長い沈黙を破って、2022年4月21日に行われたMeta Quest Gaming Showcase2022にて情報公開された『Among Us VR』。一時代を築いた『Among Us』を、あたかも自分が舞台の宇宙船にいるかのようにVR化した本作。イベントでの情報公開に合わせて、全世界のユーザーが注目するこのタイトルの開発者インタビューを実施。オリジナルの『Among Us』とはひと味もふた味も違った楽しさと、新しいコミュニケーションの取りかたがそこにある!?
なお、『Among Us VR』は2022年内配信を予定している。
Jesse Schell(ジェシー・シェル)
Schell Games / CEO
VRの世界でひたすら開発を行い、『I Expect You To Die』などMeta Platforms向けにいくつかのタイトルをリリース。今後2年間で3つの新しいタイトルをリリース予定で、その中のひとつがこの『Among Us VR』になる。
Victoria Tran(ヴィクトリア・チャン)
InnerSloth / Community Director
『Among Us』の開発元であるInnerSlothのコミュニティーディレクターとして情報発信に尽力。
いつでも音声のやり取りが可能に!? VRらしい没入感を追求
――『Among Us VR』は協力パートナーとの開発が行われているとのことですが、それぞれの役割をお教えいただけますか?
ジェシー我々Schell GamesはVRを専門とする制作会社で、今回の制作をメインで行っています。Robot Teddyは本来ゲームのコンサルタントですが、今回はInnerSlothとSchell Gamesのあいだをうまくコーディネートしてくれる役割として稼動しています。
――『Among Us VR』はゼロに近いところからの制作と思われますが、おもな開発作業をSchell Gamesが行われているということですね?
ジェシーはい、実際に開発を行っているのはSchell Gamesですが、InnerSlothには必ずチェックをしてもらっています。そもそも重要なエッセンスを失ってはいけないので、つねに監修してもらっているような形で進めているんです。
――そもそも『Among Us VR』が作られることになったきっかけはなんだったのでしょう?
ジェシー私はVRの世界に30年前から携わっていて、Schell Gamesとしては10~15のタイトルを作っています。新しいアイデアや楽しいことを探すことが日常になっていて、たまたま『Among Us』をVR化しようとしているという噂を聞いたんです。そこでアプローチして、実際にRobot Teddyからやりませんかというお話をいただくことができ、正式に制作が進められることになりました。
――InnerSloth としてVR化しようとした理由はなんだったのでしょう?
ヴィクトリア『Among Us』を多くの方々に楽しんでもらっているなか、コミュニティーやプレイヤーの方から「VR版を作らないのですか?」という要望をいただいていたんです。私たちもつねに新しいことや、やりたいことを見つけていますし、楽しいゲームを携帯やPCだけではなく、すべてのコンソールで提供したいという思い、信念もありましたので、VR版を出すことを決めました。
――VR化するにあたって、いちばん重要視したポイントはどこですか?
ジェシー『Among Us』のエッセンスをVRの中でどのように生かせるかが課題になっていました。ポイントはおもに3つあって、ひとつは自分たちがそこにいるという気持ちになれる没入感。ふたつ目はタスクを行う上で実際に行っているという感覚を味わえること。そして3つ目がソーシャルインタラクションと言っているのですが、VRでは実際の話し声が聞こえるようになっていまして、「みんなといっしょにいるんだ」という感じを出すというものになっています。
――オリジナルでは会議中以外では基本やり取りができないですが、『Among Us VR』ではできるということですか?
ジェシーそうですね。ただ、その上で『Among Us』らしさを出す仕掛けとして、話し声は現実世界と同じように距離や位置関係に応じて聞こえかたが変わるようにしています。近くにいればちゃんと聞こえますが、離れているとなんとなく聞こえはするものの、何を言っているかわからないというような。『Among Us』とはルール、コミュニケーションの仕方が異なるところもあります。
――『Among Us』ではコミュニケーションはDiscordなど別のチャットツールを使う必要がありましたが、『Among Us VR』ではオールインパッケージとしてやり取りができるということでしょうか?
ジェシーはい、オールインワンです。また、音声のやり取りに加えて、音声を使いたくないという人も想定していますので、いつでも簡単にコミュニケーションを図れるチャット機能、マルチコミュニケーション機能もつけようとしています。
――トレーラーでジェスチャーも特徴的に映りましたが、本来のゲーム以外のコミュニケーションが強化されるようにも思えましたね。
ジェシーこういったマルチプレイヤーのゲームではよく起きることなのですが、オウンルール、自分たちの中でルールを作って楽しむということは、じつは期待しているひとつの事象になります。
『Among Us』らしさを失わず、VRになることでのメリットを最大限に追求して作られている。ジェスチャーなど、本編以上にコミュニケーションの幅が広がり、自由度も増すようだ。
FPSのような音での位置把握やゲーム内で会議開催も!?
――そもそも『Among Us VR』の開発はいつくらいからスタートしたのですか? そして、現在の開発状況はどのくらいでしょうか?
ジェシー開発は2021年の秋ぐらいからスタートしまして、現在はまだ開発途中で、完成まであと少しというところまではきている状況です。
――となると、開発スタート後に『Among Us』本編のアップデートも出てきているかと思います。そういった仕様変更も連動して進めているのでしょうか?
