スクウェア・エニックスがサービスを展開する『ファイナルファンタジーXIV』(以下、『FFXIV』)の次期大型アップデート、パッチ5.5“黎明の死闘Part1”が2021年4月13日にリリースされる。2月6日の新情報発表会で『暁月のフィナーレ』が発表されたことを受ける形で、新たな拡張パッケージの序章とも言うべき本パッチがいよいよ幕開けを迎えるのだ。

 果たして『FFXIV』は今回の大型アップデートを通じて、どのような形で“黎明”から“暁月”へと時を進めるのか。それを探るべく、吉田直樹プロデューサー兼ディレクターにインタビューを実施。“Part1”と“Part2”の2部構成で展開されるメインシナリオの見どころや、いよいよフィナーレを迎えるセイブ・ザ・クイーンの注目ポイントなどを、直近の展望も交えてじっくりと語っていただいた。

吉田直樹(よしだなおき)

スクウェア・エニックス 取締役執行役員 第三開発事業本部長。『ドラゴンクエスト』シリーズ初のアーケードタイトルである『ドラゴンクエスト モンスターバトルロード』シリーズのゲームデザインとディレクションを担当。2010年12月に『ファイナルファンタジーXIV』のプロデューサー兼ディレクターに就任。現在、『ファイナルファンタジーXVI』のプロデューサーも兼任している。

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黎明の死闘のタイトルに込められた思い

――パッチタイトルに用いられている“黎明”は、『暁月のフィナーレ』の題名と繋がる部分があるかと思います。“黎明”は夜明けという意味のほかに、新しい事柄の幕開けというニュアンスも含みますが、このキーワードに“死闘”という言葉を組み合わせた狙いをお聞かせください。

吉田実は今回のパッチタイトルは、けっこう難産だったのです……。

――カッチリとハマっている印象なので、ちょっと意外です。

吉田パッチ5.3にて漆黒編のシナリオが完結を迎えたことで、皆さんのテンションは最高に高まったはずです。もちろん、ここまでのプロット自体は以前から仕上がってはいたのですが、その高まりを経験した直後であることもあり、ある意味プレイヤーの方々はいま戦う相手を見失っているのではないのかなと。

 パッチ5.3までの物語の流れが強烈だったからこそ、新情報発表会でハイデリン・ゾディアーク編の完結が発表されましたが、「そういえば、一体何と戦うんだろう?」というふうに感じている方もいるかなと。なぜなら、巨大な謎が今後明かされることはわかっていても、そこまでに至る伏線のヒントがまだ提示されていないからです。伏線は既に張られているのですが、それが伏線だということ自体がまだ明かされていない。その穴を埋めるかのように、アシエン・ファダニエル(以下、ファダニエル)やゼノス・イェー・ガルヴァス(以下、ゼノス)の姿が垣間見えるようになってきたので、たぶんプレイヤーの方々は「もしかするとコイツらなのかな?」と思っておられるのではないのかなと。

 パッチ5.5の段階では、かつて世界を襲った終末はまだ“固有の敵”ではないというのが我々の想定です。ですがそこに向かっていくお話を考えたときに、どちらかと言えば“固有の敵”の存在を予感させる感じよりも、“死闘”をくり広げていくイメージのほうが強かったのです。たとえるならば、世界そのものの運命に抗っていく……そんなニュアンスでしょうか。このタイミングでのパッチは、拡張パッケージへと繋がっていくメジャーアップデートになるので、タイトルを毎回少しだけ不吉っぽくしたいという側面もあったりします(笑)。

――毎回ですか!(笑)

吉田かつてパッチ3.5の英語版タイトル“The Far Edge of Fate”を決めるに当たり、僕は「際(キワ)という単語を使いたい」と話しました。ほかにもパッチ2.5の“Before The Fall”の当時は「“落ちる”という単語が欲しい」とスタッフに伝えています。僕のほうからそういうキーワードを提示して、シナリオチームとローカライズチームの双方からアイデアを出してもらうパターンを取っています。

――ちなみに今回は?

吉田Deathなど、不吉な単語をいくつかピックアップして示しました。ですが、それだけでは希望が見えてこないので、もうひとつの単語をどう組み合わせようかなと。そこで、すでに決まっていた『暁月のフィナーレ』のタイトルを受ける形で、いくつか候補を挙げていった結果、黎明に決まった感じです。夜明けに向かう前の状態を表す“黎明”は、まさにパッチ5.5が公開されるタイミングそのものだったので、こちらは比較的すんなりと決定しました。ですが、死闘というキーワードにたどり着くまでがなかなかたいへんだったので、今回は難産です。

――Death Unto Dawnという英語版のタイトルが先に決まった、というわけでもないのですか?

吉田同時に組み立てて行きました。Dawnという単語も最初はタイトルに使われていなかったのですが、「Dawnではダメなの?」と話をし、最終的にそこに落ち着いた感じです。日本人はどちらかと言えば英語が苦手なせいか、英語圏では日常的に使われている単語であっても、日本人の耳になじまないものがけっこう多くあります。

 このため、中二レベルの英語の耳を持つ“中二病”の僕からすると、一部の単語の響きがカッコ悪く聞こえてしまうのです。初期の段階で候補に挙がっていた単語を見て、「響きが日本人的にカッコよくないと感じてしまう……」とスタッフに伝達し、そのうえで「置き換えさせてほしい」とお願いする場合が割と多いです。

――その際、スタッフの方の反応はいかがでしょう?

吉田すんなりいくときもあれば、「それに置き換えると意味が変わってしまいます。この単語にそういうイメージを抱くのは日本人だけですよ!」みたいに怒られる場合もあり……(苦笑)。とにかく、今回は難産でした。ひと筋の夜明けの光がまさにいま放たれたところだが、そこに映し出された光景は果たしてそんなに清々しいものなのか……今回のタイトルには、そんなニュアンスが込められています。

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つぎの展開に向け物語は最終段階に!

