2023年10月8日よりテレビ放送がスタートしたバンダイナムコエンターテインメントが企画・製作する『アイドルマスター』シリーズのアニメ『アイドルマスター ミリオンライブ!』(以下、『ミリアニ』)がついに最終回を迎えた。2023年8月からスタートした劇場先行上映を経て、約4ヵ月間のプロジェクトもひと区切り。

 そこでファミ通.comでは、本作を手掛ける監督の綿田慎也氏と、シリーズ構成・脚本を担当する加藤陽一氏、さらに音楽プロデューサーの佐藤貴文氏へのインタビューを実施。作中の楽曲を含めた演出のほか、Blu-rayに収録される新規アニメーションなどについてうかがった。

※Blu-ray第1巻の発売を記念して、“アイドルマスターチャンネル”で第1話が特別公開中

【公式】TVアニメ「アイドルマスター ミリオンライブ!」 第1話『たったひとつの自分らしい夢』【特別公開】【アイドルマスター】

綿田慎也氏(わただしんや)

アニメ『アイドルマスター ミリオンライブ!』監督。1979年生まれ、宮崎県出身。サンライズ(現バンダイナムコフィルムワークス)入社後、数多くの作品に演出として参加。監督としての代表作は、『劇場版アイカツスターズ!』、『ガンダムビルドダイバーズ』、『ガンダムビルドダイバーズ Re:rise』など。(文中は綿田)

加藤陽一氏(かとうよういち)

アニメ『アイドルマスター ミリオンライブ!』シリーズ構成・脚本。1979年生まれ、東京都出身。脚本家として、『アイカツ!』、『妖怪ウォッチ』、『宇宙兄弟』、『劇場版シティーハンター <新宿プライベート・アイズ>』などに携わる。2023年10月27日より劇場先行上映が開始されたアニメ『アイドルマスター シャイニーカラーズ』(テレビ放送は2024年春予定)のシリーズ構成・脚本も務めている。(文中は加藤)

佐藤貴文氏(さとうたかふみ)

1984年生まれ、北海道出身。バンダイナムコスタジオ所属のゲームサウンドクリエイターとして、長年『アイドルマスター』シリーズのさまざまな楽曲製作に参加。そのほかにもバンダイナムコエンターテインメントが展開する『太鼓の達人』シリーズや『電音部』への楽曲提供も行っている。(文中は佐藤)

――綿田監督と加藤さんは第5話終了時点にもインタビューさせていただきました。佐藤さんは、今回初参加で肩書的には音楽プロデューサーとなっていますが、具体的にどのように携わっていたのでしょうか。

佐藤もともと『ミリアニ』に関わらせていただいたのは、主題歌の制作依頼が最初でした。ただ、そのときはあくまでも作家として、ご相談いただいたという形だったんです。

 その後から音楽プロデューサーとしてアニメ制作のほうにも参加しています。具体的な仕事は、歌唱楽曲の演出について監督から相談をいただいて、サウンドの中身について方針設計を行うという役割を担いました。とはいえ、僕ひとりで決めているわけではなく、ランティスさん(バンダイナムコミュージックライブのレコードレーベル)と相談しながら詰めていった感じです。あとは、劇伴を作られたトリ音さんの音楽の方針設計もお手伝いさせていただいています。

――綿田監督と加藤さんとは、どのようなお話をされていたのでしょうか?

加藤シナリオ会議とは別に、佐藤さんやランティスさんに入っていただく音楽だけの打ち合わせも定期的にやっていたんですよね。そこで、こちらからの発注とそのご説明や、それを受けてのつぎのステップのご提案をいただくなど、いろいろな話をしました。

佐藤監督と加藤さんと打ち合わせをして、「この楽曲の方向性はこうだ!」となったところでさらにブラッシュアップして、そのイメージに合う作詞家さんや作曲家さんなどに依頼していくという感じでした。

――そうなんですね。改めてにはなりますが、せっかく鼎談ということでお互いの第一印象などをうかがえますか?

綿田僕は『ミリオンライブ!』のいちユーザーでしたので、初めて会ったときは「神がいる!」と緊張するところからでした(笑)。

一同 (笑)。

綿田でも、お仕事なのでちゃんと切り替えてがんばりましたよ。

佐藤監督と初めてお会いしたのは、先ほどお話しした主題歌の打ち合わせで、どんなことを言われるのかドキドキしていました。

――そのときは、綿田監督がプロデューサー(※『アイドルマスター』シリーズのファンのこと)でもあることはご存じだったんですか?

佐藤いろいろ詳しく知ってくださっていることだけは伝わってきていて、実際にお話ししてみると、とても物腰柔らかくて、安心して打ち合わせできましたね。さらに制作していく中で監督のこだわりの強さがどんどん見えてきておもしろかったです。

――加藤さんは佐藤さんの第一印象はいかがでしたか?

加藤僕は『ミリオンライブ!』のことを知るために、5年前くらいから配信番組の台本制作に関わらせていただいたのですが、そのころ、佐藤さんが作られた曲も全部聞かせていただいてハマりました。大好きな曲を作ってくれている神という印象です。

 あとはWeb会議の画面越しで見ると、たたずまいが神前さん(※作曲家で『アイドルマスター』シリーズの楽曲も数多く手掛けている神前暁氏)みたいな感じで、より神感が高まったというか(笑)。

佐藤いやいや、神前さんは本当に“神”なので、恐れ多すぎますよ(笑)。

――ちなみに佐藤さんが作られた楽曲のなかで、綿田監督と加藤さんが好きな曲はありますか?

