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『龍が如く8外伝』発売記念インタビュー。「龍スタは海に弱い」「サメを呼びたい」真島がハワイで海賊になる最新作はいかにして“『龍が如く』の新境地”となったのか

by齋藤モゲ

byおしょう

『龍が如く8外伝』発売記念インタビュー。「龍スタは海に弱い」「サメを呼びたい」真島がハワイで海賊になる最新作はいかにして“『龍が如く』の新境地”となったのか
 2025年2月21日に発売となった『龍が如く』シリーズ最新作『龍が如く8外伝 Pirates in Hawaii』(パイレーツ イン ハワイ。以下、龍が如く8外伝)。本作ではシリーズ屈指の人気キャラクター・真島吾朗を主人公に、スピーディーなアクションバトルや海賊船どうしの海賊バトルが楽しめる作品となっている。

 そんな本作はどのようなコンセプトのもの、どのような過程を経て完成にいたったのか。本作の開発コアメンバーであるチーフプロデューサーの阪本寛之氏、プロデューサー兼チーフディレクターの堀井亮佑氏、ディレクターの上原康輝氏にお話をうかがった。極力ネタバレのない形で本作に込められた想いや、遊ぶときに役立つコツなどを聞いてみたので、現在プレイ中の人も、これからプレイする予定の人も、ぜひご一読いただきたい。
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※本インタビューは週刊ファミ通2025年3月6日号(No.1887/2025年2月20日発売)に掲載された記事に一部加筆したものです。[IMAGE]

阪本寛之 氏さかもと ひろゆき

プランナーとして入社後、『F-ZERO AX/GX』などのディレクターを担当。その後『龍が如く』シリーズに初期から携わり、ディレクター、プロデューサーを経て、現在は『龍が如く』シリーズチーフプロデューサーを務める。文中は阪本。

堀井亮佑 氏ほりい りょうすけ

長きにわたり『龍が如く』シリーズに関わる。同シリーズにカラオケを導入し、ほぼすべての曲の作詞を手掛けることでも有名。『龍が如く8』などでディレクターを担当。本作ではチーフディレクターと兼務で初のプロデューサーを務める。文中は堀井。

上原康輝 氏うえはら やすあき

『龍が如く4 伝説を継ぐもの』でシリーズの開発に参加。以来、「龍が如くスタジオ」でバトルプランナーとして活躍。『龍が如く 維新! 極』が初のディレクター作で、完全新作のディレクターは本作が初めて。文中は上原。

大人数の敵と広い場所で、戦って気持ちいいバトルに

――全国6都市で行ったイベント“真島のマジ祭り”も好評で、多くのファンの反応も届いたと思います。発売前の感触はいかがでしたか?

堀井
 イベント内で先行試遊体験を開催し、多くの方に実際に遊んでいただき、いちばん多かったのは「バトルが気持ちいいね」という感想でした。ジャンプなど含めた新しいバトルデザインへの挑戦が受け入れられたという手応えがありましたね。

――ジャンプという要素は、最初から入れるつもりだったのでしょうか?

上原
 はい。開発の最初期から「ジャンプにチャレンジしてみようか」という話がありました。どうしても桐生が主人公のアクションですとジャンプのイメージがなかったのですが、今回は真島が主人公なので、彼ならではの部分を洗い出していった結果、ジャンプははずせないな、という結論にいたりました。
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阪本
 それには、ハワイのサイズ感も影響しているんです。そもそも広大で道幅も広いホノルルシティで、どう気持ちよく、縦横無尽に動けるかというのは、初期の課題でした。殴り飛ばして敵が遠くに行ったとき、追撃しにダラダラ走って行くのもテンポが悪いですし……。かと言って、バトルエリアを制限するのもぜんぜんイマドキじゃない。

――確かにそうですね。

堀井
 ハワイのような広い場所でアクションをすることって、いままではそう多くなかったんです。日本の繁華街を舞台にしていたこれまでは、基本的に狭い路地で戦うことを前提としてバトルを作ってきましたから。

阪本
 バトルフィールドに壁を作って、狭いところと同じ感じで戦えるようにしたり……。

堀井
 でも今回は逆に、広い場所で気持ちよく戦えて、そしてそれを狭いところにもアジャストさせるという手法にしました。だからふつうのコンボでも、すごい移動量があるんですよね。

――そう、よく動くんですよ!

