今日も『スプラトゥーン3』で負ける日々です。

 4対4のオンライン対戦ゲームなわけですが、負けると悔しい。めちゃめちゃ悔しい。やられかたによっては、血が逆流するほど悔しい。

 そりゃあ自分がうまくなればいい話なんですが、でもやっぱり負けるとキーッってなる。

『スプラトゥーン3』俳優 大和田伸也さんに相談。負けたときは子どもの前で感情爆発して大丈夫?「悔しがる姿を見せましょう」
今日も僕の亡骸がゴンズイ地区に転がっています。キーッ!

 ただですね、うちにはNintendo Switchが1台しかないので、子どもの前でプレイすることも多いんです。

 こんなに親がキーッってなってる顔を見せていいのかな……? あんまりよくないんじゃないのかな? 「こんなものかね」という態度で接したほうがいいのかな?

 とはいえ、平静を装おうとすると、心(キーッ)と体(こんなものかね)のバランスが保てません。かといって「もうやめた!」と投げ出す姿を見せるのもどうなのか。

 このままでは心身がバラバラになりそう。そうだ、こうなったら人生の先輩に相談しよう。その人物こそ……。

『スプラトゥーン3』俳優 大和田伸也さんに相談。負けたときは子どもの前で感情爆発して大丈夫?「悔しがる姿を見せましょう」

 俳優・大和田伸也さんです。

 大和田さんは、2022年11月にYouTubeチャンネル“大和田伸也の隠れ家”を開設。ゲーム実況動画をアップし続け、『スプラトゥーン3』は24万回再生、『ポケットモンスター バイオレット』は70万回再生(記事執筆時点)を記録しています。

スプラトゥーン3 挑戦記

 ときにはパジャマ姿で、のんびりとゲームをたしなむ大和田さん。いろいろな経験をされているだろうから、ゲームとの向き合いかたについても、きっと答えてくださるはず……!

 インタビューには、YouTubeの撮影編集を担当する息子の大和田健介さんと、その奥様のはすみさんも同席。動画配信を始めたきっかけや勝ち負けの捉えかた、そして人生の楽しみかたに至るまで、じっくり語ってくださいました。

 ちなみに、ファミ通.comのミス・ユースケさんは少し泣いていました。「許しを得た気がする」だそうです。

大和田 伸也(おおわだ しんや)

早稲田大学在学中に演劇を始め、劇団四季を経てNHK朝の連続テレビ小説『藍より青く』で人気を得る。その後、『水戸黄門』や『篤姫』、『カムカムエヴリバディ』などのテレビドラマや、映画『犬神の悪霊』、舞台『細雪』、『王女メディア』、ミュージカル『アニー』など数多く出演。映画『ライオン・キング』の吹き替え版では、実写・アニメ版ともにムファサの声を演じる。文中では大和田。

大和田 健介(おおわだ けんすけ)

大和田伸也さんのご子息。俳優として活動しつつ、映画おもちゃ&カフェ“アソビバ トイズ & カフェ 新横浜 STUDIOKENSUKE”で店長を務めている。文中では健介。

大和田 はすみ(おおわだ はすみ)

大和田健介さんの奥様。ふだんの大和田さんについて教えてもらうため、インタビューに参加してもらった。文中でははすみ。

ミス・ユースケ(みす・ゆーすけ)

本記事の担当編集者。親と子とゲームの関係に興味がある。文中ではユースケ。

オンライン対戦もYouTubeも“人とつながる”もの

――大和田伸也の隠れ家、いつも楽しく拝見しています。そもそも、なぜゲーム実況のYouTubeを始められたのでしょうか?

大和田もともとゲームは好きで、家族ともよく遊んでいたんですよ。で、あるとき、このふたり(健介さん&はすみさん)から、『スプラトゥーン3』というのがおもしろいからいっしょにやらないかと誘われまして。それで遊び始めました。

 昔から油絵を描くのは好きだし、絵の具を思い切りパーッと塗るのは楽しいじゃないですか。やってみたらおもしろくてね。右も左もわからないまま一生懸命塗っていた。そしたら、その様子を健介がケータイで撮っていたんです。昔から何かやってる僕の写真を撮るのが好きなんだよね。

――では、YouTube用に撮影したわけではなく……?

