2016年に放送され、大人気となった新垣結衣さん、星野源さん主演のTBSドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』、通称『逃げ恥』。現在アマゾンプライムで配信されている本作が、2020年11月30日をもって配信終了となります。
もう視聴ができるのは10日ほどとなってしまいましたが、2021年1月には続編となる新春スペシャルも放送される本作。この機会にひとりでも多くの方に触れてほしい……ということで、本稿ではこのドラマの魅力をご紹介いたします。
TBSドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』（Amazon Prime Video）一度視聴をはじめれば止まらなくなってしまうおもしろさなので、この三連休でイッキ見、あるいは平日含め1日に1話ずつ、たまに2～3話ほど視聴していけば、数日で完走できるはず！
ガッキーや星野さんのかわいらしい演技や、話題になった主題歌の振り付け“恋ダンス”も見どころではありますが、ヒットの理由は、それだけじゃないんです。
ちなみに国内のテレビドラマが充実している配信サービス“Paravi（パラビ）”なら、12月以降も引き続き視聴できる模様。11月中に完走できなかった場合、こちらに入会して続きを観るのもアリかと思います。
家事代行の仕事で知り合った男女の“契約結婚”
『逃げるは恥だが役に立つ』は、海野つなみ氏が描く同名コミックが原作。またドラマ版の脚本は、のちに『アンナチュラル』や『MIU404』も手掛けることになる野木亜紀子氏によるものです。
主人公の森山みくり（新垣結衣）は、派遣切りに遭って求職中の、25歳の女性。論理的に考えて行動したり発言するタイプなのですが、大学時代の彼氏にそのことを「小賢しい」と言われてしまい、そのことをいまだに引きずっています。
再就職に手こずっている彼女を見かねた父親の提案で、みくりは父親の知人のシステムエンジニア、津崎平匡（星野源）のもとで家事代行として働くことになります。
神経質で生真面目な平匡は、これまでに雇った家事代行とはことごとく折り合いが付かず、みくりのことも訝しんでいる様子。けれど仕事が丁寧なうえ、物事を論理的に考え、効率を重視するみくりとは相性が良く、じょじょにふたりの心の壁はなくなっていきます。
そんな中、父親の思い付きにより、みくりは平匡の家での家事代行も辞めざるを得なくなりそうに。いまの仕事を辞めたくないみくりは、平匡の辞めてほしくない意志も確認したうえで「ならいっそ結婚しては？」と持ち掛けます。
ふたりは、家族や知人には互いに恋愛感情を抱いて結婚することにしたと装いつつも、実際は金銭のやり取りを行い、“仕事としての契約を交わして事実婚（婚姻届は出していない状態のこと）をする”、“契約結婚”という関係を結ぶことに。
しかし、ふつうとはかけ離れた奇妙な関係となったみくりと平匡のゆく手には、さまざまな困難が待ち受けていたのです。
少しずつ惹かれ合うふたりだが……問題は山積み！
労働条件に不都合が生じれば、話し合い、必要に応じて契約書の内容を更新。互いにとってフェアな関係を心掛ける。みくりと平匡は、少しずつ一緒にいることを心地よく感じるようになり、恋愛対象としても惹かれ合ってゆきます。
しかしここで困難として立ちはだかるのが、平匡が“プロの独身”を自称するほどに、恋愛経験に乏しいこと。みくりからのちょっとしたアプローチで、すぐに心を閉ざしてしまいます。
自分のような男では、人並みに恋愛をしてきたみくりとは不釣り合いではないかという卑屈さ、恋愛経験の乏しさをみくりに知られたくない羞恥心、そういった気持ちが平匡をかたくなにさせているのです。
さらに、平匡の同僚で、みくりに好感を持っている風見（大谷亮平）に契約結婚のことがバレて、みくりが風見の家でも家事代行の仕事をはじめることになるなど、事態はどんどんややこしい方向に。
そんな状況に業を煮やし、平匡の気持ちを動かしたいみくりから、あの手この手の行動に出ることも。とくに印象的なのが、第5話でみくりから平匡に提案する、毎週火曜日を“ハグの日”にして、一週間に1回だけ、ハグをする日を設けよう、というもの。
スキンシップすら制度化し、互いに癒やされることのメリットを論理的に主張するなどの方法で、平匡のガードを少しずつ解いていきます。
放送当時はこのじれったいけれど困難を乗り越えるたびにキュンとする展開が待っているストーリーが“ムズキュン”と呼ばれ、話題となりました。
また、困難に直面したときのみくりの妄想が、『情熱大陸』や『劇的ビフォーアフター』、『サザエさん』や『開運！なんでも鑑定団』など、さまざまなテレビ番組のパロディーになっているあたりも、コメディー作品としての本作見のどころとなっています。
いろいろな立場の人の味方になってくれるドラマ
みくりと平匡の歩みは一般的なラブストーリーとはぜんぜん違う、独特なものです。しかし、男性に「小賢しい」と言われることもあったみくりが、論理的に議論ができる平匡とは相性抜群だったり、そんな平匡の恋愛経験の乏しさが、みくりにとっては些細なことであったり。
本作はラブコメディではありますが、世の中でまかり通っている恋愛や結婚への固定観念に対する批判的な台詞や展開が目白押しで、こういった点がじつに痛快。むしろこの手のジャンルが苦手な方にこそ視聴してみてほしい作品でもあるのです。
みくりの叔母で、恋愛を諦めているキャリアウーマンの百合（石田ゆり子）や、平匡の同僚で、ゲイの沼田（古田新太）などの登場人物を通して、主役のふたりとはまたべつの幸せの形が描かれていたり……。偏見を気にせず生きようとしている人が、じつはかえって偏見を意識しすぎているかもしれない、といったハッとさせられる場面も。
星野源さんが歌う本作の主題歌『恋』は大ヒット曲となり、振り付けが“恋ダンス”として一世を風靡しましたが、その歌詞は本作でのみくりと平匡の関係のあり方も端的に表しています。
サビの歌詞にある「夫婦を超えてゆけ」は、本作の最終回のタイトルにもなっています。夫婦の「こうあるべき」といった固定観念を乗り超えたふたりの結末を、ぜひ多くの方に見届けてほしいところ。
ラブコメディでキュンとしたい方から、ちょっと生きづらさを感じている方まで、『逃げ恥』は、いろいろな人の味方になってくれるドラマです。
そしてひとりでも多くの方に、2021年1月に放送される『逃げるは恥だが役に立つ ガンバレ人類！新春スペシャル！！』をリアルタイムで視聴していただきたいと願ってやみません。
