2022年9月28日、ユニバーサル ミュージックから『エースコンバット・ゼロ・ザ・ベルカン・ウォー』の劇中曲を収録した“エースコンバット・ゼロ ザ・ベルカン・ウォー オリジナル・サウンドトラック 2LPセット”が発売される。

『エースコンバット・ゼロ』LPレコード盤サントラが本日(9/28)発売! 各楽曲について解説します。ゲーム内容を忘れていてもこれでバッチリ
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“エースコンバット・ゼロ ザ・ベルカン・ウォー オリジナル・サウンドトラック 2LPセット”PV

『エースコンバット・ゼロ・ザ・ベルカン・ウォー』とは

 『エースコンバット・ゼロ』は、2006年3月23日にプレイステーション2版が発売され、好評を博したフライトシューティングゲーム。難しい操縦を再現したフライトシミュレーターではなく、プレイヤーの誰もがエースパイロットを体験できるシリーズのひとつだ。

 前作『エースコンバット5』の約15年前の戦争が舞台となる作品だが、ストーリーや航空機などの予備知識がなくても十分楽しめる作りとなっている。

 また、本シリーズ作の魅力のひとつは実在の航空機が多数登場すること。しかし、それゆえに権利などのハードルの高さから他機種への移植が行われておらず、プレイステーション5やNintendo Switch、PCといった現行ハードで遊ぶ環境は存在しない。

 それでも、ゲームとしての完成度の高さから、本作が当時のゲームファンから愛され続けている作品であることは間違いない。十数年を経た現在でも、当時熱中した“元エース”の人々の多くは「いいゲームだった」と答えるだろう。

 人気の要因は空を飛ぶ爽快感やストーリーなどが考えられるが、やはり音楽抜きには語れないだろう。そして、幸いなことに令和の現代になってから本作のサウンドトラックが発売される。しかもLPレコードで!

 「CDはともかくLPレコードを聴く環境が……」と思った方はご安心を。いまでもプレーヤーは数千円~1万円程度で購入ができる。しかもLPレコードは数十年経っても劣化しないというメリットがある(※)。

※CDの場合、記録面が錆びて聴けなくなる場合がある。アナログはすごい。

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原作を覚えていなくても大丈夫! 全20曲を解説

 ここからは、2枚組のLPレコードに収録されている全20曲について、作中のどんなシーンで流れていたのかを解説していこう。原作のリリースから長年を経たことでステージと各曲のつながりを忘れている方や、そもそも原作をプレイしていないという方もこれを読みながら聴けば、きっと各ゲームのシーンを思い浮かべられるだろう。

 なお、本作公式の製品ページは2020年12月末のAdobe Flash Playerのサポート終了にともない通常の閲覧ができなくなっている。しかし、動画の形でアーカイブされているので、気になる方は目を通しておくことをおすすめする。

 また、『エースコンバット』シリーズのマスコットキャラクター“ナゲッツ”が解説する公式動画では作中の世界情勢がわかりやすいので、こちらも視聴しておこう。

ACES WEB:ACE COMBAT ZERO THE BELKAN WAR

ナゲッツの「エースコンバット」世界史解説-ベルカ戦争篇 (ACEZ)

1. Title

 その名の通り、タイトル画面で流れる楽曲。夕焼けのような色に浮かぶタイトルロゴをバックに、風を切って飛行する航空機の音が聴こえてくる。落ち着いた音でありながら、激しい戦いの幕開けを感じさせる。

『エースコンバット・ゼロ』LPレコード盤サントラが本日(9/28)発売! 各楽曲について解説します。ゲーム内容を忘れていてもこれでバッチリ

2. Prologue

 『エースコンバット・ゼロ』のストーリーは、とある記者の取材記録という形で綴られていく。この楽曲が流れるプロローグは「ベルカ戦争には謎が多い」という記者の台詞から始まり、世界情勢が説明される。

 ベルカという国は財政難によって荒れており、国の一部であった東側諸邦の独立を許す(このときにウスティオ共和国が誕生)。しかしベルカの財政難は収まることがなく、その一方で隣国の巨大国家オーシアは肥大化していった。経済恐慌の中、極右政党が政権を獲得した。強く正統なベルカを取り戻すために。