大和田たまたまです。パジャマのままだし、「やめろよ~」なんて言いながら(笑)。で、後になって健介が編集したものを見せてくれて、「お父さん、これおもしろいからYouTubeに載せていい?」と。

 YouTubeなんてやったことないし、ただブツブツ言いながら遊んでいるだけだけどな……と思いつつ、とりあえず載せてみた。そうしたら、ちょっと反響があったんです。

ポケモン初めての挑戦記

『ポケットモンスター バイオレット』に挑戦した回。キャラクターの声をいい声で演じわける大和田さん。

大和田編集しているのも健介です。彼は子どもの頃から自主映画を撮ったり、いい映像を作るんだけど、あえてケータイの粗い映像と粗い音で、ほんとに(視聴者が)その場にいるような雰囲気にしています。

――ちょっとしたドキュメンタリーですね。

大和田あんまりきれいにしないでくれってお願いしているんですよ。ケータイだったら(カメラとして)意識しないですからね。大きいカメラをどーんと構えられると、仕事の顔になっちゃう。

――職業病だ。見る側としてはリラックスしているのもいいなと感じます。楽しんでいる様子が伝わってきますから。

大和田こんなおじさんがやっているのを見て、若い人たちからするとおもしろいらしくて。「励まされた」とか「勇気が湧いた」とか、いろんなことを言ってくれるわけです。役者という仕事をやっていると、現場だけとか仲間内だけとか(交流範囲が)決まってしまう。こういう形で人と交流できる、つながれるというのはおもしろいなと思って、続けることにしました。

 そもそも「人とつながる」というのは、僕の人生のテーマなんですね。映画監督をやったり舞台を演出したときも、最終的にはそういうテーマが多いんです。アガサ・クリスティの(小説の)殺人事件をモチーフにしたときもそう。事件を通した人のつながりを描きたかった。

 仕事柄、決め台詞に恵まれていましてね。昔から一般の方と交流するときは、よく披露するんですよ。『水戸黄門』で格さんを演じていたときは「ええい、静まれ! 静まれ!」とやってましたし。すると、皆さんがわーって喜んでくれる。そのつぎは『ライオン・キング』の主人公の父・ムファサの声。「思い出せ、お前が誰かを……」

『スプラトゥーン3』俳優 大和田伸也さんに相談。負けたときは子どもの前で感情爆発して大丈夫?「悔しがる姿を見せましょう」
「思い出せ、お前が誰かを……」

――おぉ……本物だ……! 鳥肌が立ちました……。

大和田最近では『カムカムエブリバディ』という去年(2022年)のNHK朝ドラマ。歴史ある和菓子屋さんのおやじなんですけど、餡子を練るときに「おいしゅうなれ、おいしゅうなれ、おいしゅうなれ……」って語りかけるんです。実際に餡子屋さんのロケに行ったときも頼まれましたよ。ちょっと台所に来てくれって。

ユースケメイド喫茶の「おいしくなぁれ、萌え萌えキュン」の上位互換だ!

大和田こういうリアクションが快感なんです(笑)。だから、オンライン対戦で知らない誰かと遊ぶのも、YouTubeで反響をもらうのも、「人とつながる」というテーマにぴったりだなと思います。

 家でのんびりくつろいで、自分が楽しんでいるところを見ていただく。それで喜んでくださる方がいれば、新たにつながることができる。こんなにおもしろいものはないなと、息子のおかげで気付きましたね。

勝ち負けの悔しさ、どう処理したらいい?

――大和田さんの『スプラトゥーン3』動画で印象的なのは、リラックスして遊んでいる姿です。僕は負けると悔しくて仕方ないんですが……。ゲームの勝ち負けについて、どう捉えていらっしゃいますか?

大和田勝ちたいとは思うけど、でもそれがすべてじゃないからね。チャレンジすること自体がおもしろいですし、『スプラトゥーン』は団体戦。まあ、チームの4人の中でいちばん下になることも多いんですけど。(健介さん&はすみさんに向かって)僕、『スプラトゥーン』やってるとき、どんな感じかな?

はすみ私は勝ちたくて、負けると凹んでしまうタイプなんですけど、お義父さんは負けてもすぐに「つぎ勝とう!」って励ましてくれるんですよ。お義父さんがいちばん……その……塗ってなかったりするんですけど……(笑)。でも、「絶対勝とう!」って言ってもらえるのはうれしいですね。

大和田「つぎ勝ったらやめよう」ってね。おもしろいのはわかるけど、やりすぎると寝るのが遅くなっちゃうから(笑)。

『スプラトゥーン3』俳優 大和田伸也さんに相談。負けたときは子どもの前で感情爆発して大丈夫?「悔しがる姿を見せましょう」
実際にご自身のSwitchで『スプラトゥーン3』をプレイしていただきました。ブキはボールドマーカー、ギアはファッション重視、名前は「おおわだ しんや」。

――悔しさを引きずるよりも、「つぎはがんばろう」と切り替える感じなんですね。

大和田そうですね。もともとゲームで「勝ったからものすごくうれしい」、「負けたからものすごく悔しい」みたいに、あまり思い込み過ぎないんですよ。

――そうなんですか!?