堀井
 ある意味、狭い場所で戦うという縛りを解き放ったことが、爽快感につながっているのかなと思います。

上原
 我々はずっと街中バトルを作ってきましたが、いままでに溜めたそのノウハウやセンス、テクニックが、すべて本作のバトルに入っているんじゃないかな、と思いますね。

――アクションバトルとしては、シリーズの集大成という手応えですか?

阪本
 そうですね。いきなりコントローラーを渡して遊んでもらったとき「気持ちいいね」、「おもしろいね」と言ってもらえるような要素は、すべて入っているように思います。

――あと、バトルシステム的な面もそうですし、演出面もですが、ある種、“振り切っている”という印象も持ちました。

阪本
 堀井なんて最初のころ「スウェイの距離をもっと増やして」と言っていましたからね。「瞬間移動してもいいから!」って(笑)。

――(笑)。その瞬間移動はワイヤーフックという形で反映されているかもしれません。

上原
 そうですね。海賊らしく、広いバトルステージで活きる道具になっていると思います。
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堀井
 「楽しいほうがいいから、分身も増やして勝手に動くように!」とか言いましたね。

上原
 「勝手に動くって、もうそれ分身じゃないでしょう!」って開発メンバーで笑いながら作ってみたら、かなり楽しい仕上がりになりました(笑)。ちなみにもともとの堀井の企画書には「こんなことをやりたい」という案がいくつか書かれていて、そこからさらにみんなでアイデアを出し合いました。いろいろな効果やギミックを実験した結果、最終的に残ったものが狂犬スタイルと、3種の海賊道具、という流れになります。

堀井
 「桐生のバトルと差が出ないと意味がない」というのは、本作のひとつのコンセプトでした。今回は“パイレーツ”という突飛な設定でもありますし、ヘンにいままでの桐生らしさやルールを引きずると地味なバトルになりそうで……。だったら目一杯ハジけようと。

――突き抜けちゃったわけですね。

堀井
 やっぱり遊ぶ人の想像を超えていかないとダメだと思うんです。手堅いゲームもいいですけど、真島と海賊を掛け合わせている時点で、みんなある程度ぶっ飛んだものを期待しているでしょう?(笑) なので、「ぶっ飛ぶところはぶっ飛ぼう。分身が自立して動いてもいい!」となりました(笑)。
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――リアルとか、理屈とか、そんなのはいったん置いておいて、みたいな(笑)。

上原
 それは、開発初期から堀井にずっと言われ続けていたことですね。「予想を超えるのは大前提で、超えた先のナナメ上を目指すんだ!」って。

――それは、アクション以外の部分も含めた、全体のコンセプトだったのでしょうか?

堀井
 そうですね。今回は若いスタッフも多かったですし、実験的な作品でもあったので、過去に縛られずいろいろなアイデアをどんどん出していこうという思いは、全体を通してありました。だから「サメを呼び出したいんですけれど……」みたいな意見も飛び出たりして。

――堀井さんの案じゃなかったんですね?

堀井
 召喚は若いスタッフ中心に出たアイデアですね。そこからどうやってゲームに取り込んでいこうか、という話をして、「一般常識だとサメは召喚できないけれど、“財宝の呪い”的な感じなら、ワンチャンいけるでしょ!」って。

――ワンチャンって(笑)。

堀井
 まあ、呪いですから(笑)。そのへんの遊び心とか、エンタメとして求められている部分を総合的に考えて、いろいろな要素を取捨選択して作っていった感じです。
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――さきほど、実験的というワードが出ましたが、本作はバトル時に出現する敵の数がかなり多い印象です。このあたりも、挑戦した部分になるのでしょうか?

