賞金総額が2500万円を超える、スマホ向けバトルロイヤルゲーム『荒野行動』のeスポーツ大会“荒野CHAMPIONSHIP‐王者の絆”。30万人以上ものプレイヤーが参加した本大会の、頂点を決める戦いが、2020年5月31日に行われた。
その荒野王者決定戦に参加したのは選び抜かれた猛者中の猛者たち。昨年開催された“荒野Championship-元年の戦い”の覇者“ちーむえーけー!!”を始め、おなじく準優勝の“Risky”。さらには、“TeamαD”や“芝刈り機っす”、“【FG】Mantis”、“Appleπ”など、さまざまな大会で活躍中の有名チームが多数参加。
頂点を決めるにふさわしいメンツが出揃ったと言えるだろう。
時節に合わせたオンライン大会が大盛り上がり
さて、先日緊急事態宣言が解除されたとはいえ、オフラインでの大会開催はまだ不可能。本大会もやむなくオンラインでの開催となり、筆者としては昨年ほどの盛り上がりが見られるのか不安な面もあった。
だが、それは杞憂というもの。大会名にもある“絆”をキーワードに、開発・運営のNetEase Gamesはコミュニケーションの場を提供した。Twitterで観戦中のポーズを募集したり(後述)、Web会議サービス“Zoom”を使って有名実況者を含む100人で試合を観戦したりなど、共通の話題でプレイヤー間の絆作りをサポート。
こういった施策の甲斐もあって、YouTube LiveとPeriscope配信の最大視聴者数は合計で10万人以上。昨年の約6万5000人を大きく超える数字を叩き出した。
外出自粛が続く中、離れた場所でも盛り上がりを共有できるオンラインゲームの優位性をうまく活用し、ニーズに合った娯楽コンテンツを提供できた結果だ。
また、実際に会場へと足を運ぶことができない代わりに、生放送の見せかたは大きく向上していた。豪華なスタジオはもちろん、大きな変化は“王者の道”と称された試合解説コーナーだ。
強豪チームとして名高い【FG】Mantisのストリーマー・V3氏が、各試合の終了後にその試合の要点を簡潔に説明してくれる。
トップクラスのプレイヤーどうしの駆け引きは、試合を見ただけでは気づけない部分も多々ある。それを切り取って初心者にも分かりやすく解説してくれるので、視聴者にも大人気。
さらには、モニターにマップを映して解説するV3氏の様子がテレビの天気予報のようだと話題になり、V3氏自身もそれに乗っかって冗談を言うなど、出演者と視聴者の距離の近さが感じられるシーンも見られた。
新たな要素が人気を得る中、実況解説はお馴染みのおふたり。昨年に引き続き、元テレビアナウンサーの柴田将平氏と人気実況者のBocky氏だ。
番組MCを務めたのは、これまた昨年に引き続きタレントの百花繚乱氏と、アイドルの篠崎こころさん。
配信のクオリティだけでなく、試合の内容もすさまじいものだった。解説のBocky氏もコメントしていたように、注目チームを絞れないほどの猛者揃い。それでも強いて挙げるとすれば、やはりシード権を得て出場した“ちーむえーけー!!”と“TeamαD”の2チームだろうか。
昨年大会で圧倒的な実力を見せつけた“ちーむえーけー!!”は、2連覇にも期待がかかる。果たして、その結果やいかに。
本大会は全5試合が行われ、合計獲得ポイントで順位が決定する。なお、西日本王者決定戦3位通過の“No.name”は欠場したため、19チーム95名での戦いとなった。
ここからは、各試合の模様をお届けする。先に少しだけ結果を言ってしまうと、優勝チームと準優勝チームの差は、たったの5ポイント差だった。
『荒野CHAMPIONSHIP - 王者の絆』王者決定戦
第1試合からキルゲームに!
