2022年3月4日にスクウェア・エニックスより発売されたNintendo Switch用ソフト『トライアングルストラテジー』。本作は、多数のキャラクターが入り乱れて戦う戦略性の深いタクティクスRPG。戦乱に揺れる三国の関係を巡る物語の中で、歯ごたえのある戦闘を楽しめる。

 複数のキャラクターを動かしながら戦略を組み立てるという点で、本作は将棋にも似ている。そこで、棋士の香川愛生女流四段に実際にプレイしてもらった。攻めの棋風で知られる香川先生に、キャラクターの動かしかたや戦略の組み立てかたの極意も教わったので、ぜひ確認してほしい。

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香川愛生(かがわまなお)

“番長”の愛称で親しまれる日本将棋連盟女流棋士。総合企画プロデュース企業・株式会社AKALIの代表取締役社長も務める 。ゲーム好きとしても知られており、週刊ファミ通ではコラム“香川愛生の香車のうら”を連載中。

ボスの強さに驚きながらも冷静にクリアー

 今回香川先生にプレイしてもらったのは、第1話“一羽の鷹のように”の盗賊・トラヴィス一家とのバトル。スタート時の盤面はセレノア、ベネディクト、フレデリカ、ジーラの4人が船着き場付近に陣取り、助太刀に現れた金髪碧眼の男・ロランが少し離れた階段の上にいるという状況だ。

『トライアングルストラテジー』“攻めのプロ”将棋棋士・香川愛生女流四段に訊く戦いかたの基本

 最初に行動するのは主人公のセレノア。ふつうであれば前に進めてしまいそうなところだが、香川先生は悩んだ末にセレノアを下げて敵から遠ざける。「将棋の駒は初手では前にしか出られないので違和感があるが、様子を見るために下げてみよう」とのことだった。結果的にダメージを食らわず、敵を引き付けることができた。

『トライアングルストラテジー』“攻めのプロ”将棋棋士・香川愛生女流四段に訊く戦いかたの基本

 その後も、「最善の手を選びたくなってしまう」と、行動順を確認して慎重に戦略を組み立てる。敵を挟むようにしてふたりのキャラクターで攻撃する“追撃”や、必ずクリティカルヒットになる背後からの攻撃を試していた。

『トライアングルストラテジー』“攻めのプロ”将棋棋士・香川愛生女流四段に訊く戦いかたの基本
『トライアングルストラテジー』“攻めのプロ”将棋棋士・香川愛生女流四段に訊く戦いかたの基本

 また、特徴的だったのが孤立した場所にいるロランの動かしかた。高所から攻撃するとダメージが増加するというシステムを利用しながら敵を倒しつつ、数人を引き付けながら回復アイテムを使って時間稼ぎ。その隙にセレノアたちを動かしてひとりひとり敵を減らしていく。

『トライアングルストラテジー』“攻めのプロ”将棋棋士・香川愛生女流四段に訊く戦いかたの基本

 しかし、トドメをさせそうなところで攻撃がミス……! それでも、ベネディクトのアビリティ“猛虎のごとく”でフレデリカの魔力を上げ、“炎撃魔法”を複数の敵に当てたりしながら効率的にダメージを与えて冷静に戦況を立て直した。

 バトル終盤にはボスのトラヴィスとトリッシュの強さに驚きつつも、しっかりとアビリティを活用して勝利。全キャラクター生き残った状態でのクリアーとなった。

『トライアングルストラテジー』“攻めのプロ”将棋棋士・香川愛生女流四段に訊く戦いかたの基本

焦らない不動の心で勝利をつかみ取る

――今回プレイしていただいたのは短い戦闘でしたが、かなり手を考え込まれていましたね。

香川敵のキャラクターもよく考えて行動してくるので、つぎの敵の行動を考えるとなかなか動けなかったですね。敵が最善を尽くしてくるだろうという前提で動いていたので、「こちらもいい手を指さなくては……」と、考え込んでしまいました。

――ピンチに陥ってしまったときに大事なことはありますか?

香川やっぱり、焦らないことがすごく大事だと思います。今回のプレイでは初めてのことが多くて、敵の追撃や背後からの攻撃を受けてしまうこともありました。でも、『トライアングルストラテジー』には将棋と違って制限時間がないので、じっくりといい手を考えることができます。

 今回は敵から背後を取られないようにしたり、ピンチのときにいつでも回復できる態勢を整えたりと、冷静に起こりうる事態を想定して、対策しながら行動しました。

『トライアングルストラテジー』“攻めのプロ”将棋棋士・香川愛生女流四段に訊く戦いかたの基本

――本作ではキャラクターによって能力が違いますが、どのようなことを考えて動かされていましたか?

香川遊んでみると、キャラクターたちは将棋の駒とすごく似ているなと思いました。

 将棋の場合はそれぞれの駒にどういう役割を与えるかを自分で考えるのですが、『トライアングルストラテジー』では、回復役だったり、前線に出る役だったりと、キャラクターそれぞれに最初から役割が与えられています。その役割を最大限果たしてくれるように動かすことが重要だと思いますね。

 役割を自分で考えるかどうかという点が違うだけなので、動かすときの考えかたのコアになる部分は将棋とかなり近いと思います。

 それから、プレイできたのは短い時間でしたが、「主人公だからセレノアは前で戦ってほしい」、「フレデリカは強気だから活躍してほしい」といった感じで、キャラクターに感情移入してバトル中も自分でストーリーを作りたくなりました。

『トライアングルストラテジー』“攻めのプロ”将棋棋士・香川愛生女流四段に訊く戦いかたの基本

――一手では倒せないという点は将棋とかなり違うと思いますが、いかがでしたか?

香川敵も動くので同じキャラクターを攻撃し続ける難しさは感じました。将棋では“自分の行動→相手の行動→自分の行動”というセットで考える“三手の読み”が基本になるのですが、『トライアングルストラテジー』ではさらに後のことも考えて動かないといけないので難しかったです。

 それでも、いつでもキャラクターの行動順を確認できるので、戦略は組み立てやすかったです。ただ、たとえば敵キャラクターが4連続で行動するような行動順だとその後の盤面がガラッと変わってしまうので、そこは歯ごたえがあったポイントですね。「ああでもない、こうでもない」と思考を巡らせる時間が楽しかったです。

――プレイ中には、あと一撃でトドメが刺せそうなところで攻撃をミスする場面もありましたね。

『トライアングルストラテジー』“攻めのプロ”将棋棋士・香川愛生女流四段に訊く戦いかたの基本

香川将棋は空振ることがないので、攻撃を外したときは動揺しました(笑)。でも、そういったリスクを管理しながら行動するのもおもしろかったです。不確定要素のおかげで遊ぶたびに唯一の体験ができるので、何回もくり返し遊んでいろいろな戦略を試したりするのもおもしろそうだなと思いました。

――最後にプレイの感想をお聞かせください。

香川洗練された堂々たる雰囲気で、将棋とも通ずるような戦略性の深さも体験できました。考えれば考えるだけおもしろみが出てくるような作品だと思います。今回はいっぱいいっぱいでプレイしていましたが、行動順の表示など遊びやすくする工夫もあったので、私のような将棋指しはもちろん、戦略を立てて行動するのが好きなゲームファンの方には刺さる作品なのかなと思いました。

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