 そしてある年、ウスティオでの天然資源発見をきっかけにベルカは隣国への侵攻を始めた。これが“ベルカ戦争”の開戦となる。

3. Glacial Skies

 最初のミッション“凍空の猟犬”で流れる楽曲。雪の降りしきるワイアポロ山脈上空を2機の戦闘機が飛んでいく。1機はプレイヤー機である“サイファー”、もう1機は僚機である“ピクシー”だ。2機の目的は爆撃機の編隊を撃破し、ベルカの侵攻を食い止めること。

 爆撃機を1機でも逃せば最後の砦である“ヴァレー空軍基地”が壊滅してしまうが、ガルム隊(サイファーとピクシー)にとっては朝飯前のミッションだ。淡々とミッションを遂行する2機を想像しつつ聴いてほしい。

『エースコンバット・ゼロ』LPレコード盤サントラが本日(9/28)発売! 各楽曲について解説します。ゲーム内容を忘れていてもこれでバッチリ

4. Contact

 ベルカ絶対防衛戦略空域 B7R。“円卓”と呼ばれるこの空域は、各国のエースパイロットが飛び交う場所だ。エースどうしの空戦がテーマのひとつである本作では、この円卓が舞台のミッションが多い。序盤のミッションで自信をつけたプレイヤーは、円卓で初めて敵エースと遭遇し、苦戦を強いられることになる。

 そんな、最初の山場に相応しい楽曲がこの“Contact”だ。フラメンコ調のギターの音色に、ベルカ軍のエース“ロト隊”とのドッグファイトを思い浮かべよう。

5. Diapason

 エースは3つに分けられる。強さを求める奴、プライドに生きる奴、戦況を読める奴。この3つだ。主人公であるサイファーがどのタイプのエースであるかは、プレイヤーの行動にゆだねられる。

 この楽曲が流れるミッション06“解放への鐘鳴”には、中立のターゲットが多数出現。騎士道を重んじて明確な敵だけを落とすか、おかまいなしに無差別攻撃を行う修羅となるか、臨機応変に立ち振る舞うか。「自分ならどうするだろう?」と考えつつ耳を澄ませてほしい。きっと、市民の鳴らす“自由の鐘”の音が聴こえてくるはずだ。

6. Gelb

 街を解放したのも束の間、こちらと同じ2機からなるベルカのエース“ゲルプ隊”が襲い掛かってくる。「いままでの奴らより速い」彼らを表したこの楽曲を聴きつつ、激戦を想像してみよう。

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7.Glatisant

 ディスク1を裏返して最初に聴く楽曲は、戦場がベルカ内部へ移るミッション07“ハードリアン線攻略”でのBGM。ベルカの防御線である遺跡要塞グラティサントを攻略する対地ミッションだ。敵の無線会話も聞けるのが『エースコンバット』シリーズの特徴のひとつで、「生まれ故郷が近い。連合軍をこれ以上進ませたくない」というベルカ軍兵士の悲痛な言葉が耳に入る。

 戦争では誰もが正義となり、誰もが悪となる。最前線の兵士たちに「いったい平和とは何か」なんて考える余裕はあるのだろうか。

8. Mayhem

 戦場は再び円卓へ。ストーリー中盤ともなると、百戦錬磨のサイファーは敵からも味方からも畏怖される存在となっていく。ミッション10“B7R制空戦”で流れるのは、ドッグファイト中心の乱戦にふさわしくテンポのいい楽曲となっている。

9. The Round Table

 “Mayhem”での乱戦中、新たな敵エースが登場する。円卓で相対する敵エースはそれまでのプレイヤーの行動によって変化するが、筆者の印象に深く残っているのは“ズィルバー隊”。隊長機がF-4Eという古い機体を駆り、僚機を務める教え子たちはF-16Cに乗っているエース部隊だ。「私の最後の授業だ」という台詞から、ベテランである敵の隊長には戦いの行く末が見えていたのかもしれない。
 

10. The Stage of Apocalypse

 この楽曲が流れるミッション12“臨界点”は、物語が大きく動くステージ。核を搭載した敵爆撃機を迎撃することになるが、ミッション終盤で謎の爆発が起きる。僚機のピクシーからノイズ交じりの無線で聞こえてきたのは「相棒、俺は……戦う理由を見つけた」という意味深な言葉。その後ピクシーは消息を絶ってしまう。