第1試合の舞台は“激戦野原”。大舞台での大事な初戦だけに、慎重に動き出すチームが多いと思われたが、“Risky”がいきなり積極的にキルを取りに行く姿勢を見せた。素早く武器を拾うと車に飛び乗り、まだ武器を持っていないプレイヤーを探して狩りだしたのだ。
西日本王者決定戦でキルマシーン賞を獲得したApostel666Mple選手も、その凶弾に倒れてしまった。序盤から波乱が巻き起こる。
それに続くかのように早くも頭角を現したのが、“ちーむえーけー!!”だ。“BsTgrizzly”をひとり、またひとりと撃ちぬくと、彼らが立てこもる家を囲い込むように展開しつつ距離を詰めていく。そして家の2階に投擲物を投げ込むと、そのまま家の中に突入。瞬く間に1チームを壊滅に追いやった。
そんな激戦を最後まで生き抜いたのは、“今日好き~佐渡島編~”、“TeamαD”、“モブ吉家”だ。有利なポジションを維持し続けた“今日好き~佐渡島編~”は、ここまで5人全員が生存。その人数差を活かしてほかを圧倒し、誰も欠けることなく試合を制した。
— 荒野行動 eスポーツ 事務所 (@KNIVESOUTCHAMP)
2020-05-31 13:59:16
2試合目で13キル獲得!? キルマシーン賞に王手か
第1試合とは打って変わり、2試合目は序盤から膠着状態が続いた。中盤に大きくキルを稼いだのは“Risky”のRsyluxFloat選手。つぎからつぎへとキルを取りまくり、なんと脅威の8キルを獲得。
彼は第1試合でも5キルを獲得して試合のMVPに選ばれており、これで合計13キル。西日本王者決定戦でキルマシーン賞を獲得したApostel666Mple選手が5試合を通して奪ったキルが14キル、東日本のキルマシーン・モブ吉モブ子!選手が13キルだったことを踏まえれば、2試合目で13キルというのがどれだけ驚異的な数字かお分かりいただけるだろう。
しかし、“Risky”は連戦のダメージがたたってここで脱落。最終局面まで生き残ったのは、“ちーむえーけー!!”、“【FG】Mantis”、“芝刈り機っす”、“梶原家”、“Raccoon”だ。安全地帯が収縮するタイミングで全チームがいっせいに動き出す。
この乱戦でひと際輝いていたのが“ちーむえーけー!!”。“芝刈り機っす”との打ち合いを制すと、有利な高台を占領している“Raccoon”に対してグレネードを投擲。体力を削いだところに追い打ちの毒ガス弾を投げ込み、そのまま撃破。
このまま“ちーむえーけー!!”が勝利するかと思われたが、“梶原家”が最後の撃ち合いを制し、第2試合の勝者となった。
— 荒野行動 eスポーツ 事務所 (@KNIVESOUTCHAMP)
2020-05-31 15:02:06
第3試合ではTeamαDが大量キルで1位を獲得!
第3試合の舞台“東京決戦”は、東京の街並みをモチーフに作られたマップだ。高いビル群が立ち並び、物理的な距離は近くても建物を隔てているため、なかなか射線が通らない。そのため銃撃戦が起きにくく、勝敗の行方は終盤戦に持ち込まれた。
有利なポジションを取ったのは“今日好き~佐渡島編~”と“TeamαD”。解説のBocky氏によれば、安全地帯が寄った2チームのうち、より有利なのは階層の高いマンションを占有している“TeamαD”とのこと。
だが、それでも油断は禁物。寄ってくる敵を高所から狙い撃ちできるものの、潜り抜けて下に入られてしまうと厄介だという。
高さを活かしてキルを重ねていく“TeamαD”。しかし、奇しくも階下に入られてしまうところまで解説どおりの展開になってしまった。
突入したのは撃ち合いの火力に定評のある強豪“祝祭”。スモークグレネードを展開して相手の視界を奪ったものの、3対5の人数差が響いたか、ひとりも倒すことなく返り討ちにされてしまった。
ここで大きくキルを稼いだαDCRAZY選手は、この試合で8キルをマーク。第3試合ではキルを取れなかったRsyluxFloat選手と並んで合計キル数は13となった。
なおも5人生存のTeamαDはその人数差にあぐらをかくことなく、スモークグレネードで相手の射線を妨害しながらの丁寧なクリアリングで索敵を続けた。着実に残敵を掃討し、危なげなく第3試合の勝利を決めた。
— 荒野行動 eスポーツ 事務所 (@KNIVESOUTCHAMP)
2020-05-31 15:40:46
“ちーむえーけー!!”が王者の貫禄を見せつける!