綿田『ミリオンライブ!』の中だと、やっぱり周年曲ですね。『Thank you!』、『Welcome!!』、『Dreaming!』そして『Brand New Theater!』と、佐藤さんがずっと手掛けられていて、だからこそ、プロデューサーの皆さんに神格化されるのはしょうがないというか。毎年、泣かされていましたから。

佐藤泣かされたという点では僕も同じです。打ち合わせ前に『ミリアニ』のプロットとシナリオを読ませていただいたのですが、その時点でもう本当にグッときましたから。こんなすばらしい脚本を書かれている方とお話しできると、打ち合わせ前からずっとワクワクしていました。

加藤演出のことまで細かく話し合いながら脚本を仕上げていたのですが、ト書きや注釈で心情とか演出の細かいところまで書き込んでいましたからね。ふつうのアニメの脚本と比べると、かなり濃い内容だったと思います。

綿田歌の割り振りなどについても、ふだんはそんなに細かくオーダーすることはないですからね。でも、そこまでこだわったからこそ、佐藤さんにもイメージしやすい内容にできたんじゃないかなと思います。

――そのこだわりが詰まったアニメは先日テレビ放送も最終回を迎えましたが、いまの率直なお気持ちをうかがえますか?

綿田皆さんに見てもらうということを目標にしてきたので、終わったというより前に放送できたことがうれしいですね。皆さんに喜んでいただいているというのは感じられているので、2024年2月に控えている“THE IDOLM@STER MILLION LIVE! 10thLIVE TOUR Act-4 MILLION THE@TER!!!!”にいいバトンをつなげられたのかなと思っています。

佐藤余韻がすごいですね。とくに最後の『Brand New Theater!』につながる演出が本当に神だなと思います。『アイドルマスター ミリオンライブ! シアターデイズ』(以下、『ミリシタ』)のCDシリーズ『THE IDOLM@STER MILLION THE@TER GENERATION』(MTG)の内容に沿ってデビューする様子も描かれていましたよね。

 これまでの『ミリシタ』の展開を知っていると、この後、39人がそこからさらに羽ばたいていくのがわかっていますし、さまざまなことがフラッシュバックしますよね。その姿を想像してうれしくなりました。

加藤僕は直前にやっていた第1話~第11話の一挙配信を観てから、第12話を観たのですが、そうして、アニメを総ざらいしていると、これまでの5年間のさまざまな思い出が浮かんできました。また、何回も観ているのですが、劇伴や声優さんの演技、絵作りなどいろいろ細かい部分で、いまになっても新たに発見があって楽しめました。

 正直、終わってしまった寂しさもありますが、得られたものはとても大きかったですね。ひとつ覚えているのが、まだ企画の段階のときの夏の暑い日に監督と「サグラダ・ファミリアを作っているみたいですね」という話をしたんです。つまりは終わらなさそうな仕事でも、恐れることはないという教訓が得られました(笑)。

アニメ『アイドルマスター ミリオンライブ!』綿田慎也監督&加藤陽一氏&佐藤貴文氏インタビュー。物語に大きな影響を与えた楽曲や歌唱シーンの演出について振り返る。

――それほど長いプロジェクトだったのですね。今回は佐藤さんが参加されているということで、音楽についてとくにこだわったところがあれば教えていただけますか?

佐藤脚本を読んだときから感じていたのですが、監督と加藤さんが描く物語が脚本を読んだだけで感動できるぐらい、感情を揺さぶるような内容や演出だったので、そういった部分を大事にしようと思いました。

 とくに心理描写が丁寧に描かれていたので、そういった部分に寄り添った音楽を作れるトリ音さんに劇伴をお願いしたいと相談させてもらいました。トリ音さんは『ミリシタ』を含めて、『ミリオンライブ!』の世界観を音楽面で支えてきてくれた方なので、そこから地続きで演出いただいたという経緯があります。

 あと、歌唱楽曲については、ただ歌うだけのステージシーンが描かれるのではなく、物語の一部として演出されています。ストーリーのきっかけだったり、歌を通じて心の動きを描いたり。僕が音楽や歌でずっとやりたかった物語の描きかたというのを監督や加藤さんがすごく大事に演出されていて、とても感銘を受けました。ですので、演技や歌唱ディレクションもさせていただいて、演出や演技込みで描くように意識した音楽制作を行いました。

――アニメを観ていて、それはすごく伝わりました。綿田監督と加藤さんのほうで、とくにこだわった部分はありますか?

綿田自分が『ミリオンライブ!』に興味を持つきっかけになったのが、音楽だったんですよね。その魅力をアニメを通してうまく伝えられるといいなと思っていました。だからこそ、音楽を使って、ちゃんとドラマの展開と合わせるという構成にしています。シナリオ制作にあたっても加藤さんとそういった方向性の意識共有をしていましたね。

加藤キャラクターの心情やストーリーと音楽をしっかり連動させられたときに、強い力を発揮できるのがアイドル作品なんですよね。選曲という意味では監督が決めてくださった曲がいっぱいあって、流れが作りやすくとてもやりやすかったですね。ひとつひとつ慎重にやらなければいけないことではあるのですが、全体的には楽しくやらせていただいた印象があります。

 とくに第2話のオーディションのシーンは、タイミングなどを監督が細かく指定していましたが、その指示に合わせてサウンドチームが上げてくれた楽曲の出来にビックリさせられました。

綿田上がってきてすぐにこれで行けると思わされましたからね。あとは、 あまり明確に言葉に出してはいませんが、感覚的にはミュージカルに近いようなシナリオ構成だった部分もあるのかなと思っています。

