ここ1年ほどでパブリッシングタイトルのラインアップ強化が著しいコーラスワールドワイド。東京ゲームショウ2019のインディーゲームコーナー内自社ブースでは、ファミ通のメディアアワードにノミネートされた2Dハック&スラッシュ『Dungeon Munchies(ダンジョン マンチーズ)』、国内版がリリースされたばかりのローグライクRPG『ヴァンブレイス:コールドソウル』および大ヒットしたサバイバルホラーアドベンチャーの続編『COMA2(コーマ2)』、そして、いわゆる“死にゲー”と称させる高難度2Dアクション『Never Give Up』がプレイヤブル出展され、インディーゲームコーナーに訪れていた来場者の関心を集めていた。
今回のイベントのために来日していた、『Dungeon Munchies』開発のmaJAJa、『ヴァンブレイス:コールドソウル』、『COMA2』開発のDevespresso Gamesのスタッフに、作品について機会を得たので、その内容をお届けする。双方のデベロッパーが、世界の良質なゲームをセレクトし、日本国内および世界にむけて広くリリースする国内パブリッシャー、コーラスワールドワイドの“実態”について言及している点にも注目だ。
これはハック&スラッシュ形式で楽しむ『ダンジョン飯』だ!?
『Dungeon Munchies』開発maJAJaスタッフインタビュー
maJAJa シナリオ統括、翻訳、マーケティング・PR
――『Dungeon Munchies』のゲーム内容についての簡単な説明を。
李モンスターを狩って、材料を集めて、調理して食べるというゲームです。この例えが正確かはわかりませんが、『ダンジョン飯』(※九井諒子の漫画)のゲーム版ですね(笑)。
――『Dungeon Munchies』のパブリッシャーがコーラスワールドワイドに決定するまでにはとても時間がかかったそうですが。
李コーラスの方と初めて会ったのは去年の夏で、パートナーシップを結んだのはつい最近です。
――多くのパブリッシャーの中から選び抜いた、ということでしょうか?
李そうですね。自分たちが作っているゲームを心から愛してくれているということが伝わったことと、日本で成功しているパブリッシャーと伺っていたので、この方たちに任せれば大丈夫だなと思ったのが決め手です。
――2D横スクロール画面のハック&スラッシュというゲームを作ることになったきっかけは?
李我々3人の小規模なチームでもできる、現実的なシステムだったからです。当初はメトロイドヴァニアにすることも考えていましたが、それだとゲームの規模が大きくなりすぎるので。
――今回の出展バージョンの開発進行度は?
李30%です。残りの70%は、完成していないスト―リーやステージですね。
――ストーリーが完成していない、というのはシナリオが結末までまとまっていないということでしょうか?
李大まかな内容は決まっています。それらを実際にどう組み込んでいくかということをグラフィックデザイナーとシナリオライターで詰めている段階です。シナリオも大事ですが、それが“ゲームの中でどういう体験になるか”が一番大事なので、慎重に進めています。
――日本のゲーマーに向けて、改めて『Dungeon Munchies』のアピールをお願いします。
李ゾンビになって呪術師のシェフのために働く……という、おもしろおかしくもダークなテイストのストーリーを楽しめるゲームです。ブラック企業に勤めるサラリーマンに関するジョークなども入っているので、日本の皆さんにもストーリーを楽しんでもらえると思います(笑)。来月(10月)、Steamのアーリーアクセス版に難易度調整機能を追加予定ですので、環境がある方はぜひ遊んでみてください!
※『Dungeon Munchies(ダンジョン マンチーズ)』トレーラーはこちら
コーラスワールドワイドとの幸福な“相思相愛”
『ヴァンブレイス:コールドソウル』、『COMA2』開発Devespresso Gamesスタッフインタビュー
Devespresso Gamesゲームデザイナー/ライター
右:Minho Kim(以下、ミンホ)氏
同 リードアーティスト
――まずは『ヴァンブレイス:コールドソウル』をリリースしての感想を。
トリスタンこのゲームは4人のチームで開発するにしてはすごく大きな企画で、それが世界中でリリースできたことがうれしかったです。私自身、もともと日本のゲームを遊びながら育ってきたので、日本のプレイヤーがどういう風に感じたかを聞けることをすごく楽しみにしていました。
ミンホ私も『クロノトリガー』『ファイナルファンタジーVII』『ファイナルファンタジータクティクス』といったゲームで育ってきたので、日本でリリースできたことに感慨があります。
――現時点で寄せられているプレイヤーからの意見で印象的だったものは?