――今回のメインシナリオで、いわゆるハイデリン・ゾディアーク編のクライマックスに向けた本格的な一歩を踏み出すことになるかと思いますが、“Part1”と“Part2”の全体を通して、どのような流れになっているのでしょうか? 先日のプロデューサーレターLIVEで吉田さんが話しておられた「答え合わせが行われる」という部分にも期待しています。

吉田ハイデリン・ゾディアーク編にまつわる謎は、つぎの拡張パッケージできれいに解き明かされようとしているので、いまの段階でそれらが赤裸々に語られることは当然ながらありません。ですがそこに巻き込まれていくに当たり、光の戦士やエオルゼア同盟軍の面々が“やらねばならないこと”や“出会わなければならないこと”がまだあるのです。それらが畳み掛けるようにやって来るのが、今回のシナリオ全体のイメージになります。要するに、『暁月のフィナーレ』に挑んでいくうえでの最後の準備が、パッチ5.5の“Part1”と“Part2”で行われると思ってもらえればいいのかなと。

 これまでの拡張パッケージを振り返ると、新生編から蒼天編にかけて進行したシナリオでは、クリフハンガー的な話の続きを期待させる展開がくり広げられました。暁の血盟は四散し、アルフィノはうなだれ、光の戦士は追われる身となりました。当時「これはやりすぎだよね」みたいなお声もあったので、蒼天編から紅蓮編に移る際には、東方地域に向かうことだけをサプライズ要素として残しつつ、比較的すんなりとシナリオを繋ぐ流れにしました。すると今度は、「何だか淡々としているな」とのお声をいただいて……(笑)。

――当時のそうした声を耳にして、吉田さんはどう思われましたか?

吉田「なるほどな」と感じたので、ならばつぎの漆黒編ではもっと予測がつかない展開にしようと思い、第一世界を舞台に選んだ感じです。今回は、とにかく真っ直ぐに突き進んでいく形にはしているのですが、「ここで終わりなの!?」みたいな状態にもなっています。「早く『暁月のフィナーレ』をプレイさせて!」という期待感を持っていただきたいとも思っています。

 また、いつも言っていることですが、『FFXIV』ではファンフェスティバルの発表内容も含めてメインシナリオである、という考えかたをしています。この方針に沿って言うと、(2021年5月15日と16日の両日に開催される)FINAL FANTASY XIV DIGITAL FAN FESTIVAL 2021(以下、デジタルファンフェス)で発表される内容のほうが、パッチ5.5の“Part1”で体験した事柄よりも少し先の話になるわけです。

 そしてデジタルファンフェスの直後に“Part2”がリリースされると、いろんな予想がジェットコースターのように頭の中を駆け巡る形になります。この流れは、今回もしっかりと作れているなと。ハイデリン・ゾディアーク編の完結に向かうに当たり、不足しているパズルのピースが現れたり、あるいはそれがどこかにハマったりする……そんなパッチになると思っていただきたいです。

――プレイヤーに提示されるさまざまなピースを組み合わせて、あれこれ考える楽しみが今回も味わえそうです。

吉田そうですね。ウェルリト戦役やセイブ・ザ・クイーンのほうにもガレマール帝国が絡んでいるので、メインシナリオ以外のコンテンツでも、かの国が置かれている状況に関する手掛かりが提示されます。

――今回のメインシナリオでは、『暁月のフィナーレ』を予見させるような仕掛けが登場するのではと予想しています。たとえば、「もしかしたらこの人は賢者なのでは?」みたいな部分が垣間見えるシーンが現れるのでしょうか?

吉田さてどうでしょう(笑)。そのあたりに関しては僕もけっこう遊び好きなので、もしかしたら何かあるかもしれません。ですがいまは、何も言わないでおきます。

――前回の物語のラストで、ゼノスが愛刀を踏み割りました。このシーンから、彼はいままでにない新たな武器に持ち替えるのではという期待が膨らむのですが、一連の流れの中に何かヒントは隠されていますか?

吉田何ともお答えしづらいご質問ですね……。そもそもですが、ゼノスはコウジン族の秘宝である妖刀アメノハバキリに飽きて折ったのではなく、うっかり踏んづけて壊してしまった可能性もありますし……もしかしたら、あのシーンの後ファダニエルが慌てて妖刀の破片を拾い集めて、ルナバハムートに乗ってコウジン族のもとを訪れ、修理を命じたかもしれません(笑)

――修理しないと、ゼノスに怒られてしまう、と(笑)。

吉田実際のところは、伏せさせてください。ただしパッチ5.3など、これまでメインシナリオのラストで描かれてきた、“一方そのころ”で姿を現したゼノスのシーンを並べてみると、何らかのヒントが得られるかもしれません。個々のシーンを単体で見るよりも、一連のセリフを繋いで読んでみたほうが、何となくわかるかもしれないですね。

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ウェルリト戦役最終章の中身は?

――パッチ5.5でウェルリト戦役がフィナーレを迎えます。ここまでの物語は、ガイウス・バエサル(以下、ガイウス)の義理の息子たちがひとりずつ犠牲になっていく重苦しい雰囲気の中で進んできましたが、そうしたところを踏まえて今回の見どころはいかがでしょうか?

吉田崩壊したひとつの国の傘のもとにいた権力者が、かねてより抱いていた野望や欲望のリミッターを外したために、今回の悲劇が起きたと思っています。残念ですがこのような事態は、昔の歴史をさかのぼればよく起きていたことででもあります。

――国の支配のタガが外れたときは、こういうものなのかなという気持ちになりました。

吉田プレイヤーの方々から、「『FFXIV』のなかでもとくに暗くてツラいお話かも」と言われたりもしていますが、ある意味これがリアルでもあるのかなと。そうした状況の中で、ガイウスのやさしさや義理の子どもたちを思う気持ち……彼らはほんとうに血のつながった兄弟ではありませんが、そのなかでも絆みたいなものをお互いに育んできました。その思いが、さきほどお話した国のタガが外れたことで生じた狂気に対してどう向かっていくのか、というあたりにご期待ください。

 僕たちは、単純に残虐な物語を描きたいだけで作っているわけではありません。仮に自分がそういう過酷な状況に置かれたら、一体どうするだろう……そうしたところを考えながら、シナリオのラストを見届けていただければいいのかなと。前回の物語で落としどころに近づくセリフは入れてありますので、それぞれの言葉の裏からどういう展開が導き出されていくのかにもご注目ください。また同時に、ウェルリト戦役は開発チームの“ロボット愛”をすべて叩き付けようとしたシリーズでもあるので、「『FFXIV』が描くロボットものの結末はどのパターンになるのかな?」という部分もポイントかもしれません。

 偶然にも僕は『機動戦士ガンダム』シリーズが大好きです。富野さん(富野由悠季氏。アニメ監督)が描く作品は、ラストに進む過程でどんどん登場人物が亡くなっていく流れが多いですが、果たして『FFXIV』のロボットものはどういう結末を迎えるのか……。ちょっとメタ的かもしれませんが、そのへんにも少しご注目いただきたいです。

――楽しみにしています。

吉田一方、セイブ・ザ・クイーンは、理想と現実を含めて、松野さん(松野泰己氏。ゲームデザイナー。セイブ・ザ・クイーンのシナリオを担当)に戦争、歴史、民族のいい面と悪い面を赤裸々に描いていただくコンテンツです。テキストのボリュームが多いせいもあるかとは思いますが、「ウェルリト戦役よりもセイブ・ザ・クイーンのほうが表現がキツめだ」という感想を抱く方もいらっしゃいますね。

――たとえば南方ボズヤ戦線のストーリーで登場するテキストベースのセリフも含めて、ウェルリト戦役よりも表現がキツめということですか?