ジェシーどれぐらいオリジナルコンテンツを実装するかはいま検討している段階で、ひとつのポイントになっています。ローンチ時にどれくらい含まれるかは現在協議中です。ただ、仮に不足などがあったとしてもローンチして終わりではないので、その後どんどん追加したいと思っています。
――ベースは同じだけど、ある意味でVRならではのバージョンという感じでしょうか?
ジェシーそうですね、従来のバージョンと同じというわけではなくて、それぞれがそれぞれの領域においてできることを生かしていきたいと思っています。多少オーバーラップできるところもあるでしょうが、完全に同じということではないです。
――その領域では、VR化する上で難しいところはどこになりますか?
ジェシーいちばんは空間をどのようにとられていくかです。平坦なマップでどこまで見えていいのか、視界がどうなっているのかといったことになるのですが、適正な空間を作り上げるのは、『Among Us』をコピーするということではまったくうまくいかなくて……。VR、3Dになっても『Among Us』らしさを失わずに、いかにうまく3D化するというところが非常に苦労しました。
――確かに一人称視点になることで視認性、状況把握が低くなると思われますが、それを補うVRならではの工夫が難しそうですね。
ジェシーはい、そういうことがあるので、たとえば素早く振り向けるようにしていたり、声以外でもサウンドをたくさん作っているので、足音で誰かが近づいてくるのがわかるとか、ドアをたくさん作ってその開閉の音で誰かが入ったり出ていったということを認識できるようにしています。すごく細かいところなのですが、そういったリアルな感覚を作りながらゲームが楽しめるようにしています。
――一人称視点になることでは、ホラーとは違った怖さも楽しめるのでは思ってしまいますが。
ジェシーまさにその通りで、アーリーバージョンではとても怖いものになっていました。ただ、スリルを越えた恐怖感になっていまいまして……。『Among Us』でもそうなのですが、スリル感、ゾクゾク感というものは大事なので残しつつも、決してホラー的に怖いものにならないような微妙なバランスになるように、試行錯誤をくり返しているところです。
――怖さが出るなら、心臓発作が起きないか心配してました(笑)。
ジェシー(笑)。一瞬ドキッとなるぐらいの怖さになるようにしています。
――どれくらいやりたいことができている感じでしょうか?
ジェシー正確に測るのは難しいのですが、私たちの方針として期限の半分で作り上げる、そして残りの半分で細かい部分を磨き上げて調整するというやりかたを取っています。いまちょうど半分ぐらいなので、やりたいことや機能は基本的におおよそできあがっていて、今後細かい部分を調整して、こだわりを追求したいと思っています。
――テストプレイを自分たちで実際にくり返して磨きをかけるということですね?
ジェシーはい、磨きをかけられるところすべてをかけていきたいと思っています。テストプレイにおいては、オンライソーシャルゲームならではのやり方と思っていますが、ゲームの中でミーティングを行うことが多くなるため、実際今回我々も実際のゲームの中ですごく多くの時間を過ごしています。
――ある意味ひとつのメタバース(現実世界とは異なる3次元の仮想空間)としていっしょに楽しめそうですね?
ジェシーやはりその要素はVRならではの特徴だと思いますので、ルームの中で会話を楽しんだり、ゲームをするだけではなくてVRならではの場所を楽しんでもらいたいと思っています。それがうまくできていると自負しています。
――InnerSlothとしてVR化にあたってどのような点を重要視したのでしょう?
ヴィクトリア『Among Us』は、友だちと会う空間として大事なものになっています。とくにコロナ禍でみんなが直接会えないなか、「『Among Us』で会おうよ」という方もたくさんいらっしゃったので、そういったコミュニケーションを大事にしていきたいと思っていました。もちろんゲームとしておもしろくなくてはいけないのですが、よりよい集まれる空間であることを意識しています。
――InnerSlothからは具体的にどのような要望を出したのですか?
ジェシーキャラクター作りがすごく重要だという意見をいただきました。体の体型や何頭身なのかとか……。さらに、VRなので手の位置がどの辺りにあるのかといった点も議論しましたね。その要素も、空間作りとして、『Among Us』らしさのひとつの重要なエッセンスにつながっていると思います。
――『Among Us VR』の現状のバージョンを、InnerSlothのメンバーが触ってみての手応えはいかがですか?
ヴィクトリアInnerSlothのメンバーも何度もテストプレイをしていますが、とてもおもしろいものになっています。現状の出来栄えにものすごく満足していて、わくわくしています。そもそもSchell Gamesはディテールにものすごくこだわってくれて、妥協せず開発してくださるのでローンチが本当にすごく楽しみです!
――ありがとうございます。最後に発売を待ち望むファンの方々にメッセージをお願いします。
ジェシー皆さん、お待ちいただきありがとうございます。もう少しお待たせしますが、その分本当に楽しめる内容になっています。さらに磨きをかけ、皆さんのお気に入りになるようにがんばっていますので楽しみにしてください。
ヴィクトリアまずはサポーター、プレイヤーの皆さんにお礼を言わせてください。皆さんがいてくださったので、VR化が決められたからです。私どもも『Among Us VR』が出ることでさらにファン層が広がっていくことを楽しみにしつつ、プレイヤーの皆さんにもぜひ楽しんでいただきたいと思います。もうしばらくお待ちください。
メタバースというキーワードにもマッチした遊びや使い方も可能になるよう。もちろんゲームとしても『Among Us』らしさを追求しつつ、VRでしかできない空間づくりを大切に磨きがかけられている。