本日2回目の激戦野原での試合。第1試合では序盤からキルゲームとなったが、今回はややスローペースで展開した。試合が大きく動いたのは、やはり終盤。
“今日好き~佐渡島編~”が1名、“Raccoon”が1名、“ちーむえーけー!!”が4名、そして“鶴田家”が5名全員を残して迎えた最終局面。安全地帯は“鶴田家”に寄り、圧倒的に有利かと思われた。
ここで動いたのが“ちーむえーけー!!”だ。まずは鶴田家がいる建物の窓側に毒ガス弾を投擲。これによって鶴田家を窓から遠ざけ、自分たちを狙いにくくした。そして、間髪入れずにスモークグレネードで相手の視界を奪うことに成功する。
そして再び窓際にグレネードを投擲した。毒ガス弾の効果が切れたところに戻ってくる鶴田家を牽制し、一気に距離を詰める。
ここまでで完全にペースを掴んだ“ちーむえーけー!!”は撃ち合いでも力を発揮。なんと4対5と人数がひとり少なく、なおかつ相手に有利な建物を抑えられていたにも関わらず、誰ひとりやられることなく5人全員を撃破してしまったのだ。
その姿には王者の貫禄を感じざるを得なかった。
— 荒野行動 eスポーツ 事務所 (@KNIVESOUTCHAMP)
2020-05-31 16:53:08
トップ争いをする“TeamαD”にまさかの展開が
ついにこの試合で勝負が決まる。これまでコンスタントに大量キルを重ねて圧倒的なポイントを稼いでいるのが“TeamαD”。そこへ第4試合の勝利によって猛追するのが“ちーむえーけー!!”だ。
首位争いをする“TeamαD”に、“【FG】Mantis”が勝負を仕掛けた。戦いの舞台となる嵐の半島では、マップ中央やや下寄りにあるデパートに降りるのが“TeamαD”の鉄板戦術。それをもちろん知っている“【FG】Mantis”は、あえてそのすぐ近くに降下。そうそうに潰しにかかったのだ。
物資を揃えた後、“【FG】Mantis”はさっそく強襲を仕掛けた。しかし、解説のBocky氏によれば、“TeamαD”はデパートに敵が入ってきたときの対策を完璧に行っているという。
その言葉どおり、“TeamαD”は強襲にまったく焦る様子を見せなかった。結局、“TeamαD”は誰ひとり落とされることなく、“【FG】Mantis”を全滅させて大量のキルポイントを稼いだ形に。
優勝へ大きく近づいたと、安心したのもつかの間。“TeamαD”は安全地帯に嫌われてしまった。すでに体力も少なく、安全地帯の中で敵から待ち伏せられる絶望的な状況に。だが、そんなときでもすぐに最善策を選べるのが猛者たるゆえんだ。
付近に散らばっていたデスボックスから回復物資を集めつつ移動すると、近くにふたりの敵を発見。安全地帯に入ることは諦め、このふたりのキルポイントを回収することを優先した。
まずはひとりをダウン状態に。そのまますぐにキルすると、隣りのもうひとりも秒殺。その後は自身も安全地帯外のダメージを受けて倒れてしまった。
“TeamαD”はここで脱落となってしまったものの、この2キルで10ポイントを稼げたため、実質的に生存順位を上げたようなもの。とっさの判断力と正確な射撃の腕を兼ね備えているからこそのポイント獲得だった。
さて、“TeamαD”を見放した安全地帯に、逆に好かれたのは“ちーむえーけー!!”。第4試合の勢いに乗ったまま、逆転優勝に向けて大躍進を遂げていた。ライバルが脱落したと見るや否や、ここが好機と一気に攻め立てる。
Bocky氏いわく、“ちーむえーけー!!”のウリは爆発力。ノリにノッた彼らを止められるものは、強豪が集まる荒野王者決定戦にすらいなかった。
電光石火のような攻めで、気が付けばこの嵐の半島に立っているのは“ちーむえーけー!!”の選手だけとなった。
あの2キルで“TeamαD”が逃げ切ったのか!? “ちーむえーけー!!”が逆転優勝か!?
“TeamαD”はすべての試合で高得点を重ねてきた。最後は順位ポイントこそ伸びなかったものの、最後に執念の2キルを取ったことで10ポイントを獲得。このポイントがどう響いてくるのか。
そして、第3試合までは伸び悩んでいた、昨年の覇者“ちーむえーけー!!”。第4試合の勝利で勢いに乗ると、まさかの2連続勝利でいっきに追い上げてきた。優勝争いは完全にこの2チームに絞られた。はたして、その結果は!?
【優勝】
ちーむえーけー!!