吉田そう感じられる方がいらっしゃるみたいですね。発生している事象そのものはウェルリト戦役のほうがけっこうエグいと思います。それもあり、ウェルリト戦役の制作過程で存在していたすごくキツい表現は、調整によって多少マイルドにした部分もあります。

 単純に人の悪意だけを見せるのは避けたいなと。皆さんがいろんなキャラクターに感情移入をして、いろんなシーンで自分がその立場であればどうするだろうと考えたときに、たとえば「別の選択肢もあったのではないか」とか、「こちら側の立場も理解できる」とか、そんな思いを抱いていただきたいのです。

 すべての人にそれを意識してもらおうとまでは思いませんが、僕はそれが心に引っ掛かるシナリオだと理解しているので、ウェルリト戦役を通じて、プレイヤーにイヤな思いをさせることだけで物語を演出するのは、ちょっと違うのかなと。そうした調整をしたこともあり、ウァレンス・ヴァン・ウァロの「がーんばれ、がーんばれッ」のシーンがネタ的になりましたね。憎たらしいからだとも思うのですが、もう少しだけイヤな人物として描いてもよかったのかな、とも思っています。さじ加減は本当に難しいですね(笑)

――あのシーンに関して、吉田さんとスタッフの方とのあいだで事前にやり取りはされたのですか?

吉田いえ、スタッフが頑張ってくれたものです。ギリギリの線を上手くまとめてくれたな、と思ってチェックしていました。修正指示もしなかったはずです。今回の第4弾は、このインタビューをお受けしている今、まだ最終調整の直前なので、結末のキレ味をどう落としているか、僕自身もまだ確認作業を進めていません。このためいまの段階では、ウェルリト戦役全体を振り返るのは難しいのかなと。

――ちなみに、ウァレンスと光の戦士が対峙するシーンは登場しそうですか?

吉田例のシーンは、あくまでも“一方そのころ”です。まだ光の戦士は彼から実害を受けていませんし、その出来事自体を目撃したわけでもありません。ウァレンスの運命は、関係者の中でどうなるのかを見てもらえればいいのではないのかなと。そういう部分を考えると、おそらくプレイヤーは彼から直接イヤなことをされていないせいで、いわゆるネタキャラみたいな扱いになっているのかもしれませんね。

――彼は最前線に姿を現しているわけでもありませんしね。

吉田はい。一方でセイブ・ザ・クイーンのほうは、現実を知ったうえで自分自身が敵対勢力と戦っています。その違いが、受ける印象の違いになっているのかなと。実際、それぞれのウェポンの搭乗者たちとも、彼らがエオルゼアへ侵攻してこなければ、光の戦士とガイウスも戦う必要がなかったわけですしね。

――それがゆえに、ガイウスはたまらない気持ちになっています。

吉田とくに第3弾では、そうした心情を丁寧に描かないと皆さんに伝わらないので、ギリギリまでテキストに調整を加えてもらいました。その面でウェルリト戦役は、扱うテーマがシビアなだけに、セリフの言葉選びを丁寧に行ってきたコンテンツです。

――前回のシナリオで、アルフォンスは「あの機体が喰えるのは蛮神だけではない」と話していました。そうしたところを踏まえると、今回のダイヤウェポン破壊作戦でくり広げられるバトルについて、事前にどのようなイメージを抱いておくといいのでしょうか?

吉田ガイウスの「何とかこれ以上の悲劇を止めたい」という想いと、パイロットたちの「未来を創りたい」という想い、その二つが交差するも、やむなく戦いにはなってしまう。ただ、その想いをなんとか救いたいと協力してくれる人々の力で、今回の作戦が実行されます。想いの力との闘い、という側面もあり、ウェポンシリーズの総決算なバトルに仕上がりました。見どころは多数あるのですが、この先はその目でお確かめください。

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『FF14』“ヨルハ”最終章で2年間温存してきたギミックがついに全開! レジスタンス ウェポン最終段階の“取れやすさ”についても パッチ5.5吉田氏インタビュー

ザトゥノル高原で攻城戦に代わる新たな戦いが!

――セイブ・ザ・クイーンのリリース時期はいつぐらいでしょうか?

吉田パッチ5.55で公開する予定なので、メインシナリオの“Part2”と同時になると思います。“Part2”は先述のデジタルファンフェスを経たうえでリリースされることを踏まえると、時期はだいたい予想できるのではないのかなと。

――こちらも今回で完結すると。

吉田はい、完結となります。

――新たな要素としてザトゥノル高原が入りますが、こちらは南方ボズヤ戦線のようなフィールドを使った遊びですか? それとも、カストルム・ラクスリトレ攻城戦みたいな展開が味わえるのでしょうか?

吉田フィールドタイプのコンテンツですが、多人数で攻略するコンテンツも用意されています。

――となると、スカーミッシュやクリティカルエンゲージメントも発生しそうですね。

吉田新しいものをたくさんご用意していますし、それに対応してレジスタンスランクのキャップも開放されます。グンヒルド・ディルーブラム零式のほうはコンテンツ自体の緩和はありませんが、強力なロストアクションの追加や、ランクカンスト後の育成要素もご用意しているため、プレイヤー自身が強くなって挑戦するということになります。いままで攻略に苦労してこられた方は、今回のアップデート以降、少し楽になっていきます。

――レベルシンク的なものは発生しないのですか?

吉田はい。今回は、コンテンツ側の緩和ではなく、プレイヤーが強くなることで、実質的にクリアしやすくなる、という設計だからです。

――と言いますと?

吉田つまり、最初の段階で目標となる高難易度コンテンツをご用意。もちろん、その時点で挑んだり、クリアできるならそれはそれ。挑むのが怖かったり、クリアに苦戦している方は、そこから『暁月のフィナーレ』が発売されるまでの半年くらいの期間をかけて、パッチ5.55までのコンテンツでキャラクターをさらに強化し、最終的にグンヒルド・ディルーブラム零式のクリアを目指す……そんな流れになっています。

 仮にグンヒルド・ディルーブラム零式をパッチ5.5でリリースしたとすると、最高に強くなった方たちだけが挑戦するコンテンツという位置づけのまま固定され、いずれコンテンツを緩和するしかなくなってしまいます。これを避けるために、ひとつ前のパッチ5.45で公開することで、まずはキリキリ舞いしたい方や最速でクリアしたいプレイヤーに楽しんでいただく。その後、ロストアクションの追加や成長要素など、“プレイヤー強化要素”を追加して、いままで挑めなかった方々にも手が届きやすくする……要は、コンテンツの難度を下げるのではなく、自分自身を強くしてクリアするという形のコンテンツ設計になっているのです。

――セイブ・ザ・クイーンで最高難度のコンテンツは、パッチ公開後もグンヒルド・ディルーブラム零式で変わらない……そういうことですか?