大和田自分が勝つことよりも、いっしょに遊んだ相手が楽しんでくれることを考えますね。それこそ、まだ子どもが小さいときは、トランプで遊びながら「どうしたら楽しんでくれるだろうか」とばかり考えていました。自分が負けると、むしろホッとしたりして。

 ところが、子どもが成長して、いっしょにゲームで遊ぶようになると、しっかり負けるわけですけど(笑)。

『スプラトゥーン3』俳優 大和田伸也さんに相談。負けたときは子どもの前で感情爆発して大丈夫?「悔しがる姿を見せましょう」
ピンチになり、思わず立ち上がる大和田さん。

大和田やっぱり悔しいときもありますよ。でも、それよりも「つぎはがんばろう」、「ここを覚えて克服しよう」と。やっぱり勝敗だけにこだわると苦しいですからね。ゲームは楽しむものですから。

子どもの前で悔しがるのはあり? なし?

――引き続き『スプラトゥーン』のお話を。僕はリビングで子どもが見ている前で遊ぶことがよくあるんです。負けるとすごく悔しいんですが、「子どもの前で悔しがったり凹んだりする姿を見せるのもどうなのか」と思ってしまって。

大和田それで、我慢しちゃう?

――はい。なんとか平静を装うとするんですが、難しくて……。こんなとき、親としてどう振る舞うべきだと思いますか?

大和田それはね、悔しがったほうがいいですよ。

 もちろん、汚い言葉を使ったり物に当たったりするのは論外ですけど、これは“大人の悔しがりかた”を見せるチャンスでもあると思うんです。腹が立ったときはどういう怒りかたをすればいいのか、と言い換えてもいいかな。

 大人だって悔しいときは悔しいんだと。そこをご自分の個性で見せられると、お子さんは感心すると思いますよ。そこそこ悔しいときはそれなりに、大負けしたら「これはしょうがないな」、「俺の完敗だよ」みたいなね。そこでへらへらしていると、大人はいい加減なんだと思ってしまうかもしれない。

 僕なんかは声が大きいからものすごく怒ってるように見えるかもしれないけどね(笑)。でも、それも個性。親の個性を見せるいい機会だと思います。ふだんはなかなか(親の個性を)見ることはないですから。

『スプラトゥーン3』俳優 大和田伸也さんに相談。負けたときは子どもの前で感情爆発して大丈夫?「悔しがる姿を見せましょう」

――なるほど。親の人間的な部分を見ることってあまりないですもんね。怒りの表現の仕方や悔しさの受け止め方を、手本として見せる機会だと……。

大和田いや、あまり「手本を見せよう」と意識しないほうがいいですね。自然体でいいんです。

 親がゲームで悔しがったり悲しんだりしている姿って、子どもから見たらかわいいと思うんですよ。「お父さんでもこうやって悔しがるんだな」と。みっともなく暴れたりするのはダメだけどね。

 だから、本当に悔しかったら、隠さずにそのまま表現していいんじゃないかな。子どもだって悔しいときは悔しい顔をしていいわけだから。

――たしかに、子どもといっしょに悔しがったり、喜んだりしたいですもんね。「今回は相手がうまかった」と、相手を称える姿勢を見せるのもいいかもしれない。

大和田そうですよ。皆さんもね、悲しかったり悔しかったりしたら隠さないで、もうどんどん出していけばいい。くり返すけど、お行儀の悪いことは別ですよ。

 素直に気持ちを出すことが人生を楽しく生きる術(すべ)だと思うし、そのためのゲームだと思うんだよね。すべて自然体ですから、ゲームの楽しみかたは。

 下手だったら下手なりに、上手だったら上手なりに。で、怒るときは怒るし、うれしいときはうれしい。それらをひっくるめて、ゲームを楽しめばいいと思いますよ。

好きなゲームは『みんなのゴルフ』、『ヒカルの碁』、そして『ゴールデンアイ 007』

――『ポケモン』の動画ではキャラにアテレコしていらっしゃいますよね。何だか雰囲気がよくて、ついつい見入ってしまいました。

大和田アテレコってほどたいそうなものじゃないですよ。ゆっくり楽しみながら進めるのが心地よくて、セリフを思わず読んじゃったんです。いろいろなキャラクターが出てくるから、反射的に声を当ててみた。何も考えずにしゃべるからとんでもない声を出しちゃったりするんだけど。

