インディーパブリッシャーのAnnapurna Interactiveが、アクションアドベンチャーゲーム『Solar Ash』を2021年12月3日午前2時より順次配信開始する。対応プラットフォームはプレイステーション5/プレイステーション4、およびPCで、PC版はEpic Gamesストアでの販売となる。

 今回、発売に先駆けて提供されたPCのレビュー版(テキストで日本語対応)をクリアーまで遊んだので、その内容をご紹介しよう。

『Hyper Light Drifter』の開発による新作

 本作は世界的に高い評価を受けた2Dアクションアドベンチャー『Hyper Light Drifter』を開発したHeart Machineによる第2作。『Hyper Light Drifter』では繊細で美麗なドット絵が話題を呼んだが、今作ではフル3Dのゲームとなっている。

 というわけで『Hyper Light Drifter』とはスタイルがまったく異なるし、続編でもないのだが、共通する部分がまったくないわけではない。それは“プレイヤーが運命を変えるために壊れた色鮮やかな世界を冒険する”というストーリーのテイストの部分だ。

母星の危機を救うため、ヴォイドランナーが超現実的空間を駆ける

 『Solar Ash』の舞台となるのは、とある惑星を飲み込みつつあるというブラックホール“ウルトラヴォイド”の中。その内部は重力などがねじくれていて、すでに飲み込まれたさまざまな世界の残骸が散らばって浮かんでいる超現実的な光景が印象的だ。

 プレイヤーは危機を回避すべく派遣された“ヴォイドランナー”の隊員レイとして各地をめぐり、ウルトラヴォイドを崩壊させて不活性化させる可能性を持つデバイス“スターシード”の起動を試みることになる。

Solar Ash
風景がめちゃカッコイイ。
Solar Ash
エリアによって元の世界が異なるため、ある場所では近代的な都市が広がっているかと思えば、別の場所では植物や菌糸を媒介とする独特な文明を見て取れたりもする。

特徴その1: 歪んだ世界を縦横無尽に駆け抜けるヴォイドランナーアクション

 本作の最大の核となっているのは移動アクションだ。プレイヤーたちの職業がヴォイド“ランナー”というだけあって、歪んだ異常空間もなんのその。スケートアクションで垂直な斜面や上下逆さまの場所すらも滑っていったり、ブーストダッシュやダブルジャンプやグラップリングフック(特定のオブジェクトに自分を引き寄せて大ジャンプする)、そしてレールスライドなどを駆使して進んでいける。

Solar Ash
3Dプラットフォームアクションの探索要素がかなり大きめ。アクロバティックなアクションを駆使して進んでいく。
Solar Ash
場所によっては天地がぐりんぐりんひっくり返るので、酔う時は酔います。記者はかなり強い方だけどたまにウッとなった。

 各エリアでの基本的な流れは、ちょっとしたアクションパズルを解きつつ各エリアにいる巨大ボス“レムナント”の神経終末(※)を破壊していき、レムナントが動き出したらボス戦に。撃破するとスターシードのエネルギーが一個増え、さらに新たなエリアに進出可能になる……といった感じ。(※プレイしたのがまだ仮訳が入っているらしきバージョンだったので、発売合わせで投入される製品版では訳語が異なる可能性もある。まぁデカいボスの末端があちこちに出現してるんだなと思ってください)

 なお近接攻撃を使った戦闘要素もあることはあるのだが、実はレムナント以外の敵はほぼスルー可能で、言ってしまえば各神経終末までの道中で遭遇する障害の一環でしかない。メインとなるのはあくまでもこの移動アクションを使った探索やアクションパズル要素となっている。

Solar Ash
ちなみにレムナントは神経終末を破壊し終わる前から最初からマップ上で異常な存在感を発揮していたりするので、「コイツ動き出したらどうなっちゃうんだ……」とワクワクする。
Solar Ash
大抵の敵は回避して進むことも可能だが、ロックオンレーザーを放ってくる敵などもいるので注意。

 ちなみに各神経終末の破壊は指定された部位を順番に攻撃していけば1個クリアーになるのだが、部位ごとに猶予時間が設けられているので、正解のルートを見つけ出したり、ギミックをうまく動かしてパズルを解かないと間に合わないような構成になっているのがミソ。パズル自体の難度はそこまで高くないが「最初にココを通ってこのマップギミックを使うんだろうなぁ」と思ったら実はそうじゃない……といった引っ掛けもあってなかなか楽しい。

Solar Ash
神経終末の場所自体はスキャンでわかるのだが、そこにたどり着くまでの道中ではアクションパズル的思考を交えつつ移動アクションを駆使してルート開拓しないといけない。到着してから破壊するフェーズも基本は同様。

