランクが設定されており、高ランクのものは性能が向上したり、特殊なパークが付与されたりする。さらに、アタッチメントによるカスタマイズで性能を強化することも可能だが、一度装着したアタッチメントは取り外せない点には留意が必要だ。無数の組み合わせを試行錯誤し、自分だけの“愛銃”を見つけ出した時の喜びは格別である。

 筆者は2点バーストの“Twin Tap”という武器を好んで使用していたが、遠近両用で高い性能を発揮し、非常に頼りになる存在だった。それだけに、失った際の喪失感もまた大きかった。
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 また銃以外にもランナーの性能を向上させるEquipmentやShiledといった防具やアクセサリーもある。このあたりも『Destiny』をプレイしているとわかりやすい。

強烈なアートディレクションと独特すぎるUI/UX

 つぎに注目すべきは、その独創的なアートスタイルである。大手AAAスタジオの作品としては異彩を放つ、強烈なビジュアルが特徴だ。その個性は極めて強く、決して万人受けするとは言えないものの、それゆえに鮮烈な印象を与える。
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 キャラクターデザイン、建造物や内装、武器のデザイン、世界観の構築、そしてUIに至るまで、徹底したこだわりが感じられる。UIに関してはクセが強すぎて直感的な理解が難しく操作性も万全とは言えず、ほかのゲームならお世辞にもよいとは言えないUIなのだが、この作品の持つ強烈な個性ゆえか、「まぁいいか……」と不思議と許容できてしまう側面があった。
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 建造物内部におけるライティングやシャドウの表現も見事だ。かつてBungieは『Destiny 2』においてテクスチャの変更を伴わずにライティング技術を大幅に向上させることでグラフィックを強化した実績があるが、『Marathon』でも同様のアプローチが採用されているようだ。ただし、『Marathon』はPvPvEタイトルであり、筆者のようなプレイヤーはグラフィック品質よりもフレームレートを優先するため、テスト中は画質設定をほぼ最低まで下げてプレイした。自分の腕だと美麗なグラフィックでは敵を倒すことはできないからだ。

 一方で、屋外のフィールドでは画質設定による変化があまり感じられなかった。これがデフォルトでフィールドのグラフィック負荷が抑えられている設計なのか、あるいはアルファ版特有のレンダリングの問題なのかは現時点では判断できない。

コンソール展開の意義とチート対策への高まる期待

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 3つ目の注目点はコンソールへの展開である。『Marathon』はクロスプレイに対応し、PS5とXbox Series X|Sでもリリースが予定されている。このジャンルの脱出系シューターはPC向けタイトルが主流であり、コンソール向け、特にAAAスタジオによる作品は希少な存在と言える。

 エクストラクションシューターに限らず、PCで展開される多くの対戦型シューターは、依然としてチート行為という深刻な問題に直面している。Bungieは『Marathon』のアンチチートシステムとして、『Destiny 2』でも採用している“BattleEye”を採用しているものの、現状ではいかなる対策も不正行為を完全には防ぎきれないのが実情だ。一度のデスで多くを失うエクストラクションシューターにおいて、チーターによって倒されることほど不条理な体験はないだろう。

 開発側は『Marathon』を基本プレイ無料ではなく有料タイトルとすることで、チーターの参入障壁を上げようとしているが、これだけで問題が解決するとは考えにくい。有料タイトルであってもチーターの存在は後を絶たないからだ。

 しかし、ここでコンソール版の存在が大きな利点となる。コンソールはPC環境と比較してチート行為が格段に少ない傾向にある。さらに有料タイトルとなれば、不正プレイヤーの参入はより困難になるだろう。Bungieがプレイステーションファミリーの一員であることを考慮すれば、PlayStation Plus会員向けの割引や特典などを提供することで、コンソール版の優位性をさらに高めることができるのではないだろうか。

