2022年9月17日~19日に“ウマ娘 プリティーダービー×ばんえい十勝コラボイベント”が、北海道・帯広市にある帯広競馬場にて開催されました。来場者へのオリジナルうちわのプレゼントや、等身大パネルやフラッグの展示、さらには声優陣(トウカイテイオー役・Machicoさん、ゴールドシップ役・上田瞳さん)とフリーアナウンサーの草野仁さんによるトークショーなど内容も盛りだくさん! 本記事ではコラボイベント最終日である19日の模様をお届けします。

 ゲームやアニメなどサイゲームスがさまざまなメディアで展開する『ウマ娘 プリティーダービー』(以下、『ウマ娘』)は、これまでも名古屋競馬場(愛知県・弥富市)、笠松競馬場(岐阜県・羽島郡)、高知競馬場(高知県・高知市)といった地方競馬場とコラボイベントを開催し、そのたびに大きな注目を集めてきました。その第4弾となったのが、帯広競馬場です。

ウマ娘×帯広競馬場コラボイベントを現地取材。テイオーとゴルシが“ばんえい競馬”のふしぎを発見!?

 帯広競馬場があるのは、北海道の道東地方にある帯広市。広大な十勝平野のほぼ中央ということで、東京に住んでいる筆者からすると遠い場所というイメージがありましたが、意外にも羽田空港から飛行機で1時間40分程度で最寄りの空港(とかち帯広空港)に到着。さらに空港から競馬場までは直通バスで40分ほど……と交通の便は決して悪くありません。

 また帯広競馬場といえば、現在世界で唯一“ばんえい競馬”が行われていることでも知られています。これまで『ウマ娘』に登場してきた女の子たちのモデルとなっている競走馬は“サラブレッド系種”。それに対して、ばんえい競馬では農耕馬を祖とする“ばんえい馬(ばん馬)”が走ります。スピードではなくパワーを競うという点で、ほかの競馬とは大きく異なるのですが、このあたりは今回開催されたトークショーにて細やかに解説されていました。

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『ウマ娘』のファンが帯広競馬場に詰めかける!

 今回のコラボイベントでは、来場者に“ウマ娘 プリティーダービー×ばんえい十勝 オリジナルうちわ”がプレゼントされるということもあって、開場前から多くのファンが詰めかけました。列に並んでいるのは帯広競馬場の常連と思しき方から、親子連れ、若いカップルとかなり幅広い客層。

ウマ娘×帯広競馬場コラボイベントを現地取材。テイオーとゴルシが“ばんえい競馬”のふしぎを発見!?
断続的に雨がポツポツ降る悪天候ながら、開場前にはなんと1250人を超える行列が。道内各地から駆けつけたファンも多かったのか、駐車場も早い段階で満車になっていました。
ウマ娘×帯広競馬場コラボイベントを現地取材。テイオーとゴルシが“ばんえい競馬”のふしぎを発見!?
『ウマ娘』で競馬を本格的に勉強するようになった筆者は“競馬場の入場料が安い”ということにも衝撃を受けたものです。この日の入場料はなんと無料!
ウマ娘×帯広競馬場コラボイベントを現地取材。テイオーとゴルシが“ばんえい競馬”のふしぎを発見!?
ウマ娘×帯広競馬場コラボイベントを現地取材。テイオーとゴルシが“ばんえい競馬”のふしぎを発見!?
ウマ娘×帯広競馬場コラボイベントを現地取材。テイオーとゴルシが“ばんえい競馬”のふしぎを発見!?

 勇壮なばん馬がデザインされた帯広競馬場も、『ウマ娘』のパネルが加わるとだいぶポップでキュートなイメージに。長い通路にショップが並ぶ場内(1階)を飾るのはパネルと無数のタペストリー。壮観な景色が広がります。

ウマ娘×帯広競馬場コラボイベントを現地取材。テイオーとゴルシが“ばんえい競馬”のふしぎを発見!?
馬券の自動券売機の上にあるモニターもゴルシとテイオーがジャック。
ウマ娘×帯広競馬場コラボイベントを現地取材。テイオーとゴルシが“ばんえい競馬”のふしぎを発見!?

 朝10時に開場すると場内は一気ににぎやかに。第1レースが始まるのがお昼過ぎということもあって、そのままグッズを販売する“ウマ娘 POP UP STORE in 帯広競馬場”に向かうファンの姿も多く見られました。

ウマ娘×帯広競馬場コラボイベントを現地取材。テイオーとゴルシが“ばんえい競馬”のふしぎを発見!?

