2022年3月23日、セガはスマートフォンRPG『シン・クロニクル』をリリースした。本作は、同社のスマートフォン向けRPG『チェインクロニクル』(『チェンクロ』)チームが手掛けた最新作。プラットフォームはiOSとAndroidで展開され、基本プレイ無料(アイテム課金制)で楽しめる。
当初は2021年12月のサービス開始が予定されていたが、さらなるクオリティーアップを目指して配信が延期され、このたびついにリリースされる運びとなった。本記事では、『シン・クロニクル』の特徴的な3つの要素の解説を軸に、クローズドβテスト(以下、CBT)のバージョンから改善されたポイントを重点的に紹介していく。
プレイヤーがクライマックスで決断を迫られる“究極の2択”
ストーリーでもっとも特徴的なのが、各章のクライマックスでプレイヤーが“究極の2択”を迫られるというもの。クライマックスの選択肢の中には、回答によってキャラクターの生死を決するものもあり、プレイヤーは重要な決断を迫られることになる。
ストーリーに力を入れていた『チェンクロ』チームが手掛ける新作だけあって、本作でもストーリーが非常に丁寧に描かれている。選んだキャラクターの運命を左右する選択肢があると先述したが、この“究極の2択”をより際立たせるため、キャラクターへの感情移入をより強める仕掛けも。
たとえば第1章では、ゲストとしてふたりのキャラクターが仲間になり、このふたりが章の終わりの選択に大きく関わることになる。仲間として物語をともに進行することで、プレイヤーはどちらのキャラクターにも思い入れを持つようになるのだ。第1章で鍵を握る登場人物は、小隊を率いるギュンターと新米隊員のアンネのふたり。
ゲストキャラクターとして参戦するギュンターとアンネは、バトルで操作できるほか、通常のキャラクター同様に育成することも可能。メインストーリーにガッツリ絡むだけではなく、バトルと育成でプレイヤーに触らせることで、より愛着が湧きやすくなるように設計されている。
さらに各章には、メインストーリーやゲストキャラクターを深堀りするためのキーキャラクターが複数存在。一部のキーキャラクターは自動的に加入するが、多くは酒場(=いわゆるガチャのシステム)で仲間にできる。
ゲストキャラクターであるギュンターとアンネがこれらのキーキャラクターと絡むことにより、ふたりが主人公たちの隊にとってかけがえのない仲間になっていることが強調される。キャンプでのイベントで特定の仲間と絆を深めることで、ギュンターとアンネが強力な効果を持つEXアビリティを習得できるのもポイント。手塩にかけたキャラクターになるからこそ、「手放したくない」という思いが強くなる。
ストーリー、バトル、育成、仲間とのやり取り。これらを通してゲストキャラクターの魅力を丁寧に描き、愛着が湧くようになっているからこそ、クライマックスで突きつけられる選択が、“究極の2択”として成立しているのである。
しかもこの選択はやり直せない。選ぶチャンスは一度きり。本作を体験した多くのプレイヤーは、真剣に悩むことになるだろう。本気で選んだからこそ、結果はどうあれ、心に刻まれるストーリーを体験することができるのだ。
わかりやすく言うと、某国民的RPGの5作目のあの選択のような“プレイヤーがゲーム上の選択肢で、ガチで悩んじゃう”という楽しさが何度も味わえるってわけだ。
最新バージョンではドラマシーンにボイスが追加されたほか、一部の演出がますますドラマチックにブラッシュアップされている。さらに、ゲーム内使用フォントを作品世界にマッチしたものに再設定。これらの改善によりストーリーの魅力がますます増した印象だ。
スマホゲームとは思えないハイクオリティーのバトル
本作は、3Dで表現されたリッチなフィールドを用意。いわゆる“スタミナ”であるAPを消費してクエストに挑むのは従来のスマホゲームと同じだが、3Dのダンジョンを自由に探索してバトルができるので、家庭用ゲーム機のRPGのような感覚でプレイできる。
フィールドの移動はタップやバーチャルパッドで行えるが、目的地まで自動的に移動してくれる便利なオートランの機能も用意されている。オートランは目的地への移動を最優先に設定されているようで、道中の宝箱や敵をスルーしてしまう。とはいえオートラン使用中にキャラクターを動かすことも可能なので、基本はオートラン、敵と戦いたいときや宝箱を入手したいときは手動操作、というように使い分けられる。
