勢いだけで始めてしまった。そう、これは「でっかい画面でゲームをするとおもしろいよ!」と言いたいだけの記事なのである。
発案者のつくね伯爵宅にはひとり暮らしにも関わらず「10万円で4K60型じゃん!?」とノリだけで購入したテレビがある。間取り的には大きすぎで普段は邪魔でしかないが、オープンワールド系のゲームをプレイすると迫力満点。勢いで買った決断は間違いなかった。
謎の成功体験のせいか、積もり積もった“でっかい画面でゲームがしたい”欲が夏の陽気で暴発寸前! 編集部のメンバーを巻き込んで、プロジェクターを使っていろいろと遊んでみた。
プロジェクターで投影したいゲーム選手権
プロジェクターが貴方の夢を叶えます
調べてみるとBenQからゲーミングプロジェクターなるものが発売されていたので、今回の企画にぴったりだということで用意。
“X3000i”は2022年3月30日に発売されたハイエンドゲーミングプロジェクター。4K UHD(3840×2160)の解像度で、明るさは3,000ANSIルーメン、光源は4LED(RGBB)を採用しており、一般的なLED光源と比べて8~12%ほど明るい仕上がり。
何が“ゲーミング”なのかと言うと、ストレスのない操作体験がポイントなのだという。昔のプロジェクターは投影画面が薄かったが、昨今のモデルはくっきり。X3000iもDCI-P3 カバー率100%の広色域、50万:1の高コントラスト比で、ゲームの世界をメリハリのついた陰影で鮮やかに再現。さらに低遅延なので激しいアクションゲームもふつうにプレイできる。
また、3つの専用ゲームモードを用意しており、RPG、FPS、スポーツゲームにおすすめの効果や表現でゲームを楽しめるという。遅延は1080p/240Hz動作時は4.16ms。今回の企画でアクションやリズミゲームさまざまなタイトルをプレイしたが、違和感なくゲームに集中できた。
X3000iの購入はこちら (Amazon.co.jp)なお、X3000iの販売価格は31万800円(Amazon実勢価格は26万910円 ※2022年9月9日時点)。価格的や設置場所的ににハードルが高いという方は、モバイルプロジェクターなどの選択肢もアリだろう。
モバイルプロジェクターではAnkerから発売されている“Nebula Capsule II”がオススメ。500ml缶より小さいのに、HDMI接続でゲームもでき、Android TV 9.0搭載ということもあってYouTubeやAmazon プライム ビデオを気軽に投影可能。バッテリー駆動で動画を2.5時間再生可能だから、おうちはもちろんアウトドアでも活躍できそうだ。こちらはAmazon販売価格69990円[税込]。
Anker Nebula Capsule IIの購入はこちら (Amazon.co.jp)……と、プロジェクターを紹介しておけば記事としての体裁は整っただろう。ここからは編集部の面々が楽しくゲームをするターンに入りますので、ご理解いただければ幸甚に存じます。よろしくお願いします。
遊ぶ人(1)つくね伯爵
物欲がお盛んで、たくさんカートに突っ込む日々。最近のブームはふるさと納税の返礼品調べ。
遊ぶ人(2)常在戦場常広
休みの日はベッドでアニメ&映画ざんまい。ドライブインシアターで映画を見るのが憧れ。
遊ぶ人(3)ミス・ユースケ
生まれて初めての大画面テレビは某アニメ会社の忘年会の抽選で当たった。来世までの運をすべて使い果たしている。
プロジェクターと『カップヘッド』は相性バツグン!
常広「映画みたいに投影するって想像したとき真っ先に『Cuphead』(カップヘッド)をプレイしたくなりました」
『Cuphead』はカートゥーンアニメーションで描かれた難度の高い横スクロールアクションゲーム。Netflixではアニメ『ザ・カップヘッド・ショウ!』が公開され、2022年6月30日にはDLC『The Delicious Last Course』(デリシャス・ラスト・コース)が配信された。
つくね「もともとフィルム調だから、こういうアニメ映画としてみれちゃう」
常広「3Dバリバリのグラフィックもいいけど、『Cuphead』みたいな雰囲気も好きなんですよ。トーンがしっかりしている作品は投影すると映えますね。あと、難しいアクションゲームだから遅延が気になってましたけど、いまのところまったく違和感はない!」
協力プレイ(物理)でライドアクション!