トリスタンもともとこのゲームは高難度だったのですが、「これでは万人向けではない。もうちょっと簡単にしてもいいんじゃないか」という意見をもらっていたので、それを採用しました。そしてその選択は正しかったと思いました。
ミンホ個人的に感動したのは、ユーチューバーや動画配信者が、ゲームに登場するキャラクターに対して感情的に……自分自身の一部のように反応していたことです。単にお気に入りというより、キャラクターの人生そのものに肩入れしていたことは、開発者冥利に尽きますね。
トリスタン開発中は、目の前の開発のことしか気にしていないので、こうしてリリースして、ほかの開発者がどうしているのかを見たり、プレイヤーの反応を見られることが楽しいですね。
――開発中のコーラスワールドワイドとのやりとりはいかがだったでしょうか?
トリスタンテストプレイを一番最初にやってもらったのは、コーラスのスタッフの皆さんでした。プレイのフィードバックをもとにバランス調整の方向性のアドバイスをいただいたり、コンソール版の発売に関しても親身にサポートしていただきました。
ミンホとくに強調したいのは、プレイヤーとして情熱的にかかわっていただいたことです。開発者として、すごくモチベーションが上がりました。
トリスタン“ゲーマー魂”が伝わってきましたね。
ミンホコーラスのスタッフの皆さんの経験が、おおいに参考になりました。コミュニケーションを密にしてくれるのもよかったですね。
トリスタンアメリカでは“日本人は効率的である”という既成観念があるのですが、まさにそれを体験できました(笑)。
コーラスワールドワイド・大柳氏(以下、大柳) 『ヴァンブレイス』は台北ゲームショウで見かけて一目惚れしたタイトルです。パブリッシングを引き受けることになった以上、我々もベストを尽くさなければいけないなと思いました。
ミンホ多くのパブリッシャーはビジネスやお金をまず大事にするんですけど、コーラスは個人的に熱心にコンタクトしてくれたんです。
――まさかのリスペクト合戦に(笑)。
大柳 Devespresso Gamesさんは『ヴァンブレイス』で初めて知ったんけど、すでにリリースされていた『COMA』の1作目を見て「これもすごいな」となって、これもウチでやりたいなと思っていました。
――『COMA2』のパブリッシャーが、前作と同じではなくコーラスワールドワイドになったことは、『ヴァンブレイス』でのそうした関係性の賜物だったということですね。それでは今回が初お目見えとなった『COMA2』とともに、『COMA』シリーズの特徴と魅力をご紹介ください。
トリスタン『COMA』シリーズは個性的なキャラがたくさん登場する、ストーリー重視のナラティブなゲームです。前作は、不思議な力で閉鎖空間となった高校を舞台に、主人公ヤンホンとして探索する内容でしたが、『COMA2』は、前作から3週間が経過したほぼ同じ設定の舞台で物語が展開します。今作の主人公は、前作に脇役で登場したミナという女学生です。歪んだ空間として存在する高校で目を覚ましたミナは、英語教師によく似たサイコキラーに狙われ、襲い掛かられます。
――ホラー映画のようなシチュエーションですね。
トリスタンまさにその通りです。このゲームでは、実写のホラー映画のように、いろいろな目にあって負った傷やケガは、ゲームの終盤までずっと残り続けます。探索やクラフトの要素でしっかり対策していないと、容赦なくダメージを受けるんです。
――ダメージ、というのは外見上の問題ですよね?
トリスタン見た目が変わるだけでなく、ケガの効果もゲームの最後まで持続します。ケガをして動きが遅くなると、難易度も上がってしまいます。ミナは敵に反撃できないので、捕捉されたら基本的に即ゲームオーバーです。逃げたり隠れたりすることを、ホラー映画さながらに楽しんでいただきたいですね。
――満身創痍な状態でクリアーすると、ノーミスとはまた違った達成感がありそうです。人によっては、あえてミナが傷つくさまを見る……という楽しみかたもできそうですね。
トリスタン(苦笑)そうかもしれませんね。