 男の校長先生いるでしょ? 遠目に見たら女の人かと思ったから「おばさんみたいな声を当てたんですけど(甲高い声で)」、よくよく見たらおじさんだった、みたいな(笑)。

 敵側だと思ったらそれなりに「悪者らしく!(だみ声で)」やるわけですよ。後で相棒になるキャラだったこともあったなあ。もう少しいい声にすればよかった。その場で楽しみながらね、あまり難しいことを考えないで。

※上記の発言のカギカッコ内はキャラっぽい声色でしゃべっている。役に対する瞬発力がすごい。

『スプラトゥーン3』俳優 大和田伸也さんに相談。負けたときは子どもの前で感情爆発して大丈夫?「悔しがる姿を見せましょう」
大和田さんのプロコンは『スプラトゥーン3』エディションで、ケースは『ポケモンSV』。

大和田そういうの昔から好きなんですよ。小さい指人形みたいなものをたくさん持っていまして、自分で(キャラ同士の)会話をするのがおもしろいと言いますか。

 やっぱりゲームは素直に楽しむのがいいですよ。赤いカブみたいなポケモンが見えたら「おっ、赤カブだ」とか勝手に名前を付けたりして。

健介ですので、家族からすると珍しいことじゃなかったんですよね。日常をただ撮っている、みたいな。

――さっきはドキュメンタリーと言いましたけど、どちらかと言うと大和田家のホームビデオですね。ふだんの大和田さんが映っている。

大和田自分の声のキャラクター(『クライシス コア -ファイナルファンタジーVII- リユニオン』のホランダー)と戦うときは困りましたね。どっちに感情移入していいかわからない。主人公の声を当てるんだけど、敵側がどうしても気になっちゃう。自分の声がするもんだから。

 『ワンピース オデッセイ』なんかも実際の声が入ってるでしょ。しかもすごい人たちが長年演じている。僕が勝手に声をやったらファンの皆さんは嫌かなとも思ったけど、全然違う声にしたらおもしろいかなと。サンジも平田(広明)くんみたいな2枚目の声じゃなくて、悪い声を出してみたりね。ファンの皆さんにはごめんねーって言いながら(笑)。

ファイナルファンタジー初めての挑戦記 大和田伸也VS大和田伸也

ワンピース初めての挑戦記 オデッセイ ゲームで冒険

――ちなみに、もともとゲームはお好きだったということですけど、以前はどんなゲームで遊ばれていたんですか?

大和田そうですね。嫌いじゃないですよ。テレビゲームができる前から家族でトランプを遊ぶのも好きでしたし、格闘ゲームみたいなのもよく遊びました。でも、あまりうまくないので負けてばっかり。なんて思いながらも、「ほかにないかな」みたいな感じで、いろいろ遊びました。『007』とかね。

ユースケえっ? もしかしてニンテンドウ64の『ゴールデンアイ 007』ですか!?

大和田そうそう。『ゴールデンアイ 007』は好きでしたよ。

『スプラトゥーン3』俳優 大和田伸也さんに相談。負けたときは子どもの前で感情爆発して大丈夫?「悔しがる姿を見せましょう」
『スプラトゥーン3』俳優 大和田伸也さんに相談。負けたときは子どもの前で感情爆発して大丈夫?「悔しがる姿を見せましょう」
『ゴールデンアイ 007』:1997年8月23日発売の傑作FPS。現在のFPSトップ層の中には本作で対戦シューターのおもしろさを知ったプレイヤーも多く、日本のeスポーツの歴史を支えた1本と言える。タイトルが挙がった瞬間、同席したミス・ユースケは大興奮でした。

大和田健介に教えてもらいながらね。映画『007』シリーズは全部見ているぐらい好きだし、それもあって遊び始めたんだけど、どこにいるかすぐにわからなくなっちゃう。トイレから出られなくなったり(笑)。そういうのもおもしろかった。

 『みんなのゴルフ』や『マリオゴルフ』なんかも好きですね。これはもうスピードは関係ないから、ずーっと続けています。最近では『ヒカルの碁』で碁を覚えました。将棋は現場でけっこうやるんですけど碁はやっていなかったので、これはいいなと。

 ゴルフも碁もじっくり遊べるから好きだったんだけど、そこに『スプラトゥーン3』が出てきて。下手なら下手なりにみんなで協力できる。個人技だけじゃないでしょ。いろいろな人とつながって遊べるのはやっぱりいいですよ。

――YouTubeでプレイするゲームは皆さんで決めてらっしゃるんですか?