加藤第1話にもそういうニュアンスがありますよね。公園のシーンとか。

佐藤新曲だけでなく、既存曲もすごい意図をもって選曲されていた印象があります。第1話の『ToP!!!!!!!!!!!!!』で、”『ガンバレ♪』’’という歌詞をきっかけに物語が動いていく演出ありきの選曲は、すごく考えられているなと感心させられました。

綿田『ToP!!!!!!!!!!!!!』については、探してみたら「ピッタリの楽曲があった!」という感じでした(笑)。決して佐藤さんの曲から探したわけではなく、本当に偶然で、そういうことも含めて何か導かれているように感じるところはありましたね。

アニメ『アイドルマスター ミリオンライブ!』綿田慎也監督&加藤陽一氏&佐藤貴文氏インタビュー。物語に大きな影響を与えた楽曲や歌唱シーンの演出について振り返る。

10年間、音楽を作り上げてきたサウンドチームによる渾身のチーム曲を解説

――『アイドルマスター』シリーズのアニメではそこまで珍しいことではないですが、新曲が11曲もあるというのは、ほかのアニメではあまりないことかと思います。かなり数は多くなってしまいますが、各楽曲のコンセプトなどをうかがえますか? 順番的にはアニメプロローグイメージソングの『セブンカウント』からがいいですかね?

綿田『セブンカウント』を作ったのは最後でしたよね?

佐藤そうですね。主題歌を作った後で、そこにつながる物語として制作しました。第1話がどういった始まりで、そこにいたる物語、予兆というイメージです。

綿田作業時にはすでに第1話冒頭の(春日)未来のモノローグのセリフや、中村源太さん演じるプロデューサーのモデルも完成していました。ただ、あの時点ではシルエットしか出していません。

佐藤そうでしたね。だからこそ、あの『セブンカウント』が生まれたと思います。最初から「アニメにつながるものを」という形で、絵ができる前に作っていたら、また違う描きかたをしていたと思います。アニメのオープニングを疾走感のある楽曲にしたので、そこにいたるワクワク感もあるけど、まだ始まっていないという、予感みたいなところにとどめて描いたんですよね。

【アニメ】【ミリオンライブ!】アニメプロローグイメージMV「セブンカウント」【アイドルマスター】

――発表された順番では『セブンカウント』が最初でしたが、作られた順番は最後というのはおもしろいですね。それでは、いまお話しにも挙がった、主題歌の『Rat A Tat!!!』についてはいかがですか?

佐藤監督に聞きたかったんですけど、第2話の『Rat A Tat!!!』を使ったオーディションシーンが個人的にめちゃくちゃ好きなんですよ。監督と加藤さんはどこまであの絵を想像していたんですか?

 楽曲を発注していただいた段階で絵は影も形もなかったですが、発注資料の中にはAメロでの動きやそれぞれのソロパート、(最上)静香が途中で失敗して楽曲の後半で持ち直していくというストーリーが細かく書いてありましたよね。

加藤いま改めて思うと、すごく縛りが多い発注ですよね(笑)。

一同 (笑)。

綿田イメージはありましたが、僕は曲を作れるわけではないので、どういうメロディーや展開が来るかというのは、佐藤さんにお任せしていました。

 ドラマを汲んでいただいて、佐藤さんから上がってきたものに対して、どうリアクションをするかというところではあったんですけどね。実際上がってきたものが、こういうものが欲しいですという要素が全部揃っていたので、本当にありがたかったです。シナリオをちゃんと汲んでいただけたんだなと。

 シナリオを楽曲に落とし込むのはかなりのセンスが必要な部分ですが、『ミリアニ』は全体的に音楽とのリンクがうまく果たされていますよね。オーディションのシーンで思ったのですが、ストーリーラインへの落とし込みを強く感じられたというのは、すごく大きかったです。その辺りも含めて、自分がミュージカル的な手触りを感じているポイントなのかなと思います。

佐藤僕は作曲するときに絵があったほうが作りやすいので、資料と音楽打ち合わせの中でどういうものを作りたいかが明確に浮かんだんですよね。そういう意味では、僕も導かれて『Rat A Tat!!!』は作れたんじゃないかなと思っています。

加藤オーディションのシーンで、“音を持つ『希望』”を歌って静香のスイッチが入る流れは、最初から決めていたんでしたっけ?

佐藤そこもいただいた資料に「ロングトーンで気持ちの爆発を歌い上げる」というような感じで書かれていましたね。

加藤僕も佐藤さんに聞きたいことがあったんです。こういった流れがあるということを共有したうえで、田所さんはあのシーンの歌の収録に臨まれたと思いますが、佐藤さんはどういったディレクションをされたんですか? 僕は収録に参加できなかったので、どうやって田所さんと作っていったのか、ぜひお聞きしたいです。

佐藤打ち合わせで「綺麗に歌っている主題歌とは別の表現で、あのシーン向けに録りたいです」とお話をしていたと思いますが、収録の際は実際の動画コンテを見ながら行いました。

 収録の現場には監督も来ていただいて、スイッチが入るシーンは監督と田所さんと相談しながら、いろいろなテイクを録りましたよね。そこにいたるまでの流れというか、ここでこういう表情が入るからこういう風に見せたい、というように監督の頭の中を全部聞き出しながら進めていきました。

綿田それまでのシーンのアフレコを先にして、田所さんのほうでも感情の流れを作ってもらっていたので、それを踏まえたうえでの歌唱という形で収録をしましたね。

加藤出来上がったものを聞いてすごく感動しました。田所さんにも聞きながら脚本書いていると泣いてしまうという感想を話したくらいです。

――先ほど、曲があがってきた時点で「こういうものが欲しいですという要素が全部揃っていた」とお話しされていて、最初から綿田監督のイメージともかなり合致していたと思いますが、そんな中でもここだけは直してほしいというところはありましたか?

