2023年3月25日、大阪・梅田スカイタワー10階アウラホールにて、ゲームパビリオンjp準備会主催のインディーゲーム展示イベント“ゲームパビリオンjp”が開催された。会場には、個人ゲーム開発者から国内有数のインディーゲームパブリッシャーまで、ありとあらゆる出展者のブースが同列に並び、全80タイトルほどのインディーゲームを気軽に体験できるようになっていた。
記者が気になった出展タイトル9選
Sprlite / トライコア
Nintendo Switchやプレイステーション5などでリリースされたホラーアドベンチャーゲーム『夕鬼』の開発元である、トライコアの新作。今回は「ひとまず遊べるようにしたバージョン」の参考出展とのことだったが、記憶を失った人物の主観視点で自分が置かれている立場を徐々に把握していく……という一連の流れは体験できた。
ROUND WORLD / k_mossan
小さな惑星の地表を走り続けながら立ちはだかる敵を倒してくリズムゲーム風アクション。目前に迫った敵がフラッシュしたタイミングで、対応する方向ボタンを押していくシンプルな内容だが、BGMに合わせて敵をズバズバ斬り倒していく小気味よいテンポに魅了された。将来的には巨大ボスとのバトルや、オリジナルBGMを導入してSteamでリリース予定とのことで、続報を気長に待ちたい。
Project Six / するめ工房
ゲームパビリオン内プチオンリーイベントのひとつ“インディーロボゲー祭”の出展タイトルのひとつ。本職がCGデザイナーのするめまんじゅう氏がひとりで制作中のハイスピード3Dメカアクションで、Epic Gamesの開発資金提供プログラム“MegaGrants”の2022年受賞作でもある。今回は新ステージの披露を兼ねたプレイアブル版の出展とともに、どこか懐かしいパッケージでのアルファ版の販売も行っていた。
蒼い夏休み/ Max Neet Games
ふたりプレイ専用や、VRとアナログゲームのかけ合わせなど、ちょっと変わったアドベンチャーゲームを制作するサークルの最新作。突然姿を消した少女の行方を、彼女のPC内に保存された断片的な情報を頼りに探す……というプレイ時間1時間ほどの物語の冒頭部分を体験できた。Unityで擬似的に再現された、GUIベースのOSの操作がなかなか楽しく、困ったときには画面右下部に出現するAIアシスタントからヒントを聞けるなどの小ネタもいい味を出していた。
闘う受験生 Entrance Exam / ヘソライダー
鳥取大学(鳥取県)のサークル“電子計算機研究会”のゲーム開発班所属のヘソライダー氏がひとりで制作した、ボスラッシュ形式の弾幕シューティングゲーム。大学入試問題のテーマが襲ってくるという設定に面食らいつつも、「このテーマだったらこんな攻撃になるのもうなづけるな……」というある種のシナスタジア(共感覚)を体験できた。本作の完成版は、イベントの後日、PC用フリーゲーム投稿サイト“Freem!”にて公開された。
FALLEN / GOOFEES
大阪市に拠点を置くゲームソフト開発会社GOOFEESが制作中の自社オリジナルタイトル。念力、空中浮遊、時間停止などあらゆるタイプの超能力を使える記憶喪失の青年を操作する3Dアクションゲームの片鱗を体験できた。ゲームプレイ中のシリアスムードと、ムービーデモのなんだか軽妙なノリのバランスが独特で、通しプレイしてみたくなる。
TrinityS / Indie-us Games
オンラインRPGのボス戦だけを楽しみたい人向きのファンタジーアクションゲーム。最大3人でオンライン協力プレイできるのが特徴で、会場でも体験できた。現在はSteamで早期アクセス版を配信中。正式版のリリースに向けて開発を進めているとのことだが、昨年のBitSummit(BitSummit X-Roads)でPlayStation賞を受賞したことから、今後のマルチプラットフォーム展開も期待できる。
ラミアズバンビーナ / Studio Dragonet
下半身がヘビの種族“ラミア族”の戦士を率いて、奪われた領土の奪還を目指す、育成&ターン制バトルゲーム。開発は、2022年にアクションパズルゲーム『チャカ王の迷宮』のNintendo Switch版をリリースしたばかりの個人デベロッパー“Studio Dragonet” 。2023年内のリリースに向けて鋭意開発中とのことで、ブースではラミア族の戦士たちの憩いの場“ラミリウム”の模様替え操作を体験できた。
Laplace Engine / なんど
現役高校生のゲーム制作者によるUnity製ローグライクゲーム。元祖『ローグ』(1980年リリース)を思わせる、ASCII文字で構成された簡素な見た目と、移動可能範囲の表示がグラデーションで明滅するなどの現代的なエフェクトの共存が目を惹いた。今回は少し動かせるデモ版の出展に留まったが、将来的にはカードゲーム形式の戦闘システムを導入する予定とのこと。21世紀生まれのクリエイターが超古典のゲームをどのようにアレンジ・再構築していくのか注目したい。
関西同人・インディーゲームイベントとしての手応えと期待
大阪の中心地で同人・インディーゲームイベントを開催するなら日本橋(大阪市浪速区の電気街エリア)……という従来のセオリー(?)を覆す形で開催された、ゲームパビリオンjp。JR大阪駅から徒歩10分圏内の新梅田シティの一角という好立地、地上約170メートルの空中庭園が観光・デートスポットとして広く認知されている複合ビルで行われた結果、幅広い来場客層でつねに賑わう、活気あるイベントとなった。関西での新規イベントに寄せる期待感に加え、2020~2022年のコロナ禍を経てインディーゲームへのスポットの当たりかたが変化したことが、より多くのゲームファンの興味を惹く要因となったのだろう。
本イベントの特徴は、“国内デベロッパーの開発中タイトル”が、出展タイトルの大半を占めていたこと。タイプとしては、2012年より東京で開催されている“デジゲー博”に近く、さまざまな経歴のクリエイターが気後れすることなく参加できる場として、すでに機能しているようだった。
同人誌即売会イベントではおなじみのプチオンリーイベント(大規模な総合イベントの会場の一角で開催される、特定ジャンル特化型の小規模イベント)の形態を持ち込んだことも、特筆すべき点だ。前述のインディーロボゲー祭を始め、シューティング、Steamストアで販売可能な“全年齢向けお色気ゲーム”……といったいずれもコアな人気を持つジャンルのタイトルが特定エリアに密集したさまは、圧巻。一般参加者だけでなく、それぞれのジャンルの出展者も、互いに大いに刺激を受けたことだろう。
海外パブリッシャーとの繋がりが深い大規模なイベントがショーケース化、エンターテインメント化を推し進める一方で、こうしたイベントが関西圏でも存在感を放つことは、国内インディーシーンの真の意味での活況に繋がるだろう。次回開催についての正式な発表は現時点ではないが、ゲームパビリオンjp準備会からの続報に期待したい。