『閃光のハサウェイ』の前に『逆シャア』を観よう!

 映画『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』が2021年5月21日より、全国の劇場で公開されることを記念し、『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』(以下、『逆シャア』)がテレビ地上波に登場。

放送日時

日本テレビ「映画天国」:2021年5月5日25時59分(5月6日1時59分)から
名古屋テレビ「メ~テレシネマ」:2021年5月7日25時34分(5月8日1時34分)から

 熱心なガンダムファン以外は、「なぜ、いま『逆シャア』を放送するの?」と思うことだろう。その理由は非常に明快。同作が間もなく公開される映画『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』(以下、『閃光のハサウェイ』)と地続きになっている作品だからだ。

 『逆シャア』は、もともと劇場用の新作として制作されているがゆえに、単体でも十分に楽しめる作品ではある。しかし、同作を120%楽しむには、それ相応のバックボーンを知っておくことが必要だ。というわけで本稿では、同作を楽しむため必要な知識を、担当ライターが超意訳しながら解説。さらに、そして『閃光のハサウェイ』を楽しむために必要な『逆シャア』の見どころをしていきたいと思う。

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※以下、『ガンダム』シリーズにおけるシャア・アズナブルについてのネタバレを含みます。

『逆シャア』にいたるまでのシャアの動きを振り返る

 この『逆シャア』という作品は、『機動戦士ガンダム』から連綿と続いてきた、とシャア・アズナブルとアムロ・レイの物語にケリがつくドラマだ。そして、本作のタイトルに“逆襲の”と付けられた意味を理解するには、『機動戦士ガンダム』ではアムロと戦い、『機動戦士Zガンダム』(以下、『Z』)ではアムロと轡を並べて戦ったこともあるシャアの歴史を振り返る必要がある。

『機動戦士ガンダム』で描かれる1年戦争時点では、シャアは復讐心に囚われている。なぜなら、実父であるジオン・ズム・ダイクンが提唱した「すべての人類が宇宙で生活することで新人類の“ニュータイプ”に進化し、地球を浄化して守るべき」という思想をザビ家が利用し、さらにそのザビ家にジオン・ズム・ダイクンが暗殺されたからだ(真偽は不明だが、シャアはそう思っている)。

 シャアは死後ジオン公国を作り上げたザビ家への復讐を果たすべく、身分を隠してジオン軍に入隊する。そして、ガルマ・ザビを見殺しにし、キシリア・ザビは自身が手を下して、復讐劇を果たした。

 また、父の思想をシャア自身の手で現実にすることにも1年戦争のころから執着しており、それゆえにララァやアムロなどのニュータイプと呼ばれる存在にこだわっていたわけである。そして、ザビ家への復讐が成った戦後、シャアは父の思想を叶えるという方向に舵を切る。

 地球をクリーンにするには、地球に住む腐敗した政府高官や地球連邦軍の打倒は必須になる。そこでシャアは、身分をクワトロ・バジーナと偽って(かなり身バレしていたが)反地球連邦軍組織であるエゥーゴに参加。地球至上主義を掲げるティターンズや、ハマーン・カーン率いるジオン公国の残党が集まったアクシズと戦うことに(グリプス戦役)。この戦いでは、シャアは仇敵であるアムロと共闘してみせたりもした。

 グリプス戦役で、エゥーゴの指導者からエゥーゴを託されることになったシャア。彼はジオンの意思を継ぐ者として演説を行い、世論を味方につけることに成功した。そのおかげで戦局はエゥーゴに傾くものの、最後の戦いでシャアは消息不明になる。ここまでが、『Z』で描かれた物語だ。

 グリプス戦役終結のおよそ5年後、消息不明だったシャアがまたも世界に衝撃を与える。新生ネオ・ジオンの総帥としてジオンの残党をまとめて蜂起し、変わらず腐敗していた地球の政府に対して戦いを挑んだのだ。そして、「一部の上級国民だけが地球で特権を得るくらいなら、地球なんて要らない!」とばかりに、地球に小惑星の5thルナを落とす。このあたりからが『逆シャア』で描かれる物語となるわけだ。

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 ここまで読んでいただければわかるように、シャアはジオン、そしてエゥーゴと所属する勢力を変えたものの、その思想は徹頭徹尾変わっていない。ただひたすらに地球(連邦政府)の浄化に挑戦し続けてきたわけだ。そして『逆シャア』は、シャアの理想を実現させるために蜂起した最後の戦いを描いた作品だからこそ、“逆襲のシャア”と名付けられているのだと筆者は思っている。

 そして、そんなシャアの暴走を止める部隊として差し向けられたのが、アムロが所属し、かつてホワイトベースの艦長だったブライト・ノアが指揮を執る地球連邦軍のロンド・ベル隊だったというわけ。ここまでの情報を把握していると、かなり『逆シャア』をスムーズに観られるのではないかと思う。

『閃光のハサウェイ』を踏まえた『逆シャア』の見どころ

 ブライト・ノアと、ホワイトベースの操舵手を務めたミライ・ヤシマは後に結婚し、子どもをもうける。その長男が、ハサウェイ・ノアだ。お察しの通り、彼は『閃光のハサウェイ』の主人公であり、『逆シャア』におけるキーパーソンのひとりでもある。

 『逆シャア』放送前にここで彼についてあまり詳しく書いてしまうのも本末転倒なので、ここでは『閃光のハサウェイ』に繋がる重要なポイントだけ紹介しよう。ただし、筆者が知っているのはあくまでも小説版の『閃光のハサウェイ』であり、公開予定の映画についてはまだ観ていないということは踏まえておいていただきたい(小説版『閃光のハサウェイ』は、小説版『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア―ベルトーチカ・チルドレン』の続編なので、設定などが微妙に異なっている)。

 『逆シャア』当時13歳だったハサウェイは、同作にてクエス・パラヤという少女と知り合い、彼女に惹かれていく。その後、アムロ、クエス、ハサウェイの3人でドライブ中にシャアと遭遇。そのわずかな時間でクエスはシャアに心を惹かれることに。そして彼女はハサウェイに好意を向けられていることは知りつつも、シャアとともに行動することを決断する。

 ハサウェイはクエスを追い求め、父であるブライトが指揮するロンド・ベル隊に潜り込み、そこで“戦争”を目の当たりにする。ハサウェイなりの覚悟を持って挑んだ戦争だったが、その先にあったものは、決して彼の望んでいたものではなかった。しかし、結果的にハサウェイの行動が多くの人々を救うという結果に繋がったという点も、彼の人生を複雑化させている。

 そして『逆シャア』で出会ったシャアとアムロというふたりの考えかた、生き様に触れたことも、ハサウェイのその後の人生に強烈な影響を与えることになる。ある意味、ふたりの英雄の意思が交差する場所にいた人物がハサウェイであり、それが『閃光のハサウェイ』で彼をマフティーという存在にしてしまったと言ってもいいだろう。

 なお、前半で語った『逆シャア』でシャアが蜂起した理由も、『閃光のハサウェイ』の物語に大いに関連してくる。本稿を読み、『逆シャア』を観た状態で『閃光のハサウェイ』を観れば、かなりスムーズに同作の物語が入っていることは間違いない。というわけで、公開がまたも延期されてしまったが、『閃光のハサウェイ』を観る予定がある方は、ぜひとも今回の放送をチェックしておきたいところだ。

映画『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』の公開は5月21日から!

 そんな『閃光のハサウェイ』が2021年5月21日より劇場公開となる(新型コロナ感染症の影響により、5月7日から延期)。『逆シャア』から続くハサウェイ・ノアの物語に期待しよう!

『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』予告

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