誰もいない渋谷に閉じ込められた8人の幼なじみを軸に、疑念渦巻く不可思議な物語が展開されていくVRミステリーアドベンチャー『東京クロノス』。SteamのVR部門で売り上げランキング世界1位を記録するなど、大きな話題になったこの作品を生み出したのがMyDearestだ。
同社の動向に世界中のファンが注目するなか、2020年12月4日に『東京クロノス』の続編がリリースされる。その名は、『ALTDEUS: Beyond Chronos(アルトデウス: ビヨンドクロノス)』(以下、『アルトデウス: BC』)。約300年後の地球を舞台に、人類と超巨大異生物“メテオラ”との戦いを描くVR専用(※現在はOculus Quest/Riftに対応していることが発表されている)のタイトルである。
『アルトデウス: BC』)のストーリーは、探索と会話がメインのアドベンチャーパートと、人型巨大兵器のマキアを操り、メテオラと相対するアクションパートで展開。プレイヤーは、メテオラに対抗すべく造られたデザインドヒューマンのクロエとなり、人類最後の都市A.T(Augmented Tokyo)を守るために、個性豊かなキャラクターたちと協力して戦いをくり広げる。
メディア向けに配られた体験版では、30分程度のオリジナルストーリーを通して、アドベンチャーパートとアクションパートの一部がプレイできた。短い時間の中で体感した本作の魅力を、記事担当ライターのジャイアント黒田(エースパイロットを夢見る36歳)がリポートする。
筆者がいちばん、編集部でマキアをうまく使えるはずなんだ
「ジャイクロ(※)、マキアのタッチパネルを操作するとき、ずっと指差しポーズになってたぞ」
※ジャイクロ……筆者であるジャイアント黒田の愛称。
ヘッドマウントディスプレイとヘッドホンを取った筆者は、担当編集である武藤先輩のダメ出しで、約300年後の架空世界から現実世界に引き戻された。
「VRゲームって、ノリノリでプレイするのも大事じゃん? もっとカッコよく操作しているところを見せて、俺を楽しませてよ!」
なかなか仕事に戻らない武藤先輩を楽しませる必要はないのだが、もっとカッコよく操作して、という意見はもっともだ。ノリノリでプレイしたほうが気持ちも昂るというもの。筆者自身、アクションパートでマキアを操縦するまでは、スマートに操作できると楽観視していた。
しかし、現実はそう甘くなかった。操縦マニュアルを片手に「こいつ……動くぞ!」と機体を起動してみせた引きこもりがちの少年や、「無茶苦茶だ! こんなOSでこれだけの機体を動かそうなんて!」と瞬時に問題点を見抜き、わずかな時間でOSを書き換えた聡明な少年のようにはいかないらしい。彼らはなんて適応力が高いのだろう。これが若さか……。
人型巨大兵器マキアのパイロットになったときの気分は、ロボットを巧みに操るヒーローそのもの。まさに「僕がいちばんマキアをうまく操縦できるんだ!」という心持ちになっていた。格納庫からゆっくりとエレベーターで戦場へと向かう、筆者が乗り込むマキア。
その間も、マキアと自身の操作のリンクを行う工程などがあり、テンションもどんどん上がっていく。マキアとのリンクが終わると、自身が右手を上げれば目の前に映るマキアの右手が動き、自分がマキアを操作している感覚というのを存分に味わえる。シンクロ率は100%だ。
だが、いざ敵を前にして的確な判断を求められると、気持ちが焦ってしまい、体が思うように動かない。体験版に収録されていた、メテオラと戦うシチュエーションも緊張に拍車をかけた。仲間のヤマトが搭乗するアレス・マキアと出撃するのだが、筆者の分身であるクロエの役目は、シールドで敵の攻撃を無効化し、蓄えたエネルギーを転用して反撃するという非常に重要なもの。
気持ちに余裕のあったブリーフィングでは、「おいしいポジション!」と思ったが、いざ戦闘が始まると、VRでのタッチパネル操作などに悪戦苦闘。その姿はまるで、初めてパソコンに触れた人のよう。おっかなびっくり、人差し指でキーボードを操作していた中学生時代を思い出した。いや、実際に人差し指でタッチパネルを操作していたんだけどね……。
