2012年(平成24年)2月20日にiOS版がリリースされた『パズル&ドラゴンズ』(以下、『パズドラ』)。パズルとRPGを融合させたタイトルで、スマホに特化した操作性やゲームデザインなどが好評を博し、配信開始からわずか1年でダウンロード数は1000万を突破。この10年のあいだにますます数を伸ばし、2021年10月の段階で国内累計ダウンロード数は5800万に達している。そんな本作が今年で10周年を迎えた。
本稿では、開発のキーマン、ガンホー・オンライン・エンターテイメント代表取締役社長CEO エグゼクティブプロデューサーの森下一喜氏と、プロデューサーを務める山本大介氏へのインタビューをお届け。これまでの思い出をたっぷりと聞きながら、2月20日に配信された新作タイトル『PUZZLE & DRAGONS Nintendo Switch Edition』(以下、『パズドラSwitch』)のことや、気になる今後の施策についても伺った。(聞き手:ファミ通グループ代表/林克彦)
※インタビューは1月下旬に新型コロナ感染対策をして実施。
森下一喜氏(もりした かずき)
ガンホー・オンライン・エンターテイメント 代表取締役社長 CEO
エグゼクティブプロデューサー
山本大介氏(やまもと だいすけ)
ガンホー・オンライン・エンターテイメント プロデューサー
サービス開始から10周年! 『パズドラ』誕生エピソード
――『パズドラ』10周年、おめでとうございます。まずは、10年以上前、どのような思いで山本さんが『パズドラ』の企画を立ち上げたのか、そして森下さんとどのようにリリースに向けて準備をしたのか、当時の想い出をお聞きしたいと思います。
山本当時、僕はガンホーに転職した直後で、「1週間くらいを目処に新しい企画を出してほしい」と言われていて。前から温めていたタワーディフェンス系のゲームの企画を書いた後、期日まで時間があったので、もう1本企画書を書こうとしたときにふと思いついたのが、『パズドラ』の企画でした。森下にふたつの企画を見せたところ、『パズドラ』が選ばれて、開発が動き出したと記憶しています。
――ふたつの企画のうち、本当はタワーディフェンスのほうを作りたかった?
山本僕は作りたいゲームがつねに100本ぐらいあって、企画を出すときはその中からとくに自信のあるものを出すようにしています。両方ともやりたいタイトルではありましたが、結果的には『パズドラ』でよかったと思いますね。
――森下さんは当時のことを覚えていますか?
森下もともと僕がやりたかったのは、つり革につかまりながらでも片手でプレイできるような、スマホ向けのアクションゲームだったので、大介にもそういうお題を出していたと思います。それで大介がタワーディフェンス系とパズル系の企画を出してくれて、パズル系がいいなと思いましたが、海外に似たようなタイトルがあったので、差別化しないといけないという話をして。いわゆるマッチ3ゲームのパズルだと、アクション性がないという課題もあったので、思い切ってドロップを自由に動かせるようにしたんです。でも、それだけだと簡単になってしまう。だったら4秒間の制限時間を付けよう。そうすれば焦ってミスも増えるし、モンスターの編成によって難度も変えられると考えました。そこが『パズドラ』のスタートだったと思います。
――タイトルは当初から決まっていたんですか?
森下『パズル&ドラゴンズ』ではなかったのは覚えています。なんてタイトルだったっけ?
山本『パズル&ダンジョンズ』だったような。
森下そうそう。ただ、僕がタイトルに“ドラゴン”をどうしても入れたかったので、『パズル&ドラゴンズ』にしろって(笑)。
山本タイトルにドラゴンを入れるにしても、僕の中のイメージでは、『ダンジョンズ&ドラゴンズ』(1974年にアメリカで発売されたテーブルトークRPG )だったんですけどね(苦笑)。
――(笑)。ちなみに、森下さんは、なぜタイトルにドラゴンを入れたかったのですか?
森下昔ある人に言われたことがあるんです。「男の子はみんな“ドラゴン”が好きだ。ここぞというときに、タイトルにはドラゴンと付けるべきだ」って。それで「使うならいまだ」と思い『パズル&ドラゴンズ』にしました。略して『パズドラ』の語呂もすごくいいですよね。
――そうですね。すごく呼びやすいです。
山本いまにして思うと、よく商標が取られずに残っていたなと思います。
森下どちらもよくある名前だからね。ただ、リリースした後、うちの息子には「ドラゴンがぜんぜんいない」と言われました(笑)。
山本それでも、当時はドラゴンの比率は多かったんですけどね(笑)。だんだん神様をモチーフにしたモンスターが増えていきましたから。
ーーこの10年を振り返ってみて、あっという間でしたか? それとも長く感じましたか?