 ポップアップストアの内装はこんな感じ。どの商品も人気でしたが、とりわけ多くのファンの注目を集めていたのがクッション。予想を超える反響に、最終日を前にして売り切れる商品もあったそうです。

 そして、『ウマ娘』のポップアップストアと通路を挟んだ向かい側には、ばんえい競馬場のグッズを販売するショップがあり、ふたつのショップのハシゴをする人もいたようです。

 ばんえい競馬のグッズもユニークなラインアップが勢揃い。筆者が個人的に気になったのは、実際に競馬で使われた“蹄鉄”を磨き上げてグッズにしたもの(滑らないので受験などの願掛けグッズとして人気なのだとか)。なんともマチカネフクキタルが飛びつきそうな逸品です。

ウマ娘×帯広競馬場コラボイベントを現地取材。テイオーとゴルシが“ばんえい競馬”のふしぎを発見!?

 もちろん、飲食店や土産物店も大盛況でした。併設されたショッピングモール“とかちむら”もコラボイベントの効果で大勢の人が。

 多くのショップでは店員さんが『ウマ娘』のグッズを身に着けて接客していたのも、ファンとしてはうれしいポイントでしたね。実際、いくつかのショップの店員さんとも軽くお話をさせていただきましたが、競馬場一丸となって『ウマ娘』ファンを迎えて入れているというムードがひしひしと伝わってきました。

ウマ娘×帯広競馬場コラボイベントを現地取材。テイオーとゴルシが“ばんえい競馬”のふしぎを発見!?
こちらは帯広競馬場の伝統の味だという“カレーラーメン”(730円/税込)。個人的にはカレーの存在感のあまりの大きさにビックリしました。しかし、なんともホッとする味というか、いわゆる庶民の味が好きな方にはぜひとも味わっていただきたい!

 帯広競馬場の魅力はまだまだあります。競馬場の一角には、馬などが飼育されている“ふれあい動物園”もあり、エサやりの体験もできるようになっています。ばん馬を間近で見ることも可能で、筆者はその迫力にちょっと気圧されてしまいました。身体も大きいし、脚もめちゃめちゃ太くて……でも、すごくかわいい。親子連れでにぎわっていたのも納得です。

ウマ娘×帯広競馬場コラボイベントを現地取材。テイオーとゴルシが“ばんえい競馬”のふしぎを発見!?
ウマ娘×帯広競馬場コラボイベントを現地取材。テイオーとゴルシが“ばんえい競馬”のふしぎを発見!?

 競馬場は夜になるとかなりムーディーな雰囲気に。デートスポットとしても秀逸で、実際にカップルの姿もチラホラ。

 もしかすると帯広競馬場は、地元の方にとってはテーマパークや憩いの場のような存在なのかもしれません。そう考えると客層が幅広いのも頷けます。

ウマ娘×帯広競馬場コラボイベントを現地取材。テイオーとゴルシが“ばんえい競馬”のふしぎを発見!?
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Machicoさん、上田瞳さん、草野仁さん出演のトークショー

 お昼を過ぎたあたりでトークショー“ばん馬 そして ばんえい競馬を学ぶ!”がスタート。こちらはフリーアナウンサーの草野仁さんを先生(司会進行役)に、トウカイテイオー役の声優・Machicoさんとゴールドシップ役の声優・上田瞳さんを生徒として、3人で“ばんえい競馬”のお勉強をするという内容です。

 草野さんといえば、スポーツアナウンサーやクイズ番組の司会として活躍されていますが、じつは菊花賞にも出走したメイクマイデイを所有するなど競走馬の馬主としての顔も。一口馬主として多くのGIレース優勝馬に出資するなど、実績も豊富です。さらに芸能界きっての“筋トレ愛好家”というところも、力自慢を決める“ばんえい競馬”と重なって見える部分があります。

 草野さんにステージに招き入れられたキャストのふたりは、まずは自身の演じるキャラクターとして挨拶。「ひとしくんがいるぞー!」とさっそく草野さんをイジるゴールドシップ(上田さん)には観客席も笑顔になっていました。

ウマ娘×帯広競馬場コラボイベントを現地取材。テイオーとゴルシが“ばんえい競馬”のふしぎを発見!?
ウマ娘×帯広競馬場コラボイベントを現地取材。テイオーとゴルシが“ばんえい競馬”のふしぎを発見!?

