2022年12月3~4日に韓国で行われた“アニメゲームフェスタ2022(AGF2022)”。アニメ・ゲームメーカーのブース出展を始め、ステージイベントが数多く行われたりコスプレイヤーが大勢来場したりと、日本のアニメゲームイベントにも劣らない熱気に包まれる韓国最大級のサブカルチャーイベントだ。
本稿では本イベントを共催する企業のキーマン3名に直撃。イベントの目的や今後の目標を訊いた。
イ・サンソク 氏(い さんそく)
大元メディア部長。ホビー&トイズビジネスチームリーダー。ディレクター。(文中はイ)
ヒョン・ミンウ 氏(ひょん みんう)
アニプラス常務取締役/シニアエグゼクティブディレクター。(文中はヒョン)
後藤秀樹 氏(ごとう ひでき)
ソニー・ミュージックエンタテインメント コーポレートSVP。海外事業推進グループ代表。(文中は後藤)
――まずはそれぞれどのような役割をされているのか教えてください。
イ大元メディアのイ・サンソクです。よろしくお願いします。
――あら、日本語ですね。
イ以前、日本にいました(笑)。AGFは今回で3回目のイベントですが、大元メディアは主催として2度目の参加になります。チケットの販売、そして宣伝、SNSでの告知などを行っています。また、もともと関わりのあるフイギュア系などのメーカーさんにブース出展してもらう営業などもしています。
ヒョンアニプラスのヒョン・ミンウと申します。アニプラスでは現場での運営やステージの設置、整列など皆さんといっしょにAGFが成功できるように各委員会の皆さんと協力してがんばっています。
後藤ソニー・ミュージックエンタテインメントの海外事業推進グループの後藤です。ソニーミュージックグループは初回からアニプラスさんといっしょに本イベントを共催しています。
――本イベントの狙い、目的からおうかがいできますか。
ヒョンAGFは韓国のサブカルチャーのファンのためのサブカルチャーイベントとして開催しています。ファンの皆さんにサブカルチャーイベントとしてもっとも大規模なイベントだと思っていただきたいと考えています。
アニメ・マンガ・ゲーム、サブカルチャーのなかでどんなジャンルが好きだとしてもここに来ればひとつくらいは好きなジャンルが見られるよう、いろいろなコンテンツを維持しようとしています。
――韓国にはこういったアニメ・ゲーム系のイベントというのは、AGF以外にはあまりないのでしょうか?
後藤アニメという名前を冠したイベントはこれが初めてだと思うんです。ヒョンさんがおっしゃったように、韓国のアニメファン、ゲームファンに向けてイベントを行いたいという理念に我々が共鳴して、ごいっしょすることになったというのが本イベントスタートの経緯です。
アニプラスさんは、ソニーミュージックグループのアニプレックスの取引先でして、アニメ文化を韓国にお届けするということを長年いっしょにやってきた信頼できるパートナーでもあるんですね。そこで、韓国のイベントでもごいっしょできればなと、参加させていただきました。
そしてソニーグループ内には、ソニー・ミュージックソリューションというイベントなどを実施できる会社もありまして、そこも合流して今日に至っています。
――多くのブース出展、ステージが行われる本イベントですが、もっとも目玉となるものはどれになるでしょうか?
イブースもステージもいろいろとありますが、目立つという意味では『ONE PIECE』のルフィのバルーンが目玉になっていますね。
後藤せっかく韓国でイベントがあるからということで大元さんが東映アニメーションさんにご協力をお願いしました。
――ふだんは日本に置いてあるんですかね?
イ今回はベトナムから運んで来たと聞いています(笑)。
――アニプラスさんとしては今回の目玉ステージは何でしたか?
ヒョン今回、『SPY×FAMILY』のステージでは韓国の吹替版声優さんが参加したステージや日本の声優さんが参加するステージがあり、日韓両国の国の声優さんが参加された多彩なステージが目玉だったと思います。
――ソニーミュージックグループとしてはいかがでしょう? DJ和さんのブースやステージもすごく盛り上がっていましたね。
後藤そうですね、DJ和さんに今回現地のお客様を熱くしていただいて、本当にこのイベントに大きな花を添えていただいたと思っています。
作品で言うと『鬼滅の刃』も大きかったですね。ステージでは花江夏樹さんにお越しいただいたり、アニプレックスブースでは煉獄杏寿郎 1/4スケールフィギュアを展示したりとか、ゲームでも『鬼滅の刃 ヒノカミ血風譚』を実際に触っていただいたりと。また、“Stagecrowd(ステージクラウド”というライブストリーミングを中心とした映像配信サービスについての告知も行いました。
――『鬼滅の刃 ヒノカミ血風譚』のお話が出ましたが、アニメに比べてゲームの出展が少ないなと感じました。ゲームメーカーの出展も今後増やしていきたいとお考えでしょうか?
後藤そうですね、作品を好きなファンの方に対して、アニメもゲームもいろいろな形で触れていただく機会を今後ますます増やしたいと思っています。
――韓国のアニメ・ゲームファンと日本のアニメ・ゲームファンに違いを感じるところはありますか?
