2020年3月19日についに発売を迎えたPCエンジン mini。1987年に発売された“PCエンジン”を手のひらサイズにミニ化したハードで、収録された計58タイトルの名作をいつでも楽しめるという、当時のPCエンジンファンなら見逃せない逸品だ。

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ちなみに、2020年3月19日発売の週刊ファミ通2020年4月2日増刊号ではPCエンジン miniを大特集!

 本記事では、自伝的マンガ『ピコピコ少年』の第3話“PCエンジン少年”でそのPCエンジン愛を語るなど、熱烈なPCエンジンファンとしても名高いマンガ家押切蓮介先生にPCエンジン miniをプレイしてもらい、その触り心地や当時の思い出を聞いた。

 ……と思いきや、『スプラッターハウス』をプレイし始めるやいなや、あまりの懐かしさにガチプレイ!

 インタビュー中にゲームを1本クリアーするのは、おそらくファミ通史上初となる快挙(?)。PCエンジンをこよなく愛する先生が語る想いをじっくりとご覧あれ。

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『ピコピコ少年』第3話“PCエンジン少年”。PCエンジンを求めて(自転車)でさまよう作者の姿が描かれる。(C)押切蓮介/太田出版
『ピコピコ少年』1巻(Kindle版)

押切蓮介 氏(おしきり れんすけ)

マンガ家。アーケードゲームを通じて知り合う少女と少年の恋模様を描く『ハイスコアガール』(スクウェア・エニックス刊)や『ピコピコ少年』(太田出版刊)などゲームをテーマにしたマンガ作品を多く発表。現在は、『ハイスコアガールダッシュ』(月刊ビッグガンガン連載/スクウェア・エニックス刊)、『狭い世界のアイデンティティー』(『モーニング・ツー』連載/講談社刊)を連載中。

運命のご対面

――押切先生といえば、子どものころのさまざまなゲームの思い出を描いたマンガ『ピコピコ少年』で、PCエンジンを買いにさまようエピソードを描かれるほどのPCエンジンファンですよね。

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『ピコピコ少年』第3話。(C)押切蓮介/太田出版

押切 そうそう。当時(神奈川県)川崎市に住んでいたんですが、そこから分倍河原というところまで自転車で行って、当時は「もう、行くしかねえ!」っていう気持ちで走っていましたが、その走行距離って、いま改めて地図を見ると最短ルートでも20キロ弱あるんですよ。いかに当時の僕がPCエンジンを欲していたかということですよ。

――「山を越えれば聖蹟桜ヶ丘…… ここまで来れたのも俺のPCエンジンに対する執念!!」というセリフがあります。

押切 PCエンジンにシャトルという名前のハードがありました。僕は「UFO」と呼んでいたんですけど、それがどうしても欲しくて、中古で1万円くらいで買える場所を求めて探していたんです。

――しかも途中で雨が降ってきたり、極めつけにひき逃げに遭うという……あれ、マジですか?

押切 実話です。ひき逃げに遭いました。

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『ピコピコ少年』第3話。(C)押切蓮介/太田出版

押切 そんな思い出話もいいですが、早くPCエンジン miniをプレイさせてください!

――焦らないで……。

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PCエンジン mini メニュー画面。

押切 うわぁ……。源平討魔伝』と『スプラッターハウス』が並んでいるのって最高ですね

――押切先生的にはまずそこが気になりますよね。本機には海外版のゲームも含めて計58タイトルが収録されていますので、まずはざっと。

押切 この2タイトルをちゃんと並べているのが最高ですよ。開発者の方、わかってる

――ほかのゲームも見てください(笑)。

押切 この2タイトルはHuCARD(※)をいまだに持っていますからね。

※HuCARD……ヒューカード。PCエンジンのソフトカートリッジの名前。

――先生は、PCエンジン miniでなくても、ミニじゃない方の本体で遊べるわけですね(笑)。

押切 僕はそうですけど、それがひとつになっているのがいいですよね。これだけのソフトがまとまっているのは、PCエンジンファンにはたまらないですね。あと、いまPCエンジンを実機でプレイしようとすると映像の出力がたいへんなので、HDMI端子が挿せるのがすごくありがたいのでは。

――タイトルを見てグッとくるものはありますか?

押切 やっぱり! この! 『源平討魔伝』と! 『スプラッターハウス』が!!