 そして、草野さんから帯広のイメージを聞かれたふたりは、雄大な自然に感動したと回答。前乗りをした上田さんは帯広と隣接している新冠町にも足を延ばしたとのことでした(※後にSNSで新冠町のビックレッドファームで繋養されているゴールドシップに会っていたことも明らかにされていました)。

 流れのままに、明治時代に始まった北海道の開拓史とともに“ばんえい競馬”の成り立ちを草野さんが解説。農耕馬の力比べ“お祭りばん馬”という原点から“ばんえい競馬”の歴史を紐解いていきます。

 力比べをする馬だからこそ馬体重もすごいという話になり、現役の名馬・メジロゴーリキの場体重が1149キロと聞くと「ゴルシとテイオーを足しても届かないじゃん!」(Machicoさん)、「ゴルシだって大きいのに!」(上田さん)とふたりとも驚きを隠せない様子。しかも、そんなばん馬が最大1トンもの重量になるソリを引いてレースをくり広げるということを聞いて「サラブレッドのレースでも音がすごかったから、ばんばの音もすごそう」(上田さん)、「映像でばんばを見たことはあるけれど、生で見られるのがうれしい」(Machicoさん)とこれから始まるレースに強い期待を寄せていました。

 第1部の最後には、草野さんからはふたりに向けて「“ウマ娘”が人気になったことで、皆さんに対する待遇は変わった?」と鋭い切り口の質問も! Machicoさんは「アニメは見ないけれどウマ娘は知っているという人が増えた」と手ごたえを感じていることを明かしつつ「お仕事の幅も増えた」とうれしそう。上田さんも「このように競馬に関わるお仕事をさせていただけてありがたいです」と感謝の気持ちを伝えていました。

ウマ娘×帯広競馬場コラボイベントを現地取材。テイオーとゴルシが“ばんえい競馬”のふしぎを発見!?
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 トークショーの第1部が終わると、いよいよばんえい競馬がスタート。第3レースまで終わったところで、トークショーの第2部が開催されます。

 実際にレースを見たという上田さんは「坂を登るところが迫力ありすぎる!」、Machicoさんは「止まるというムーブがあるのがほかの競馬にはない魅力。精神統一の意味もあると聞きました」とさっそく“ばんえい競馬”を満喫していた模様です。また、司会の草野さんも帯広競馬場に来るのは初めてだったそうで、過酷なレース展開で力を振り絞って走るばん馬たちに対して「なんとしてもがんばり続けて、と思いますね!」と熱くコメント。

 第2部は、おもにレースとしての“ばんえい競馬”に関するお勉強が主軸。“ばんえい競馬”はどのレースでも走るコースは同じ。直線200メートルの中に、高さ1メートルの坂(第1障害)と高さ1.6メートルの坂(第2障害)があり、ラストに砂障害と呼ばれる上り坂があるという道程になっていると草野さんは解説を進めていきます。

 ばん馬は年齢と性別でクラス分けをされ、騎手の体重は重りなどを使って77キロになるように固定、ソリは450キロでゴールはソリの後部が通過したタイミングで判定される……など“ばんえい競馬”の基礎知識を誰でもわかるように紹介していました。

 馬ごとにも脚質があるという話になったところで、“末脚”という単語が飛び出すと、キャストのふたりも「みんな大好き“末脚”スキル!」とゲームユーザーにわかりやすい反応で対応。そんなふたりに草野さんも「理解力がすごい」と舌を巻いていました。

 天候や馬場状態の話についても『ウマ娘』ではおなじみの要素ということで、キャストのふたりも草野さんの解説を先回りする勢いで話を広げていきますが、“ばんえい競馬では雨が降ったほうがソリが滑りやすくなってタイムが早くなる”と聞いたときには、ふたりとも驚きを隠せない様子でした。

 3人で“ばんえい競馬”の話題を広げつつ、その魅力にたっぷりと触れてきたこの日のトークショー。草野さんは最後に“ばんえい競馬”のレースがナイターで遅くまで開催されていることにも言及していました。

ウマ娘×帯広競馬場コラボイベントを現地取材。テイオーとゴルシが“ばんえい競馬”のふしぎを発見!?
ウマ娘×帯広競馬場コラボイベントを現地取材。テイオーとゴルシが“ばんえい競馬”のふしぎを発見!?

