DMM GAMESより、2021年10月28日に発売予定のPS5、Xbox Series X/S用ソフト『アイアンハーベスト コンプリートエディション』のレビューをお届けする。

※パッケージ版はPS5版のみの販売。

『アイアンハーベスト コンプリートエディション』レビュー。機械兵器と共存するディーゼルパンクな1920年代の欧州に注目
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 本作は、『SCYTHE(サイズ)』という世界中で人気を博したボードゲームの世界観を元に制作されており、そのディーゼルパンクな世界観やさまざまな兵器のダイナミックな戦闘シーンが余すところなく表現されている。

 また“コンプリートエディション”の名の通り、本作にはPC版で発売済みのDLC“ロスヴィエト革命”、“オペレーション・イーグル”が最初から遊べる状態になっている。

 本記事では、本作の世界観やゲームシステム、プレイして感じた魅力をお届けしてく。

1920年代のヨーロッパに描かれる機械兵器というロマン

 まず、本作の魅力のひとつである世界観について説明したい。

 舞台は世界大戦直後の欧州だが、現実とは異なり“メック”という機械兵器や“強化外骨格”などの技術が存在する架空のものとなっている。いまだに家屋にはレンガが用いられ、道路も補填されていないような世界だ。

 しかし、武骨な機械が存在しているのだ。平時には林業などの重労働に用いられ、人類の発展に貢献している“メック”だが、戦時においては重装甲で前線を維持し、高い機動力で偵察や包囲もこなす。巨大な銃を持たせれば、敵を屠る強大な兵器にもなる。

 プレイ中に感じたのは、とにかく“メック”の圧倒的存在感だ。いまだ牧歌的な雰囲気が感じられるフィールドに突如現れるこの機械兵器は、ひと目見た瞬間に“作品の主役”なのだと理解させてくれる。

『アイアンハーベスト コンプリートエディション』レビュー。機械兵器と共存するディーゼルパンクな1920年代の欧州に注目
自然の中で存在感を放つ“メック”。

 また、現実世界の兵器と同じように“メック”は各国によって形状や武装、ユニットステータスが異なる。見た目を楽しむだけでなく、その背景を考察することができるのも“メック”の魅力ではないだろうか。

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“メック”の形状や大きさは必ずしも同一とは限らない。

やり込めるキャンペーンから、対人まで充実のゲームモード

 本作には、キャンペーン、マルチプレイ、ミッションの3つのゲームモードがある。

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 キャンペーンはひとりプレイ用で、ストーリーに沿ってゲームの基本を学ぶことができる。マルチプレイはランクシステムが実装されており、世界中のプレイヤーと戦うことが可能だ。ミッションはAIとさまざまなルールで対戦することができるので、マルチプレイに臨む前に腕を磨くには、もってこいのモードだ。

 とくに今回のレビューではキャンペーンを遊んだので、そちらについて説明しよう。キャンペーンでは、“メック”などが存在する大戦を経て疲弊しつつある欧州で、さまざまな地域の主人公たちの軌跡を全5章から追うことになる。

 各キャンペーンには4~7つほどのミッションが存在し、クリアするごとにつぎのミッションが解放される。各ミッションには“ミッションチャレンジ”が存在し、これをクリアすることによって、クリア時の評価が上昇する。いわゆるやりこみ要素だ。

 もちろん難易度も存在する。プレイ中はいつでも難易度を変更することが可能なため、RTS初心者から上級者まで楽しめること請け合いだ。

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 筆者は3段階の内、真ん中の難易度でプレイしたのだが、たいへんな手応えを感じた。難しすぎず、かといって戦略を練らずに臨めば敗北は必須であり、RTSとしてのおもしろさを存分に楽しむことができた。

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機関銃に正面から挑んだ図。“制圧”状態に陥り、ユニットが強制的に伏せをしてしまう。

まずはキャンペーンでゲームの基礎を学ぼう

 もしこのゲームをプレイするのならば、ぜひキャンペーンを最初にプレイしてもらいたい。最初のミッションは、ゲームの雰囲気を掴みながら、必要な操作をプレイヤーに伝授してくれる最高の入門書なのだ。

 本作にはさまざまなユニットが登場するが、それらをうまく使いこなし、勝利を手にするには多くの要素を理解しなければならない。最初のミッションが優れているところは、一度にすべての要素を覚えさせようとするのでなく、いくつかのミッションにわけてプレイヤーに覚えてもらおうと作られていることだ。

 たとえば最初のミッションでは、ユニットの移動方法に始まり、攻撃方法や遮蔽物の存在、敵の射程や回り込むことの大切さなどを教えてくれる。つぎのミッションでは部隊の動かしかたや回復方法、家屋の活用方法などがメインのタスクに絡んでくる。つまりミッションのクリアーを目指していけば、おのずと必要な知識も蓄積される作りになっているのだ。

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正面に相手が待ち構えている時は迂回しよう。
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相手の側面を取れば戦闘を優位に進めることができる!