吉田そうなります。ただ、カストルム・ラクスリトレ攻城戦に似た、新たな多人数コンテンツが用意されています。

――言わば、セイブ・ザ・クイーンにおけるラストダンジョン的な位置づけの新要素が用意されていると。

吉田はい。南方ボズヤ戦線の高ランク版が、丸ごともうひとつ入ってくると思っていただければ間違いありません。かなりのコストを掛けて作られており、もちろん新しい一騎打ちも存在します。

――おお!

吉田既存の一騎打ちに関しても、想定を超えるほどたくさんの方にプレイしていただいています。今回もたくさんのフィードバックをいただいており、その中には「条件を満たしても抽選に当たらない」というお声だけでなく、「準備が不十分な人が一瞬で負けたりするので落選すると心から応援できない」といったご意見も少なからずありました。

 そんな事態を減らすべく、“参加をくり返して条件を満たしていくほど参加しやすくなる”という調整を加えます。ほかにも、スカーミッシュやクリティカルエンゲージメントにも手を入れますし、アイテムドロップについても調整されます。また、レジスタンスウェポンの最終強化が幕を開けることに伴い、セイブ・ザ・クイーンに紐づけられたありとあらゆるコンテンツの中で、必要な強化素材を集めていけるようになります。すべてに対して丁寧に調整を入れました。

――グンヒルド・ディルーブラム零式に関しては、調整の予定がありますか?

吉田現状は48人の誰かひとりでも欠けると挑戦できない仕様になっていますが、どうしても外せない用事で欠席者が出てしまうといった苦しい状況もあるかと思います。これに対処するべく、クリアの難度自体は上がりますが、パッチ5.5でもっと少ない人数でチャレンジできるようになります。

――レジスタンスウェポンのお話が出たので、こちらについてもお伺いします。ジョブ専用の武器を複数取ることを意識した調整が先日行われましたが、この方針は今後も引き継がれますか?

吉田パッチ5.55で実装する強化の試練バランスはかなり前に確定していたのですが、先日の調整を受けて関係者が集まり、もう一度考え直すことにしました。もともと僕たちは「武器をひとつ作ってくれれば十分」という認識のもとで、1本取得するまでに要する時間を長めに取っていたのです。

――ゾディアックウェポンの当時を知っている身からすると、その味付けにあまり違和感がなかったりします(笑)。

吉田何しろ、かつてのアートマ収集の当時は、強化すべての条件を達成するまでに約120時間を想定していたので……(苦笑)。いまは昔よりも短くはなってはいますが、それでもひとつの武器当たり30~40時間くらいを想定していました。しかし運営が長くなり、アーマリーシステムが皆さんのあいだで浸透していると改めて感じました。高難易度コンテンツに挑むためにジョブレベルを育てたわけではないけれど、さまざまなジョブにチェンジできるようになった光の戦士に、自分好みの武器を持たせてあげたい……そういう楽しみかたがより強くなってきました。

 そうした部分を踏まえて、レジスタンスウェポンを1本取得して満足してもらうのではなく、だいたい3本くらい作ってもらうことをバランスのベースに据えることにしました。1本目はそれなりに苦労はあるけれど、2本目以降は手順を飛ばして複数作って行ける……そんな味付けにしようかなと。こうすることで、いろんなジョブの武器を獲得したいというモチベーションにもなります。

 かつてコンテンツが少なかった時代は、強力な武器を作り上げていくことに自体に価値を置いていました。だからこそ時間を掛けて達成条件を満たしてもらうという考えかただったのですが、今回それを転換。いわゆる零式武器よりもサブパラメータの自由度が高い分、多少強くはなってしまうけれど、パッチのもっとも終盤で出すのであれば、複数作ってもらったほうがいい……そういう方向へ舵を切ることにしました。これに伴い、パッチ5.5のバランス調整をリリース前のタイミングですべてやり直したので、全体的に“複数作ってもらいやすい”くらいの味付けにしてあります。

 また、できるだけセイブ・ザ・クイーンをプレイしている中で、強化素材を集めやすくする調整も加えてあります。「F.A.T.E.のほうがかんたんだからそっちに行こう」と言うよりは、セイブ・ザ・クイーンをプレイしながら短時間で武器が育っていくように全体を調整しなおしました。

――現状のレジスタンスウェポンのアイテムレベルは515ですが、強化の段階はこの後どれくらいあるのでしょうか?

吉田あと1段階で完了します。

――最強まで育てたレジスタンスウェポンは、いわゆる零式武器と比べて、前回までの武器強化コンテンツで得られたアイテムと同じくらい強くなるのでしょうか?

吉田そうなります。自身でサブパラメータを振り分けられる、というのは強みですので。僕もメインジョブの黒魔道士のために、早めに完成させるつもりです(笑)今回も1本目の制作には、複数のクエストがあり、複数種のアイテムが複数個必要になります。ですが、これらのクエストを1本目でクリアすれば、2本目以降の制作では、これらのアイテムは要求されません。最後のクエストに必要なアイテムだけ、再度入手をお願いすることになります。1本目のハードルはそれなりですが、2本目以降そのハードルはかなり下がる、と覚えておいてください。

物語とバトルの両面で“ヨコオワールド”が全開!

――プロデューサーレターLIVEで「今回のYoRHa: Dark Apocalypseは“第3弾”であって“最終章”とは銘打たれていない」とお話されていましたが、もしかしたら今後も続いていくのでしょうか?

吉田いいえ、第3弾でもちろんお話はキチンと終わります。『暁月のフィナーレ』に持ち越したりはしません。ただ……どこを終わりと見なすのかは、皆さんで判断していただければよいのかな、と。

――放送では秘密にされていましたが、つぎのアライアンスレイドの名称は何ですか?