つくね「迫力のある映像と言ったらこれですよ。ジェットコースター。『プラネットコースター』を壁に映せば会議室が遊園地に。行列に並ばなくてもいいし、何ならひと儲けしようと思っています」
常広「するな」
『プラネットコースター』はテーマパーク運営シミュレーションゲーム。景観を整備してアトラクションを設置すると、お客さんが楽しんでくれる。
すべてはお客様の笑顔のため。そう思ってゲームを遊んでいたつくね伯爵(遊園地支配人)だったが、あるとき疑問を抱いた。「こいつら(客)勝手に俺の遊園地で遊びやがって。まずは支配人たる俺が俺の遊園地で最初に遊ぶべきだろうが」と。おい、どうした。仕事のストレスか。
そんな彼が着目したのが、ゲーム内で設置したジェットコースターをFPSのような一人称視点で楽しむモード。これを大画面でやってみたかったのだそうだ。
常広「大画面で投影してもグラフィックがめちゃくちゃきれい。でも、もっと臨場感がほしいかな……」
つくね「何を言ってるんですか。ここからですよ。秘密兵器が見えませんか」
つくね「これを前に置きます。あ、常広さん、それ持ってもらえます?」
つくね「ひゅー! 最高!」
ジェットコースターの醍醐味と言えば、全身で味わうスピード感だ。正面からサーキュレーターの爆風を感じ、X3000i(6.6Kg)を持った常広がコースに沿ってダイナミックに壁に投影。一気に臨場感がアップした。
多くのゲームは「マルチプレイは楽しい」と言われるが、それはこういうことだったのだ。マルチプレイを本気で楽しみたかったらフレンドにプロジェクターを持ってもらったほうがいい。
つくね「たのしー。遊園地のライドアクションですね。もう一周だけお願いします」
常広「腕が……。こんなに無邪気に喜ぶならもう一周だけ」
人知れず常在戦場常広の父性が高まっていることは、このときまだ知る由もなかった(※)。
※伏線みたいになってますが、そんなことはありません。
※プロジェクターはテーブルに置くなり天井から吊るすなり、固定して使いましょう。
大画面+ミク=最高!
常広「これは絶対にプロジェクターでやりたい!」
と、常広が投影したのはリズムゲーム『初音ミク Project DIVA MEGA39’s+』。初音ミクの歴史を彩った178曲が収録されており、3Dモデルのミクさんが登場するMVやオリジナルMVを元にした映像でゲームを楽しめる。
常広「さすが、142インチ! 迫力がやべえです。でも画面が大きすぎてノーツを追いかけるのがたいへん。いちばん気にしてた音ずれは全然感じなくて最高」
ノーツをタップするごとに常広がヒートアップ! MV鑑賞モードにして、サイリウムを取りだしオタ芸をはじめた!
大画面のミクさんが最高すぎてサイリュウムで荒ぶる常広氏 https://t.co/oF6U31LuSY
— つくね伯爵 (@samebbq)
2022-08-23 16:58:19
『初音ミク Project DIVA MEGA39’s+』はリズムゲームではあるが、MV鑑賞も可能なのだ。X3000iは音もいいので、こういう使いかたもありだろう。
常広「おおおおおお……!」
つくね「楽しそうだけど怖い」
常広「ライブ会場ではできないヲタ芸も思う存分できる!!!! やっぱりMVを鑑賞できるリズムゲーはプレイしても、見ても楽しめるので相性いいですね」
リズムゲームの臨場感を別の視点から味わう
ここで、撮影係だったり緊急の仕事でてんやわんやだったミス・ユースケが動いた。
ユースケ「僕もリズムゲームはプロジェクターと相性がいいと思ってた」
つくね「そんなことある?」
古いモニターやプロジェクターと違い、昨今のモデルは視野角が広い。斜めから見てもしっかり視認できるというわけで、下に寝転んでも画面は十分に見やすいはずと踏んだ。
