タランティーノ映画の常連マイケル・マドセン(レザボア・ドッグス、キル・ビルほか)や、チャック・ノリス、ダニー・トレホなど、ハリウッドのアクション映画を彩ってきた往年の渋い名優たちが出演するFPS、『Crime Boss: Rockay City』。本作の開発スタジオへのメールインタビューを行ったので、その内容をお届けしよう。
本作は2023年3月29日にEpic GamesストアでPC版が発売開始。今後プレイステーション5版とXbox Series X|S版の発売も予定されている。
Ingame Studios
本作を開発するチェコのゲームスタジオ。クライムアクションゲーム『マフィア』やミリタリーFPS『Arma』シリーズなどに関わった開発者が在籍している。
主人公が死んだら終わりのパーマデス制を採用
――キャラクター周りのシステムについて教えてください。パーマデス(死んだキャラクターは使えなくなる)があることや、常に主人公のトラヴィスを使うわけではないことがわかっています。プレイアブルキャラクターはどれぐらいいるのでしょうか、またそれらがトラヴィス同様に個別に設計されたキャラクターなのか、汎用のランダムなキャラもいるのかも知りたいです。
Ingame Studiosトラヴィスとその側近を除くと、まず20のユニークなキャラクターがおり、彼らを雇ってミッションに出撃させることができます。彼らはユニークな外見とボイスを持ち、それぞれ武器やアビリティやPerk(追加効果)も持っています。さらに彼らのうちの何人かには個別のストーリーミッションもあり、その背景が少し明かされるようになっています。
Ingame Studiosそれに加えて私たちのゲームにおける汎用キャラである“クラシックチームメイト”がいて、彼らはランダム生成の外見と武器とPerkで登場します。
そしてキャラクターたちは経験値を得ることでレベルアップし、ベテランやエリートへと成長します。レベルアップするとステータスが上昇したり、新たなPerkを得たりします。
そうした中で、パーマデスシステムが作用してきます。本作のキャラクターは死亡したら復活しません。プレイヤーは後悔したり悲しんだりするでしょう。でもトラヴィスが死なない限り物語は続くのです。
Ingame Studios彼(トラヴィス)が死んだら本当の終わりで、最初からのやり直しになります。しかしそれは悪いことではありません。キャンペーンの体験は毎回異なり、異なる機会やプロット、選択、結果がありえますから。ストーリーが向かう方向はプレイヤーの判断と行動によってダイレクトに変化します。新しい回ではきっとより良い選択をして速く成長できるでしょう。
トラビスとしてミッションをプレイする際は報酬として“ボスポイント”(経験値)を得られます。キャンペーンを進めることによるポイントもあります。ひどい結果だったとしてもです。これらのポイントによってレベルアップできます。各ボスレベルではPerkや強化を得られます。スキルツリーはありませんが、3つのランダムに提示されるカードからひとつを選ぶ形です。
名優たちそれぞれの役割
――ハリウッドの映画俳優が多数出演しますが、それぞれの役はギャングにどう関わってくるのでしょうか?
Ingame Studiosマイケル・マドセンがロッケイシティのアンダーグラウンドの王を目指す主人公トラビスを演じます。彼をミッションに送り込んでもいいですし、安全な場所に控えさせてチームメートのクルーを送り込んでもいいです。
キム・ベイシンガーはトラビスが犯罪組織を築くのを助けるケイシーという役を演じます。ダミオン・ポワティエのナサラは少しミステリアスな人物で、ボスの右腕として犯罪行為を通じて金を稼ぎ、チームメートを引き入れ、襲撃を計画します。
ダニー・グローバーの“グローブズ”は警察の情報を持ち、デカい山を嗅ぎつける引退した警官。もうひとりの側近“タッチダウン”はマイケル・ルーカーが演じます。軍勢を率いる長として縄張り争いを得意とします。
ダニー・トレホが演じる“ドル・ドラゴン”はライバルのボスで、危険な殺し屋たちを率いています。ヴァニラ・アイスはラテン系ギャングのチコ・サングレスのリーダー“ヒエロ”です。
究極の敵はチャック・ノリス演じるノリス保安官でしょう。彼は罪深きロッケイシティで犯罪者たちを追い詰めようとしていて、ベイカーがのし上がるのに大きな障害となります。ノリス保安官は警察が勝つ理由でもあります。まぁ「大抵は」ですが。プレイヤーにとって挑戦となるのは間違いありません。
プレイ可能なNPCの能力・成長システムなど
――彼らは専用スキルや武器を持っていたりするのでしょうか? カスタマイズは出来ますか? レベルシステムや特性などはありますか?