上原
 はい。『龍が如く7外伝 名を消した男』(以下『7外伝』)のときにも闘技場で、たくさんの人数を出すことに挑戦したのですが、その経験を踏まえて「もっといけそうだね」という見込みが立ったんです。「それならやれるところまでやろう」と、プログラマーやデザイナーと協力して、現時点で出せる最大人数に挑戦しました。さきほど集大成というお話がありましたが、まさにシリーズ最大数の敵を出せるようにチューニングしました。
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堀井
 ハワイは広いですから、敵がそこそこいないと、画がスカスカになってしまうんです。それに海賊ものなので、数が多いほうが楽しいですよね。「動かなくてもいいからとにかく敵を増やして!」って。

――出ました! 極端!(笑)

上原
 最初は「本当にこの人数を動かせるの?」といった不安もありました。

堀井
 事実、動いていなかったですからね。

阪本
 完成版はちゃんと全員動いている?

上原
 ちゃんとすべてのハードでしっかり動いていますよ! 大丈夫です!

堀井
 まあ、『龍が如く』の場合、タクティカルな難しいバトルが求められているわけでもないので、とにかく「仲間と協力して強い敵を倒すぞ!」という共闘感が出ればいいなと思っていました。結果的にはすごくいい感じに着地ができたと思います。

上原
 リーチの長い攻撃や範囲の広い攻撃をいろいろと用意しているので、“遠くにいる敵の近くにも一瞬で行けるし、豪快な技で一気に大勢の敵を吹き飛ばせる”という部分も楽しんでいただけると思っています。
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作っては壊しをくり返した難産の海賊バトル

――本作は海賊というところで、船を操作しての航海や、船どうしでのバトルが搭載されています。それらの開発は順調でしたか?

堀井
 いちばん難産でしたね。

阪本
 本当に最後まで悩んだ部分です。いろいろなものを作ってはチェックして、最終的にみんなで話し合って決めたのですが、そこにたどり着くまではもっとも不安な要素でした。

堀井
 「海賊のゲームなのに船に乗らない」というのはありえないので、最初から海賊団を育てて強くし、船で行動できる範囲を広げていくという大筋は決まっていました。ですが……“龍が如くスタジオ”は、陸には強いものの、海には弱いんですよ(笑)。

――海に弱いとは?(笑)

堀井
 単純にずっと繁華街とか地面のある舞台を作ってきたので、経験値が比較的薄いということです。当然、海戦なんて作ったことがないですからね。まずは気持ち悪くならない範囲の波で船を動かすところからスタートして、つぎに大砲を撃ち合うバトルを作ったのですが、リアルさを追求したらかなり難しくなってしまって……。

上原
 最初は砲弾の軌道や着弾までのタイムラグもちゃんと計算して、撃ち合う距離ももっとリアルな遠さで……と、ガチで作ったんですよ。ところが、僕の中での“難易度のベンチマーク”である堀井が、ぜんぜんうまく操作できていなくて。「あ、これダメなやつだ! 調整ミスった!」って。

――これは、ゲーム側が悪い、と(笑)。

堀井
 僕はスタジオの中でもゲームがヘタなことで有名なので、バトルなどもそうなのですが、「とにかくこれをやってみてください」とテスト版を渡されるんです。僕がクリアーできないものはダメ、みたいになってまして……。

上原
 とてもヘタなプレイを見て「あ、難しすぎた! 持ち帰ります、もういいです」って(笑)。

阪本
 そういうやりとりの結果、敵船との距離感を調整して、難度もかなり下げました。

堀井
 あと、“海の広さをどうするか問題”もありました。これまで箱庭的なゲームを作り続けてきたので、海にも陸地や島を置きたくなるんですよ。そうしたら、結果的にハワイの海が瀬戸内海みたいになってしまって。