ここでミス・ユースケが選んだゲームは『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』(通称、プロセカ)。言わずと知れた人気リズム&アドベンチャーゲームだ。
寝転んで下から見ると、ノーツが上から降ってくるように見える。なるほど、この画面の見えかたはユニークだ。どうやって遊ぶのだろう。
ユースケ「ノーツを避けます。リアル弾幕アクション」
ユースケ曰く「下から見るとノーツの迫力とスピードを存分に感じられる。これがノーツをメインにとらえた場合の最適解」。自信満々に言っていたが、そんなことはないと思う。
プロセカを下から覗きノーツを避けるミス・ユースケ! https://t.co/0s24KX17o7
— つくね伯爵 (@samebbq)
2022-08-23 17:07:05
落ちてくるノーツに合わせて体を捻る。人体の構造上、すべてを避けるのは無理なので(やろうとすると、どこかがもげる)、本来なら指でなぞるノーツに絞るのがコツだそうだ。まったく役に立たない攻略情報を書いてしまい、震える。
なお、プロジェクターの画面に集中するため、ゲームのプレイ自体はオートに任せている。
常広「もはや『プロセカ』を遊んでいない」
つくね「発想の転換という言葉に謝ってほしい」
ユースケ「常広くんにツッコまれるのは誠に遺憾。おまえもオートプレイでオタ芸やってたじゃねえか」
あまりにもミス・ユースケがこの遊びかたを絶賛するものだから、つくね伯爵も試してみることにした。
半信半疑、もとい1信9疑で壁際に横になる。ミス・ユースケは彼にとって先輩なので断りにくいのである。
つくね「臨場感がすごい!自然とノーツを避けたくなりますね。上体を起こしてプレイすると腹筋に効いて、それもまたいい気がする」
だまされるな。気をたしかに持て。
疲れた心を癒す珠玉の情景
ユースケ「つぎはこれです。『最涯の列車』(さいはてのれっしゃ)」
常広「あ、何かいい雰囲気ですね。落ち着く……」
ユースケ「架空の世界の列車内で謎を解くアドベンチャーなんだけど、座席で眺める景色がいいのよ。疲れたときは車窓シミュレーターとして使ってる。心の隙間を埋めてくれるのは、いつだって異国の風景だから」
常広「傷心旅行に出るOLみたいなこと言い出した」
つくね「知らない国の“世界の車窓から”だ」
ユースケ「編集者という仕事をしてるとさ、ライターの原稿が遅れたり代理店が無茶言ってきたり、いろいろあるわけよ。そういうときはこれに頼るしかねえんだよ」
常広「どうしたんですか。今日イチ荒れてるじゃないですか」
プロジェクターで投影することで、ゲームを“環境映像”として扱う技を編み出したミス・ユースケ。「これいいかも」、「天気が変わったり夜になったり、景色が変わるからずっと見ていられる」、「なじみのある映像だと知ってる場所が出ないか気になるけど、これはいい意味で集中できないからいい」と、高評価だった。
撮影中、つくね伯爵は「懐かしいな……」と何度も呟いていた。ちなみにのどかな地方の生まれではない。ありもしない記憶が引っ張り出されるほどノスタルジーが刺激されるということだろう。
つくね「んん……」
つくね「あ!」
つくね「ワンカップ大関持ってるじゃねーか!」
ユースケ「列車旅にお酒はつきものだからね。仕方ないね」
『最涯の列車』の車窓から見える風景は自動生成されるため、まったく同じものが描画されることはない。まるで果てしない旅だ。はたから見るとゲームの中に入り込んでいるように見えるのもおもしろい。ゲームと現実の垣根が取っ払われている。
ミス・ユースケは8月~9月に尋常じゃなく仕事が詰まっているので、二度と出会えない情景を求めて『最涯の列車』に逃げ出す予定だそうです。探さないでください。
恋愛ゲームの中に入りたい。入らせてくれよ。なあ!