【キルマシーン賞】
αDCRAZY
優勝は、たったの5ポイント差で“ちーむえーけー!!”となった。惜しくも準優勝となった“TeamαD”だが、キル数は53と“ちーむえーけー!!”に10キルもの差をつけてダントツ。キルマシーン賞もαDCRAZY選手が18キルで獲得するなど、すさまじいキルポテンシャルを見せつけた。
そして3位は、なんと東日本王者決定戦で華々しいデビューを飾ったモブ吉家。勝利こそ1度もなかったものの、安定して高得点を重ね続けた結果、4位に30ポイント差をつけての3位に。やはりその実力は本物だった。
本大会は外出自粛の最中で行なわれ、選手たちは自宅からオンラインで参加していた。最後に、優勝した“ちーむえーけー!!”の全員とビデオチャットをつなぎ、インタビューが実施された。
終始5人全員が笑顔だったのが印象的だ。『荒野行動』を通して、5人の絆が深く結ばれていることが感じられる。共通の高い目標をもって切磋琢磨し、ともに成長してこられたことが大きいのではないだろうか。ただ遊ぶだけでなく、大会に本気で取り組むことで、絆がさらに深まったのかもしれない。
また、“ちーむえーけー!!”はファンの多いチームでもある。その5人がこうした舞台で活躍を見せることで、視聴者も大いに感動・興奮し、気持ちはひとつになったはずだ。
大会を通して深まったプレイヤーたちの“絆”
今回はオフラインでの開催こそ叶わなかったが、SNSなどを通じて盛り上がりを共有できた。観戦ポーズの投稿を促したり、有名実況者といっしょに観戦したりなど、公式の企画も多数実施。こういった施策も功を奏してか、Twitterで“#荒野CHAMP”がトレンド1位になったようだ。
勉強が進みません
— 達磨乂陽! (@y_o_u_cha_)
2020-05-10 16:10:47
TVで観戦してます
#CHAMP観戦ポーズ https://t.co/ueGp4QVOMl
— あきのり (@hrdakinori)
2020-05-10 14:48:50
#CHAMP観戦ポーズ
普通に見てます
えなこさん×ふぇいたんさん( ≖͈́ ·̫̮ ≖͈̀ )ニヤァ https://t.co/fLBFIW6pfc
— ひつじ【DDD/FG/にーと】 (@_gmkj)
2020-05-10 15:51:44
その構図はまさしくスポーツそのもの。こんなご時世でも感動を与えてくれるのは、eスポーツならではの魅力と言っていいだろう。今後もしばらくは外出を控えたほうがよさそうだが、本大会のようにこの逆風を乗りこなして、eスポーツ業界全体が成長することを願いたい。
本大会の全体図を見ると、プレイヤー間の結びつきを大切にしていたように思う。若いプレイヤーの元気な姿や白熱の戦いを届けることで、地理的な距離を越えて記憶に残る感動を伝えたかったのだろう。
本大会は日本における最大級のeスポーツ大会だ。近年、国内でも徐々にeスポーツ大会が注目を集めつつある。緊急事態宣言によってオフラインのスポーツやイベント開催が難しい局面を迎えているいま、日々を生きる活力をオンラインで届けることが必要なのかもしれない。それだけの力が、eスポーツにはある。
本大会の名称は“荒野CHAMPIONSHIP‐王者の絆”。その名の通り、“絆”がテーマだ。
試合の合間に実施された選手インタビューから、日々の練習の様子や努力の姿勢が伝わってきた。たとえリアルでは会えなかったとしても、逆にそれが絆が深まるきっかけになる。応援するファンにとっては交流の足掛かりだ。
『荒野行動』は人々をつなげるもの。今回の荒野CHAMPIONSHIPは、今年もっとも感動をもらったゲームイベントかもしれない。とはいえ、2020年はまだ半分も終わっていない。これ以上のイベントが生まれることにも期待したい限りだ。
“荒野CHAMPIONSHIP‐王者の絆”を通して生まれた絆がプラスのエネルギーに変わり、世の中にいい方向に及ぼしたらうれしい。少し大げさかもしれないが、たしかにそう感じた。
配信は最後に、百花繚乱氏が「また来年お会いしましょう!」と力強い言葉を残して幕を閉じた。もしかしたら、2021年もまた“荒野CHAMPIONSHIP”が開催されるフラグだろうか。続報を待とう!