迫力のレースに大興奮!

 トークショーが終わってからも、まだまだコラボイベントは終わりません。レースはここからが本番です。

ウマ娘×帯広競馬場コラボイベントを現地取材。テイオーとゴルシが“ばんえい競馬”のふしぎを発見!?
ウマ娘×帯広競馬場コラボイベントを現地取材。テイオーとゴルシが“ばんえい競馬”のふしぎを発見!?

 ばんえい競馬はコースと客席の距離が近く、パドックからゲートに向かう馬などは目と鼻の先で眺めることができるのが特徴。レースも力を競う側面が強いからこそ、人間の足でも十分についていける速さですし、観客たちがゴールまで追走しながらエールを送る光景も当たり前のようでした。

 ナイターでも映えるようにコースが美しく電飾で彩られていたり、その奥には“ばんえい競馬”ならではの貨車(ゴールしたソリをゲートまで輸送するための手段)が走っていたり、馬券の購入が締め切られる直前に焦燥感のあるBGM「草競馬」が流れたり、なんとも趣があります。第12レースが終わるころには、筆者も帯広競馬場のこういった光景にすっかり親しみを覚えていました。

ウマ娘×帯広競馬場コラボイベントを現地取材。テイオーとゴルシが“ばんえい競馬”のふしぎを発見!?
個人または企業でレースに協賛すると、冠レース名をつけることもできます。19日に開催されたレースは画像のような感じ。

 この日のレースで大きな注目を集めたのが、第11レース“ようこそウマ娘ゴルシ記念”。じつは2回目のトークショーが終わった直後の第4レースでは、1着5番、2着6番、3着4番の“5-6-4(ゴルシ)”という語呂合わせにピッタリハマる結果が出て会場が大いに沸きました。もう一度、今度はゴルシ記念で“5-6-4”が来ないかと馬券を買った方もいたようです。

ウマ娘×帯広競馬場コラボイベントを現地取材。テイオーとゴルシが“ばんえい競馬”のふしぎを発見!?

 すると、第2障害を越えたのは、語呂そのままに1着5番、2着6番、3着4番。これは「まさか……!?」とざわめきが起きましたが、2番のマルミゴウカイが強烈な追い上げで4番のヒメミヤをかわして2着へ。5番のシャンハイオトメはそのまま逃げ切り、1着5番、2着2番、3着4番という結果になりました。

ウマ娘×帯広競馬場コラボイベントを現地取材。テイオーとゴルシが“ばんえい競馬”のふしぎを発見!?

 この日、最後のレースとなったのが第12レース“ようこそウマ娘テイオー記念”。こちらも手に汗握るような大混戦で判定まで結果がわからないという熾烈なレースになりました。最終的にレースの結果は、1着3番クリスタルホーク、2着1番ホクトジョー、3着8番ダイヤカツヒメという結果に。

ウマ娘×帯広競馬場コラボイベントを現地取材。テイオーとゴルシが“ばんえい競馬”のふしぎを発見!?

 どちらも“馬の一発逆転ライブショー・ばんえい十勝”という“ばんえい競馬”が掲げるキャッチフレーズにうなずけるような熱戦。すべてのレースが終わったあとに温かな拍手が送られていたことも印象的なシーンでした。

 最終的に、今回のコラボイベントでは6000人近い入場者があったとのこと。これは重賞競走の“ばんえい記念”にも匹敵するような数字だそうです。

 まだ『ウマ娘』の世界では帯広競馬場はレースの舞台として登場していませんが、ヤングジャンプにて連載中のマンガ『ウマ娘 シンデレラグレイ』ではローカルシリーズの開催地として帯広があるということも語られています。もしかしたら、作中に“ばんえいウマ娘”が出る日が来るかも……そんな夢を見つつ、筆者も“ばんえい競馬”の魅力をもう一度噛みしめたいと思います。

 みずからの足でいっしょにばん馬を追いかけ、ソリを引く姿に「がんばれ!」と思いの丈をぶつけるという経験は、やはり現地で体感してこそではないかと。まだ生で見たことがないという方は、ぜひ一度帯広競馬場に足を運んでみてはいかがでしょうか?

トークショー写真提供:ばんえい十勝