ユースケ「プロジェクターを使うとゲームと一体化できることがわかった。だったら僕は恋愛ゲームの中に入りたい」
つくね「ちょいちょい不安なこと言うな、この人」
ユースケ「そこで『Doki Doki Literature Club!』です」
立ち絵が表示されるタイプの恋愛ゲームを投影し、その前に立てばゲームに入り込めると力説するミス・ユースケ。そんなことはないと思うのだが、まっすぐな瞳で訴えかけてくるので諦めて受け入れることにした。
ピュアなやつは意外に厄介という好例だ。「悪い人じゃないんだけど……」とやんわり煙たがられるタイプである。
『Doki Doki Literature Club!』は“文芸部”を舞台にしたビジュアルノベルだ。
海外の開発スタジオ“チーム・サルバト”がPC用フリーゲームとしてリリースしたのが2017年。2021年には『Doki Doki Literature Club Plus!』としてHDリマスターされ、こちらはNintendo Switchでも発売されている(邦題は『ドキドキ文芸部プラス!』)。
ユースケ「僕ね、高校3年間は文芸部だったのよ。楽しかったけどドキドキするようなことはなかった。と思ってんだけど、じつは僕が知らなかっただけらしい。卒業してから友だちに聞いた。だから青春を取り戻したい。戻ってきてくれよ! なあ!」
つくね「学生時代にいい思い出がないと性根が捻じ曲がるっていうのはこういうことなのかな」
怨念のようにどろどろしたものがにじみ出したミス・ユースケをなだめるため、とりあえず試してみることに。縮尺を調整して、教室のシーンまでゲームを進める。
まあこんなもんだよな、としか言えない感じに終わった。ゲームの中に入っているようには見えない。この後もシーンを変えたり立ち位置をずらしたりなどの工夫を凝らしたが、どうにもならない。ときに人間は無力である。
画面がくっきりしているので、遠くから薄目で見たら歩み寄れなくはないものの、さすがに無理があった。人間はそう簡単に恋愛ゲームの中には入れない。
ユースケ「その現実、突き付けられたくなかったな」
ところで、恋愛ゲームにもいろいろある。なかでも『Doki Doki Literature Club!』は主人公がすごい目にあうゲームだ。ミス・ユースケがよりによって本作を選んだ理由は何なのか。
常広「もっとわかりやすく甘々なゲームのほうがよかったんじゃないですか?」
ユースケ「うん。でもね、次元の壁を超越しようというのだから、それくらいの業は背負うべきだと思うんだ」
つくね「これ、そんなに覚悟のいる企画だったっけ?」
若者の営みが自分の中に
ユースケ「ラストのアイデアは『名門ポケット学院3』です」
『名門ポケット学院3』はカイロソフトの学校経営シミュレーション。学校の設備を整えて生徒の学びをサポートしたり学園祭を企画したり、ボリュームは満点。丁寧に作られた名作と評価されている。ドット絵のキャラクターがちまちま動く様子はとてもかわいい。
「青春時代の呪縛から抜け出せないの?」や「いい思い出がないから自分の思い通りにできる学校を作りたいのか」などの声が上がったが、とりあえず続ける。
ユースケ「話を聞いてください。テーマは“大きな愛”です」
つくね「やば」
常広「狂気を帯びた敵が敬語で言い出すことじゃん」
ユースケ「敵じゃないよ。味方だよ」
ミス・ユースケが絶対に裏切るキャラクターみたいになったので、ひとまず言うとおりにやってみることにした。我を通すコツは“まっすぐに相手の瞳を見つめること”だそうです。うるせえ!
ユースケ「学生たちの営み。青春の日々。そんなかけがえのないものが自分の中で行わていると思うと興奮しますよね」
常広「こわ」
完全に敵の黒幕の発想である。高潔な精神を持った勇者に倒されてほしい。
これは南海キャンディーズの山里亮太さんのエピソードにインスパイアされているとのこと。アイドルのライブ映像を自分に投影して「ああ、おれの中でアイドルががんばっている……」とテレビで言ってるのを見たことがあるらしい。
常広「これ……いいですね」
つくね「常広さんが闇落ちしてしまった」
俺たちの戦いはまだここからだ!
徐々にプロジェクター大喜利と化してしまった今回の企画。大画面でゲームを遊ぶとシンプルに迫力があり、スクリーンがなくても白壁に投影するだけでオーケーというのもよかった。X3000iのスペックに目を向けると、
- 数年前の製品と比べて、モニターとしての性能が高まっている。
- 音質も悪くない。スピーカー2台(5W×2)のステレオ構成となっており、低い音もしっかり聞こえた。
- 本体の設置方法の自由度が高い(さすがに手持ちは推奨できないけど)。
などの特徴が見られる。‟投影”という特性を生かした遊びかた? はまだまだありそうだ。
つくね「プロジェクターというか大画面はやっぱり体験としての没入感が半端ないですね」
常広「映画館でゲームしたい!」
ユースケ「いいね。ゲームをやるのとはちょっと違うけど、僕はNintendo Directとかを映画館で見たい。劇場版ニンダイ」
さらなる迫力を求める一行の、つぎなるターゲットは映画館か。ミス・ユースケは「やべ。劇場版ニンダイ企画、パクられちゃうかな」と心配していたが、そんなことする人いないと思う。(つづく?)