本来であれば、『アルトデウス: BC』のPVなどで見られるスマートな操作でシールドを形成し、敵の攻撃を防いで反撃に転じるはずが、最初のプレイでは入力するのが遅かったようで、シールドの形成に失敗。敵の攻撃をもろに食らってしまう。だが、そこは人類の英知が詰まった人型巨大兵器である。さすがマキアだ! なんともないぜと言わんばかりの屈強さで敵の攻撃に耐えてくれた。
どうやら、このシーンはシールドの形成の成否に関わらず、ストーリーが先に進行するらしい。射出されたレールキャノンを使い、メテオラを射撃するシーンへと進んだ。両手でレールキャノンをつかみ、合体させてエネルギーを充填させる(※実際に自分の腕をそのように動かす)。ロボットモノのアニメやマンガ、ゲームで見てきた名場面を、まさか自分で操縦できる日がこようとは。戦闘中に流れる歌つきのサウンドも、テンションをいっそう高めてくれる。
シールド展開は、とっさの操作で失敗してしまったが、レールキャノンの射撃はなんとか成功。筆者の初出撃は辛勝ながらも、なんとかメテオラを撃破できた。一連のアクションパートをプレイして感じたことは、『東京クロノス』と比べて臨場感や没入感が大きく増したということだ。
筆者の技量のせいで、理想のエースパイロットのようにはいかなかったが、それでもマキアを操縦する楽しさを体験できて満足だった。本編では、ほかにどのようなアクションパートが用意されているのか。実際にプレイするのが待ち遠しい。
二度も(操縦が下手って)言ったね! 親父にも言われたことがないのに!
アクションパートの前後には、アドベンチャーパートも収録されていた。前半のアドベンチャーパートの内容は、クロエの親友であるコーコとの想い出の場所で、コーコにまつわるモノに触れ、記憶の中のコーコとの会話シーンを見られるというものだった。
手から表示されたポインターを気になるところに合わせると、対象物の名前などの情報が閲覧できるという、VRゲームならではの操作を体験。これも前作の『東京クロノス』にはなかった要素。対象物に手を伸ばして拾うといったシステムも加わり、アドベンチャーパートでもVRゲームとして進化していることが感じられた。
また、キャラクターとの会話でも立体音響が効果的に使われている。キャラクターの立っている位置からしっかりと音声が聴こえてくるので、たとえばキャラクターを背にしたりすれば、後ろから話しかけられている感覚などが体感できた。今回の体験版では、そういったシーンはなかったが、距離が近い状態で話をしたり、逆に自分のまわりに人がいる状況での会話など、状況に応じた変化も楽しめそうだった。
さらに後半では、巨大なマキアやキャラクターを下から眺める演出も入る。こちらもVRのゲームならではで迫力満点。ビジュアルもパワーアップしており、イラストレーター・LAM氏が生み出したキャラクターと、I-IV氏がデザインしたマキアが、3Dで巧みに再現されていて好印象だった。
ちなみに、体験版に登場したキャラクターの中では、全身を義体化したマッドサイエンティストのジュリィがお気に入り。エキセントリックな言動が多いのだが、とくに印象に残ったのは蜘蛛のような細長い手を動かすシーン。妙にリアルで艶かしくて、ゾクゾクしたのを覚えている。手を動かすと機械音が鳴るのも素敵。製品版でジュリィと絡むのも楽しみだ。
楽しみと言えば、体験版には収録されていなかった、VRのライブシーンも早くプレイしてみたい。アクションパートの説明で少しだけ触れたが、本作はサウンドにも相当力が入っている。前作からパワーアップしたビジュアルとサウンドが融合し、生み出されるライブシーンも、ハイクオリティなものになるに違いない。体験版をプレイして、12月4日の発売がよりいっそう待ち遠しくなった。
発売日に向けて、少しでもマキアの操縦に慣れなければ。2回目のプレイでは入力に成功し、シールドを展開して気分よくクリアーできた。
「また人差し指が伸びてたぞ。あと、入力するシーンは一筆書きでいけるから。いちいちアイコンをひとつずつタッチしなくても大丈夫なんだけどなあ。ロボットの操縦向いてないんじゃない?」
現実世界に帰還後、武藤先輩から飛んでくるきびしいパイロットの教え。筆者がエースと呼ばれる日は遠そうだが、発売日までになんとか形にしたいと心に誓った。