ソロプレイにおける障壁とチームの重要性

 ここからは、アルファテストを通じて感じた懸念点を挙げていきたい。率直に言って、筆者は『Marathon』の将来に対して大きな不安を抱いている。
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 第一に、ソロプレイヤーにとっては厳しい道のりが予想される点だ。本作は3人チームでの連携を基本としているため、パーティーを組んでいるか否かで戦力に大きな隔たりが生じる。AI敵の配置や数も3人での対処を前提としている節があり、単独行動は著しい不利を招く。マッチングした野良プレイヤー同士で円滑な意思疎通ができれば理想的だが、これまでの多くのオンラインゲームが示してきたように、それは容易ではない。
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 さらに、『Marathon』では各プレイヤーが個別の任務を請け負うため、目的地が一致すればいいものの、それぞれが異なる目標に向かう場合は連携が困難になる。ほかのプレイヤーに可能な限り合わせようと努めても、相手が自身の任務を完了次第、こちらの状況を顧みずに帰還を選択するケースも少なくなかった。しかし、これはプレイヤーを非難できるものではないだろう。デスによってすべてを失う可能性があるゲームシステムにおいて、自身の生存と戦果の確保を最優先に考えるのは自然な判断であり、残念ながら現状のゲームデザインがそれを助長している側面がある。
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 任務の進行度はチームで共有されるため、同じ任務を受けていればひとつの任務アイテムを入手した時点で全員分がカウントされる。アルファ時点では各勢力からそれぞれひとつずつしか受けられないが、複数の任務をまとめて受諾できるようになれば、任務不一致の問題は緩和される。

ジャンルにおける新規性と“平凡さ”というジレンマ

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 つぎに、筆者が懸念を覚えたのは“平凡さ”である。エクストラクションシューターとしては後発にあたるため、『The Cycle: Frontier』のような既存のカジュアル系タイトルが持つ基本的な要素は網羅している。そこに独自のアートスタイルやヒーローシューター的な要素を融合させ、オリジナリティを追求しようとしている点は理解できる。

 ところが、根幹となるゲームプレイはほかのエクストラクションシューターと大差なく、率直に言えば、際立ったビジュアル以外の新規性や独自性に乏しい印象を受けた。たしかに射撃の感触は素晴らしいが、エクストラクションシューターは絶えず銃撃戦が発生するタイプのゲームではない。また、前述の通りアートデザインは個性的だが万人にアピールするものでもない。こうした中で有料タイトルとして展開し、どのようにしてプレイヤーを継続的に惹きつけ、コミュニティを維持していくのか、疑問が残る。

開発体制を揺るがすアセット無断流用問題と懸念される影響

 そして、これが最大の懸念材料と言えるだろう。じつは本記事の公開は当初、より早いタイミングを予定していた。しかし、Bungie内部での不祥事が明らかになり、急遽内容を追記する必要が生じたのである。

 筆者が再三言及してきた『Marathon』の際立った特徴であるアートデザイン面において、残念ながらBungieの元デザイナーによる、別のデザイナーAntireal氏の作品の無断流用が発覚した。具体的には、Antireal氏が2017年に制作したポスターの一部が、そのままゲーム内アセットとして実装されていたのだ。


 Antireal氏がXで告発すると、Bungieは迅速に事実確認を行い、元デザイナーが無断流用した事実、そして社内の誰もがその事実に気づかぬまま実装に至ったことを認めた。後日、予定されていた公式配信において、アートディレクターのJoseph Cross氏がこの件について公に謝罪。Antireal氏本人にも個別に謝罪が行われ、現在両者間で協議が進められているとのことだ。


 ここで補足しておきたいのは、『Marathon』全体のアートスタイル自体はAntireal氏個人の創作物というわけではなく、1990年代から続くデザイン潮流を汲むものであるという点だ。Cross氏自身も10年以上前に、類似のテイストを持つ作品を発表している。したがって、『Marathon』のすべてが無断流用であるかのような誤解は避けるべきであり、問題はあくまで一部アセットの盗用である点に留意されたい。
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 とはいえ、デザインは『Marathon』の大きなセールスポイントのひとつである。その根幹に関わる部分でこのような不祥事が発生した以上、『Marathon』には今後“無断流用”という不名誉なレッテルがつきまといかねない。

 発売前からこれほどネガティブな評価を受け、問題となった部分の修正作業も不可避となった今、果たして『Marathon』は当初の予定通り2025年9月24日に無事リリースされるのだろうか。また、仮にリリースされたとして、この一件がプレイヤーの心象に与える影響を考慮すると、多くのユーザーを長期間惹きつけられるのか、依然として大きな不安が残るので問題の解決に期待したい。
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