――落ち着いてください。

押切 しかし、こうやってタイトルのパッケージを見ると、買った当時の値段が頭に浮かんできますね。

――と、言うと?

押切 僕はPCエンジンが大好きで、HuCARDを集めることに情熱を注いでいたんです。でも、当時は小学生とか中学生だったから、お金がそんなにありませんよね。だから、いろいろなゲームショップに足を運んで、そのときの価格情報を頻繁に集めていたんです。

――情報を集めて、安いソフトがあれば買っていくと。

押切 どのタイトルがどれだけ値段が下がったとか、これはこのくらいに下がったら買うぞとか。だから、パッケージを見ると反射的に値段が頭の中に出てくるんですよ。

――そんなフラッシュバックが出るとは、それだけ強く心に残っているということですね。

押切 じゃあ、まず『THE 功夫』から。うわぁ懐かしいなぁ。

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『THE 功夫』。1987年に発売されたシンプルな横スクロールアクションゲーム。当時は、他のハードでは表現できない巨大なグラフィックのキャラクターが操作できることが話題に。

――そこからやりますか(笑)。『THE 功夫』はソフトを持っていたんですか?

押切 持ってました持ってました。もうねえ、2面のボスからグラフィックを使い回すっていうのがすごい好きで。1面の色違いが2面に出てくるんですよ。

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1面のボス。
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2面のボス。

押切 攻撃の判定がけっこうシビアで、難しいんですよね。このタイトルは『ハイスコアガール』でもキーポイントとして扱われているゲームだったので、感慨深いです。

――先生が「PCエンジンを購入したい」と思ったきっかけは何だったのでしょうか。

押切 僕のゲームプレイ歴はゲームセンターから始まったんですけど、PCエンジンはアーケードゲームの移植が多かったんですよね。スーパーファミコンにも移植されたゲームはありましたけど、やっぱりこっちのほうが惹かれるものがたくさんあって。

――アーケードからの移植作も売りのひとつでしたね。

押切 PCエンジンは、発売後しばらくしてから買ったんですけど、ほかの人はスーパーファミコンにいくところを僕はPCエンジンでしたからね。学校でも友だちと話が合わない合わない(笑)。

――(笑)。PCエンジンはわりと大人向けという印象のあるゲーム機でしたし、小学生のファンは当時そこまで多くなかったかもしれませんね。

押切 友だちが僕の家に遊びにきたときは本体デザインの近未来感もあいまって「このゲーム機、何!?」というリアクションが当たり前でしたよ。みんなファミコンとスーパーファミコンでしたからね。つぎは『大魔界村』やります。

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『大魔界村』。1990年にカプコンより発売。屈指の難度を誇る『魔界村』の続編で、アクションゲームガチ勢に愛された名作。地上に出現した大魔王から世界を救うため、アーサーはふたたび魔界を進む。

――『魔界村』シリーズは高難度で有名ですけど、さすがにプレイが上手ですね。

押切 体が覚えているんですよね。

――何かの達人みたいに。

押切 アーケードのアクションゲームは本当にやり込んだものが多いので、何年経っても操作は忘れないですよ。『大魔界村』はメガドライブにも移植されましたけど、PCエンジンのほうがアーケード版に近いかな? けっこういい感じです。

――私には違いがわかりません……。

押切 いや、ぜんぜん違いますよ。

――コントローラはオリジナルのものと同じ形状、同サイズなのですが、触り心地はいかがでしょうか?

押切 PCエンジンのものとまったく同じなんですね。かなりなじみます。……じゃあ、つぎは『PC原人』を。

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『PC原人』。1989年発売。PCエンジンを代表する横スクロールアクションゲーム。頭突きによる攻撃が特徴で、肉を食べると2段階にパワーアップする。

――ドンドンいきましょう。当時遊ぶゲームはアクションゲームが多かったですか?