――何かモノがないと不安になると。

阪本
 対岸が見えていて、船が遊覧船みたいでしたからね。

堀井
 少年に広い世界を見せる、とか言っているのに、そんなマップはちょっと……(笑)。もちろん、陸が多ければある程度移動ルートが定められるので、イベントが起こしやすいというメリットはあるのですが、本作では「それは違うだろう」と。

阪本
 いやあ、最初はヤバかった(笑)。

堀井
 なので、もっとスケール感を出そうとしたら、今度は「ホノルルシティからネレ島まで30分かかります」みたいなマップになったりもして(苦笑)。いろいろ考えた結果、“海域”で区切ることにしました。これなら、氷山や火山といった特徴的なエリアも出せるし、いいのではないかと。
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――全体を通して作り直しは多かったのですか?

上原
 海は、かなりやり直しました。

阪本
 これでいけそうだ、という確信を持ったのが、2024年10月くらいでしたから。

――めちゃくちゃギリギリですね!

阪本
 9月に行われた東京ゲームショウ2024の裏で、ずっと海のトライアンドエラーをしていたんです。当時、海に関して取材などで詳しく話さなかったのはそういう事情もありました。

上原
 作り直すたびに、どんどんパーツは揃っていくんですが、よりよくするためにいろいろ改良やテストを何度もくり返して……。

堀井
 大枠が決まってからも、船どうしのバトルをどこまで簡単にするかの調整で苦労しましたし、ルールもかなり変えました。船上で真島自身が攻撃することができる要素は、その名残だったりします。

――というと?

堀井
 砲撃戦というか、シューティング自体を苦手に感じる人はやはり多いと思うのです。ただ、真島を動かすことはほとんどの人ができる。だったら真島がロケットランチャーを撃って戦えれば、シューティングが苦手な人でも遊べるのではないか、と考えた結果ですね。

 最終的にその要素も残しつつ、砲撃戦自体も遊びやすくしました。世の中に海賊もののゲームはそう多くないので、その中で「“龍が如くスタジオ”ならではの着地」をしなければならなかったのが、いちばんたいへんだったところかもしれません。
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――でも、『龍が如く』らしさはバッチリだったと思います。なにしろ船の操作に“ドリフト”と書いてあって、たまげましたからね(笑)。

阪本
 それも、「クルマの操作感に寄せたら、多くの人が遊べるんじゃないか」という発想ですね。

堀井
 レースゲームの操作方法なら多くの方が知っているので、なじみやすいと考えたんです。

阪本
 結果的にその方針にしたのをきっかけに、船の操作がまとまりました。「操作がクルマでも、気持ちいいならいいだろう」と。

――その難産だった残り香のひとつが“ドリフト”だったんですね(笑)。そんな海賊パートは、海外でも人気のようです。

阪本
 海賊バトルのゲームプレイの映像を海外で公開したら、かなり喜ばれました。北米では、いままでのシリーズでいちばん反響が大きかったですね。それも海賊バトルをおもしろくしようと苦労した結果ですから、苦しかったぶんのお釣りをもらえた感じでした。

――海外は海賊ファンも多そうですね。

阪本
 いますね。『龍が如く』を知らない方にも「おもしろそう!」と反応していただいています。とにかくド派手でわかりやすいですからね。海賊船なのに、火炎放射器で炎をまき散らしたり、レーザーを撃ったり……。『龍が如く』シリーズはそういうオーバーザトップな表現をすることも多いのですが、それも初見の方に興味を持っていただいた理由かなと思っています。

――ちなみに、波のある海上を移動するということで、画面酔いに関してはどの程度注力されましたか?