特徴その2: 『ワンダと巨像』スタイルの巨大ボス戦

 見上げるほどデカいレムナントとのボス戦は、本作のもうひとつの特徴だ。

 じゃあどうやってそんなデカい敵と戦うのかというと……基本的にやること自体は神経終末を破壊するフェーズと同じ。ただしそれを『ワンダと巨像』のように超巨大なボスの体表の上をコースとして行うのだ。

Solar Ash
マジで歪むぐらいデカい
Solar Ash
ダッシュして破壊、ジャンプからグラップリングフックで次を破壊、また次の目標に走って……というのを巨大ボスの上でやっていく。ちなみにこれは腕の部分を走ってる所。

 レムナント戦は数回のフェーズに分かれていて、巨人の手などに出現するグラップリングフック可能ポイントからスタートし、腕の上などを走って、猶予時間のあいだに次々と指定されるポイントを破壊していく。それでゴールとなる地点で一閃を食らわすと次のフェーズに移行し、また飛び乗るところからという感じ。

 これがまぁワンパターンと言ってしまえばワンパターンなんだけども、タイムリミットに追われながらのプラットフォームアクションの緊張感と超巨大なレムナントのインパクトが融合していて、うまくフェーズクリアーできた時の手応えと、最終フェーズを乗り越えてレムナントが消滅していく時の達成感はなかなかのものだ。

Solar Ash
中央下に出ているのが猶予時間のゲージで、進行するに連れて接地していい場所の色が白→紫→赤に変わっていき、ゼロになると着地できる場所がなくなって地上からやり直しになる。ちなみに黒い所に落ちてもセーフだが、スピードが低下するのでできるだけ避けるべき。

特徴その3: 壊れた世界の奇妙な住人たちとサイドストーリー

 本作と『Hyper Light Drifter』では、ストーリーテリングのやり方も大分ことなる部分。『Hyper Light Drifter』ではテキストやセリフをあえて使わず、風景描写やカットシーンなどのイメージだけでストーリーを暗示していくスタイルを採用していたが、(内容はやっぱり謎めいてはいるものの)今回はかなり“普通”にストーリーが展開していく。

Solar Ash
サポートAIのCYD。各地の拠点でレイを助けてくれる。
Solar Ash
レムナントを撃破するたびに別世界に連れ去って苦言を呈してくる謎の存在“Echo”。物語の真相に繋がる大きな謎のひとつとなっている。なお彼女とのシーンのラストでは毎回グチャッと握り潰されて強制的にシールド最大量が1減らされる(道中で手に入るポイントで回復可能)。

 そして各エリアにはサイドミッションの提供者として奇妙なNPCたちが登場し、各地に散らばった手掛かりを通じてそれぞれの世界の人々の物語が明かされていく。

 これは何か魅力的なクリアー報酬があったりするわけではないし、目印などは特になく、セリフを頼りに推測して発見できるかもしれないぐらいで少々厄怪なのだが(ただし大抵は同エリア内で完結する)、世界観を味わい尽くすためには“それっぽい所”があったら先に進んでみるといいだろう。

Solar Ash
記憶が混濁しているらしいのだが、出会うたびに何か過去の闇を感じさせる行動をしているLyris。でも黒猫っぽいのがちょっとかわいい。

もうひとつのサブ要素では強化も可能

 NPCストーリーとは異なるもうひとつのサブ要素として用意されているのが、他のヴォイドランナー隊員たちが残したオーディオログだ。彼らの残したログを集めていくことで、いったい何があったのか、どのような運命を迎えたのかがわかるようになっている。

 そしてこちらは一種の強化要素にもなっており、コンプリートすると隊員ごとに攻撃力増加やクールダウンタイム低減などのさまざまな効果がついたスーツをもらえる。またオーディオログが残されている周辺には目印が存在するので、比較的探しやすい。探索中に目印を発見したら、その方角に行けそうな所がないか探してみよう。

Solar Ash
他の隊員のオーディオログが近くにある印。これは上にあがる方法を探せばいいのかな?
Solar Ash
オーディオログをコンプリートした隊員ごとに、さまざまな効果がついたスーツをもらえる。

クリアーまでは6~8時間程度

 クリアーまでの時間はどれぐらいサブ要素のための探索をやるかによって変わってくるかと思うが、目安としてはだいたい6~8時間といったところ。

 ビジュアルや雰囲気は最高だし、ゲームプレイもユニークな方向に絞って作られていて面白いのだが、いわゆるメトロイドヴァニア的な「新能力をゲットして新たなことが可能に」といった進化はないので、基本的に同じことの繰り返しという部分があるのも事実(ただしエリアが進むに連れて新たなマップギミックが登場したりはする)。定価4300円(PC版の場合)に見合った内容かどうかは、世界観がどれぐらい刺さるか、探索をどれぐらい楽しめるか次第じゃないだろうか。