アニプレックスより2023年2月22日に配信予定のスマートフォン向け基本無料RPG『World II World(ワールド・ツー・ワールド)』(以下、『ワルツー』)。開発は、インディゲームアワード受賞の『RPGタイム!~ライトの伝説~』を手掛けた、デスクワークスが務めている。
本作の公式ジャンル名は“ニコイチRPG”。いろいろな意味を含めて“ニコイチ”(2つで1つ)と称していると思われるが、なかでもわかりやすいニコイチ要素は2画面でゲームが進行するRPGということだ。
サービス開始前の開発中バージョンのものを、事前に遊ばせていただいてのプレイレビューをお届け。ニコイチで進んでいくゲームの展開や、おもなゲームシステムなども併せて紹介していこう。
世界の分断を止める物語
本作にはさまざまな世界が存在し、基本的にはふたつの世界の掛け合わせが3種類用意されている。物語の軸として、“分断王 ディヴァン”がそれら3種類の世界を分断しようとするところから始まる。
それを止めようとするのが、“境界の少女 ウィーブ”(愛称は境界ちゃん)。彼女は「分断されて破滅へと導かれる世界を止めてほしい」と、プレイヤーに頼んでくるのだった。そしてプレイヤーが各世界のキャラクターたちの視点から、世界の崩壊を止めるのがおもなストーリー。
2種類の世界がクロスする
一見交わりのなさそうな世界設定の人物たちが、さまざまなドラマをくり広げるのは本作の見どころのひとつ。
最初に訪れるのは、機械(マキナ)×人間(ラボル)ワールド。機械界はAIによって統括された、ハイテクなアンドロイドのような者たちが住む世界。一方で人間界は、ローテクな機械はあるものの、人間らしさの残るスチームパンクな世界観。
続いて、異世界(ファンタジー)×現代(リアリティ)ワールド。異世界に飛ばされてしまった少年と、現代世界に転移した魔王少女の物語。いわゆる“異世界モノ”の王道をなぞりつつも、ふたつの異世界転移が同時に展開される。
3つめの西部(ガンマン)×東部(サムライ)ワールドは、わかりやすく西部劇と時代劇の世界が対立しているような構図に。それぞれの道で最強を目指す男たちの物語が描かれている。
序盤はそれぞれ3種類のワールドの前半を遊ぶ流れになっており、それが終われば物語をどう辿るのかはプレイヤーの自由。昨今のスマートフォン向けRPGの中でも、かなりストーリー演出に力が入っていて、たしかにRPGを遊んでいるのだが、感覚的にはアドベンチャーゲームのようにも感じた。
2画面で自由に選べるプレイスタイル
ゲーム進行は、横スクロールでフィールドを進みながら、敵とエンカウントしたらバトルが始まる、シンプルなRPGスタイル。『ワルツー』のポイントは、それが“ふたつの画面で進行する”こと。
上画面では上世界、下画面では下世界の物語が展開される。ゲーム自体は上下でほぼ独立しており、上下でまったく異なるRPG体験、そして物語が同時進行するのがユニークなところ。
完全に独立しているのではなく、一部シーンでは上画面を特定の場所まで進めると、下画面の進行が解放されたりもする。そういった場面では、上下のゲーム画面が合体ないし、境界が解放されるような形で物語がクロスすることもあった。
この2画面で別々に独立したRPGを楽しむというのが、『ワルツー』最大の特徴となっている。筆者は最初に「上下で別々の物語を追うのはたいへんそうだな」と予想していたのだが、やはり同時進行で進む物語を追うのはかなり難しかった。
とはいえ、ここはプレイスタイルによるところ。物語をしっかりと追いたい場合は片方の画面だけ操作して物語を読み進め、たとえば“特定の場所まで到達した”、または“探索と戦闘をくり返すパートになった”などのタイミングでもう片方の物語を読み進めることも可能だ。
2個の画面で進むけれども、ゲーム自体は別々。必ずしも同時進行する必要はないということは声を大にして言っておきたい。
もちろん、「物語の展開よりバトルや育成をサクサクやりたい」という人は、読まずに同時に進行するのもいいだろう(作り手としては物語を楽しんでほしいだろうが、育成に特化した遊びかたも許容されている。その辺はプレイヤーの自由だ)。
なお、フィールドには宝箱があるし、サイドクエストなども存在する。また、フィールドはエリアで区切られているが自由に行き来でき、横スクロールと言っても広大な世界が広がる一般的なRPGくらいの大きさ。歩き移動だけではなく、ファストトラベルも利用可能だ。
バトルはサクサクでシンプル!