ダンジョンでは、シンボルエンカウント制が採用されている。モンスターに触れるとバトルが発生するが、戦闘を有利な状態で始められる要素も存在。移動中に画面右下の“ATTACK”のアイコンをタップして敵に攻撃することで、戦闘開始時に敵にダメージを与えられる。これを利用すれば、格上の敵も倒しやすくなるので積極的に狙っていこう。
バトルはターン制で進行し、素早さの数値が高いキャラクターから順番に行動できる。プレイヤーの行動はコマンド選択式で、順番が回ってくると戦闘時の行動ポイントであるBPに応じて通常攻撃や多彩なスキルをくり出せる。
タップやスワイプなどで3Dフィールドを移動させることもできるほか、より簡単な操作方法も用意されている。ターゲットを選んで通常攻撃やスキルのアイコンをタップすると、キャラクターが敵の近くまでオートで移動してくれる。ふだんあまりゲームをプレイしない人でも気軽にバトルが楽しめるだろう。
バトルでもっとも特徴的なシステムは、仲間との連携だ。パーティーメンバーが攻撃するたびに、画面左上に表示された“Chain”が上昇し、ダメージボーナスが発生する。Chainは敵の攻撃を食らうと途切れてしまうので、画面下の行動順を確認し、どの敵から倒していくのか考えるのが重要に。仲間と仲間のあいだに行動する敵を狙って倒せば、Chainがグングン上昇。大ダメージを与えやすくなり、バトルを有利に進められる。
ボスなどの強敵には“ブレイク”という要素も存在。強敵をブレイクさせることで弱体化でき、攻撃のチャンスを生み出すというものだ。ブレイクさせる方法はシンプルで、強敵を攻撃するたびに敵のHPゲージの横に表示された数字が減っていき、この数字がゼロになるとブレイク状態になる。
さらに、敵に与えるダメージは攻撃の属性によって増減するほか、敵の注意を引きつけるなど、特殊な効果を持ったスキルが用意されている。専用のゲージを溜めることで放てる必殺技“オーバードライブ”もバトルを盛り上げる要素だ。出現する敵に合わせて有利な属性のメンバーを編成したり、状況に応じてスキルを使い分けたりすることで、戦術性に富んだ奥深いバトルが堪能できる。
なお、バトルではAUTOプレイ時の行動パターンの改修が行われ、バトルのオプション設定やバトル後のリザルト画面スキップなどが追加された。隙間時間にプレイすることの多いスマホゲームにおいて、とくにAUTOプレイ時の行動パターンの改修はうれしい改善点。実際にAUTOプレイを試してみたが、第1章までなら全滅することなく利用できたので、サービス開始後も頼りになりそうだ。
魅力的なキャラクターをとことん育成できる多彩なやり込み要素
メインストーリーを通して、愛着の湧いたキャラクターをとことん育てることができるのも『シン・クロニクル』の魅力。キャラクターはアビリティパネルと覚醒というシステムで強化できるほか、武器や魔具、精霊を装備してステータスを上昇させることもできる。
アビリティパネルは、レベルアップで入手したポイントを使って能力を解放していく要素。アビリティには、ステータスの補強やスキルの習得、強化のパネルが用意されており、プレイヤーの好みに応じてキャラクターを育成できる。有料アイテムのジェムを使えばパネルのリセットも行えるので、育成スタイルを試しやすいのもうれしい。
また、覚醒は★で表示されたキャラクターのレアリティをあげる要素。覚醒させるとパラメーターが上昇するほか、新たなアビリティパネルが開放される。レアリティの低いキャラクターも覚醒によって強化することができるので、スマホゲームにありがちな、レリティが低いからスタメンに起用しにくいといった問題がないのはうれしい。
さらに、ダンジョンから持ち帰った武器や、仲間になった精霊も強化が可能。ここはハクスラ要素にもつながっており、ダンジョンをくり返しプレイして、グレードやランダムで付与されるアビリティが優秀な武器を狙う楽しみも生まれている。最新バージョンでは武器の所持枠が増加し、武器の強化や限界突破がより利用しやすくなった。
メインストーリーの合間に楽しめるコンテンツも充実しており、ワールドマップの各地を異動して多彩なクエストに挑めるほか、定期的にイベントが開催される予定だ。
『シン・クロニクル』の重厚なストーリーや戦術性に富んだバトル、奥深い育成は、家庭用ゲーム機のRPGのような手触りを感じた。スマホゲームながら、じっくり腰を据えて楽しめる内容に仕上がっていると思うので、多くのRPGファンに遊んでもらいたい。