吉田すみませんが、プロデューサーレターLIVEまでは伏せさせてください。YoRHa: Dark Apocalypseは、大人気の『ニーア』シリーズということもあり、ファン層の拡大にすごく寄与してくれました。同シリーズとのクロスオーバーにふさわしく、キャラクターや思想の相関関係といった設定の深さも、大きな楽しみの要素のひとつになっています。にも関わらず、登場する人物や地名をタイトルで事前に発表してしまうと、その瞬間に皆さんの楽しみの一部を奪ってしまう可能性がけっこう高いので……。

――蛮神の詳細を伏せたときの事情と似ていますね。

吉田以前のプロデューサーレターLIVEで、ウォーリア・オブ・ライト討滅戦という呼び名を発表できなかったときと似ていますね。あの時は、ズバリ敵の名称でしたが、今回の場合は地名です。ですが、地名ですらネタバレや想像喚起が強いこともあって、もう少し引っ張らせてください。このため物語に関しても、今回はヨコオワールドが全開みたいな形になるので、ちょっと事前にお話しづらいところがあります。

――ではバトルのほうはいかがでしょうか?

吉田バトルのギミック周りに関しては、『ニーア』シリーズとのクロスオーバーを決めた2年前に考案したネタがついに表に出てくる形になっています。ですがこちらも事前にお話すると、初めて見たときの興奮が薄れてしまいます。今回は、「これでもか!」と言うくらいに新機能を作ったりしているので、「MMO(多人数同時参加型オンライン)RPGの中でよくやるよなあ……」と思っていただけると嬉しいです。

――怒涛の展開が楽しめそうです。

吉田グラフィックスの表現方法やゲーム体験のバリエーションを通じて、これぞ『ニーア』シリーズだという部分をお見せできると思っています。この方向性はギミックに関しても同じなので、凝ったものが多いです。

――それにしても、2年前からネタを温められていたとは(笑)。

吉田ボス担当者たちから、怒涛のようにアイデアを提示されたのですが、「ダメだ。これをやり続けたら後がもたない……」と相談して、徐々に出していく形になりました。今回は、それらのアイデアをすべて詰め込んであります。

――物語とバトルの両面でヨコオワールドが全開になることで、『FFXIV』の既存の殻が弾け飛ぶわけですね。

吉田それがクロスオーバーで得られる大きなメリットだと思っています。いつものメンバーで『FFXIV』らしいオリジナルのコンテンツだけを作っていると、なかなか発想にまで至らない部分も、『ニーア』の世界観、あるいはヨコオさん(ヨコオタロウ氏。『ニーア』シリーズディレクター)と齊藤さん(齊藤陽介氏。『ニーア』シリーズプロデューサー)という『FFXIV』チームの外におられるクリエイターの方たちの考えかたが入ってきたときに、殻が破られることがある。

 その結果新しいシステムが開発されたりすると、『FFXIV』本編のほうで今度はそれを使った新しいギミックが生み出されたりして、好循環が生まれます。僕たちの中にある『FFXIV』の枠を破壊したり拡大したりするきっかけをもたらしてくれるので、クロスオーバーはとても意味のある取り組みだと改めて感じています。

――本編を攻略した後にウィークリーのクエストが登場するとのことですが、これを完遂すると何かをもらえるのでしょうか?

吉田今回のウィークリークエストは、純粋にお話として続くものになっています。報酬ではなく、ストーリー上に必要なものです。体験や体感のため、という形です。コンテンツクリア後に始まることになりますが、これもストーリーの一環となっています。

――YoRHa: Dark Apocalypse全体を振り返っての手応えをお聞かせください。

吉田これもいま振り返るのは時期尚早なのかなと。ほんとうの意味での振り返りは、皆さんのお手元に届いてからでないと難しいと思います。プレイヤーの方々があってこその『FFXIV』でもあるので、僕たち制作者側としての思いはありますが、やはり実際にプレイしていただいてどう楽しんでいただいたのかも含めてコンテンツは完成を迎えます。

 ですが、先ほどもお話した通り、『ニーア』シリーズに限ったことではありませんが、クロスオーバーは既存のルールや発想を打ち破るきっかけとしてまさに最適な要素です。とくに今回、ヨコオさんという存在は我々にものすごい刺激を与えてくださりました。一連のやり取りの中で、「自分たちも思い切って挑戦しよう」みたいな動きがあったのですが、それは『ニーア』シリーズだったからこそ、あるいはヨコオさんだったからこそ生じた部分がものすごく大きいです。その集大成を、まずはご覧いただきたいなと。

――ヨコオさんとは何かお話をされましたか?

吉田ヨコオさんと齊藤さんを交えたチェックが来週行われるので、これからですね。個別のカットシーンや全体の流れはすでにディレクションしていただいており、コンテンツの通しプレイがこれから始まる状況です。プレイヤーのみなさんに遊んでいただいた後、どこかの機会で総括のタイミングが作れると良いですね。

今回のジョブ調整は数値的なカバーが主目的

――前回のパッチでモンクに調整が入ったことで、現状のジョブバランスに違和感を覚える人はかなり少なくなったと思います。そんななか、今回はどのジョブに調整の手が入るのでしょうか?

吉田ジョブに関する大きなメカニクスの変更は、当然ですがレベルキャップが引き上げられる『暁月のフィナーレ』の側に回しており、現在そちらの作業をガンガン進めています。今回のタイミングで調整が入るジョブはゼロではありませんが、基本的には数値調整に留まると思っていてください。

 当初リリースを予定していた絶・竜詩戦争が入るのであれば、もう一段階上の調整を行ったかもしれません。ですが今回はどうしてもスケジュール的に公開が困難な状況だったので、どちらかと言えば希望の園エデン零式:再生編において、たとえば近接DPSを横並びで見たときに、コンテンツとの相性という意味で「4層でこのジョブは本来の性能を出し切りにくいよね」という部分を数値的にカバーする……そういった方向性になっています。基本的にこのタイミングでマイナス方向の調整は行わないので、ほんの少しだけヘコんでいるジョブがあれば、その“ほんのちょっと”を調整する、くらいの感覚だと思っていてください。

――と言うことは、『暁月のフィナーレ』で占星術師がピュアヒーラーに変化するに当たり、その下準備として、パッチ5.5のタイミングで何らかの調整が入ることもなさそうですか?

吉田たぶんそれをやると、皆さんに最終形の意図が伝わらないせいで、すごく中途半端な状態になってしまうと思います。変えるのであれば、プレイヤーの方々が実際に触ったときに、すべての意図がわかる状態である必要があります。ですので、中途半端な変更はいれられないのです。

つぎの幻討滅戦は幻タイタンよりも難しい!?

――つぎの幻討滅戦に登場するボスは……?