押切 アーケードにはアクションとシューティングが多かったので、やっぱりこのへんが多かったですね。ああ~懐かしいな。いま遊んでもよくできていますね。

――大きな頭で頭突きをして攻撃するのが特徴的でした。横スクロールのジャンプアクションで、当時はポストマリオ的な、家族の誰でも遊べるキラータイトルだったのでしょうね。

押切 世界が……明るいです。ではつぎは『グラディウス』を。

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『グラディウス』。横スクロールシューティングゲームを代表する一作。道中に出現するパワーアップアイテムを獲得するごとにパワーアップする項目が切り換わり、内容を自分で選べるのが画期的だった。

押切 ここで待っていると無敵なんですよね。

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ここ。

――すごい。

押切 同じシューティングゲームで、こっちは縦シューの『ドラゴンスピリット』も収録されていますね。これもすごくおもしろいゲームなんですけど、当時めちゃくちゃ安く買えたんで、よく覚えています。たしか280円くらいで買った記憶が。

――お金がない子どもにはすごくありがたい価格ですね。ゲームをコレクションするのも好きだったんでしょうか。

押切 もうなんでもいいからPCエンジンのソフトを集めたいという感じでした。

――ソフトは全部で何本くらいお持ちだったんでしょうか。

押切 正確には覚えていないですが、かなり持っていましたよ。HuCARDって当時は値段が下がるのが早かったので、1000円以内で買えるおもしろいタイトルがいっぱいありました。そういう意味では子どもにすごくやさしいハードでしたね。さて、つぎは『悪魔城ドラキュラ』を。

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押切 うわっ。ロードのときにCDを読み込む音がしてません!?(笑) いま、不意打ちでそれを聞いたから、“キュルキュル音”が聞こえたときに「えっ、どこかでPCエンジンが動いてる!?」って思っちゃいました。

――タイトルのロード時には、ソフトによって演出が入ります。これはかなり……ぐっときますよね。

押切 激アツじゃないですか。これだけで買う価値ありますよ。

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『悪魔城ドラキュラX 血の輪廻』。1993年発売。CD-ROMの大容量を使ったグラフィック、ボイス、サウンドでプレイヤーを驚かせた。おなじみのムチで攻撃する主人公リヒターに加え、精霊を召喚して戦うマリアの2キャラクターが使える。アニメ調のオープニングデモも必見。

押切 当時はボイスが入っているゲームってそんなになかったんですよね。PCエンジンはやっぱりすごい。

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いよいよ(押切先生的)メインディッシュに

押切 さて……そろそろ本番いきましょうか!

――前菜は終わりですか?

押切 ええ、ここからがメインディッシュ! 今日のクライマックスですよ!! まずは『スプラッターハウス』を。

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『スプラッターハウス』。1990年に発売された、ホラーなグラフィックとサウンドが特徴的な横スクロールアクションゲーム。主人公リックは、謎の館の怪物に連れ去られた恋人を助けるため、強大な力を持つマスクを身に着けて館へと進む。

――うわっ。画面外から飛び込んでくる、“初見殺し”な敵もふつうに撃退していますね。めっちゃうまい……。

押切 当時から……当時からというか、いまもふつうにプレイしていますからね。

――『スプラッターハウス』とは、どのような形で出会ったのでしょうか?

押切 出会いはゲームセンターでした。小学生のころに見つけてしまったんですよね。「なんだこれは!? やだぁ! 怖い!」と釘づけになっちゃったんですよ。ほかのみんなが『スーパーマリオブラザーズ』でハンマーブロスと戦っているころ、僕は『スプラッターハウス』で恐怖と戦っていたわけですよ。

――渋い。

押切 PCエンジンの移植版は、やっぱり当時はアーケードからの完全移植は難しいからか、すこし違いがありますね。でも、『スプラッターハウス』が家で遊べるというのは、かなりすごいことだったんですよ!

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――2面のボスですね。

押切 ポルターガイストと肉弾戦するっていう。これのおかげで、「ポルターガイストがきても殴ればいいんだ」と、子供心に思うようになりました。

――BGMがかなり印象的ですね。焦燥感を煽るというか。

押切 これがいいんですよ。あのころって、いまと比べてゲームセンターはアングラな雰囲気のある空間でしたよね。そのゲームセンターに夕方くらいに行き、まさに“逢魔が時”のなかで『スプラッターハウス』をプレイする。この恐怖感がたまらないんです。

――昔のゲームセンターは照明が暗かったり、他校の生徒と険悪になったり、ちょっと緊張する空間でもありましたね。

押切 早く帰らないと母親に家の鍵を閉められるかもしれない恐怖感、ゲーセンでの恐怖感、そして、このゲームに対する恐怖感。恐怖が3つも味わえるという。ね、凄いゲームでしょ?

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――家庭用ゲームではコンティニューし放題ですが、ゲームセンターでプレイするときはワンコイン派でしたか?