大和田健介から「これやったらどう?」といろいろ聞いて、自分の興味があるものを選んでいます。

健介基本的にゲームが好きなので、「今度こういうゲームが出るよ」みたいな話はよくするんです。『ワンピース オデッセイ』を選んだのもそういう流れだったかな。

大和田ちょっとやってみようか、なんてね。YouTubeではお上手な方がゲームをきちんと紹介されていますよね。それはとてもできないし、自分なりに楽しんでいるところを見せるんだったら、右も左もわからないところからやってみたい。それだったら初心者の自分も無理なくできると思うので。

――慣れない様子を見せることを恥ずかしがる人もいると思います。僕だったら少し練習してから、いいところを見せたい。どうして素の部分を見せようと思ったんですか?

大和田上手な人はたくさんいらっしゃるわけですから。ゲームの紹介をするんじゃなくて、ふつうのおじさんがチャレンジしているところ、楽しんでいるところを見せるんだったらいいよと。好きなゲームだから、何も気にしないで自由に遊びたいんです。

 熱心に見ているというわけではないけど、上手な人たちをリスペクトする気持ちはあります。(ハイレベルなプレイは)そういう方にお任せして、自分の年齢なり、自分の実力なり、身の丈に合った遊びかたでいいと思うんです。それを見て喜んでいただけるのはうれしいですよ。

昔は”ゲーム反対派”だった大和田さんが、いまの時代に思うこと

――年齢を重ねると、新しいものに対して腰が重くなりがちです。でも大和田さんは、YouTubeやゲームにも前向きに取り組まれている。何か心がけていることはあるのでしょうか?

大和田もともと趣味はたくさんあるんです。油絵も描くし、一時期は写真にも凝ってました。野球も相撲もお笑いも好きだし、映画もほぼ毎晩観ていますね。70歳を過ぎてからはオペラにも挑戦しました。ミュージカルはいろいろやりましたけど、オペラの話が来るとは思わなかった。たいへんだけど、おもしろかったですよ。

 やっぱり、挑戦することっておもしろいじゃないですか。これは僕が若いころから言ってるんですが、人生は「夢と情熱」なんですね。

――夢と情熱……大和田さんの動画の最後にバーン!と出るフレーズですよね。

『スプラトゥーン3』俳優 大和田伸也さんに相談。負けたときは子どもの前で感情爆発して大丈夫?「悔しがる姿を見せましょう」
動画の最後にバーン!と出る“夢そして情熱”。「健介が勝手に載せてるんですよ。もう少しきれいに書いたやつを使ってほしいんだけどね(笑)」(大和田)。ちなみに動画に出てくる油絵はすべて大和田さんが描いたもの。

大和田挑戦や夢というと大げさに感じるかもしれないけど、ちょっと目を向けるだけでいいんです。どんなに小さなことでもいい。ゲームなら「あと10点上げたいな」、たとえば僕よりもお年を召した方なら「あの公園まで歩きたいな」。今日は途中で帰ってきたけど何日か続けたら公園にたどり着いた。これも夢であり、情熱です。

 その夢に向かって、一生懸命に情熱を傾けていくのが人生なんだと。何かで1位になるとか結果ももちろん大事だけど、そこに向かっていく気持ちや過程も大事。

 なんかいいなと思うものがあったら、軽い気持ちでやってみる。下手でもいいから一歩一歩進んでみる。こうやって、夢と情熱を一生持ち続けることが大切だと思いますね。

――軽い気持ちでやってみる。いい言葉ですね。

大和田好奇心を忘れなければ、たいていのことはできると思います。子どもと交流したいと思ったら試しにゲームをやってみる。うまくなくても完璧じゃなくていい。もっと上手になりたいと思うなら続ければいいし、合わないこともあるでしょうけど、そのときはそのとき。構えないことですよ。

はすみお義父さんは壁がないんです。私たちからゲームや映画に誘うと、悩んだり考えたりする前に動いてくれる印象です。

健介それも好奇心なのかも。「うちの家族はどういう目線で物事を見ているんだろう」と、目線を合わせてくれるというか。

大和田自分だけだと観ないような映画も観るようになりました。いまは配信もいろいろありますしね。

――最近だと何をご覧になりました?