吉田詳細は次回のプロデューサーレターLIVEでとさせていただきますが、僕が調整に参加した際の感想は「こんなに難しかったっけ?」というものでした。同席メンバーも油断していたようで、「当時の攻略法をなんとなく覚えていれば大丈夫だろう」くらいの感覚でいたのですが、実際にプレイしてみるとこれがまた難しくて……(笑)。みんなで「幻タイタン討滅戦よりも難しい気がする」と話していました。

 メインタンクとサブタンクにしっかり役割がありますし、ヒーラーにもギミックがあります。もちろん、DPSもちゃんと考えながら立ち回らねばならないうえに、全体を見る目も求められます。調整プレイに参加してみて、「零式なみに難しいかも……」という感覚になったので、ちょっとだけ値を下げてもらいました。このコンテンツをいまガチで再現しようとすると、こういう感じになるのか……そんなイメージです。

――そこまで吉田さんが驚かれるとは……。

吉田ベースとなる討滅戦が最初に実装された当時は、装備の更新で皆さんのアイテムレベルが上がっていくこともあり、それが今の印象に繋がっているんだなあ、と感じました。ですが幻シリーズではアイテムレベルを固定してバランスを取ることになります。それもあって、「うぉ、キツイ!」みたいな印象に。

――装備の更新ができないぶん、光の戦士の側が強くなる余地は少ないですよね。

吉田その通りです。だから、一定のアイテムレベルを軸に据えてガチでバランスを取った結果、難しくなった……以上がヒントになります(笑)。

――わかりました。いろいろ想像しておきます(笑)。

吉田今回の幻討滅戦もすごく楽しめました。当時は対処法がなかったギミックに関して「いまはこのアクションがあるから何とかなるよね」みたいな発見もあり、とても新鮮でしたね。

蒼天街復興祝祭は気軽に楽しめる作りに

――イシュガルド復興に関連して、蒼天街復興祝祭が定期的に開催されるとのことですが、形式や発生間隔についてお聞かせください。

吉田これまでのイシュガルド復興のイメージをお持ちの方が多いはずなので、突発的に発生する復興F.A.T.E.を逃さないよう注意しなければならない、と思われるかもしれません。しかしイシュガルド復興はすでにゴールを迎えたこともあり、祝祭は、開催日と非開催日が一定間隔で訪れ、開催日中はフェトゥが繰り返し何度も発生するようになっています。

 そのため、たまたま現地に足を運んだら発生していたとか、あるいは「いつごろ発生するみたいだからちょっと行ってみよう」くらいの気軽さで参加できます。僕たちは当初“フェス”と呼んでいて、せっかく光のクラフター、ギャザラーの方たちの尽力で蒼天街が復興できたので、街を挙げてお祭りをやろうという意図でご用意したものです。皆さんへのねぎらいの意味合いが強いものなので、これまでくり広げられてきたタイプとは印象が違うはずです。とにかく気軽にご参加いただければと思っています。

――具体的にどのようなことが起こるのでしょうか?

吉田さほど大掛かりな仕組みではないので、いわゆる復興F.A.T.E.プラスアルファくらいに思っていただければなと。参加することで報酬がもらえたりはしますが、“現地に貼り付かなければ街の変化が見えない”みたいなことはないので、深夜まで発生を待って……というようなことは必要ありません。次回の開催日まで待てば、同じ祝祭が開催されるので、ゆっくりで問題ありません。

――新たなお得意様が蒼天街に登場するとのことですが、こちらは誰ですか?

吉田結構異色です。たぶん「どうしてこのNPCを選んだんだよ(笑)」と言われそうなキャラクターです(笑)。わりと、イシュガルド四大名家に関係してくるのではないでしょうか。

 これまでイシュガルド四大名家は、モーグリ族の蛮族クエストなど、いろんなコンテンツで描いてきました。メインストーリーやイシュガルド復興などを通じて、彼ら貴族たち……とりわけ古くから続く名家の価値観や気持ちの変遷は、さまざまな要素を通じてこまめに描いてきたつもりです。ですがそのぶん、いろんなコンテンツをプレイしていないとその全体像が掴みづらかったりします。今回はそうしたところをフォローする形で、ここまでの一連の流れの中で言動、考え方、未来への展望が大きく変わってきたとある人物にフォーカスを当てることにしました。

――なんとなく思い浮かぶ人物がいます(笑)。

吉田はい(笑)。

――自由探索に関する今回の調整は、ユーザーからのフィードバックを受けて行われることになったのですか?

吉田そうですね。たとえば「レベルシンクがかかってしまうとレベル80アクションのスクリーンショットが撮影できないから何とかして!」というご意見や、「自由探索中も楽器演奏ができるようにして!」と言ったお声を多数いただきました。特にレベルシンクに関しては、開発としても、「最初から対応するつもりだったのに、漏れてしまって申し訳ないです」ということだったので、これらのお声も踏まえどんどん取り入れていくことになりました。

――自由探索のエリア内にフレンドを集めて、プレイヤーイベントを開けるようになる可能性はありますか?

吉田あくまでもベースはインスタンスダンジョンなので、システム設計的に“最大4プレイヤー参加”が前提で作られています。たとえば最大20人まで入場可能にしようとなった場合、マップオブジェクトや地面などに使用しているメモリー配分が、4人が最大という基礎仕様とは異なってしまいます。そうなると設計面からの見直しが必要になり、「見た目は同じで、内部仕様が異なる別マップを作った方が早いのでは?」という話になってきます。しかし、そうなれば今度は、すべてのIDにそれを用意することになり、データの肥大化を生んでしまいます。

 もしかしたら「ある程度の不具合を覚悟のうえで一度全部開放してみよう」みたいな進めかたをすると、意外とうまくいくかもしれませんが、まだちょっと怖くて手が出せない状態です。いずれにしても、将来的にはいまよりもっとロールプレイやプレイヤーイベントに利用できる形にはしていきたいですね。

 最近は現実でもソロキャンプがけっこう流行していることもあり、かねてより要望が多かった“たき火”というミニオンを作ってみました。こちらは座布団の見た目をしたミニオンのふかふかクッションと同じで、呼び出した場所から動かないので、よりキャンプ気分を演出できるかと思います。小さい実装かもしれませんが、そういったものも増やしていき、ロールプレイの幅は広げていきたいな、と考えています。

――ダンジョンのなかで野営をしているような気分が味わえると。そういえば楽器演奏に追加される新たな音色について、前回のプロデューサーレターLIVEで「理由があって言えない」とお話されていました。こちらはまだ秘密でしょうか?

吉田これこそまだ言えないのです(笑)。たぶん、楽器の名前だけを聞くと「どうしてそれが言えないの?」と感じられるはずですが、いろいろありまして……。こちらはデジタルファンフェスまでお待ちいただきたいなと。おそらくパッチ5.55“黎明の死闘Part2”で弾けるようになるはずです。

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PS5版オープンベータテストの詳細を直撃

――プレイステーション5版のオープンベータテストがパッチ5.5のリリースと同時に開幕しますが、こちらの概要とテスト期間を改めてご説明いただけますか?