綿田直してもらったという記憶はないですね。曲の展開に関して、尺や展開の順番が違ういくつかのパターンをご提示いただいたので、その中から選びました。

佐藤でも、じつは採用されたバージョンは尺をオーバーしたんですよね。こういうオーダーであれば、こういう演出をしたいと作っていったらオーバーしてしまって、「尺に合わせたらこうなります。でも、オーバーしているこっちのほうが絶対いいです」と伝えました(笑)。

綿田そうでしたね。そういうことが積み重なって気付いたらエンディングの時間がなくなってしまいました(笑)。アニメーション制作の白組さんにはすごくご迷惑をおかけしたかなと思います。

【アニメ】【ミリオンライブ!】ノンクレジットオープニング「Rat A Tat!!!」【アイドルマスター】

――それだけ皆さんのこだわりが詰まっているということで。ここから各チームの楽曲についてうかがっていければと思いますが、そもそも楽曲を制作した順番は、チームの順番通りになのでしょうか?

佐藤チームの順番通りではありますが、発注自体は何個かまとめてしていますね。

――作中で流れる順番ではなくて、チームの順番ということですね。

佐藤そうですね。物語的に楽曲が披露される順番ではなく、Team1st、Team2nd、Team3rd……Team8thの順番です。そこは各チームが前のチームのデビューを見て、どう感情が動いたのかということをしっかり表現したかったんです。

――作中では描かれていない部分でも物語は展開していて、その流れを楽曲でも表現したかったと。それでは、MILLIONSTARS Team1stの『Star Impression』についてうかがえますか?

佐藤最初にデビューするチームということで、アニメの中でもけっこう大事に描かれていましたよね。

綿田そうですね。これはライブパートありきで、シナリオを作っています。ここでどういう曲を見せるのか、どういうステージングにするかという点で肝になってくる楽曲でした。

佐藤ガツンと殴りたいというイメージだったので、青系で力強い曲というご相談をいただいたと思います。楽曲として、どなたにお願いするかは、ランティスさんといっしょに相談させていただきました。

 ほかの曲にも言えますが、これまでもいっしょに『ミリオンライブ!』の世界観を作り上げてきた信頼のある方にお任せした感じです。とくに作詞を担当していただいた、こだまさおりさんにはずっとお世話になっているので、お話の中でも大事なきっかけとなるTeam1stの楽曲は、こだまさんにお願いしたという経緯があります。

加藤この前、いっしょにカラオケに行ったら、『Star Impression』を歌っていましたよ(笑)。

※加藤氏とこだまさおり氏は夫婦関係。

佐藤え、そうなんですか!? それはぜひお聞きたいです。

アニメ『アイドルマスター ミリオンライブ!』綿田慎也監督&加藤陽一氏&佐藤貴文氏インタビュー。物語に大きな影響を与えた楽曲や歌唱シーンの演出について振り返る。

――続いて、 MILLIONSTARS Team2ndの『海風とカスタネット』、MILLIONSTARS Team3rdの『オレンジノキオク』はいかがでしょうか?

佐藤水着回ということで、Team2ndは真夏の太陽の『海風とカスタネット』、Team3rdはサンセットの『オレンジノキオク』としてセットで作りました。どちらも生音系のアプローチで、元気とエモさを意識して制作いただきました。第7話はハチャメチャな楽しいお話でしたので、迷いましたが、みんなで楽しく笑顔で歌って締められる楽曲を目指しましたね。

加藤発注の方向性としては、どちらも第7話関連であることから“夏”をテーマにお願いしました。Team2ndのほうは第7話で流せることもあって、明るくて元気で弾けてる曲。昼か夜で言えば、昼という感じ。一方で、Team3rdの『オレンジノキオク』は、昼ではなく、夕暮れ・サンセットか夜というイメージでした。アニメ内で流すのは最後のこけら落とし公演になることもわかっていたので、それもあって、その差を作った感じですかね。

アニメ『アイドルマスター ミリオンライブ!』綿田慎也監督&加藤陽一氏&佐藤貴文氏インタビュー。物語に大きな影響を与えた楽曲や歌唱シーンの演出について振り返る。
アニメ『アイドルマスター ミリオンライブ!』綿田慎也監督&加藤陽一氏&佐藤貴文氏インタビュー。物語に大きな影響を与えた楽曲や歌唱シーンの演出について振り返る。
アニメ『アイドルマスター ミリオンライブ!』綿田慎也監督&加藤陽一氏&佐藤貴文氏インタビュー。物語に大きな影響を与えた楽曲や歌唱シーンの演出について振り返る。
アニメ『アイドルマスター ミリオンライブ!』綿田慎也監督&加藤陽一氏&佐藤貴文氏インタビュー。物語に大きな影響を与えた楽曲や歌唱シーンの演出について振り返る。

――つぎは、MILLIONSTARS Team4thの『catch my feeling』をお願いします。

綿田Team4thは“変わる事”をテーマに、(馬場)このみさんがチームリーダーというところもあって“シティポップ的な”というイメージ出しをした記憶があります。

佐藤監督たちからのそういった発注を受けて『catch my feeling』では、繊細な心の動きと、大人な雰囲気を狙っています。それを表現する手段としてシティポップのレトロ感を現代のアプローチでリバイバルするニュートロ、というジャンルで攻めていただきました。作詞作曲のKOHさんは本当に素晴らしいです。

加藤楽曲単体も素晴らしいですが、エンディングの映像とともに印象に残りました。

アニメ『アイドルマスター ミリオンライブ!』綿田慎也監督&加藤陽一氏&佐藤貴文氏インタビュー。物語に大きな影響を与えた楽曲や歌唱シーンの演出について振り返る。

――MILLIONSTARS Team5thの『バトンタッチ』についてはいかがですか?