Ingame Studiosトラビスはもっとも価値があるキャラクターで、Perkや武器によってカスタマイズできます。側近の中ではタッチダウンのみプレイアブルですね。彼は普段は縄張り争いに部下を送り込む役ですが、テリトリーを守る時は出撃します。特徴的な銃も持っていて、プレイヤーの軍勢のTier(格)によって変化します。
それ以外のユニークNPCは多かれ少なかれ固有の武器やPerkを持っています。またユニーク以外のNPCも含めてレベルアップによる強化があり、新たなPerkを手に入れたりステータスが向上したりします。
――例えばトラビス以外のキャラクターが1人しかいなくなってしまったような場合、2人で殴り込みをかけなければいけないのでしょうか、それとも誰か補充できるのでしょうか?
Ingame Studiosパーマデスシステムでは起こり得る話ですね。でもイメージするほど厳しいわけでもありません。ゲームには資金を稼ぎ直せる比較的短いミッションもありますし、プレイヤーはいつでも本拠地に帰れます。『XCOM』シリーズのような感じです。(※お金で補充できる)
すべては経済です。プレイヤーはミッションをプレイしてお金を得ます。そこでたとえば小規模のチームを率いて、その分難しくなるかもしれませんが取り分は増えます。より多くのもっといい連中を送り込めば簡単になるでしょうが、費用との差し引きで収穫が少なければ経済的にはあまり意味がありません。
挑戦を甘く見て手下が死んだような場合、それで終わりというわけにはなりませんが、経済状況は悪くなるかもしれませんね。
――外見変更用のアイテムはありますか?
Ingame Studiosいいえ。現状ではビジュアルを変えるようなアイテムはありません。要望が多ければマルチプレイ用に足すかもしれませんが。それよりは利用可能なキャラクターのバリエーションを増やすことに注力したいと考えています。
シングルプレイキャンペーンと協力プレイモードの構成について
――キャンペーンモードで、短期的・長期的にどうプランニングして進めていくのか教えてください。どんなプランを取れますか?
Ingame Studiosシングルプレイキャンペーンでは、ベイカーの最終目標である“ロッケイシティのアンダーグラウンドの王”目指して、ノンリニアに進行していきます。
これが長期的な流れで、その途中のプロット(筋書き)はランダムに選択され、またプレイヤーの選択と結果にも影響されます。プロットには軍勢のアップグレードや大きな強盗の機会など、より大きな成果に繋がるものとなっています。
それと短期的なミッションもあり、通常は縄張りを拡大するとか、ひとまずお金を稼ぐといったものがありますね。
――縄張り争いはどういった内容になりますか。
Ingame Studiosこれは通常の強盗とは異なるゲームプレイになるもので、マルチプレイのチームデスマッチのようなものをシングルプレイでやるとイメージしてください。
あなたは1人のキャラクターをプレイして、他はAIが操作します。死んだら生き残っている次のキャラクターに操作が移ります。目標は全員やられる前に相手の勢力を排除することです。ロッケイシティのコントロールを奪うためにはプレイしなくてはなりません。
Ingame Studios長期的な流れは常に同じです。ノリス保安官は簡単にのし上がらせてくれませんので、何度も挑戦することになると思います。
中期的には、いい仕事が出てくるかのランダム要素の影響も受けつつ、その上でプレイヤーの選択に沿って分岐していくというイメージです。短期的にも形は似ていますが、それぞれの実際のミッションは異なるため、臨機応変に対応する必要があるでしょう。
先程説明したように、プレイヤーは報酬に対してどれだけのリスクを賭けるか調整できます。少人数なら成長を早められるし、いざという時はベイカーを参戦させれば大きな力になります。ただ彼が死なないようにしないといけません。
キャンペーンの進め方自体は(どのミッションを選ぶか選択できる)オープンワールドゲームと似ているかもしれません。でもオープンワールドを移動することはなく、その代わりにマップ画面からイベントやミッションにそのまま進むという感じです。何度も挑むことになるので、(移動要素などを排除し)素早くアプローチできるように設計しています。
暗記して攻略するのではなく、臨機応変に対応するプレイ体験を目指す
――それぞれのミッションがどう進行するのか教えてください。『Payday』シリーズのような感じでしょうか?