吉田詳細は2021年4月1日にお出しするトピックスをご覧いただけばと思います。ただし、そこまで大それたものではなくて、プレイステーション5本体さえお持ちであれば、身構えなくても大丈夫です。

――プレイステーション4版からスムーズに移行できると。

吉田本体さえご用意いただければ、まったく問題ありません。一方で期間については、今回はオープンベータテストなので、僕たちとしては具体的な終了期日はさほど重視していません。プレイヤーの皆さんがゲームに触れた際、安定性が担保できていることが確認されれば、たぶんすぐ正式サービスに移行すると思います。

――バグはほとんど確認できていないと。

吉田そうですね。もちろんデバッグ作業を綿密に進めてはいますが、これまでに積み上げてきたコンテンツのボリュームがすごく膨大なこともあり、それでも致命的な不具合を見落としている可能性があります。そうしたクリティカルなバグの有無を、オープンベータテストという形で皆さんのご協力を得て確認させていただく形です。

 現在『FFXIV』をプレイされておらず、プレイステーション5からプレイを始めよう、と思っている方は、プレイステーション5版のフリートライアルをお試しください。本体のベンチマーク目的でも『FFXIV』を使っていただけます(笑)。また、すでにプレイステーション4版でバリバリ遊んでおられる方は、今回のタイミングでプレイステーション5版に乗り換えた感覚でプレイしていただいてまったく問題ありません。先ほどもお話した通り、オープンベータテストで致命的な問題が発見されなければ、開始から数週間後くらいに「このまま正式サービスに移行します。製品ダウンロード版もリリースするのでよろしくお願いします!」とお知らせできるはずです。

――そこまでスムーズに移行できるポイントは何でしょうか?

吉田『FFXIV』の設計が、もともとクロスプラットフォームでプレイできる点にあります。仮にプレイステーション5専用サーバーでの運営となった場合、「一旦テストを閉じて各種作業を経たうえで正式サービスを迎えます」という可能性が高い。ですが、僕たちはライブサーバーでそのままサービスを進めていくので、プレイステーション5版のクライアント処理に問題が無い限りは、即時プレイ継続可能になるわけです。このため、「オープンベータテストはいつまでなのか?」というのは、気にする必要がないのです。

――プレイステーション4版とPC版とのあいだでマクロやユーザーインターフェースのやり取りが行えますが、プレイステーション5版でも同様の引き継ぎは可能ですか?

吉田もちろん可能です。プレイステーション5版はオープンベータテストですが、「テスト」とついているのは念の為のようなもので、動作は製品版と変わりありません。不具合が無い限りは、そのままふだん通りに遊んでいただけます。

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デジタルファンフェスは双方向で盛り上がれる

――デジタルファンフェスは、その名の通りデジタルでの開催となるため、全体像をイメージしにくい方も多いのではと思います。お話しできる範囲でかまいませんので、見どころをお話いただけますか?

吉田100%すべての方にそう感じてもらえるとまでは言いませんが、アーカイブの映像を後で観るよりも、リアルタイムにご視聴された方が、「楽しい!」と感じていただけるファンフェスにしたいなと。2021年2月6日の新情報発表会で、皆さんから寄せられたコメントに対して僕がリアクションしていく流れがありましたよね。あれは、プロデューサーレターLIVEで10年以上やってきたこととじつは同じだと気付いて、“双方向イベント”と『FFXIV』の親和性のようなものを改めて感じました。

 新情報発表会では、メディアの皆さんに会場に入っていただいて助かった面はあるものの、お客様がひとりもいない状況だったので、「これは結構やりづらいかもなあ」と思っていたのです。ですがいざ始まってみると、コメントによるリアクションや予想、質問などがあり、プレイヤーのみなさんに助けていただけて……僕は皆さんに感謝しつつ進行しながら、心の中で「ああ、プロデューサーレターLIVEと同じ感覚か、むしろやりやすいなあ」と(笑)。

――そうだったのですね。

吉田満場の中での基調講演は、会場全体から熱気が伝わってくるので、それはそれですごくありがたいです。あの独特の雰囲気は、会場で同じ空間を共有している僕と来場者の方々しか味わえません。その一方で、新たに発表された情報に対して、プレイヤーのみなさん同士、そして僕と皆さんのあいだでリアルタイムでキャッチボールができるのは、今回のデジタルファンフェスならではなのかなと思っています。

 ファンフェスティバルは本来、“観るよりも参加するもの”でありたいと僕は考えています。会場に来て、その場でしか遊べないコンテンツを触りつつ、屋台のようなアトラクションに参加したうえで、最後に“THE PRIMALS”のライブを全身で堪能してもらう……そうした“体全体を使っていっしょに『FFXIV』を遊ぶ場所”が、もともとのコンセプトです。今回も根幹にある、「“参加している感覚”を大切にしよう。たんに観るだけではないファンフェスティバルにしたい」とスタッフにお願いしています。今回の基調講演も同じですので、こちらも“双方向型”にしたいなと。

――ますます楽しみになってきました。

吉田視聴していただいている方々と、「どのファンアートが良かったかしら?」など、コミュニケーションもとっていきたいですね。スタッフから「ツールが用意できないので、アンケートは難しいと思います」と言われたのですが、「皆さんにコメントを流して貰って、見える範囲僕がカウントすれば、それもアンケートになるんじゃないかな」と。大切なのは、「みんなで一緒に」であって、ツールの正確性ではないのかな、と思っているのです。お祭りなので、それでもいいじゃない、と。

 確かにアンケート機能があれば正しい数字が出るかもしれませんが、それ自体にも回答者属性や傾向からの偏りが出るものです。投げかけ自体は、それがなくてもできるはず。「それくらいのものでもいいから、できる限り双方向の企画を実現させてほしい」とお願いしています。毎度無茶を言ってもうしわけないのですが……(笑)

 たとえば、コスプレコンテストも、もっと敷居を下げたものにしたい。参加条件も、ご自身がそれをコスプレだと思うのであれば、その時点でオーケーにしようかなと。かんたんな写真や動画を送ってもらい、みんなでそれを見ながら笑ったり驚いたりできる感じになるといいな、と。具体的に言えば、顔を白塗りにして頭に黄色いボンボンを乗せるだけで「俺はモーグリだ!」と言い張っていただいてもまったく問題ありません。それくらい気軽なものにして、できるだけ“体全体を使っていっしょに『FFXIV』に参加する”という本来のコンセプトに近づけたいなと。

