2021年7月7日、人気対戦格闘ゲーム『ストリートファイターV チャンピオンシップ』の国内最高峰リーグ“TOPANGA CHAMPIONSHIP SEASON 3(トパンガチャンピオンシップ シーズン3)”が、ついに決着。Hit Boxからスポンサーを受け、Good 8 Squad所属のカワノ選手が決勝リーグ5勝1敗で優勝を飾った。本稿では、大会リポートに加え、同リーグでカワノ選手と対決したFAV gamingのsako、りゅうせいの両名に、カワノ選手の強さの秘密を聞いた。

トパンガチャンピオンシップ
カワノ選手は『ストリートファイターV』から格闘ゲームをはじめ、見事トップリーグで優勝を飾るまでに成長した。

カワノ選手が優勝

 トパンガチャンピオンシップ シーズン3は、5月~7月にかけて行われた国内最高峰のリーグ戦。ウメハラ、ときど、sakoなど、国内トップクラスの招待選手と、一般参加可能なオープン予選を勝ち上がった選手たちで実施された。

 リーグは、最終戦でカワノ選手とひぐち選手の勝ったほうが優勝というドラマチックな展開に。カワノ選手が勝ち星を先行しながらも、ひぐち選手の猛烈な追い上げに合う。この猛追をなんとか振り切り、カワノ選手が優勝。歴代の優勝者でもっとも若い22歳で頂点に立った。

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トパンガチャンピオンシップ
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 優勝決定後のインタビューにてカワノ選手は、「え、ムズイっすねコレ(笑)」と優勝インタビューに慣れていない様子を見せると、解説のマゴ氏から「いいことを言おうとしなくていいよ」とアドバイスを受ける初々しい姿を見せていた。

 カワノ選手は第1回大会で5位という好成績を残したが、残念ながら仕事やスポンサーの獲得にはつながらなかったという。そこで自分で環境を変えるためにYouTube活動を始めたが、そちらに時間を取られてしまったそうだ。しかし、その活動は楽しかったし、多忙な合間にもしっかりと練習を行い、「いまこうやって飯も食えるようになって、優勝できたのはうれしい」と素直な気持ちを語った。

 また、『ストV』から格闘ゲームを始めたカワノ選手は「いまからプロを目指そうとしてる人たちにも、0からでもこういう風にできるんだよっていう、いいモデルケースになることができたんじゃないかなと思っています」とコメント。

 さらに、ガチくん選手やウメハラ選手など、関係者への感謝を述べながら大会運営へ「日本一じゃ全然満足できないんで、トパンガワールドチャンピオンシップをお願いします」と世界一を目指す強い姿勢を見せていた。

FAV gamingのsakoとりゅうせいはカワノ選手の優勝をどう見たのか?

 KADOKAWA Game Linkegeが運営するプロゲーミングチーム“FAV gaming”。同チームの格闘ゲーム部門に所属するsakoとりゅうせい。両選手もトパンガチャンピオンシップへ参戦し、sakoは本選Bグループ3位。りゅうせいは本選Cグループ7位という結果を残し、優勝したカワノ選手とも試合を行っている。そんなふたりがカワノ選手の優勝をどう見ているのか?を聞いてみた。

――カワノ選手の優勝については、どう見ていますか?

sako カワノくんはトパンガチャンピオンシップの本選決勝に3回連続で進出しています。これまでは優勝候補に入りながらも優勝に手が届きませんでした。それがようやく結果がついてきたという印象ですね。すごくマジメに取り組んできていたので、いつ結果が出てもおかしくありませんでした。今回、壮絶な3つ巴戦、最後のひぐち選手との決定戦と、修羅場をくぐり抜けての優勝はすごい。決定戦のカワノ選手とひぐち選手はふたりとも若いですし、ようやくベテラン勢を負かす若い子たちが育ってきたなと。

りゅうせい 素直におめでとうと言いたいですね。0から格闘ゲームを始めて、負けたときに辛そうだったりしたけど折れずに続けて、こういった結果を残せるまでに成長したのは本当にすごいですよ。