堀井
 画面酔いへの対策は、けっこう難しいんです。人によって感じかたが異なりますから。ただ、かなり酔いにくいようには調整をしていますし、オプションで波の揺れを抑えたりもできるようになっています。

上原
 個々でオプションを調整いただくという前提ですが、チーム全体でデバッグをしても、酔う人はほとんどいなくなりました。

――おお、それはすごい! 一部の方には、かなりの朗報だと思います。

脇道や遊びの多さは圧倒的なボリュームに

――外伝という立ち位置ながら、これまで以上に収集要素や遊びの脇道が多いのも本作の特徴かと思います。もちろんストーリーをクリアーして終えてもいいかと思いますが、脇道が好きな人は沼にハマりそうですね。育成要素ともちゃんとリンクしていますから。

堀井
 本作は外伝なので物語はナンバリングより短いですが、やはり『龍が如く』を遊んだという満足度はしっかり味わってほしいと思いました。なので海賊バトルも好きな人は長く遊べるようなデザインにしていますし、プレイスポットやサブストーリーも可能な限り詰め込んでいます。

 リッチ島やマッドランティスなど新しい舞台にも遊びをたくさん入れていますが、やはり広いホノルルシティは遊びの密度が別格です。「楽しすぎてホノルルシティから出られない!」と感じてもらえるくらいを目指しました(笑)。
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――遊びの部分でも、本作はかなりハジけていますね。ミナト区系女子とか(笑)。

堀井
 そうですね。過去を振り返っても、ここまではじけた作品はなかなかないので、幅が広がった感じがします。本作で磨いたユニークさや突き抜け感は、チームに技術として根付いてくれたと思いますし、『龍が如く』シリーズという概念自体の幅も広がった気がしています。「日本の街でバトルするだけじゃなくて、船のバトルもいけちゃう」ということを示せたのは、大きいかと。

――あと脇道要素といえば、コーディネートや海賊船のカスタマイズパーツが豊富で驚きました。

堀井
 それについては最初から、『7外伝』よりもラインナップを増やしたいと思っていました。

上原
 『7外伝』のときは、上半身と下半身の衣装を切り分けられなかったんです。今回はまずそこを分けられるようにしたいという話があったので、それをやった結果、必然的にバリエーションが増えた感じですね。

堀井
 総数よりも、バリエーション重視ですね。ラインナップを見たうえで、「これなら自分好みに寄せられるかも」と思ってもらえるようにしました。海賊船のパーツも、考えかたは同じですね。

阪本
 ここ最近まで『龍が如く』シリーズはあまりコーディネートに力を入れてこなかったのですが、『7外伝』で導入したら皆さんによろこんでもらえて。それなら今回もということで、衣装や指輪などの要素を入れました。結果、先行試遊体験での評価も高く、今後もこういったカスタマイズ要素は続けていきたいですね。
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――なかには、ぶっ飛んだデザインもあって、『龍が如く』らしさが満載でした。

堀井
 ただ、ぶっ飛び枠も、“いいぶっ飛び”をしないとダメなので、そこはすごく気にして作っています。

上原
 そこの堀井チェックはきびしいです。

――「ぶっ飛び足りない!」とか?

上原
 逆もあります。「これはちょっと一線を超えてるよ」とか。

――どこに基準があるのでしょう?

堀井
 いい感じのダサさというか、“龍が如くスタジオ”らしさというか……。ダサかっこいいとか、バタ臭い感じとか、つっこみどころがちゃんとある感じが我々らしいぶっ飛びかたじゃないかな? と思っています。

上原
 言語化が難しいのですが(笑)。

堀井
 たとえば冴島の顔がドーン!と描かれているようなものは「間違いなくダサイんだけど……なんかいいな」という線ですね。

上原
 昔から、各所にそんな香りが漂っていますが、こういう部分も含めての『龍が如く』テイストだと思います。堀井のぶっ飛び判断が絶妙なので、OKをもらうのが現場の楽しみでもあります。

