ファミ通.comの編集者&ライターがゴールデンウィークのおすすめゲームを語る連載企画。今回紹介する作品は、『Caligula Overdose/カリギュラ オーバードーズ』です。
【こういう人におすすめ】
- 学園ジュブナイル作品が好き
- RPGは戦略やコンボをしっかり組み立てるタイプ
- 「見るな」「やるな」と言われると、むしろ気になってしまう
トニオ國崎のおすすめゲーム
『Caligula Overdose/カリギュラ オーバードーズ』
- プラットフォーム:プレイステーション4、Nintendo Switch
- 発売日:プレイステーション4版は2018年5月17日発売、Nintendo Switch版はは2019年3月14日発売
- 発売元:フリュー
- 開発元:ヒストリア
- 価格:プレイステーション4版は8778円[税込]、Nintendo Switch版は7678円[税込]
- CERO:15歳以上対象
すべてが過剰強化(オーバードーズ)され遊びやすくなった『カリギュラ』
今回紹介する『Caligula Overdose/カリギュラ オーバードーズ』は、2016年6月に発売されたプレイステーション Vita用ソフト『Caligula -カリギュラ-』をもとに新たなキャラクター、ストーリーなど追加要素が加えられた学園ジュブナイルRPGです。
本作は見てはいけないものほど見たくなる、してはいけないものほどしたくなる“カリギュラ効果”がタイトルの由来になっており、現代的な病理やトラウマに焦点を当てたストーリーや、おぐち氏による美麗なイラスト、動画サイトなどで注目を集めている40mP、cosMo@暴走P、みきとPをはじめとする数々の有名サウンドコンポーザーたちによるバトルBGMが魅力です。2021年6月24日にはプレイステーション4とNintendo Switchにて、本作の続編である『Caligula2』の発売が予定されています。
物語の舞台となるのは、自我の芽生えたバーチャアイドル・μ(ミュウ)が創りだした理想の楽園世界“メビウス”。他人へのコンプレックスや不幸な出来事などで現実で苦悩し、μの歌に共感した人だけが誘われる仮想世界であり、住民それぞれが理想の環境、理想の姿で終わらない学園生活を過ごしています。
ある日メビウスが偽りの世界だと気づいた主人公は、同じようにこの世界の秘密を知る佐竹笙悟と出会い、現実に帰りたい者たちが集まった組織“帰宅部”に入部しメビウスからの脱出を目指します。
理想の世界を壊そうとする主人公たちはメビウスにとって反逆者となる存在。のちに彼らは“カタルシスエフェクト”と呼ばれる力を使い、デジヘッドと呼ばれる異形の狂信者や、μに楽曲を提供しメビウスを維持する作曲者“オスティナートの楽士”たちと戦うことになります。理想の世界を壊してでも、彼らには帰らなければいけない理由があるのです。
相手の行動を予測し自由自在にコンボをつなぐコマンド式バトル
コマンド選択式で展開する本作のバトルでは、敵味方の数秒先までの行動が可視化された“空想視(イマジナリィチェイン)”を駆使して戦うのがポイント。
たとえば、味方が行った打ち上げ攻撃に対して空中攻撃でコンボをつないだり、敵の攻撃が自分より早い場合はガードでその場を凌ぐ……など、状況に合わせて戦うことができます。キャラクターによってそれぞれ特化した分野が異なるため、コンボの組み合わせや自分の戦いかたに合わせてパーティー編成を考えるのが楽しいですね。
本作はサクサクプレイでストーリーを楽しみたい人や、もっとスリルのあるバトルを楽しみたい人に向けて難易度変更も搭載されています。自分のプレイスタイルに合わせて遊んでみましょう。システムに慣れるまでは、CPUに行動を任せるオートプレイもオススメです。
心の闇に踏み込むキャラクターエピソード
物語を進めていくことにより、仲間たちとの交流イベント“キャラクターエピソード”が解放されるのですが、ここが本作の大きな見どころ。帰宅部メンバーたちは「現実へ帰りたい」と言っていますが彼らも元メビウスの住人なので、現実世界で大きな悩みなどがあったはずです。ストーリーで彼らの内面を断片的に知ることはありますが、見ず知らずの他人に自身の秘密を教えることはありません。
たとえば、帰宅メンバーのひとりである篠原美笛(しのはらみふえ)は、明るくて人懐っこい絵に描いたようなムードメーカーですが……“太っている人”に対して嫌悪感を露わにし、まるで人が変わったかのように罵声を浴びせ豹変してしまいます。
いったい彼女に何があったのか……その秘密はキャラクターエピソードで絆を深めていくと徐々に明らかになっていきます。プレイヤーによってはその衝撃的な事実にショックを受けたり、共感できないこともあるかもしれません。所詮は赤の他人なのでそこまで踏み込む必要がないと思えばそのまま触れずにクリアーすることも可能です。
キャラクターの会話に注目すると、現実の正体に繋がるヒントがうっかり言動に出ていることも……。秘密をすべて知った後に「つまりあのシーンはそういうことだったのか……」と丁寧なキャラクター描写に驚かされます。
筆者はこういう世界観の作品では、現実の正体が気になってしまうタイプ……。どうしても知りたくてキャラクターエピソードを最後まで進めました。ゲームにはかなり感情移入して入れ込むタイプなので、キャラクターの衝撃的な真実になかなか眠れなくなることも。現実では人の秘密に踏み込むなんて簡単にできないことですが、“カリギュラ効果”の通り本来知るべきことではない事情でも、その気持ちを抑圧されると気になってしまいました。
また、本作ではオスティナートの楽士となり帰宅部と楽士両サイドからこの世界を知る“楽士ルート”が追加され、初期作ではあまり語られなかった敵の内面まで知ることができるようになりました。現実に帰りたい帰宅部と、理想の世界でないと生きていけない楽士、最終的にどちら側に付くのかはプレイヤーの選択次第です。
心の闇に踏み込むというタブーに注目した『Caligula Overdose/カリギュラ オーバードーズ』。この世界は欠点がまるでないヒーローのような人間は存在せず、誰もが悩みを抱え、生きづらい世の中に苦しんでいます。地獄のような現実が待っているとしても、それでも理想の世界を壊して帰ろうとする帰宅部たちの行く末をぜひ見届けてほしいです。本作をクリアーしたあとは、シリーズの魅力がさらに深まる小説『カリギュラ EPISODE水口茉莉絵~彼女の見た世界~』やアニメもぜひオススメです!
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