佐藤意識したのは、不安と勇気です。仲間から勇気をもらって、今度は自分たちが応援する番という応援歌を狙いました。エモさと切なさがありつつ、前向きな楽曲に仕上げていただきました。

綿田Team5thはメンバーの傾向もあり、“青春感”というテーマ付けがありました。

加藤まさに、そういうエモさがたっぷり詰まった曲ですよね。

綿田ただその上で、本編での“こけら落し公演での披露”という使われかた、ライブの流れの一端を担うという特別な意味付けを与えられた楽曲でもあります。

加藤ステージシーンのフォーメーションでサッと前に出てくる感じとか、サビで楽曲が広がる感じもとても好きです。

アニメ『アイドルマスター ミリオンライブ!』綿田慎也監督&加藤陽一氏&佐藤貴文氏インタビュー。物語に大きな影響を与えた楽曲や歌唱シーンの演出について振り返る。

――続いては、MILLIONSTARS Team6thの『Unknown Boxの開き方』です。

綿田Team6thは“プリンセスの多様性”といったテーマでお願いしました。お姫様イメージの楽曲はこれまでにもいろいろありましたが、また新しいお姫様の楽曲になったと思います。

加藤アニメではいろいろな事情でおもに冒頭部の披露となりましたが、その後の展開とかサビもすごくいいですよね。リアルなステージでぜひ観たいです。

――佐藤さんからは補足などありますか?

佐藤お話の中でのまつりの存在感もあり、プリンセス全開に制作していただきました。アイドルになる憧れ感を、元気なお姫様のイメージとともに描いています。サビでパーッと箱が開いて、等身大の女の子自身の言葉として描かれていてすごくいいですよね。

アニメ『アイドルマスター ミリオンライブ!』綿田慎也監督&加藤陽一氏&佐藤貴文氏インタビュー。物語に大きな影響を与えた楽曲や歌唱シーンの演出について振り返る。

――つぎはMILLIONSTARS Team7thの『トワラー』をお願いします。

加藤Team7thの『トワラー』は、アニメの中での見せかたや楽曲の具体的な方向性について、綿田さんの中にしっかりとしたイメージが最初からありましたね。

綿田そうですね。最初からシナリオ上でこういった形の披露を想定していた楽曲です。“手作りのぶどーかん”と“こけら落とし公演”をリンクさせるために、第5話の『Thank you!』を想起させるような曲をイメージしていました。

加藤ジュリアたちの想いが乗った、素敵なシーンになりました。

佐藤制作側としては、ギターを活かした楽曲イメージで、これはもう間違いなく、nano.RIPE(※)さんに相談というところからでした。ホームの暖かい感情や繋がる想いを歌う楽曲を制作いただきました。

※『トワラー』の作詞を担当したきみコさんと作曲を担当した佐々木淳さんによるバンド。

 この曲に限らずですが、シナリオをお伝えした上で制作いただくことが多かったので、綿田監督、加藤さんの描く情緒的な雰囲気が、全チームを通して軸として楽曲に落とし込まれていますよね。本当にこのアニメチームだからこそ生まれた楽曲たちだと感じています。

アニメ『アイドルマスター ミリオンライブ!』綿田慎也監督&加藤陽一氏&佐藤貴文氏インタビュー。物語に大きな影響を与えた楽曲や歌唱シーンの演出について振り返る。

――最後はMILLIONSTARS Team8thの『REFRAIN REL@TION』。こちらは、ほかのチームの楽曲とは少し立ち位置が違うような気がしますが、いかがでしょうか?

佐藤Team8thの楽曲も資料にかなり演出が細かく書いてありましたね。

綿田最初のころは、『REFRAIN REL@TION』を流したシーンを『Dreaming!』にするか悩んでいました。ただ、Team8thの曲について、全体曲的な意味合いを持たせることはシナリオの初期から想定していました。

加藤発注でお伝えしていた演出というのは、1番を5人で歌って、間奏で未来のMCが入って、そこのMCはこういう内容で、そのあと全員がサプライズ登場して、フラッグが降りてくるというようなアニメ内での流れなどです。

佐藤最後に39人で歌って、ステージ後方にメッセージ入りのフラッグがはためている演出は、第5話の原っぱライブの伏線が回収されているんですよね。『ミリアニ』の全体のテーマであるバトンをつないでいく部分を『REFRAIN REL@TION』で表現したいということは発注段階から感じていました。

 それを受けて、楽曲としてもフラッグやみんなが登場するきっかけを意識しています。あとは、サビのメロディーラインを、歌が重なって来るリレー形式のラインにすることで、ひとりで歌うのではなく、みんなで歌って初めて完成することで、バトンをつないでいくというテーマを表現しました。

――『ミリアニ』のために作られた新曲の中で、唯一@が入っている、いわゆる@曲と呼ばれるものになっていますが、こちらについてこだわりなどはあったのでしょうか?

