ファミ通.comの編集者&ライターがゴールデンウイークのおすすめゲームを語る連載企画。今回紹介する作品は、『ミクと水没都市』です。
【こういう人におすすめ】
- ゆっくり街の探索を楽しみたい
- 美しい風景や廃墟に魅力を感じる
- 戦闘が苦手
亀井ライダーのおすすめゲーム
『ミクと水没都市』
- プラットフォーム:Switch
- 発売日:2021年4月28日
- 発売元:レイニーフロッグ
- パッケージ版:なし
- ダウンロード版:あり
- 『ミクと水没都市』公式サイト
※『Submerged』というタイトルで、PS4、Xbox One、iOS、PCでも配信されている。
Nintendo Switch用の「ミクと水没都市」の紹介映像
昨年に引き続き、家で過ごす時間が多くなりそうなゴールデンウイークとなりました。そんなとき、自分のペースでゆっくり楽しめるゲームとしてオススメしたいのが『ミクと水没都市』です。
本作は、戦闘がないというアクションゲームで、タイトルの通り、主人公・ミクが怪我をした弟・タクを助けるために、水没した都市を探索するという物語。
本作のいちばんの目的は“タクを助けること”なので、漁船に乗って移動し、建物から必要なものをすべて集めたらゲームクリアーです。寄り道しないでストーリーを進めると、数時間ほどでクリアーできると思いますが、“寄り道”こそ本作の醍醐味と言えます。
水没した都市、そこにたどり着いた姉弟
そもそも、弟のタクがなぜ怪我をしているのか、なぜ船で水没した街にやってきたのか、など、ミクの家族に関わる話は、物語を進めていくうえで少しずつ明かされていきます。が、誰かの口から詳しく説明されるというわけではなく、すべて絵で表現されます。
最初は、徐々に明かされる絵が大切なことだとは予想がつくものの、何を表しているのかよくわかりませんでした。後半になってやっと「これ、ミクの話だ!」となり、いままで明かされた絵を見返して「なるほど」と納得したり、どうにかできなかったのかとやきもきしたり。ラストの数枚は複数の解釈ができそうだと個人的に思っているので、プレイした人どうしで話し合うのも楽しそうです。
家族の話に限らず、本作には収集要素があり、“記憶”、“ヒストリー”、“生物”、“ランドマーク”の4つを集められます。このうち、“記憶”はミクの家族に関わる話なので、ストーリーを進めると徐々に明らかとなっていく部分。自分で集めることになるのは、残り3つの要素です。
あくまでサブの収集要素なので、まったく集めなくてもストーリークリアーには関係ありません。多くのゲームではお楽しみの要素となっているでしょう。しかし、とくに本作では、集めてほしいです。サブ要素ではあるものの、本作の重要なポイントとなっているのです。
中でも“ヒストリー”は、歴史というだけあり、水没した都市の歴史を辿ることが可能です。全60種あり、そこそこ多い気もしますが、ストーリーに必要なアイテムを探すうちに自然と集まるはず。あとは少しの好奇心と探索を楽しめる時間の余裕があれば、そんなに大変ではありません。(という私はまだ全部集められていませんが……。あと数枚。)
“ヒストリー”を集めて水没した街の歴史を知らずにクリアーすると、ただタクを助けるためにアイテムを集めて終わり、というスピード感満載のゲームになってしまうと思っています。それはそれでひとつの楽しみ方ですが、できればバックグラウンドを知ることがオススメですね。
ある程度でも水没した都市の歴史を知ると、美しさもたしかにあるけど、自分たちのいる世界と重ね合わせて、いろいろと考えさせられるなあと。自分にできることから始めようかなあと思ったり。
ちなみに、本作の言語として、建物の名前に使用されている英語(アルファベット)ともうひとつ文字が登場するのですが、これが解読できず、読めたら楽しいだろうなあと思っています。もしかしたら実在する文字なのかもしれませんし、深い意味はないのかもしれません。ただ、タイトルにも、絵にも書かれているので、どうにかして読み解きたい……!
また、“生物”、“ランドマーク”も、ぜひ集めてほしい要素。生物の中には、おそらく都市が機能していたころにはいなかっただろう生き物から、少し不思議に感じる生き物まで、水没した都市と共存しているので、見回ってみてください。
ランドマークは、遠くから見ても目立つものばかりなので、比較的集めやすい要素ではあります。こちらも都市として機能していたときには何も思わなかっただろうものばかりですが、水没していることで、過去に思いを馳せたり、こんな大きいものがこんなに水に浸かっているということは、かなり水位が上がっているんだなとか、現実的なことを考えたり。人によって思うことはさまざまですが、観光気分にもなれるので、探索に疲れた方にも息抜きとしてオススメです。
水没した都市の美しさを堪能できる
街を探索していく中で、ふとまわりを見渡すと、美しい光景が広がっています。高解像度というわけではありませんが、リアルに近ければ近いほど美しいというわけでもないはず。
ゲーム内では、お昼から日没、夜など、時間が経過していくので、それぞれまた違った景色も見られます。雨が降ったあとは、草や花に陽が当たってキラキラしているとか、夕焼けのオレンジ色に染まっていたりとかするわけです。とてもきれいです。
“都市”ということは、そこに住んで生活していた人々がいるわけで、建物も完全に水没したわけではありません。崩壊した建物ばかりですが、儚いからこその美しさが感じられます。
私は、廃墟や人の手が入らなくなって時間がたった場所などがけっこう好きなのですが、実際に行くとなると危険を伴うし、大変だしでなかなか行けていません。本作は、そんな方にもオススメです。出てくる建物はすべて廃墟だからです。ただ、ガッツリ建物の中に入れるわけではないので、どちらかというと崩壊した世界を楽しみたい方によりうってつけですね。
操作については、正直もったりしていて、ミクも船も小回りは利きません。しかし、アクション部分は複雑な操作が必要ないので、あまり気にならなくなりました。むしろアクションが簡単な分すぐに操作に慣れるため、景色やまわりにいる生き物を観察することに集中できます。普段、アクションゲームを遊ばないという方にもオススメ。
また、音楽も本作の世界観にマッチしていて、とてもいい。少し物悲しい雰囲気で、落ちついた曲調の音楽が流れています。どこか懐かしさと寂しさが伴う感じ。探索していると、子どものころに廃墟を探索するという、頑張れば現実でもできる冒険に憧れていたなあという気持ちが蘇ってきました。いまも冒険はしたいと思っていますが。
なお、本作には“ポストカードを作る”というメニューがあり、ズームやカメラの視点や位置などを調整してスクリーンショットの撮影が可能です。右下にはタイトルロゴが入って、まさにポストカード。
場所やミクの立ち位置、時間など、工夫次第で何通りもの撮影ができるので、自分なりのベストショットを追い求めることになるでしょう。
ちなみに、途中で人型の生き物がしれっと登場して、思わず声が出るくらい驚いたのですが、戦闘はないのでご安心を。この人(?)がどういう存在かは、ぜひ自分の目で確かめてください。