押切 そうですね。コンティニューしたら負けですよ。ゲームオーバーになったら最初からやります。ワンコインと言わず、1ミスもしないでクリアーを目指すくらいでした。

――1機も落とさず!?

押切 いや~当時はやっていましたよ。

――相当のやり込み具合ですね……。

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スライディング。

――いまの動きはどうやってるんですか?

押切 着地する瞬間に攻撃するとスライディングになるんです。これを使っている人は、あんまりいませんでしたね。

――なるほど。

押切 みんながマリオを遊んでいるとき、僕はこれを遊んでいたんだなぁ……。だからいまみたいな人間になっちゃったのかなぁ……。

――そんなことはないですよ! いいじゃないですか! 現状を肯定していきましょうよ!! でも、話の輪に入れないのはやっぱり辛かったんでしょうか。

押切 まあちょっとはね(笑)。でも、PCエンジン SUPER CD-ROM2でギャルゲーをやり始めたあたりからは変わりましたね。自分のまわりで、ギャルゲーをプレイできていたのって僕だけだったんです。それを知ったクラスメイトから「今度、泊まりにいっていいか?」って言われたのはうれしかったですね。

――(笑)。ギャルゲーといえば、本機には『ときめきメモリアル』も収録されていますが、当時はプレイされましたか?

押切 PCエンジンではプレイしなくて、ほかのハードで初めてやったのを覚えています。プレイステーション版だったかな?

――好きなヒロインは誰でしょうか?

押切 片桐さんですね。プレイしてからはけっこうハマって、キャラクターのドラマCDとかをけっこう集めていたのを覚えています。

※片桐彩子……芸術とカラオケが好き。スタイル抜群だが、水が苦手。声は川口雅代さん。

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『ときめきメモリアル』。1994年発売。言わずと知れた恋愛シミュレーションの金字塔。私立きらめき高校での3年間にヒロインとの交流を楽しみ、卒業式に告白されるのが目的。画像は難攻不落の幼なじみヒロインこと、藤崎詩織。
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こちらが片桐さん。ちなみに画面フレームは数種類の中から選択することができます。

――ギャルゲーで友だちが遊びに来るというのは、いい話ですね。

押切 自分が誇らしかったですねぇ。

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――そうこう言っているうちに、ラスボスっぽいのが出てきました。

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押切 はい、倒しました。

――めちゃくちゃアッサリ……ラスボスの攻撃を回避するのがすごいシビアなはずなのですけど、ふつうに避けていましたね。

押切 体が全部覚えていますので。

――達人コメント。

押切 この前ゲームセンターのミカド(※)でプレイしたんですけど、『スプラッターハウス』ガチ勢の方に「押切先生うまいですね! エンターテイナーですね」と言っていただけて。それがすごくうれしかったですね。

※ミカド……東京・高田馬場(と池袋)にあるゲームセンター。レトロゲームが豊富に並び、アーケードゲーマーや対戦格闘ゲームファンの聖地として有名。

――クリアーしてみて、改めて『スプラッターハウス』の感想は?

押切 「エンディングの画面にリックがいないな」って思っています。

――リックがいない。

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PCエンジン版とアーケード版はエンディング画面が異なり、アーケード版には画面の中央に主人公のリックが登場している。PCエンジン版は無人。

押切 いやあ、インタビューを受けながら『スプラッターハウス』を全クリしたのは僕くらいじゃないですかね!(笑)

――確かに(笑)。

ついに『源平討魔伝』を起動!

押切 それでは最後に『源平討魔伝』をやりましょうか!

――満を持してですね。

押切 これはねぇ……。僕の中では鉄板ですよ。『源平討魔伝』が初めてゲームセンターで遊んだアーケードゲームだったものですから。

――マンガ『ピコピコ少年』などでも語られている『源平討魔伝』愛ですが、数あるゲームの中から、なぜ最初に『源平討魔伝』をプレイしようと思われたんでしょうか?

押切 やっぱり巨大なキャラクターによる迫力というか、画面の雰囲気、独特の世界が魅力的に映ったんです。和風で、おどろおどろしくて……最高ですよ。

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『源平討魔伝』。1990年発売。通常の横スクロールステージに加え、キャラクターを含むグラフィックが巨大化するステージや、上からの見下ろし視点になるステージなどバラエティー豊かなアクションが楽しめる。

押切 ここ、“ひょうたんからコマ”が出てくるんですよ。いいですよね……。

――ダジャレじゃないですか!