山本振り返ってみると、10年はあっという間でしたが、毎年試行錯誤の連続で、必死に生き抜いてきた感じがしますね。子どもの成長を見守ってきたような感覚で、人生をいっしょに歩んできたという思いがあります。
運営を長く続けるにあたって大事にしていた信念とは?
ーー森下さんと山本さんの『パズドラ』における役割は、最初から決まっていたのですか?
森下『パズドラ』に限らず、リリースするまでは細かいところまで見るようにしていますが、その後の運営は各担当者に任せています。『パズドラ』もディレクションを含めて、ゲームバランスやパラメーターの調整などは、大介の感覚に任せるようにしていて、僕は大きな問題が発生したときや、現場が困ったときなどにアドバイスを送るようにしていますね。
ーーつまり、新要素の実装や異なるプラットフォームでの展開などは、山本さんが中心となって考えていると。10年間運営を続ける中で、大事にしてきたポリシーや信念は何でしょうか?
山本最初から心がけてきたのは、容量の小ささやローディング時間の短さ。それと、そのときの最新端末より古い機種でも、ゲームが気持ちよく動くようにすることです。新モードを追加するときも、端末のスペックだけではなく、トレンドも考慮するようにしていて、取り残されないように、時代に合わせて必死にアップデートを行ってきました。最近ですと、2021年11月に実装した広告ガチャ(広告の動画を視聴すると無料で回せるガチャのこと)も、時代に合わせて追加した機能のひとつですね。ビジネスモデルを含めて、つねに新しいことにチャレンジするようにしています。
ーーやりたかったアイデアの実現とともに、時代に合わせたコンテンツのキャッチアップも、貪欲に行っていたのですね。
山本そうですね。やりたかったアイデアを順番に実装していたのは最初の4年くらいで、5年目以降は時代に合わせて要素を追加したり、新しくしたりすることが多かったです。
ーー10年も続くと、安定しているイメージがありますが、決してそんなことはなかったと。
山本10年経っても安定はしませんね。
森下僕も安定していると思ったことは一度もありません。むしろ、「このままじゃまずいな」と毎年思っていて、いちばんの課題や問題点はなんだろう、今後の展望はどうしたらいいんだろうと、つねに考えるようにしています。
ーー現状の課題や問題点、今後の展望を考えるうえで、とくに意識していることは?
山本ここ数年は、これまで以上にトレンドを追うようにしています。そのきっかけとなったのは、『クロノマギア』(山本氏が手掛けた対戦カードゲーム。2020年にサービス終了)の開発と運営でした。
当時は、『クロノマギア』の競合タイトルを念入りに調査していて、そこから『パズドラ』に反映できたこともけっこうあって。たとえば、大感謝祭などで配布する魔法石を増やしたことや、モンスター交換所の機能を実装したのは、競合タイトルの影響です。交換機能は、デジタルのカードゲームではわりと一般的ですが、ほかのゲームではほとんど実装していません。理由は明白で、売り上げが落ちてしまうからなんです。でも長い目で見ると継続率の維持につながりますし、モンスターがかぶったときのフォローにもなるので、交換所は実装してよかったと思いますね。
森下大感謝祭で魔法石を100個配ると決めたときは、社内でも動揺が広がったよね(笑)。ただ、中途半端に配っても意味がないので、心配する声を押し切って100個配布しました。バラまくだけではダメですが、大感謝祭では魔法石を消費したいと思ってもらえるような施策をちゃんと考えていたこともあって、やってよかったですね。
ーー10年のあいだに、開発スタッフの数や全体の規模は、どのように変化していますか?