はすみ今際の国のアリス』とかですね。私たちが「おもしろいから観よう」と誘って。

大和田そしたらいちばんハマっちゃった(笑)。アニメもそうですね。『鬼滅の刃』もおもしろかったですよ。

――何かに誘われたとき、「私はそういうの苦手だから」で断る人も多いと思います。それはもったいないことなのかも。

大和田まあ、僕もそうやって断るときはありますよ。ただ、信念や軸がブレなければ、自分に合わないかもしれないと感じたものも受け入れられると思うんです。だから、いったん考えてみて「やっぱりいっしょに映画館に行くよ」なんてね。 

健介(鑑賞語に)討論すると世界が広がりますよね。あれはどうして戦っているんだろう、あれはああいう意味があるんじゃないかって。これもまた楽しいし、交流です。

大和田長く生きているから、各時代にいろいろな作品に触れてきました。若いときみたあの作品にそっくりなものが出てきて「あれと同じじゃん」と敬遠することもありますよね。でも、観てみたらひと味違ったよさがある。そういう発見は新鮮ですよ。

――大和田さんは、ゲームも「ちょっと目を向ける」から始まったんですか?

健介じつは僕が子どものころ、お父さんはゲーム反対派だったんですよ。10歳ぐらいまで「ゲーム機や携帯電話は触っちゃダメだ」と言われて。

大和田反対というほどじゃないけど、まぁ、あんまり好きではなかったね。

――えっ!? でも、親子で『ゴールデンアイ 007』を遊んでいたんですよね……?

健介僕は幼なじみの家でずっと遊んでいたんですけど、中学を卒業したときにその友だちからニンテンドウ64ごともらったんです。お父さんは映画『007』が好きだから、「試しに1回やってみようか」という感じで始めて……そこからだよね。

大和田当時は、テレビゲームって棒だけの人間を動かすやつでしょ、みたいなイメージがあったんですよ(笑)。子どもがやるぶんにはおもしろいのかもしれないけど、と。

 いまはびっくりするよね! 絵がきれいで、映画の大作も真っ青。だから、これは侮れないというか、新しい文化なんだって認識しました

 それまでは、舞台の本番前にゲームをしている若手がいると「芝居のこと考えろよ」と思っていたんですよ。でもいま思えば、ゲームがその人にとってのリフレッシュであり、集中する時間だったんだなってわかりますね。

『スプラトゥーン3』俳優 大和田伸也さんに相談。負けたときは子どもの前で感情爆発して大丈夫?「悔しがる姿を見せましょう」

――すごい……。ダメなものはダメと意固地になるのではなくて、“新しい文化”だと考えかたを変えられるのは、なかなかできることではないと思います。

大和田だから、世の大人は反対するだけじゃなくて、実際に触れてみてほしいですね。僕らが子どものころの認識とはまったく違うから。もういまはね、すばらしい文化のひとつですよ。「しょせんゲームだから」と思わずに、いっしょに参加してみると、楽しい人生になるんじゃないかな。そう思えるようになりましたね。

ユースケ長くゲームに関わってきて、何か許しを得た気がします……。ゲームを楽しんでいいんだよ、そこから得られるものもあるんだよって。うわー、少し泣きそう。

一同 笑

健介このあいだ幼なじみとつながったので、お正月に自宅に集まってゲーム大会をやったんですよ。それもうれしかったですね。いままでは友だちといっしょにゲームをやろうなんてことは、なかなかなかったので。

大和田そうだね。いっしょにゲームを楽しめるなんていつ以来だろう。

健介少し感動しちゃいました。もちろんみんなマスクをしてね。

――感染対策もばっちりだ。それも“つながり”ですよね。

大和田いまはオンラインでつながることもできます。老若男女を問わず交流できるのはすごいと思いますよ。でもこうなってくると、つながっていることを意識しすぎて、YouTubeで「いいこと言わなくちゃ」と思いそうでね(笑)。これは気をつけなきゃいけない。

 いままで通り、無心でブツブツ言いながら、自然体でやりたいですね。その姿を見て、何かを感じていただけたらいいなと思います。

『スプラトゥーン3』俳優 大和田伸也さんに相談。負けたときは子どもの前で感情爆発して大丈夫?「悔しがる姿を見せましょう」
大和田伸也の隠れ家(YouTube)