 『ストV』は“おじしか勝たない”と言われることが悔しくて、ベテラン勢を打ち負かすつもりでやり込んでいましたが、自分はそれがまだできていないけど、それをやってのけてすごいなと。

――おふたりは、それぞれ本選リーグとプレーオフの3つ巴でカワノ選手と試合をしています。手合わせした感想をうかがえますか?

sako 自分はBブロックに水派くんがいたので、コーリン戦の準備はしていました。対してカワノくんは同じブロックにメナト使いがいませんし、3つ巴戦の準備まではできていなかったはずです。その点で自分にアドバンテージがあったから勝てたのかと思います。カワノくんは技や時間の使いかたがうまく、しっかり対策をされていたら危なかったんじゃないでしょうか。

りゅうせい カワノは本当にシビアなプレイを凄まじい精度でやってくるので、ほんの少しも甘えた行動が許されない息苦しい試合になります。だから隙を見せないように徹底して立ち回るのですが、リーグでは欲を出してリターンを取ろうと動いたところをやられてしまいました。「すいませんでしたカワノさん」という感じです(笑)。カワノとの試合は精神が削れますが、相手のうまさが伝わってくるので本当におもしろいです。

――カワノ選手のすごいところは、どういうところなのでしょうか?

sako 吸収力があるし、練習が好きで、ほかの人がやらないような本当に細かいところまでを詰めているところですね。そこまでやらないとベテラン勢に勝てないことに気づいたんでしょうね。それでいて“若さを活かした攻略”を取り入れているから強い。

 これまではメンタルが弱いイメージがありました。おそらく場数を踏めていないから緊張していたんだと思います。ですが、今回は緊張はしていたけど、状況判断が素晴らしく、試合内容がめちゃくちゃよかったです。これで自信がついて経験値が上がったとしたら、今後どこまで強くなるんだろうと、そういう期待感もありますよね。

りゅうせい カワノは素直なところと折れないところがすごいんだろうなと。自分が困ったときに人の意見をしっかり聞いて、マジメに考えたうえで取り入れられるんですよ。負けてもそれを受け入れて、バネにしてがんばれる。その折れない精神力は見習いたいところです。

――カワノ選手の優勝はどういった影響がありそうですか?

sako カワノくんが優勝したことで、いいプレイすればベテランにも勝てると思えたんじゃないかな。いい刺激になったと思うし、ほかの若手のモチベーションも上がるはず。それにベテランも若いやつに負けまいと気合いが入るはずだし、競技シーンがより一層盛り上がると思います。

りゅうせい 0からゲーム始めて、YouTubeとかいろいろな活動をして、そのうえで結果も残した。カワノみたいになりたいというプレイヤーが増えるんじゃないですかね。若手だけじゃなくて、いろんな層の人がいまから始めてみようと。それで強い人が増えるんだとしたら、そういった環境で対戦できるのはわくわくしますよね。

――それでは最後に、sakoさんとりゅうせいさんのリーグを終えての感想とこれからの意気込みを教えてください。

sako 地獄と言われたBブロックですが、本当は1位か2位で抜けたかったですね。結果は3位でプレーオフの3つ巴戦。そこでぷげらに0-3で負けてしまったし、やり込み不足やったなと。世界規模の大会“INTEL World Open 2021”(インテルワールドオープン2021)でまた当たるので、しっかりやり込んでリベンジしたいですね。

りゅうせい 結果としては最下位の1個手前という成績でしたが、じつは自信はあったんです。ただ、序盤に連敗したことで、「この試合も勝てないんじゃないか」と消極的になってしまい、その後の試合に響いてしまいました。強いメンタルが必要だなと実感した大会でしたね。

 ですが、同じキャラクターを使うときどさんがあそこまで勝っていたので、モチベーションは上がりました。自分に足りていない部分がわかりましたし、ときどさんというお手本になる人もいる。今回の経験を活かして、ちゃんと練習して今後の大会に挑みたいです。

 あと、ストリートファイターリーグでは、やっとsakoさんとチームメイトになれたので、自分が穴にならないようにしっかりサブキャラクターも仕上げていきたいです。sakoさんといっしょに優勝を目指すので、応援よろしくお願いします。