山本少しずつ増えていますが、それでも規模はあまり大きくないですね。スマホの『パズドラ』運営に関わる人数は、海外を含めても50人もいないと思います。一般的なスマホの運営体制としては、かなり少数精鋭でやっていますよ。
ーーその規模でよく回っていますね。
森下遊びかたは普遍的ですし、3Dのアクションゲームのように工数が非常に多いわけではないので、物量を考えると、少数精鋭でも問題なく運営できています。
山本ただ、ひとりあたりの責任や役割は大きいと思います。あくまで個人的な考えなのですが、人が増えすぎてしまうと、仕事や責任が分散されてしまい、やる気をなくしたり、だらけたりしてしまう人が出てきますよね。それを防ぐためにも、増やしすぎないほうがいいと考えていて。「自分はここを担当したんだ」と、胸を張って言える規模がいいですね。
森下これはほかのプロジェクトでも変わりません。人数を大勢増やすよりも、必要最低限の状態に保つのがうちの基本方針です。
ーー少数精鋭だとたいへんだとは思いますが、苦労したぶんスキルアップにもつながりやすいと思うので、環境としてはいいですよね。
森下新しいスキルを身につける喜びは、できるだけ経験させたいと考えています。たとえばデザイナーで、3Dの背景とエフェクトができるなら、つぎはUI( ユーザーインターフェース)が学べる仕事を与えるとか。
あとは、『パズドラ』のようにサービスが長いタイトルに携わっていると、別のハードの作品を作りたいといったスタッフも出てくるので、そういった希望もできるだけ叶えるようにしています。うちは部署異動の明確な制度がないぶん、ほかのプロジェクトに移りやすいので、いろいろなことにチャレンジできる会社だと思います。ゲーム業界で就職や転職を考えている方は、ぜひガンホーに応募していただけるとうれしいです。手前味噌ですが、本当にいい会社だと思うので。ここはぜひ太字で書いておいてください(笑)。
山本わざわざ太字にしなくてもいいですけど(苦笑)、うちはやりたいプロジェクトにチャレンジしやすい会社だとは思いますよ。
10年間のうちに150回以上! コラボイベントの思い出
ーー『パズドラ』は、いろいろな作品とコラボしてきたのも印象に残っています。
山本恥ずかしながら正確な回数を把握できていないのですが、この10年のあいだに、おそらく150回以上はコラボしていると思います。
森下大介でも覚えていないんだ?
山本すみません、正確な数までは(苦笑)。
ーー150回以上もコラボできているのがすごいですよね。コラボするタイトルは、どのようにして決めているのですか?
山本自分たちが好きなタイトルにお願いすることが多いですが、ユーザーのニーズやトレンドを意識して決めることも多いですね。
ーーまた、『パズドラ』はゲーム外のイベントやアニメ化なども積極的に行っていますよね。どういった考えから、ゲーム外の展開に力を入れているのですか?
森下リアルイベントは、顧客満足度を高めるために実施しています。『パズドラ』に限らず、同じものを好きな人が集まって盛り上がると、モチベーションが上がりますよね。あとは、単純にお祭りが好きなんですよ(笑)。
山本林さんは僕たちといっしょに浅草サンバカーニバルに参加されたことがあるので、ご存じだと思いますが(笑)。
ーーそれはもう(笑)。

森下お祭りは楽しいだけではなくて、ファンの方たちと触れ合える貴重な場所でもあって。会場でこれだけの人たちが遊んでくれているんだ、熱狂してくれているんだ、というのを実際に見ると、モチベーションが上がるんですよね。もちろん、イベントはファンのために開催していますが、実際は自分たちへのご褒美も兼ねているんです。だから、なるべくイベント会社に依頼せずに企画を考えていますし、運営も社内のスタッフだけでやるようにしています。
ーーファンの方たちとできるだけ交流するようにしているのですね。では、アニメの施策は?
森下アニメは新しいユーザー、具体的に言うと、子どもたちに向けた施策になります。いまもナンバリングが続く人気シリーズ……たとえば『ドラゴンクエスト』や『ファイナルファンタジー』は、子どものころに遊んだ記憶が強烈に残っていますよね。『パズドラ』もそんなタイトルにしたいんですよ。『パズドラ』の未来を考えると、子どものファンを増やして、しっかりと育てていくことが重要になってくると考えています。
ーーガンホーさんはいま、『パズドラ』のほかに『ニンジャラ』のアニメも放送していますよね。僕の娘がアニメを観て、『ニンジャラ』をやりたいと言っているので、いまのお話を聞いて、「こういうことか」と実感できました。
森下それはよかった(笑)。『ニンジャラ』はもともと子どものプレイヤーが多かったのですが、『パズドラ』もより多くの子どもたちに遊んでもらえるようになるとうれしいですね。
忍者の末裔たちが変幻自在の独特なガムアクションを駆使して戦う、新感覚のアクションゲーム。
ーーちなみに、『パズドラ』の現在のユーザー層はどれぐらいでしょうか?