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押切 トラも出てきます! これのせいで僕は「日本にはトラが生息している」と、ずっと勘違いしていましたからね。

――(笑)。

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押切 ああ、死んじゃう。

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押切 “完”! っていう(笑)。PC版エンジンの『源平討魔伝』は、すごく移植が上手なんですよね。

――『源平討魔伝』はアーケードでもやり込んだんでしょうか?

押切 PCエンジン版が発売されたころには、ゲームセンターからなくなっちゃっていたんですよね。だから本格的にやり込んだのは、PCエンジン版でなんです。PCエンジンで最初に買ったゲームもコレです。じつはハードを買う前に『源平討魔伝』のソフトを先に買ってしまっていて。

――ええ……それは、また、なぜ。

押切 親に「もうPCエンジンを俺に買うしか選択肢はないぞ」ってプレッシャーをかけていました。

――ああ! 確かに私も小学生のころ、そのゲームがやりたすぎて、ハードより先にソフトを買ったことがあります。

押切 おかげで買ってもらえました。これをいっしょに遊んでくれる友だちがいたら楽しかっただろうなぁ……

――小学生どうしでワイワイ遊ぶには、ちょっとアクが強いというか……。

押切 みんなが『ドラゴンクエスト』とか『スーパーマリオブラザーズ』とかの話をしているときに『源平討魔伝』ですからね……。「ドラゴンじゃなくてムカデじゃねえか!」って。

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押切 みんながピーチ姫を助けにいっているときに僕は頼朝を倒しにいってましたからね。

――頼朝を倒すのもやり甲斐はあると思いますよ。

押切 本当にそう思っています?

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淡路では、アイテムを振りまく神様(?)が登場する。

押切 今回行きたかったところに到着しました。

――淡路島。これはボーナスステージですか?

押切 そうですね。神様がパワーアップアイテムを出すので、それを拾い集めるんです。

――神様はけっこう逃げるスピードが早いですね。

押切 現実の神様と同じでしみったれなんですよ。止まっているヤツには幸せをくれないんです。

――いいこと言いますね。

押切 ……本当にそう思っています? とりあえずここまででいいや。あー、すごいおもしろかったです!

――気づけば、あっという間に2時間経ってますね!

押切 まだまだ遊び足りないなあ(笑)。

青春のハードだった

――PCエンジン miniをプレイしてみて、いかがでしたか。

押切 個人的にはほかのミニ系のハードよりテンションが上がりました! やっぱりいいものですよ、PCエンジンは!!

――タイトルのラインアップは押切先生的にも満足です?

押切 先程も言いましたけど、『スプラッターハウス』と『源平討魔伝』が入っているだけで価値があります。欲を言えば、ほかにも入れてほしいタイトルはありましたけど。それでも、PCエンジンを代表するとしたら、かなり鉄板なラインアップになっているので、すごくいいと思いますね。

――押切先生としては、ほかにはたとえばどんなタイトルが入っていたらうれしかったですか?

押切桃太郎活劇』(※)がとても好きだったので、入ってほしかったですね。あと生まれて初めて予約して買った『百物語~ほんとにあった怖い話~』(※)。これも欲しかった。だから“PCエンジン mini 2”とか出ませんかね。

※『桃太郎活劇』……『桃太郎』シリーズのアクションゲーム。これまでは難度が高い傾向だった他のアクションゲームと比べ、穴に落ちてもミスにならないなど、優しいゲーム設計が特徴的。
※『百物語~ほんとにあった怖い話~』……百物語を題材としたホラーテキストノベルゲーム。厳選された怖い話がたっぷりと楽しめる。稲川淳二氏が監修をしている。

――すでに2に期待を(笑)。最後に改めて、先生にとって、PCエンジンとはどんなハードでしょうか。

押切 やっぱり青春でしたからね。僕としては、いまでもぜんぜん現役のハードではあるんですけど。今日プレイしただけでも、遊びながらけっこう過去のことを思い出せて楽しかったです。僕のマンガ『ハイスコアガール』を見て、それからレトロゲームに興味を持ったんですというファンの方からメッセージをいただくこともあって。そういった方にもぜひプレイしていただいて、PCエンジンの魅力を感じ取ってもらえたらうれしいですね!

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取材の模様をイラストにしてもらいました! 全部実話だよ!!