 また、今回の開催のタイミングで政府や会社から許可が得られるのであれば、新型コロナウィルス感染症への対策を万全にしたうえで、抽選になるかとは思いますが可能な限りチケットをご購入いただいた方に会場へ入ってもらおうと思っています。その一方で、ゲーム内にもデジタルファンフェスの瞬間だけの楽しみを用意したいなと。これを使って、「デジタルファンフェスをゲーム内でも楽しみましょう!」みたいな流れもちょっと考えています。

――プロデューサーレターLIVEでそのあたりを少しお話されていて、個人的に期待が高まりました。

吉田ものすごくハードルが上がってしまうと、少し困るかな(苦笑)。会場に行けない現実を補うべく、たとえばデジタルファンフェスの気分が味わえるグッズを実装する……そういった形になるかもしれません。「いろんなコンテンツに挑戦して、デジタルファンフェスが開催されているいまだけ取れるアイテムをゲットしよう!」。そんなイメージです。

 とは言え僕はゲーム内に“現実感の強い”要素を入れるのはあまり好みではないので、それを実施するのであれば期間限定にしたいなと思っています。ファンフェスの期間だけ楽しめる、だから今楽しもう!という感じですね。

パッチ5.5は“全方位”に楽しめるように

――パッチ5.5を楽しみにしているプレイヤーにコメントをお願いします。

吉田旧『FFXIV』の時代を含めると、本作は昨年の10月で丸10年が過ぎました。皆さんのおかげでものすごく大きく成長させていただき、『新生エオルゼア』の当時と比較すると恐ろしいほどコンテンツが横方向に広がったと思います。しかし、新型コロナウィルス感染症の流行により、改めて開発サイクルや開発コストの見直しを迫られた10年目でもありました。

 もちろん、皆さんに楽しんでいただくことを第一に考えるべきですが、やはりそのためには、安定したコンテンツクオリティを確保したうえで、適切なテンポでパッチをお届けすることが必要です。それらを実現させるための前提として、健全で健康なスタッフたちが笑顔で毎日ゲームを作ることが必要であると考えています。スタッフと在宅勤務の環境について相談したり、あるいはプレイヤーの皆さんからいただくお手紙を拝見したりして、改めてそのことを思い知りました。

 次の拡張パッケージと、それ以降のパッチ計画として設定したいくつかのファクターを、どうやって達成していくのか。そして、その先にあるもっとおもしろいものを効率よく作るにはどうしたらいいのか……そんなことを今一度考えるきっかけになりました。そうした先々のことを考えていると、「パッチ5.5はちょうどいまの僕のような心境だな」と感じるところが少しありますね。

――どういうことでしょうか?

吉田『暁月のフィナーレ』でハイデリン・ゾディアーク編を完結させるに当たり、パッチ5.3で一度大きなフィナーレを迎えたこともあって、パッチ5.4と5.5は言わば狭間の期間です。そうした中で、今後に向けた期待感を創出していくことになるのですが、これらふたつのパッチで進めてきた準備は、『暁月のフィナーレ』のメインシナリオだけでなく、全体のボリュームやコンテンツクオリティという面ですごく重要な役割を果たしているんだな、と……そういうことを再認識したのです。

 パッチ5.3までの展開を味わった後だと、もしかするとパッチ5.4や5.5の展開が、少し地味に感じられる方がいらっしゃるかもしれません。ですが、物語を作るうえでは地盤固め、伏線作り、動機作りなどの積み重ねを行う時期が必ず必要になりますます。ラストに向け、大きく飛び上がるために、です。そうしたところをキチンとやってきたからこそ、『漆黒のヴィランズ』が大ヒットし、高い評価をいただいたのだと思います。パッチ5.4と5.5も、位置づけとしては前回の積み重ねの時期と同じ位置にあることを、今回改めて認識した感じです。

 パッチ5.4が『暁月のフィナーレ』に向かう前半のストーリーだとすると、パッチ5.5は後半部分に相当します。しかもパッチ5.5が“Part1”と“Part2”に分かれており、後者はさらに後半のクライマックスみたいな位置づけです。今回も皆さんに驚いてもらえる部分をしっかりと作りました。それでも、もっと壮大な何か……ドーンと来るような衝撃を期待されているのだとしたら、それは『暁月のフィナーレ』のほうでさく裂するはずです。むしろ今回はその起爆剤です。そのあたりを踏まえたうえで、裏読みしたほうがいいかもしれません(笑)。

――そうした流れは『漆黒のヴィランズ』で味わっているので、それがまた到来すると期待していいのですね?(笑)

吉田そうですね。用意周到に、いろんな伏線を張り巡らせてあるので、ぜひ楽しみにお待ちください。僕らは旧『FFXIV』を経て『新生エオルゼア』を迎えたときから、こうした積み上げをずっと行ってきました。どうしても過去の設定を語らなければならないために、政治を交えた群像劇に近い展開になりがちでした。世界の基盤をしっかりと作ることと、皆さんにそれを知っていただくため、というのも大きかったです。僕らもよちよち歩きで、めちゃくちゃ肩に力が入ってましたし(苦笑)

――旧『FFXIV』の時代は、「そもそもヤ・シュトラって誰のこと?」みたいな感じでした。

吉田僕たちは、そこからずっと物語を積み上げ、その過程で僕たちも成長させていただきました。何でもかんでも派手に振り切ったり、強そうに見せることが必ずしもいいわけではないことも知りました。いま作っている仕組みや、今後に向けて準備しているシステムも含めて、積み上げの先に待つのが『暁月のフィナーレ』だと思っています。もちろん、パッチ5.5Xシリーズでも、『FFXIV』チームらしいメチャクチャなことをやっているので、メインシナリオだけでなく、新要素全体としていろんなサプライズを楽しんでもらいたいと思っています。

――承知しました。

吉田ご存知の通り『FFXIV』はテレビドラマシリーズのように回を重ねてきた作品ですが、つぎの『暁月のフィナーレ』のゲーム体験をガッチリと作り込ませていただくために、半年ほどの期間を頂戴します。新規の方たちからすると、シーズン1の『新生エオルゼア』からシーズン4の『漆黒のヴィランズ』までの流れを見ておくには、いまが最適のタイミングです。ゆっくりとご自身のペースで進めれば、『暁月のフィナーレ』が開幕するころには立派な光の戦士になっているはずです。とりわけいまの時期はコンテンツを遊び終えたベテラン冒険者たちが積極的に手伝ってくれるはずなので、これからゲームを始めようと思っている未経験者の方にとってもいまがベストです。

 これからプレイされる方、最近始めた方、あるいはベテランの方……あらゆるプレイヤーを対象に、全方位に新要素が散りばめられたパッチになっています。とくに今回はデジタルファンフェスも控えているので、いつも以上に全方位に楽しめるはずです。ぜひそうしたところを期待して遊んでいただければと思います。