山本最近実施したアンケートで100万以上もの回答が得られたのですが、回答者の男女比が印象に残っていて。男性9:女性1でしたね。
森下昔はもう少し女性が多かったんですよ。
山本以前は男性7:女性3ぐらいでした。
ーー男性のユーザーが増えた要因を、山本さんたちはどのように分析していますか?
山本僕の好みもあると思いますが、以前は幅広いコラボを実施していて、性別に関係なく楽しんでいただけていたのですが、一時期女性よりは男性が好きそうなコラボが続いたことがあって。そのタイミングで、女性のユーザーが離れてしまったのではないかと考えています。
森下僕は、コラボはあまり関係がないと思っています。男性向けと言っても、女性ファンが多い作品ともコラボしていましたからね。それよりも、ゲームがだんだん難しくなってきて、女性ユーザーが離れてしまったのかなと。とはいえ、あくまでアンケートの結果ですからね。男性ユーザーのほうがアンケートに積極的に答える傾向にあるので、実際は男性8:女性2ぐらいだと思います。
『マリオ』とのコラボが実現!
ーーこの10年のあいだに、とくにうれしかったこと、たいへんだったことを教えてください。
山本 僕はアーケードゲームが作りたくてこの業界に入っているので、自社パブリッシングではなかったものの、『パズドラ』のアーケードゲームをリリースできたのがうれしかったですね。
スクウェア・エニックスとの共同開発で、キャラクターデザインに野村哲也氏を起用したことで話題に。
右:『パズドラZ テイマーバトル』
パズルとカードゲームを融合させた斬新なシステムが多くの子どもたちを虜にした。
森下僕は『パズル&ドラゴンズ スーパーマリオブラザーズ エディション』(以下、『パズマリ』)かな。
山本『パズマリ』もうれしかったですね。『マリオ』とコラボできたことはもちろんですが、宮本さん(宮本茂氏。任天堂株式会社代表取締役フェロー。『マリオ』の生みの親としても知られる)にアドバイスをもらえたときは、めちゃくちゃうれしかったです。
ーー逆に、10年のあいだでとくにたいへんだったことは?
森下(しばらく考えて)現在進行系だから印象が強いというのはありますが、アニメのシナリオかな。『パズドラ』と『ニンジャラ』のアニメは、どちらも大事な施策とはいえ、正直に言うと、2本同時にシナリオを書くのはたいへんです(苦笑)。
ーーほかの仕事をされながら、毎週2本のシナリオを書くのは、たいへんだと思います。山本さんはどうですか?
山本『パズドラ』は昔から生放送にも力を入れていて、試行錯誤しながら、うまい人がプレイしてその結果に応じてユーザー全員にプレゼントを配布したり、新情報を出したりと、スマホゲームの公式放送の形を徐々に作っていったと自負しています。ただ、生放送ゆえにミスもあり、正しい情報を伝えられず、以前、ユーザーを始め多くの方にご迷惑をおかけしてしまいました。
ストーリーを実装する難しさとつぎへの布石
ーー2021年8月に四神の物語が完結しましたが、ファンの方たちの反応はどうでしたか?
山本『パズドラ』は当初、世界観設定やストーリーなどを用意していなかったので、ファンの方たちが想像をふくらませて楽しんでくれていました。それもあって、こちらが後から用意したストーリーやキャラクターの描きかたと、ファンの方たちの想像がうまく一致していないところもあって。ストーリーの感想は、賛否両論の意見が多かった印象です。
たくさんの方たちから貴重なご意見をいただいたので、今後実装するストーリーモードでは、方針を大きく変えました。実装するまでに時間がかかりそうなので、このタイミングで具体的なことはお伝えできないのですが、登場させるキャラクターのことをファンの方たちがどのように愛してくれているのか、より慎重にリサーチしたうえで、ストーリーに落とし込んでいきたいと考えています。
森下『パズドラ』のストーリーは後付けのものなので、ファンの意図したものとは異なる展開や、想像していたものとは違う設定が登場して、感想が賛否両論になることはある程度予想ができていました。それでもいざストーリーを考えてみると、想像していた以上に難しくて。今後は少なくとも、シナリオの展開を考えたときに、誰かが命を落とす展開を考えついたとしても、そういったシーンを無理に描かないほうがいいのではないかとは思っています。
山本とあるキャラクターが命を落とすにしても、多くの人が納得し、受け入れられるようなシーンをちゃんと用意する必要があると改めて思いました。どのキャラクターにも熱心なファンがいるので、なかなか難しいのですが。
新作『PUZZLE & DRAGONS Nintendo Switch Edition』にかけた開発者たちの思い
ーー今後の『パズドラ』の展望もお聞きしたいです。2月20日には、『パズドラSwitch』が配信されました。突然の発表と配信に驚いたファンも多かったと思いますが、開発した経緯は?
