2022年3月23日に配信されたシステムソフトウェアアップデートの際に予告されていた“プレイステーション5のVRR(可変リフレッシュレート)対応”が、ついに4月26日に発表された。この週から世界的に順次対応していくという。
VRRっていったい何? それによってどう変わるの? これを利用するためには何が必要なの? そんなVRRを巡るあれこれを解説しよう。
リフレッシュレートって何?
ゲームをより快適に楽しむためのひとつの指針となる“リフレッシュレート”。PCゲーマーにとってはもう20年以上前からおなじみのこの単語は、単位時間にどれだけの画面を描画できる/しているか、ということを表すもの。
1秒に何枚のフレーム(1画面分の映像)が描画されているか、という数字で表され、単位は“fps(frames per second:1秒あたりのフレーム数)”。かんたんに言うなら、その映像が“秒間○コマ”で描かれているか、という意味だ。この数字が多いほうが、滑らかでより細かな動きを表現できることになる。
たとえば映画やテレビはテレビ放送の場合で24fps、地デジは30(29.97)fps、Blu-rayビデオの場合は24(23.97)/30(29.97)/60(59.94)fpsで映像が作られている。カッコ内はより厳密に表現したときの数字で、一般的には整数で丸められて表現されることが多い。
これは余談になるが、どうしてそんな端数が生まれるのかというと、テレビ放送においてテレビ受像機の作りからその信号の規格が決まったことに端を発する。白黒で30fpsだった放送がカラーになったときに、信号に乗せる情報量が増えた。その際に映像と音にズレが生じ、それを解消するためにこんな端数が出てしまったのだ。
その後、技術の進歩に合わせて、信号もそれを映し出す機械の側も規格が変遷してきたわけだが、それまでの資産を活かす形で互換性を維持しながら規格が更新されていったため、こんな端数が残ることになってしまったのだ。
VRR(可変リフレッシュレート)とはどんな技術か?
話をもとに戻そう。Blu-rayやDVD、動画配信などの映像ソースは規格で1秒あたりのフレーム数が決まっていて、それが揺らぐことはない。が、しかし、PCや家庭用ゲーム機などの場合はそうはいかない。
たとえば遠くまで見通せる広大な平原、樹木がうっそうと茂る森林、複雑な構造の建物が並んで多くの歩行者が闊歩する街中など、ゲームではその映像をリアルタイムに生成するが、そのときの処理にかかる負荷は刻々と変化する。その結果、いわゆる“重い”シーンではリフレッシュレートは下がり、“軽い”シーンでは上がる、といったことが起きてしまう。
一方、テレビ受像機やモニターなど表示側の機械は、基本的に一定のリフレッシュレートでしか映像を映し出すことができない。重いシーン、軽いシーンでゲーム機が出力するリフレッシュレートが変わると、それを表示する機械の側とでズレが生じるわけだ。
ズレた結果として何が起こるかというと、画面がチラついたり、また複数のフレームが混じり合い、ずれた画像が表示されたりといった不具合が起こるのである(これをティアリングという)。
こうした不都合を解決するため、文字通りディスプレイやテレビのリフレッシュレートを変化させることで同期を取り、映像の乱れをなくす。ビジュアルパフォーマンスを向上させ、一方でコマ落ちや入力遅延などを減少させる。それがVRR(Variable Refresh Rate:可変リフレッシュレート)という技術なのだ。
VRRを利用するにはHDMI2.1に対応したテレビやディスプレイが必要
4月26日に詳細がアナウンスされたシステムアップデートを適用すると、PS5でもこのVRRを利用可能になる。が、それだけではVRRの恩恵にあずかることはできない。
VRRの機能を利用するためには、これに対応したテレビやディスプレイが必要だ。
PS5では4K/120fpsの出力が可能だが、4Kの映像をこれだけ高いリフレッシュレートで表示するためには、HDMI2.1に対応したテレビやモニターが必要であることを知っている人は多いと思う。
じつはこのHDMI2.1という規格にはVRRも含まれているのだ。つまり、PS5を最新の状態にアップデートしたうえで、HDMI2.1に対応したHDMI端子を持ったテレビやモニターを用意すれば、VRRを利用できるというわけだ。
いまのところ、PS5で4K/120fpsを出力できるゲームはほとんど存在しない。そういう意味ではHDMI2.1に含まれる仕様のうち、4K/120fpsへの対応よりも、VRRのほうがより有用と言えるかもしれない。
PS5でVRRが利用できるようになったことで、ユーザーにとってはHDMI2.1に対応したテレビやモニターの価値がいちだんと増したと言える。懸念があるとすれば、現状ではHDMI2.1に対応したテレビやモニターは製品の数が少なく、価格も高価である点だろうか。
状況は時間とともに改善されていくことは確実だが、画面の大きさや機能と価格など、自分の納得がいく買いどきを見極める必要はあるだろう。
もうひとつ、VRRについてはゲームタイトル側のソフトウェア的な対応も必要となる。これまでに発売されたPS5のタイトルも今後リリースされるパッチによってVRRに対応できるようになるほか、今後発売されるタイトルは発売時点からVRRへの対応が期待できる。2022年4月26日にVRR対応が発表されたのは以下の15タイトル。
- 『ASTRO’s PLAYROOM』
- 『コール オブ デューティ ヴァンガード』
- 『コール オブ デューティ ブラックオプス コールドウォー』
- 『DEATHLOOP』
- 『Destiny 2』
- 『デビル メイ クライ 5 スペシャルエディション』
- 『DIRT 5』
- 『Godfall』
- 『Marvel’s Spider-Man Remastered』
- 『Marvel’s Spider-Man: Miles Morales』
- 『ラチェット&クランク パラレル・トラブル』
- 『バイオハザード ヴィレッジ』
- 『ワンダーランズ ~タイニー・ティナと魔法の世界』
- 『レインボーシックス シージ』
- 『Tribes of Midgard』
また、パッチがリリースされていない過去作品など、VRRに対応していないPS5専用タイトルについても、本体側のオプション設定“未対応のゲームに適応”という項目をオンにすることでVRRを適応させることが可能だ。
もっとも、この方法でVRRを適用したとしても必ずしも映像のクオリティが向上する効果が得られるとは限らない。むしろ不都合が起こることもありうるが、その際はオプションのオフにすれば問題は解消される。
VRRはテレビやモニターの性能、またはタイトルによっても得られる効果が変わってくる。適宜設定を変えてその効果を確認しながら運用するのがいいだろう。
なお、VRR対応タイトルはソニーの公式ブログ“PlayStation.Blog”などで随時公開される予定だ。
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