11. Lying In Deceit

 ディスク2へチェンジし、この楽曲が流れるミッション13“幽栖の地”からは僚機が元クロウ隊の“PJ”へと交代する。ちなみにPJはパトリック・ジェームズの略。おしゃべりなムードメーカーといった印象だが、彼もまた円卓での戦いを生き延びてきたエースパイロットのひとりだ。

 ミッションの目的は敵の残存勢力の掃討となり、新生ガルム隊はミッションをこなしていくことになるのだが、敵の基地で謎の巨大な格納庫を発見。その格納庫の中は空っぽだった。

12. The Final Overture

 対艦任務/対地・対空任務/対空任務の3つから選択するミッション14“終局の序曲”で流れる楽曲。ベルカ公国と連合国による停戦調印式が行われている最中、ベルカ残党軍が集結している地点への攻撃を行う。

 調印式のラジオ中継を聴きながら、極秘に行われる任務を遂行するガルム隊。表向きは停戦のはずなのに、まるでこれから戦争の本番と言わんばかりの残党軍に、何か不穏なものを感じるシーンだ。

『エースコンバット・ゼロ』LPレコード盤サントラが本日(9/28)発売! 各楽曲について解説します。ゲーム内容を忘れていてもこれでバッチリ

13. Hresvelgr

 ミッション13で発見した格納庫から飛び立ったのは、“国境無き世界”を名乗るクーデター組織の巨大ガンシップ“XB-O フレスベルグ”だった。フレスベルグはあろうことか、ガルム隊のいるウスティオ基地を襲撃してきた。

 かろうじて離陸したガルム隊はフレスベルグの迎撃を行うことになるが、規格外な超兵器であることに加え、護衛機のエスパーダ隊もまたエースパイロット。当然苦戦を強いられることになる。“Hresvelgr”は、そんな緊張感溢れる戦いで流れる楽曲となっている。

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14. The Demon of the Round Table

 ストーリーもいよいよ佳境。ミッション16“円卓の鬼神”では、3度目の円卓でのドッグファイトが待ち受けている。ここでもプレイヤーの生き様によって敵エースが変化する。どのルートでも強敵で、ガルム隊のふたりはミサイルアラートが鳴りやまない中での過酷な戦いを行うことになるだろう。

 だが、まだこのステージは戦争を完全に終わらせるための通過点。円卓の鬼神として、こんなところで撃墜されるわけにはいかない。

15. The Valley of Kings

 ついに最終局面。円卓を突破したガルム隊は“王の谷”ことムント渓谷を駆け抜け、クーデター軍の拠点である“アヴァロンダム”へと向かう。ダムの内部にはV2の制御施設があり、地下の基地内を飛行して時間内にV2を破壊しなければならない。長かった戦争に終止符を打つときがきた。

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16. Morgan

 V2の破壊に見事成功したサイファーとPJ。すべてが終わったと思い、PJは「基地に帰ったら恋人にプロポーズしようかと」と話していた。そこへ突然サイファー目がけて赤いレーザーが……。サイファーを庇ったPJは撃墜されてしまう。

 サイファーの前方から謎の機体が現れたときに“Morgan”が流れる。無線会話から聞こえてきたのは「戦う理由は見つかったか? 相棒」という懐かしい声だった。

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17. Zero

 かつての相棒だったピクシーとの一騎討ち。「向かい合って初めて本当の自分に気づく」とのピクシーの言葉通り、正面からのヘッドオンで決着をつけることになる。撃て、臆病者。

18. Return to Base

 正真正銘、すべての戦いを終えたサイファー。“RTB(Return to Base)”とは、基地へ帰還せよという意味。お前の帰りを待ってる奴らがいる。

19. Galm 2

 サイファーと対となり、正反対の存在であるピクシーのテーマ曲。

20. Epilogue -Near The Border-

 エンドロールで流れる楽曲もフラメンコ調。落ち着いたテンポの楽曲で、聴き終えたときのスッキリ感がとてもいい。ぜひ“ながら”ではなくしっかり腰を据えて聴いてほしい。