山本僕と森下は、新しいユーザーに『パズドラ』を遊んでもらうためにはどうしたらいいかを、ずっと考えてきました。スマホを持っていない小さい子どもはもちろん、『パズドラ』を卒業した方もターゲットとして考えているのですが、10年続いた『パズドラ』を最初から遊び始める、もしくは復帰するのは、かなりハードルが高いと思っていて。
ーー確かに、いまから始めるのは、覚えることが多くてたいへんそうなイメージがあります。
山本そこで、復帰するのが難しい方や、そもそもスマホを持っていなくて遊べない子どもたちに向けて用意したのが、『パズドラSwitch』になります。本作はチューニングにとても時間をかけていて、初めて『パズドラ』を遊ぶ小さな子どもはもちろん、久しぶりに遊んだ方も、楽しみながらルールを覚えられるようにしています。気に入っていただけたなら、『パズドラSwitch』をずっとプレイしていただいてもいいのですが、ゆくゆくはスマホ版を遊んでくれるようになるとうれしいですね。
森下我々としては、『パズドラSwitch』で、『パズドラZ』のような流れをもう一度作りたいと考えていて。『パズドラZ』はトータルで190万本ぐらい売れていて、「『パズドラZ』から『パズドラ』を始めました」というファンの方は、けっこういるんですよ。
ーーなるほど。『パズドラSwitch』は、間口の広い作りになっているうえに、継続して楽しめるような仕組みも用意されていると。
山本そうですね。協力プレイも楽しめる冒険モードのほかに、オンラインでスコアを競う対戦モードを用意していますし、新たにエディットモードを収録しました。このモードは、出現するモンスターやドロップ、BGMなどを自由に組み合わせて、オリジナルのステージを作れるシリーズ初の新要素です。作ったステージはインターネットでシェアできるので、アップロードして公開したり、ダウンロードしてプレイしたりすることもできますよ。
森下『パズドラSwitch』は、内容はもちろん、操作性にもこだわりました。携帯モードなら、タッチパネルを使ってスマホと同じような感覚でプレイできますし、TVモードやテーブルモードでは、コントローラを使って楽しめます。最初は戸惑うかもしれませんが、コントローラでの操作にも、すぐに慣れると思いますよ。
山本コントローラを使った操作は、別のゲームのような感じで想像以上に新鮮ですよね。
ーー『パズドラ』のテクニックには斜め移動がありますが、斜めも入力しやすいのですか?
森下入力しにくいと思いますよね? これがね、意外と入力しやすいんですよ(笑)。斜め移動のテクニックも違和感なく使えるので、コントローラで操作する『パズドラ』をテレビの大画面でぜひ体験してもらいたいですね。
山本『パズドラSwitch』が多くの人に受け入れてもらえたら、『パズドラ』の新しいユーザーと遊びかたが一気に広がると期待しています。
ーー家族や友だちといっしょに遊びやすいのも魅力だと思います。
森下そうですね。最大4人での協力プレイが楽しめるので、パーティーゲーム感覚で『パズドラ』を楽しんでもらえそうですよね。それにTVモードなら、お父さんやお母さんが操作方法を子どもに教えやすいと思いますし、本作で初めて『パズドラ』を遊ぶ方は、タッチパネルでの操作に慣れていないぶん、むしろとっつきやすいかもしれません。
ーーガチャのような課金要素はあるのですか?
山本まず、ゲームをダウンロードするのに500円が必要です。この500円分だけでも十分に遊べるように作っていますが、重複なしの有料ガチャも3種類用意していて、ニンテンドーeショップを通して1回300円、5回連続だと1000円で回すこともできます。ちなみに、ガチャは今後の大型アップデートで、追加していく予定です。
ーーおふたりの狙い通り、『パズドラSwitch』でデビューしたファンが、スマホの『パズドラ』をプレイする機会も増えると思います。今後、『パズドラ』をどうしていきたいですか?