 もちろんチュートリアルを兼ねている部分だけが、おすすめする理由ではない。もうひとつの理由として、ミッション毎に挿入されるストーリーやムービーが挙げられる。これが本作の世界観を説明してくれるため、プレイヤーに作品への愛着と、さらなる没入感を与えてくれる。

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資源の管理とユニットごとの特性を理解するべし

 最初のミッションが終わり、ゲームについて理解が進んできたところで、つぎは資源の管理とユニットについて覚える必要があるだろう。以下で、各要素について簡単に触れていきたい。

RTSの肝! 資源の管理

 さて、ユニットの説明をする前に資源の説明をしていこう。おもに、ユニットの生産と耐久力回復に資源が必要となる。要はこうだ。資源は非常に重要で、必ず確保するべきもの! 各MAPに散らばった資源や資源生産施設を確保することが、プレイの基礎であり、当面の目標になるだろう。

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戦場で物資を見つけたら歩兵部隊で回収しよう!

 資源と施設には歩兵部隊でしかアクセスできないため、必ず制圧部隊に同行させよう。とくに重要なのは施設であり、これを制圧することによって一定時間ごとに自軍に対応する資源が自動で追加される。

 このゲームはたとえるなら陣取り合戦であり、後々のために資源を確保するのが最優先になる。

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鉄鉱山を制圧すれば、時間経過での鉄生産量が増加する。

RTSの花! ユニットの紹介

 RTSといえば、ユニットがいなければ話が始まらない。本作では、基本的にゲーム開始直後は歩兵部隊を運用することになる。歩兵部隊の特徴として、ユニット生産コストが安い事が挙げられる。安価に数を揃えることができるだろう。

 また、相手ユニットの歩兵部隊を倒すと、その場にそのユニットが使用していた装備をドロップする。ドロップした装備はしばらくマップ上に残り、歩兵がその装備にアクセスをすると装備を変更することができる。これによって、コストの低いライフルマン(基本の兵科)であっても、グレネーダーなどに兵科を変更し、運用することが可能となる。

 このあたりをうまく見極め、強力な部隊は少しだけ用意し、そちらで敵ユニットを制圧後、ドロップした装備で低コストのユニットを強化……などと戦局を進めていけば、低コストのユニットを手軽に強力な部隊に成長させることもできる。

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画面中央や、その右にあるライフルとグレネードのシルエットにアクセスすると、兵科が変更される。
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どう見ても農夫といった出で立ちだが、大砲も正規兵並みに使いこなすことができる。

 また、歩兵の種類の中に“エンジニア”と呼ばれる兵科が存在するが、このユニットは特殊であり、自軍の本陣である“司令部”の建設や、味方ユニットを生産する“兵舎”や“工房”、中に歩兵が入り込んで広い範囲を防衛できる“前線基地”を建設することができる。

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 その他にも、範囲内に入った相手の機械兵器を自動追尾して爆発する地雷の設置や、資源を消費して“メック”や建造物の修理も行える。最低でも1部隊ずつは遠征先と自拠点に配備しておきたい兵科だ。

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敵が通りそうな場所に、あらかじめ地雷を設置しておこう。
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1分1秒を争う前線での修理は、大事なテクニックのひとつだ。

 なお、ユニットによっては“スキル”を所持している場合がある。スキルの使用によっては、状況の一変も起こりうるだろう。これまた種類があり、範囲内に機銃掃射を行ったり、グレネードを投擲したりできる。

 たとえば、後述する“メック”に歩兵のみで遭遇してしまった時……ただただ蹂躙されるのを待つ必要はない。強大な機械兵器にも弱点は存在する。もし、“メック”の背後を取り、グレネードを投げることができれば、勝機を見出せるかもしれない。

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グレネードならメック相手にも有効な攻撃になり得る。

戦場に立つ強大な機械兵器“メック”

 本作を語るうえで外せないのが、間違いなく“メック”だろう。ただ、見た目からもわかるとおり、運用には歩兵に比べて多数の資源が必要となる。

 また、そもそも生産のために必要な“工房”を建築するためにも資源が必要なため、自然と“メック”は中盤以降に運用することになるはずだ。当然、“工房”を建築するために“エンジニア”が必要な点も忘れてはいけない。

 “メック”は、基本的に正面に装甲を持っているため戦線を維持しやすく、火力も歩兵とは比べ物にならないほど高い。ただし背面が弱点となっており、そこを狙われると歩兵相手でもダメージが通ってしまう。お互いの弱点をカバーしあえるように運用すると強みを活かせるだろう。

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最前線は“メック”にお任せ!