綿田打ち合わせの中でサウンドチームから提案いただきました。正直なところシナリオ作成の段階では、@曲をどうしようということは考えてはいなかったです。

佐藤@曲は、いろいろな意味合いが込められていたりしますが、 主題歌の『Rat A Tat!!!』については、まだアイドルになる前で、そこに向かっていく未完成な部分がある曲なので、@は付けませんでした。

 一方、こけら落とし公演で、アイドルとしてデビューたという意味合いも込めて、みんなで歌っていく楽曲として@をつけていますね。

アニメ『アイドルマスター ミリオンライブ!』綿田慎也監督&加藤陽一氏&佐藤貴文氏インタビュー。物語に大きな影響を与えた楽曲や歌唱シーンの演出について振り返る。

――そして、チームの楽曲ではありませんが、第10話で静香が歌唱した『Gift Sign』も新曲のひとつです。こちらの楽曲のコンセプトなどもうかがえますか?

加藤『Gift Sign』は、『アメイジング・グレイス』や『夢やぶれて』など、カバー曲にしようかという案もありましたが、検討の結果、ストーリーに合った意味合いをしっかり持たせたいこともあって、オリジナル曲にすることになりました。

 アニメ内では、海外アーティストが歌う予定だった楽曲の日本語歌詞版を静香が歌っているという設定で、静香のために用意された楽曲ではありません。発注の時には、“愛・心・想いを届ける”や“ギフト・贈る”というワードのほか、“想いを届けるアイドルの姿を表す荘厳な曲”にしたいということもお伝えしました。作中の静香のための曲ではありませんが、静香のここまでのドラマの終結とこれからを示す楽曲でもあります。

綿田静香の覚醒の曲ではありますが、パーソナルな心情をダイレクトに示すのではなく、聞く人にぐっと染み渡っていくその過程で、彼女の魅力を伝えたいという狙いでした。

佐藤制作としては、静香はこれまで自分の心を歌うことが多い子でしたので、お話の内容を受けて“相手に届ける歌”を意識的に狙って作りました。その想いを通して静香自身の成長も描いています。

 この曲もモノローグだったり、ラストサビで羽根がパーッと開く演出は最初からお伝えいただいていましたので、演出あわせの展開を意識して作っていただいています。アニメSizeでは、演出にあわせてエンディングを伸ばしていて、そのあとのお話を楽曲の余韻とともに描けるように作っています。

アニメ『アイドルマスター ミリオンライブ!』綿田慎也監督&加藤陽一氏&佐藤貴文氏インタビュー。物語に大きな影響を与えた楽曲や歌唱シーンの演出について振り返る。

――ここからは、2023年11月のインタビュー掲載時に募集した読者からの質問でとくに多かった楽曲に関するものについて聞かせてください。第10話で披露された『G線上のアリア』は、『アイドルマスター』シリーズの楽曲ではないですが、どういう経緯で採用することになったのでしょうか?

綿田第10話のあのシーンに関しては、最初から有名クラシック曲に歌詞をつけたものを使うという構成で考えていました。それを4人のアイドルたちで斉唱することで、観客の親子に特別な想いを届けて、それが静香の気づきになると。楽曲は、もともとパッヘルベルの『カノン』を案として出していたのですが、どんな曲がいいのかサウンドチームと相談をしました。

佐藤あのシーンも監督のこだわりを感じる部分で、新曲ではなく子どもも知っている楽曲で描きたいというお話だったんです。それで誰でも知っているクラシック曲ということで、脚本や描かれかたを見ると感情が染み入っていく曲にしたほうがいいなと思ったので『G線上のアリア』をご提案させていただきました。

 決して、『カノン』がダメというわけではないですが、『カノン』はメロディーラインが速く動く曲なんですよね。でも、ここは目を閉じて、ロングトーンで感情を込めて歌っていくようなイメージがあったので、『G線上のアリア』がいいと思いました。

アニメ『アイドルマスター ミリオンライブ!』綿田慎也監督&加藤陽一氏&佐藤貴文氏インタビュー。物語に大きな影響を与えた楽曲や歌唱シーンの演出について振り返る。

――確かにクラシックだと、アイドルたちのことを知らない子どもでも知っていそうですね。続いて、第11話の『トワラー』の歌唱シーンについてです。MILLIONSTARS Team7thの曲である『トワラー』をジュリアひとりで歌唱する演出にしたのは、どういった意図があったのでしょうか?

綿田楽曲の打ち合わせの段階で、物語上でジュリアが弾き語りをすることは提示していました。その狙いとしては、第5話の原っぱライブのときの気持ちを、改めてこけら落とし公演の前にみんなで再確認するというところですね。

 そこでギミックとしてジュリアのギターを使いたかったというのが、いちばん大きい理由です。あの場面で、CD音源の通りに4人で歌唱すると、少し嘘くさくなってしまうような気がしたんです。自由さが特徴のTeam7thのメンバーが、あのような場でどのように振舞うかと考えたときに、決められた歌割で歌ったり振り付けで踊ったりするのはらしくないなと。

 事務的に曲を披露しているように見えることは避けたくて、それよりもキャラクターらしさを優先しつつ、ほかのメンバーの心を動かして集まるという流れがいちばんしっくりくるように演出しています。

加藤キャンプファイヤーのイメージでしたよね。

綿田そうですね。合宿というのもあったので、キャンプファイヤーでフォークダンスを踊るようなイメージです。だから(矢吹)可奈と(北上)麗花のダンスは、ちょっとそういう要素も含んでいましたが、それをセオリー通りに踊らないというのがあのふたりらしいですよね。あそこはダンスチームにもいろいろなパターンをご相談させていただきました。