ノアがいたからこそ真島の本音が引き出せた

――物語の面でも、これまでのシリーズ作とはまた違った印象でした。とくに少年ノアは大きな存在感がありましたが、どういう意図で中心に据えたのか、教えてください。

堀井
 メインストーリーを担当したのは古田剛志(『龍が如く0 誓いの場所』など、数々のシリーズ作品で脚本を担当)なのですが、彼に相談していくなかで、「真島が海賊になるモチベーションをどうするか」という問題がありました。「記憶を失っても、真島が自分のために海賊になるという発想はしないだろう」と感じていて。なら誰か大切な人のためになら、海賊にもなるんじゃないか、と。
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――確かにそうですね。

堀井
 そこで出てきたのがノアという存在です。物語はノアに命を救われるところから始まります。真島は破天荒ですが、恩はきっちり返すような筋の通った面もある男です。恩人のノアが諦めかけた夢や願いを持っているなら、真島はそれをかなえるために動くのではないかと。そういう意味では、桐生が遥のために動くという形にも近いかもしれません。

阪本
 あと、本作は記憶喪失からスタートするので、いわば“ふつうの真島”がどう振る舞うのか。そして、かつての自分をどう思い出すのかという部分を、ドラマティックに描いています。純粋な少年が真島の命を救うところから始まるのは、そういう意図もあります。

堀井
 本当にノアはいいキャラクターでした。真島もノアの前だと本音が出ますし、ひとりの大人として「夢を諦めちゃいけない」といったことも語ります。そんな、大人どうしの会話ではまず出てこない内容も、ノアとのタッグだと自然と出せたので、そこもよかったですね。
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――振り返れば、『龍が如く 極2』の真島編の脚本も堀井さんが担当していますし、真島にはすごく縁がありますね。

堀井
 もはや真島担当みたいな(笑)。宇垣さんともすごく仲よくさせていただいていますし、いろいろ相談しながら楽しく作ることができました。

――物語といえばサブストーリーについても気になるのですが、それぞれお気に入りのサブストーリーを伺ってもいいですか?

堀井
 私は、“ゴローのこころ”というサブストーリーがお気に入りです。

上原
 本当に発明だと思う。

阪本
 確かに。ちょっとドキドキしちゃうようなエピソードでね。昔の恋愛ゲームをやっているような感じがする。

堀井
 千葉という、サブストーリーを僕と長年書いてきているプランナーが書いているのですが、これまでに培った経験が活きているな、という感じで。

阪本
 恋愛ゲームの経験値がね(笑)。

堀井
 ええ(笑)。本当にオススメです。

――上原さんはいかがですか?

上原
 僕は“茂田博信65歳”というサブストーリーですね。おちゃらけた雰囲気というよりは、考えさせられるところがあり、個人的にはすごいツボにハマったサブストーリーで、オススメです。

――阪本さんは?

阪本
 そうですね……ミナト区系女子関連はけっこうボリュームもあるので印象的なのですが、どれかひとつと言われたら、一連のものを終えた後にできる“真実の愛を求めて”ですかね。受注するときの雰囲気がたまらないので、オススメです。逆に聞きますが、どのサブストーリーがよかったですか?

――“憧れのミナト区系女子”でマチコさんが出てきてワクワクしました。やっぱり『龍が如く8』や過去作に出てくるキャラクターが絡むとうれしくなるんです。あとキャラクターといえばパロディー系も好きで、官能シスターズとか、風見とか……。

堀井
 ぜんぜんたいしたキャラクターじゃないんですけど、ニッコリキッドマンとか?

阪本
 いたねー!

――大好物ですね(笑)。

阪本
 ニッコリキッドマンは、ちょっと昇格しそうだな(笑)。

堀井
 もちろん前作を知らなくても楽しめるように作っていますが、やっぱり『龍が如く8』の外伝なので、前作を楽しんでくれた方がニヤリとできそうなものは大事にしています。あと、春日一番の知り合いが真島とどう交流するのか、という部分も見どころですね。
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読んでおけばお得!? 開発陣からのアドバイス

――これからプレイする方に向け、ちょっとしたヒント、あるいはプレイのコツを教えていただけますか。

上原
 アクションについてですが、パイレーツスタイルは海賊道具の切り換えでいろいろなことができるようになっています。状況に応じて組み合わせてみてほしいですね。

――たとえば、どんな組み合わせが?