Ingame Studiosシナリオは数十種類あり、流れや障害が異なります。そのうちの短いものは本当に短い挑戦になっていて、2分から10分のアドレナリン全開といったものですね。
メインコースは大きなハイスト(強盗)です。本作のハイライトのようなもので、予測不可能な挑戦とリプレイ性があります。主に協力プレイ用に設計されていて10分から30分の構成です。シングルプレイキャンペーンの中で完了するのはかなり厳しいですが、ベイカーは超リッチになれるかもしれません。
ハイストの流れはゲームデザイナーが決めていますが、選択肢もあるので成功させるためには巧妙に進める必要がありますし、その前の話での出来事や選択で前提部分が変わってくることもあります。さらにマップの構造や各種要素の配置のバリエーションもあり、AIも何が起きているかに臨機応変に対応してきます。
私達の目標は、プランナー(大きな案件の場合はダニー・グローバー、小さな案件ならダミオン・ポワティエ)がメンバーと無線通信する中で展開される、はじけるような雰囲気のFPSミッションを提供することです。
ダミオンは脚本家としても参加しており、ライターチームとともに30種類のことなるキャラクターの基本的なセリフをハリウッド風にアレンジしてくれています。なのでどのキャラクターで出撃しても、そのキャラごとのユニークなセリフが聞けるでしょう。彼は専門用語やアクセントなどの知識が豊富なので大変助かりました。
Ingame Studios(世の中には)完全な強盗を遂行するために何度もプレイしてすべての警備のルートを学んでマップを熟知しないといけないゲームがありますが、これは私達のやりたい事とは異なります。私達のゲームにはチェックポイントもありませんし、ミッションを完了するためにやり方を“記憶する”ことができないような作りを目指しています。
目的も場所も知っているけど、事態が違っていてそれに対応しなければいけない、いつでも遊べてリプレイ性がある、そういったものを目指しています。『カウンターストライク』をイメージしてみてください。テロリストチームを見つけて爆弾を解除しないといけない、マップも流れも知っていて何度もプレイしている、でも毎回ちょっと異なっていて毎回チャレンジがあってきっちりやらないといけない。対戦ゲームのそういった体験をシングルプレイと協力プレイで提供したいと思います。
キャンペーンと協力プレイの関係
――今日が金曜日だとして、1~2時間ぐらいの余裕があり、後半は友達がオンラインで参加できそうだな……という状況だとしてください。どうプレイしますか?
Ingame Studiosメンバーを雇って武器を与えたり、ちょっとした仕事に送り込むようなマネージメントをして、まずは短いミッションをプレイするとしましょう。
それで「もうちょっとだけ……」となるでしょうが、友達がオンラインになったら協力プレイをやるいい機会です。すぐに参加できるように設計されていますので、数分で加わり、挑戦的な戦闘のさなかに放り込まれているはずです。自由な時間があまりない人でも遊べます。
――シングルプレイキャンペーンを完了するのを目標としているプレイヤーにとって、協力プレイを遊ぶメリットやデメリットはありますか? 協力プレイで失敗したらキャンペーン用のキャラクターを失ったりしませんよね?
Ingame Studiosはい、シングルプレイキャンペーンと協力プレイは分かれています。
また“クライムタイム”というゲームモードではAI操作のボットとプレイすることも可能です。人間とのプレイでは、難度の高い大掛かりなハイストでも何倍もの報酬のいい結果を期待できるでしょう。しかし失敗そのものはあり、協力プレイでもやられてしまったらキャラと武器を失います。
もしランダムなプレイヤーとプレイするのであれば、“都市伝説”モード(※)をプレイするのがベストかもしれません。このモードにはネガティブな結果はありませんので。(※アンロックやレベル上げを気にすることなく、強力なキャラクターや武器を使ってミッションをプレイできるモード)
キャラクターの制作手法について
――有名なハリウッド俳優をどうやって若い姿のキャラクターに変えたのか教えてください。キャプチャーなどは行ったのでしょうか?
Ingame Studiosこのゲームでは1980年代後半から90年代前半の俳優たちの肉体で登場します。しかし、たとえばチャック・ノリス氏は現在82歳ですから、フォトスキャンやモーションキャプチャーはできません。しかしセリフの収録は行っていて、時には90年代に演じたキャラクターのテイストで台本を修正することもありました。
技術についてですが、私たちはエピックゲームズのMetahuman(※リアルな人物アバターを作る技術)をいち早く導入していますので、キャラクターに喋らせるところまで持っていくのは簡単でした。セリフを録音しておけば、彼らの話し方でキャラクターに喋らせることができます。アニメーションについては、表情アニメーションを出力するのにSpeech Graphicsの技術を使っています。このような素晴らしい技術で作業できるのは魔法のようです。夢が実現したようですよ。