ヒョン韓国のアニメ・ゲームファンと日本のアニメ・ゲームファンはあまり違いはなく、似ていると思います。強いて挙げるなら、韓国のファンの皆さんは積極的な面があると思います。DJ和さんのステージってご覧になりましたか?
――ああ、はい。
ヒョンそこでご覧になったようにDJ和さんのステージを楽しんでいる方々の姿を見ていると、韓国のファンの皆さんは積極的な面があると思いました。
後藤私は韓国以外にもさまざまな国のコンベンションに参加していますが、同じ作品が好きだという気持ちは世界各国共通だなと感じますね。
『鬼滅の刃』が好きであったりとか、『Fate/Grand Order』なども、各国のイベントでお客さんが作品に向ける愛情だったり、情熱というのは本当に等しく尊いなといつも実感してます。
――韓国で行われているAGFですが、日本のアニメ・ゲームファンでも訪れたら楽しめるのではと感じました。主催者側からも「日本人にも来てほしい」という気持ちはあるでしょうか?
イもちろんです。チケット自体も海外でも購入できる仕組みになっていますので、今年はまだコロナの影響がありますが、2019年のイベントのときは実際に日本のお客様が団体でいらっしゃったので、来年からはまたたくさん来ていただきたいと思っています。
後藤はい。海外にも同じ気持ちを持った仲間がいるということを知っていただけるすばらしい機会だと思います。
韓国は本当に近いですから、そういう方が増えてくれるのはいいことだと思います。逆に、AnimeJapanというアニメイベントでは海外からのファンの方も増えて楽しんでいただいていますし、好きなものが同じだという方どうしがときと場所を同じくするチャンスがあるのは素敵だな、と思います。
ヒョン私も同じく日本のファンの方々に来ていただきたいと思います。日本の方々が好きなタイトルのブースやステージが多くありますし、しかも韓国ならではのステージにアレンジしているので、日本とはまた違った魅力を感じることができると思っています。
――韓国のアニメ・ゲームファンについてお伺いしたいと思います。韓国には日本の秋葉原のようなアニメやゲームファンが集まる街というのはあるのでしょうか?
イ弘大(ホンデ)というところがあって、弘大にはアニメイト、アニメイトカフェ、『ONE PIECE』公式ショップ、バンプレストの一番くじとプライズショップ、それに韓国のBL系のカフェとかがあります。
弘大の周辺には20件以上のお店が集まっているので、韓国のアニメのファンは弘大で一日中回って楽しんでいて、そういった文化と市場ができていますね。
日本で言う“アキバ系”みたいなことを、韓国ではオドッ(오덕)と言います。でも、傾向としては、以前はそういう見た目で趣味が一般的ではないという方もいらっしゃったんですが、最近はそれも薄くなっていて、20代くらいの女性の方もいらっしゃいますし、そういった傾向としては日本と近いと思っています。
――コスプレイヤーの方も大勢いましたね。日本のコミケのようにコスプレができるイベントも多くあるのでしょうか?
ヒョン韓国ではコミックワールド(Comic World)というサブカルチャーの同人イベントがあって、ソウルと釜山(プサン)で開かれます。最近はコロナの影響で中止されていたのですが、2022年は5月にまた実施されています。例年は2ヵ月に1回だったのですが、いまは年3回くらいのペースで開催されています。
あと、毎年開催されているソウルポプコン(Seoul POPCON)というイベントがありますけれども、そちらでもコスプレをしている方々がいます。
――それでは最後に、AGFについて今後の展望をお聞かせください。
ヒョンAGFは、すべてのサブカルチャーを内包しているイベントとして、ファンの方が来て、誰でも楽しめるイベントとして発展させていきたいです。AnimeJapanのように大規模のイベントとして成功させたいと思っています。
――誰でも、というのがひとつのキーワードなんですね。
ヒョンどんなジャンルのファンであっても来ていただいて楽しめる、サブカルチャーオールジャンルなイベントにしたいですね。
後藤AGF2022の成功を受けて、より多くの企業様が出展される機会になっていくのではないかなと思いますし、それがアニメ・ゲームに留まらず幅広いコミュニティーインタレスト、いろんな趣味を持った人たちがここに集まれるようなイベントに育っていくのではないかと予想しています。
ソニーミュージックグループからすると、アニメを通じて知っていただいた音楽などをもう少し韓国の皆さんに紹介できる機会を作っていければと思っております。
イ日本の方々とビジネスとしてお付き合いをさせていただいていますが、私としては日韓の違いというのは本当にほとんど感じないですね。
両国には政治の問題とか歴史の話もあったりすると思うのですが、実際に会って話してみると、パートナーだなと私はいつも親しみを感じています。そういうことを感じられる機会が、AGFを始めとしたイベントを通じて、ファンとか若いみなさんにもたくさん伝わればいいなと思っています。
後藤本当に作品愛は国境を越えると思うので、よりすばらしい作品を、より多くの人に触れていただきたいと思いますし、韓国企業の皆さんといっしょに共催できているということがとても大切と思っています。