2022年3月26日、福岡ゲーム産業振興機構による配信イベント第15回福岡ゲームコンテスト“GFF AWARD 2022”が開催された。
本イベントは未来のゲームクリエイターの育成を目的としたコンテストで、全国各地からさまざまな作品を募集。ゲームグラフィック・アート部門、ゲーム企画部門、ゲームソフト部門と3つの部門に分かれて、賞を決めるというもの。
作品の応募自体は2021年9月からスタートしており、最終的に過去最多となる1883作品が集結。イベントでは授賞式や作品紹介プレゼンテーション、ゲスト審査員のイラストレーター・さいとうなおき氏によるトークショーなどが披露された。本記事では配信の模様をリポートしていこう。
GFF AWARD 2022 第15回福岡ゲームコンテスト
GFF AWARD 2022授賞作品
ゲーム企画部門 優秀賞
ゲーム企画部門の446作品の中から選ばれたのは、京都コンピュータ学院 京都駅前校 ゲーム学科 企画設計コース 3回生・豊田龍斗氏による作品『NEVER HANDS』。
この部門には“つながる”というテーマが設けられていた。企画の想定は、亡くなった彼女とともに男が戦う、“人と手をつなぐことが待ち遠しくなるRPG”とのこと。手をつなぐのか、離すのかによって戦略が変わるコマンドバトルとなっているそうだ。ガンバリオンの山倉千賀子社長は、「リスクとリターンの駆け引きが、ゲームらしくてすばらしいです」とコメントしていた。
ゲームグラフィック・アート部門 優秀賞
1122作品もの応募があり、部門として最多応募数となったゲームグラフィック・アート部門。HAL東京 ゲームデザイン学科 2年・洪 暁ブン氏による作品『DYSTOPIA』が優秀賞となった。
この部門には“革命”というテーマが設けられていた。洪氏が革命という言葉からキーワードを連想したところ、反理想郷であるディストピアに辿り着いたのだという。サイバーパンクかつダークなデザインを意識しながらも、黄色い衣装でゲーム内で目立つようにするなど、さまざまな工夫を取り入れているとのこと。さいとう氏は「印象的な画面作りが素敵でした」と、イラストの技法としても工夫されている点を評価していた。
ゲームソフト部門 優秀賞
315作品が応募されたゲームソフト部門。厳しい二次審査を勝ち抜いた4作品の優秀賞の中から、本イベントでの最終プレゼンテーションを経て、大賞と、協賛のTSUKUMOにより選定されるTSUKUMO賞が授与される。優秀賞に輝いたのは以下の4作品。
優秀賞
- 九州大学・聶 建威氏:『Lost Forest』
- 国際情報工科自動車大学校・チーム「オシダス」:『オシダスシューティング』
- 総合学園ヒューマンアカデミー横浜校・無機EL:『SHADOW ROAD』
- 日本電子専門学校・Team UltraRare:『Debri Collect』
『Lost Forest』
優秀賞作品で唯一、個人製作として入賞したのが聶氏の『Lost Forest』。女の子が森の中を探索しながら進むアクションゲームで、ジャンプや崖登りなどを駆使しながら進んでいく。ユニークなのが、投げて設置できるアイテムの数々。キノコはジャンプ台となっており、敵に当てれば弾力を与えることも可能。ほかにもブラ下がるツルや、壁を登れるコケが使えるようだ。
山倉社長は、本作の達成感の高さを絶賛。また、グラフィックの美しさを評価しつつどのように制作したのか聞いたところ、聶氏はまず3Dモデルをドットイラストに変換するツールを開発。そのツールを使うことで、限られた時間の中で多彩なアニメーションを産み出したそうだ。
『オシダスシューティング』
『オシダスシューティング』は弾丸や爆弾を駆使して、相手を場外に押し出す対戦型シューティングゲーム。プレイヤーキャラクターにはシールドがあり、シールドゲージが高いほどに、攻撃を食らった際の押し出す力をカット可能。シールドを削りやすいショットと、吹き飛ばし力のある爆弾を使い分けが重要となるようだ。ほかにもエネルギーの概念やステージギミックなど、シンプルながらも奥深い対戦が味わえるとのこと。
さいとう氏はタイトル名を見ただけで、どんなゲームルールなのかすぐ分かる点を評価。ついつい審査を忘れて遊び込んでしまったそうで、ゲームを普段遊ばないという奥さんとプレイしたところ、すぐにワイワイと盛り上がれたのだとか。その誰でも遊べる操作性やゲーム性について絶賛していた。
『SHADOW ROAD』
光を避けながら進んでいく、横スクロールアクションゲーム『SHADOW ROAD』。タイミングよく移動して街頭の光を避けながら、ジャンプで落とし穴を回避したりと、非常にシンプルなゲームだ。強制スクロールステージや、別のステージギミックが存在するものもある。
レベルファイブの日野晃博社長は、ゲーム内で描かれている不思議な世界観を賞賛。なお、コンテスト作品であるためか、ゲームに物語は用意されていない。日野社長は「ここに物語がついて、なぜ主人公が光に触れると消滅するのかが分かると、より引き込まれるはず。物語が付いたものも遊んでみたい」と、さらなる発展にも期待を寄せていた。
『Debri Collect』
宇宙でデブリ(宇宙ゴミ)を集めて戦うシューティングゲーム『Debri Collect』。画面は固定で、画面中央にある地球に飛来するデブリを破壊しながら防衛していく。自機は移動のほかに360度回転することができ、それによってショットに狙いを付けるのがポイント。ある程度ホーミングするようになっているので攻撃を当てやすいなど、プレイヤーのことを考えた機能も搭載されている。
サイバーコネクトツーの松山 洋社長は、まずデザイン性を高く評価。「フォントから画面の演出にいたるまで、オシャレな雰囲気で描かれていることがゲーム全体の楽しさを産み出している」と評した。また、プレイヤーに気持ちよくプレイしてもらえるようにホーミング機能を付けていることも絶賛していた。
TSUKUMO賞
大賞発表の前に本コンテストの協賛である、パソコン専門店・TSUKUMOによる特別賞は、日本電子専門学校・Team UltraRareが製作した、『Debri Collect』に決定。Team UltraRareには賞品として、ゲーム開発用のPCセットが贈呈された。
大賞は『オシダスシューティング』!
そしていよいよ大賞の発表。今回大賞に輝いたのは、国際情報工科自動車大学校の、チーム「オシダス」が製作した『オシダスシューティング』となった。チーム「オシダス」には賞金30万円と、副賞としてスピーカーが授与された。
配信の最後は、福岡ゲーム産業振興機構委員長でもある、日野社長がコメント。
本コンテストへの応募が過去最多となったことに感謝を述べつつ、『オシダスシューティング』が大賞に輝いた理由を語った。日野社長もさいとう氏と同じように、審査する立場でありながらもプレイについつい熱中してしまい、対戦にのめり込んだのが大きな理由となったそうだ。「審査しなきゃいけないのに、夢中になって遊んでしまった時点でもう審査員の“負け”ですからね(笑)」と、同作を大絶賛し、本イベントは終了となった。
さいとうなおき氏のトークショーも!
なお、大賞などの発表前にはさいとう氏と松山社長による、スペシャルトークショーも実施。さいとう氏がどのようにしてイラストレーターになったのか、YouTuberを始めたのかといったこれまでの経緯に加えて、ライブドローイングも披露された。こちらの模様は、ぜひアーカイブをチェックしてみてほしい。