戦闘はターン制のコマンド選択式バトルで、通常時は敵とのランダムエンカウントでバトルスタート。イベントではボス戦も用意されている。
バトル自体はシンプルで、通常攻撃とスキルを駆使して戦うオーソドックスなシステム。上下画面で進行することからも、オートやおまかせコマンドが充実しており、体験した序盤の中ではほぼほぼオートだけでサクサク進んでいった。ゲームがより進んでいけば、より戦術性のあるバトルも楽しめそうだ。
2画面最大のよさが感じられたのが、フィールド移動と戦闘をくり返す移動パート。片方の画面のオートバトル中に、もう片方では目的地まで移動。戦闘が終わると移動していたほうの画面でバトルが始まる……というように片方ずつで敵とエンカウントすることが多く(同時にバトルをすることも少しだけあった)、それぞれの移動が別の世界でむだな時間にならないという感じ。メチャクチャに時間効率を気にする人にはうれしいゲームスタイルなのではないだろうか。操作は忙しいけど!
育成自体もシンプルで、敵と戦って経験値を集めてレベルアップ、加えて装備の入手で鍛えていくのが基本。独特なのは、片方の画面を操作せずにいると、その場でキャラクターたちが自主練習を始めて、待機ボーナス経験値が貰えること。同時進行スタイルでなくとも、お得にゲームを進められる。
仲間ガチャがユニーク!
各ワールドの主人公ふたりのほか、仲間キャラクターをガチャで入手してパーティーに加えられる。初回の機械×人間ワールドガチャは10連ガチャが何度でも引き直し可能で、自分好みのパーティーを作ってから挑めるのはうれしいところ。
仲間のシステムは独特だ。本作では基本的に、各世界の仲間はその世界でしか仲間にならない。機械サイドのキャラクターならば機械サイドのみ、人間サイドなら人間サイドのみ。5人+バックメンバー2人の、最大7人のパーティーを世界ごとに作る必要があるため、すべてうまく進めるためには最低でも42人が必要というのは、なかなかに思い切った仕様だ。
ただ、決してその世界でのみでしか仲間が使えないわけではなく、重複したキャラクターを重ねていくと、境界を越えて世界の狭間に辿り着く“超越者”といった存在になる。超越者は世界の垣根を越えて、どこでも仲間キャラクターとして使用できるのだ。
また、特定のキャラクター数名を超越させることで、彼らがクロスオーバーする物語“超越結束”というものも楽しめるようだ。
これぞデスクワークスの真骨頂
一見すると王道的なスマートフォン向けRPGのビジュアルだが、随所に“遊び”をこだわり抜くデスクワークスらしさも垣間見える。たとえば物語の進行中、連打やタイミングなどのミニゲームが適宜挟まるのは、『RPGタイム!~ライトの伝説~』を彷彿とさせる要素。
絵本のようなビジュアルで進行するシーンもあり、そこに毎回手描きグラフィックが盛り込まれているのは、まさにデスクワークスといった感じ。
個人的にお気に入りだったのが、ログインボーナスの表示後に、今日1日のラッキーフードを教えてくれたこと(その日は“サバ”だった)。ほかにも“ラッキーフード”や“ラッキーカラー”、“ラッキーアイテム”、“ラッキーアイム”、“記念日”などが日替わりで表示されるらしい。
サバの味噌煮などのグラフィックまで用意されており、1日ログインするたびに「今日は何だろう?」と毎日気になりそう。
取材に同席していただいたスタッフに聞いたところ、ある日突然、開発側から「どうしてもラッキー○○の演出を入れたい」と言われたそうだ。画像も膨大に用意されていたらしく、そりゃ断れないよなと思う。
6つの世界があなたを待つ!
遊ぶまで「2画面進行って言うけど、どうなるんだろう!?」と思っていた『ワルツー』。遊んでみるとそこはシンプルで、本当に単純に2画面別々のRPGが用意されている感じ。物語進行は1画面だけ集中すればいいので、そこに気づけば戸惑うところはほぼない。
この2画面がとくに活かされるのが、やはりRPGにおける“稼ぎ”の部分だろう。2パーティーを同時に育成できるので、手間も経験値も2倍でお得感が味わえるのは、本作ならではの要素。
2画面操作は、「上の画面は右手で、下の画面は左手で……」とやっていると、自分の指で情報が見えなくなったりと、ときおり指の置き場が大変なことになったりもしたが、これもなんだか“遊び”の1個のような気がして、つい笑ってしまった。
本作は運営型タイトルであるものの、ほかのプレイヤーとの競争やコミュニケーションなどといったソーシャル要素は一切なく、完全にひとりで遊べるRPGとなっている。
“ガチャ”という要素はあれど、基本的なプレイ感覚は家庭用RPGなどに近く、ホーム画面もあるが最小限の機能のみ。いわゆるスタミナ制でもないので、やめどきがなかなか見当たらないのはスマートフォン向けRPGとしてはある意味斬新だ。
配信日は2023年2月22日を予定。この徹底した“2”へのこだわりも、『World II World(ワールド・ツー・ワールド)』の仕掛けのひとつなのだろう。気になる人は、ぜひダウンロードして遊んでみてほしい。