山本スマホの『パズドラ』は、アップデートを続ける中で、難しくしすぎてしまったと反省していて。『パズドラSwitch』から来ていただいた方だけではなくて、昔の『パズドラ』が好きだった方にも楽しんでいただけるようなコンテンツや施策を増やしていこうと考えています。
そのひとつとして、2021年12月に“ネプチューンドラゴン降臨”を開催しました。このダンジョンではアシストが無効化されるので、シンプルなルールの『パズドラ』が好きだった方も、プレイしやすかったのではないでしょうか。今後も、昔のような遊びかたもできるコンテンツを用意しますし、ゲーマー向けに歯応えのあるコンテンツも引き続き実装していきますので、10周年のタイミングでますます遊びやすくなった『パズドラ』を体験してもらえるとうれしいです。
『パズドラ』のさらなる飛躍を目指した新たな施策
ーー最後に、この先の15周年、20周年に向けて、『パズドラ』で実現したいことや、チャレンジしてみたいことを教えてください。
山本『パズドラSwitch』は世界38ヵ国で展開するので、本作の配信をきっかけに、『パズドラ』をゆくゆくはワールドワイドで遊んでもらえるような世界的なIPに成長させていきたいですね。もちろん、国内のサービスに手を抜くことはありませんが。世界中で愛されるIPになったあかつきには、テーマパークを作りたい!
森下いちから作るのはたいへんだから、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンさんに相談しようか。「スーパー・ニンテンドー・ワールド(任天堂のキャラクターと世界観をテーマにした新エリア。2021年3月18日にグランドオープン)の横に置いてくれませんか?」って(笑)。
ーー『マリオ』とコラボをしているし、違和感はあまりないかもしれませんね(笑)。森下さんはどんなことを実現させたいですか?
森下スマホでのサービスはこれからもずっと続けていくとして、短期的な目標では、家庭用ゲーム機の『パズドラ』をもっと短いスパンで出していきたいですね。長期的な目標だと、世界観やモンスターの情報を整理していきたいですが、すでに恐ろしい数になっているので。
山本『パズドラ』に登場するモンスターの数は、世界一多い可能性がありますね(苦笑)。少しずつでも情報を整理していって、有効活用したいです。そして、ワールドワイドでの展開を視野に、『パズドラ』のIPで新しいゲームをどんどんリリースしたいな。
ーーパズルではなく、新しいジャンルの『パズドラ』が誕生する可能性もあるのですか?
森下可能性はありますね。たとえば、うちはいまアクションがいちばん得意なので、アクションゲームのスピンオフが出るかもしれない。新作をどんどん生み出して、『パズドラ』やキャラクターのバリューを上げていきたいです。
ーー今後、世界中で愛されるIPに成長すれば、スマホや現行の家庭用ゲーム機だけではなく、さらに新しいハードやデバイスで、『パズドラ』の新作がリリースされる可能性も考えられますね。
森下それで言うと、スマホですら今後10年のあいだに、どのような進化を遂げるかわかりませんし、存在そのものがなくなっているかもしれません。それだけプラットフォームの変化は急激ですから。トレンドやプラットフォームに追いつけずに煮詰まってしまうのはいちばん避けたいことなので、つぎの展開をつねに考えながら、新しいトレンドやプラットフォームに合ったものを生み出していきたいですね。
ーー今後の『パズドラ』の展開に期待が高まります。でもまずは、10周年のアップデートに注目ですね。
森下もちろん10周年のイベントを楽しんでもらえるとうれしいですし、ファンの皆様のおかげなので、光栄なことではありますが、僕たちは10周年を特別視しているわけではありません。まだまだサービスは続くので、10周年もあくまでひとつの過程に過ぎないと言いますか。
山本そうですね。10周年に大きなアップデートもありますが、開発からすると、毎月実施しているアップデートのひとつであることには変わりありませんから。アップデートのことで頭がいっぱいで、余裕がないこともありますが、今後も気を引き締めて運営していきます。
ーー楽しみにしています。最後に、ユーザーへのメッセージをお願いします。
山本『パズドラ』をいつも遊んでいただき、ありがとうございます。おかげさまで、10周年を迎えることができました。今後もさらに楽しく遊んでいけるように、がんばって『パズドラ』を運営したり、新作を開発したりしていきますので、応援をよろしくお願いします。
森下10年続けられたのは、ひとえにユーザーの皆様のおかげです。これからもサービスを長く続けられるように、ますます努力をしていきますし、新しい展開にも積極的にチャレンジしていきますので、叱咤激励をいただけるとありがたいです。今後も温かい目で、応援していただければと思います。