佐藤監督と加藤さんの中で、アイドルたちが勝手に動き始めているんだと思うんですよね。その中でジュリアが衝動的に弾き始めて、それにほかのメンバーが影響されて踊りだして、その心の動きが全員に伝播していくんです。そういった描きかたで楽曲を演出しているのはすごくリスペクトしますし、僕もこういう作りかたをしていきたいと改めて思いました。

アニメ『アイドルマスター ミリオンライブ!』綿田慎也監督&加藤陽一氏&佐藤貴文氏インタビュー。物語に大きな影響を与えた楽曲や歌唱シーンの演出について振り返る。

――そういう意図だったのですね。つぎは、第12話のこけら落とし公演のセットリストはどのように組んでいったのでしょうかという質問です。また、作中で描かれていなかった部分のセットリストも考えられているのでしょうか?

綿田全体のシリーズ構成を考えてきたときに、こけら落とし公演や原っぱライブをやることも決まってなかった段階から、終盤に何かしら大きなライブをやろうとは考えていました。その時からセットリストの大枠はイメージを作っていましたね。いま、当時のメモを見返してみたところ、それをベースにした12話の楽曲リストの覚え書きみたいなものがありました。

佐藤確か、セットリストがありましたよね。

加藤曲数はそんな多い想定ではなかったですよね。

綿田あくまで覚え書きなので、ブラッシュアップしている可能性もありますが、Team2ndの曲に続いて『Rat A Tat!!!』、その後、(徳川)まつりの『フェスタ・イルミネーション』と(松田)亜利沙の『チョー↑元気Show☆アイドルch@ng!』となっています。

 さらに『THE IDOLM@STER LIVE THE@TER PERFORMANCE』(LTP)シリーズのユニット楽曲がいくつかあって、そこからTeam5thの楽曲。ソロ曲やチーム楽曲の点描の後、765PRO ALLSTARSメドレーみたいなものを絵的に挟めないかということを検討していましたね。メドレーの候補曲としては、『GO MY WAY!!』、『THE IDOLM@STER』、『READY!!』、『MEGARE!』、『Happy!』などが挙がってていましたが、これについては形を変えて第9話に組み込む形になりました。

 さらにその後、『Sentimental Venus』からの『瑠璃色金魚と花菖蒲』、『ハミングバード』はいまの形通りで、そこから残りのチーム楽曲の披露からエンディングという流れを想定していました。

佐藤これでがっつりライブができそうですよね(笑)。

アニメ『アイドルマスター ミリオンライブ!』綿田慎也監督&加藤陽一氏&佐藤貴文氏インタビュー。物語に大きな影響を与えた楽曲や歌唱シーンの演出について振り返る。
アニメ『アイドルマスター ミリオンライブ!』綿田慎也監督&加藤陽一氏&佐藤貴文氏インタビュー。物語に大きな影響を与えた楽曲や歌唱シーンの演出について振り返る。
アニメ『アイドルマスター ミリオンライブ!』綿田慎也監督&加藤陽一氏&佐藤貴文氏インタビュー。物語に大きな影響を与えた楽曲や歌唱シーンの演出について振り返る。

――それも見てみたいですね。テレビ放送を終えたということで、つぎはBlu-rayの発売を楽しみにされている方が多いのかなと思います。第1巻の特装版DISCには『Precious Grain』のパイロット映像、第3巻の本編DISCには新規アニメーションの収録が発表されていますが、具体的にどのような内容になっているのか、お話しできる範囲でお聞きできますか?

綿田『Precious Grain』については、特装版特製ブックレットにも書かれていますが、パイロット映像というか、トライアルという形でやっています。楽曲的にはフル尺ではなく、『ミリシタ』で使っているゲームバージョンの音源をそのまま利用させていただく形で、新しく録り直したり、編集したりということはまったくしていないです。

 白組さんの3DCGでアニメーションを作るとどうなるのか、どういったチャレンジをしていきたいのかということを検証しつつ、僕自身としては楽曲の演出の中に『ミリオンライブ!』の文脈をどう落とし込めばいいのかということにも挑戦していました。いま改めて見ると、(『ミリアニ』の)静香のドラマは完全にここからスタートしているなと思います。

【アニメ】【ミリオンライブ!】Blu-ray第1巻 特別映像ダイジェスト【アイドルマスター】

――第3巻の新規アニメーション『The Backstage ~あの日 灯った大切な想い~/~空があるから~』についてはいかがでしょうか? 現状、こけら落とし公演の裏側が描かれるということは発表されていますが。

綿田裏側というよりは、こけら落とし公演を前にしたTeam6thとTeam7thに(白石)紬と(桜守)歌織を加えた4者の補足的なエピソードです。Team7thに関しては、音楽的に見どころがあるので、ぜひ楽しみにしていただければと思います。けっこうチャレンジングなことをやらせていただいたので、出来上がった映像を観て、さすが白組さんだなと思いました。

佐藤詳しい内容は言えませんが、演奏家さんにシーンを再現していただきながら楽器収録を行いました。収録時にシーンと合わせた座り位置を指定して、演技しながら演奏する感じで、シーンの空気感を監督といっしょにその場で作ってきました。

綿田本編ともCD音源とも違うTeam7thの表現を描くことができましたね。あと、Team6thは本編でやりきれなかったアイドルたちの絡みや、気持ちの流れを深堀りしていて、紬に関しても僕自身が第12話の段階で少し不足しているかもなと思っていたところを盛り込みました。