 その高火力と圧倒的な存在感に目を奪われがちだが、彼らにもできないことはある。代表的なデメリットは、歩兵ならアクセスできるオブジェクトに、アクセスできない点だろう。具体的に資源の回収や施設の制圧、遮蔽物の活用などは行うことができないのだ。

 その代わり、遮蔽物や家屋といった歩兵が身を隠せるオブジェクトに触れると、破壊することができる。このため相手の堅い守りであっても穴を開ける事が可能であり、それゆえ戦場では頼りになる存在と言えるだろう。

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家屋を破壊する様子。

 “メック”と歩兵、両ユニットの特徴を理解し、うまく運用していくことが本作を攻略していくカギになっていくはずだ。

戦闘を有利に進めるためには

 操作方法および、基本的なゲームのイロハを身に着けたら、そこからが本番だ。ミッションごとに用意されたユニットを自在に動かして、目標を達成しよう。

 そのために実際にプレイして、重要だと感じた要素についてお伝えしておく。

 まずは視界だ。敵味方のユニットは、射程内に敵対するユニットを発見すると交戦を開始するため、視界の確保は非常に重要といえる。プレイヤーは自分のユニットが有利になるように指示を出したいが、そもそも敵がどこにいるのかがわからないなら、手の打ちようがないからだ。

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ユニットの視界外は、若干影で黒くなっている(画面右上)。
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ユニットを動かすことによって、鹿を発見することができた!(画面右上)

 つぎに視界が確保できたのならば、敵にどうアプローチをかけるか考えてみよう。有利な状況で戦うためにつり出すのか、速攻をしかけ殲滅するのか。状況次第では一度立て直すために、撤退することもあるだろう。決めるのはプレイヤーであって、ユニットはそれに従ってくれる。

 自分の選択が正しかったのかは、戦闘後に結果としてわかる。もし行き詰まってしまうことがあったなら、アプローチ方法を大胆に変更してみると、突破口が見つかるかもしれない。

 戦闘は自動で行われるが、その最中にもユニットは動かせる。もし敵よりも数でまさっているのならば、部隊を敵の側面や背後に回り込ませるなどの指示が有効になる。

 仮に相手が自軍より多数だったとしても、すぐに諦める必要はない。周囲に遮蔽物や無傷の家屋がないか探してみよう。とくに家屋に立てこもった歩兵部隊は、“メック”並みの耐久力となる。これによって時間を稼ぎ、増援が到着するまでの時間を稼ごう。

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画面左の家屋には歩兵部隊が立てこもっており、理想的な状況!

 MAPは広く、奇襲を防ぐことが肝要だ。時には少数部隊を犠牲にしてでも、戦略的な選択を取ることが必要になる。犠牲なくして勝利を掴むことはできないのだ……!

現実とは少し違う世界で、メカといっしょに戦おう!

 機械兵器が存在する世界での戦闘を楽しむ。やはり、このゲームの醍醐味は、ここにあるだろう。

 リアルな戦場が美麗なグラフィックで描かれているため、直感的に戦況も理解できる。キャンペーンモードでは世界観の説明を受けながら、ゲームに必要な知識を身に着けることができるため、自然にゲームへの理解度が高まるだろう。

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もちろん、キャンペーンごとに描かれていくストーリーからも目が離せない。

 少し余談にはなるが、プレイ中に思わずニヤリとしてしまった要素として、“ヴォイテク”という名のクマを挙げたい。このクマはゲームに登場し、ポラニア軍にも所属することになるのだが……。

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ヴォイテク(幼少期)。

 ご存じの方もいらっしゃると思うが、かの有名なポーランドの“ヴォイテク伍長“が元になったであろう存在なのだ。現実では、第二次世界大戦時にポーランド軍にて、弾薬輸送の任務に就いていたという実在したクマである。

 本作での“ヴォイテク”は、その巨体を活かした近接戦闘を得意とし、待機中には味方を回復してくれる頼もしい存在だ。このように史実を元にしたユニークな要素もあるため、歴史好きの方も楽しんでいただける世界観となっている。

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近接攻撃をしかける“ヴォイテク”。

 最後になるが、本作はRTS経験者だけでなく、RTS未経験者やストーリー・世界設定に惹かれた人も楽しめるようになっている。初めてプレイする際は、やることが多く難しいと感じられるかもしれないが、失敗したとしても、その経験は次の糧になるはずだ。

 そして、その時の経験を活かし、自分の思い通りに勝利することができた暁には、ほかでは得られない達成感を得ることになるはずだ。気になった方にはぜひ、プレイしてもらいたい。

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