上原
 わかりやすいものですと、カトラスブーメランを投げた後に近くの敵を殴るとか、カトラスブーメランを投げた後で、チャージガンをチャージしてから、撃ってキャッチするとか。“何かのアクションの合間にできるアクション”を探してもらえると、バトルがより楽しくなると思います。
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阪本
 本作では「バトルアクションのコンボの分岐を増やしてほしい」と上原にお願いしました。その結果、いろいろなアクションに技の分岐や、ほかの技を挿入できる余地ができたので、気にしてもらえるといいかもしれません。スタイルチェンジしながら殴るとか。

堀井
 これまでの弱、弱、強……ではない戦いかたも選べます。アクションの組み合わせの幅が広いのは本作ならではですね。

――では、堀井さんからのアドバイスは?

堀井
 とにかく指輪を忘れるな、です。

――大事ですね。

堀井
 指輪以外にも、船の強化やゴロゴロキッチン、もちろんふつうの育成や脇道も含めて、すべての要素がゲームをクリアーするために役立つように作っているので、行き詰まったら自分が全く進めてない要素がないか確認するといいと思います。
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――ありがとうございます。阪本さんからはいかがでしょうか?

阪本
 砲撃戦なんですが、ドリフトが使えるようになると俄然強くなるので、それをぜひ覚えておいてほしいですね。慣れると、右舷で大砲を撃ってから、ドリフトとブーストでターンしてすぐに左舷の大砲で撃つ……といったことができるようになります。

――ありがとうございます。それでは最後にひと言、推しコメントをいただければ!

上原
 スタッフ自身もすごく楽しんで作れたタイトルです。アクションが苦手な人も、逆にやり込む人も楽しめるようなゲームに仕上がっていると思うので、ぜひ皆さんに楽しんでいただければと思います。

堀井
 本当に自信作で、我々にしか作れない個性的なエンターテインメントになっていると思うので、多くの人に遊んでほしいです。あと、パッと見では、バラエティーに富んでいる部分が目立ちがちですが、じつは真島のアツいドラマ……ノアに対して大人の背中を見せる、男として格好いいところ見せるような物語がちゃんと描かれた作品になっています。真島のアツい一面や、突飛な中にも温かさがある人間性が魅力的に描写されているので、ドラマに関しても期待していただきたいですね。

阪本
 端的に言うと、“突飛な設定の突飛なゲーム”のような印象を受けると思いますが、やっぱり遊んでみると『龍が如く』なんです。そこはちゃんと押さえてあるので、ファンの方は安心して遊べると思います。とはいえ、振り切りかたもけっこうスゴくて。その振り幅を楽しんでいただきつつ、“龍が如くスタジオ”がつぎに出すタイトルの振り幅にも、ご期待いただければと思います。
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商品概要

  • 商品名:龍が如く8外伝 Pirates in Hawaii
  • 対応機種:プレイステーション5 / プレイステーション4 / Xbox Series X|S / Xbox One / PC(Windows・Steam)
  • 発売日:2025年2月21日(金)発売
  • 希望小売価格:パッケージ版・デジタル版 各6930円[税込]、パッケージ限定版真島吾朗コンプリートボックス 各19800円[税込]、ダウンロード版デラックス・エディション 各8690円[税込](※XSX|S、Xbox One、PC版はダウンロード専売)
  • ジャンル:アクションアドベンチャー
  • プレイ人数 :1人
  • 発売・販売 :株式会社セガ
  • CERO:D区分(17歳以上対象)
  • 出演:宇垣秀成、ファーストサマーウイカ、青木崇高、秋山竜次(ロバート)、谷田歩、大東駿介・松田賢二
※ Xbox Series X|S / Xbox One /Windows / PC(Steam)版および「デラックス・エディション」はデジタル版のみ販売
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      集計期間: 2025年03月21日13時〜2025年03月21日14時