 また、本編では意図的にやらなかった、あの子の特殊能力(?)も描いているので楽しみにしていただければと思います。

【アニメ】【ミリオンライブ!】ミリアニBlu-rayCM 第2弾【アイドルマスター】

――楽しみにしています。それでは最後にファンの方に向けたメッセージをお願いします。

綿田劇場の先行公開から長きに渡って応援していただいて、無事、完走することができました。ずっと皆さんがバトンをつないでくれたおかげで、アニメにまでつながったと感じています。すごくやりがいのある仕事でしたし、自分としてもコンテンツにもお返しができたんじゃないかなと思っています。

 今回の仕事を通じて僕自身、『ミリオンライブ!』のことがもっと好きになりましたし、楽しいコンテンツだということを再確認できました。『ミリオンライブ!』はまだまだ続いていきますので、皆さんにも改めてアイドルたちを応援していただけるとありがたいです。

加藤通常であれば、1クール、3ヵ月で終わってしまうものが、先行上映から楽しませていただけて、すごくありがたかった日々でした。その中で、綿田さんのバックグラウンドが少しずつ世間に明らかになっていくのも楽しかったです(笑)。

綿田そこもエンタメになっていたんですか?

加藤段階的に情報を開示していく感じがおもしろかったですが、まだ出してないネタもいくつかありますね~。

綿田まだ隠しているものがあるかな(笑)。

一同 (笑)。

加藤そういったところも含めて、皆さんが盛り上がってる様子は本当に楽しかったです。プロデューサーの皆さんも、キャストやスタッフの皆さんも、すごく『ミリオンライブ!』らしく、いっしょにやらせていただいて楽しい方ばかりで、本当にいい作品に参加させていただいたと感じています。

 『ミリアニ』は皆さんが10年間作ってきたことを綿田さんの全能の知識とディレクションのもと、掬い上げてできたものです。つまり、皆さんが作ったものを改めて形にした感覚がありまして、それを皆さんそれぞれに楽しんでいただけていたのだとしたら、うれしい限りです。

佐藤僕は『ミリオンライブ!』の立ち上げからなので、10年以上関わらせていただいていますが、この10周年という節目の年に監督と加藤さんの描くすばらしいアニメ世界を観て、いいバトンをつなぐことができたなと実感しました。

 『ミリオンライブ!』はここで終わるわけではなく、第12話から続く物語を現在進行形でゲームやライブで新しく紡がれています。ここまで応援してくれている方々はもちろん、今回、新しく興味を持っていただいた方々も、ぜひプロデューサーになって、いっしょに新しい物語を作っていけたらうれしいなと思います。

アニメ『アイドルマスター ミリオンライブ!』綿田慎也監督&加藤陽一氏&佐藤貴文氏インタビュー。物語に大きな影響を与えた楽曲や歌唱シーンの演出について振り返る。

 インタビューは以上ですが、アンケート募集した質問の中から一部を追加で綿田監督にお答えいただきました。

  • 第5話で『We Have A Dream』を披露していますが、この楽曲の採用を決めたのは、リアルライブ“THE IDOLM@STER 765PRO ALLSTARS LIVE SUNRICH COLORFUL”の開催前と後のどちらでしょうか?

綿田開催前から決めていました。なんだったら、同ライブで披露された雪歩と千早の『inferno』も決めていて、アニメが放送されたときにニヤリとするつもりだったのですが、先にやられてしまいました。やっぱり悪いことを考えるとバチが当たるんだなと思いましたね(笑)。

  • 第10話にて帰宅した静香に静香パパが「静香――……あの時の歌……いや、何でもない」というセリフがありましたが、本当は何を言いたかったのでしょうか?

綿田こちらは本編の中にしっかりヒントを入れてあるので、できればご自身で探していただけるとありがたいなと思います。

 ここで説明することもできますが、この疑問を持った時点である程度答えには踏み込んでいると思うので、もう少し自分で探していただいたほうがより奥行きを感じて楽しんでいただけるのではないかと思います。本編中にこのセリフにピッタリはまるピースが用意してありますので。

  • 第8話のラストで(馬場)このみさんが乗っていたのはモノレールと電車のどちらなのでしょうか? とても気になったので回答お願いします。

綿田こちらも絵をよく見てもらえるとヒントがあるので、ぜひ観返していただければ。

  • アニメ化発表の映像や雑誌の表紙でアイドルたちがシャイニートリニティを着用している姿が描かれていましたが、作中でも着る案はあったのでしょうか? また、使わない選択をした理由などがあれば知りたいです。

綿田初出映像や雑誌の表紙で使用されたモデルはBlu-ray第1巻の特装版DISCに収録されている『Precious Grain』のパイロット映像のものを流用したものですね。本編で使うことができなかったわけではないですが、物語中に使う流れがなかったという感じですね。

  • 第5話と第12話で登場するフラッグにはアイドルのサインが書いてありますが位置にこだわりなどはあったのでしょうか。茜ちゃんがほぼ真ん中に書いていて主張が強い茜ちゃんらしいなと思いました。

綿田一旦、白組さんのほうで仮置きしていただいて、その後、僕のほうで何人か指定して変えています。(宮尾)美也と(北上)麗花は目立つところに書いていて、(野々原)茜は主張が強いのでほぼ真ん中だけど、ちょっとビビりなところがあるので日和った結果、ド真ん中から少し外れたところというイメージですね。