『龍が如く』シリーズチーフP横山氏&脚本担当竹内氏に聞く、『龍オン』今後の展望

 東京ゲームショウ2019の期間中、配信番組で『龍が如く ONLINE』(以下、『龍オン』)が第二部の“黄龍放浪記”に突入し、主人公を春日一番から郷田龍司にシフトするという衝撃の発表がなされた。7月に春日一番を主人公とする物語の第一部完結は発表されていたが、誰が第二部の主人公となるかはふせられていた。そこで、『龍オン』の脚本執筆を担当する竹内一信氏と、『龍が如く』シリーズ全体の脚本を統括している、シリーズのチーフプロデューサーである横山氏に、主人公を郷田龍司にした経緯や、黄龍放浪記をどんなストーリーにしていく予定なのかを訊いてみた。

 さらに、『龍オン』での春日の物語と、『龍が如く7 光と闇の行方』(以下『龍7』)の春日の物語がどう違うか、そしてゲームとしての立ち位置の違いについても横山氏に訊いたので、『龍オン』プレイヤー以外も要チェックだ。

『龍オン』の物語は、『龍7』とまったく違う物語になっていく

横山昌義氏(よこやま まさよし)

『龍が如く』シリーズチーフプロデューサー。『龍が如く』シリーズのすべての脚本を手掛けていることでも知られる。

竹内一信氏(たけうち かずのぶ)

『龍が如く』シリーズのシナリオチームに所属。横山氏の愛弟子と呼べるような存在で、『龍オン』の脚本・演出を手掛けている。

――第一章で春日の話が終わるということで、少なからず驚きがありました。ずっと春日の話が続くと思っていたので。

竹内私もそう思っていました(苦笑)。ただ、REBORNプロジェクトの一環として、横山が「変えよう!」という決断を下したんです。

――大英断ですね。

横山それくらいのインパクトがないと、REBORNとは言えないじゃないですか(笑)。

――まあ、確かに(笑)。

横山『龍オン』第一部で描いている春日一番のお話は、私のイメージだと「ようやく春日一番というキャラクターの自己紹介が終わり、皆さんに把握していただけたかな」というものです。もちろん、REBORN後も物語の後半戦を描くというのも、ひとつの選択肢としてありました。ただ、REBORNプロジェクトを始めるにあたり、ユーザーの皆さんのアンケートを見て「シリーズキャラクターへの愛に応えたい」と感じたんです。

――どういう面でそう感じられたのでしょう?

横山たとえば、『龍が如く』のナンバリングで死んでしまったキャラクターに対しての愛です。峯などがそうなんですけれど、「カードになってくれてうれしいし、クエストがあることもうれしい」という意見がかなり多いんですね。彼らを『龍が如く』本編に出すことはできないのですが、『龍オン』なら出せます。『龍オン』というのは、『龍が如く』シリーズを好きでいてくれる皆さんに対するファンサービスのためにあっていいと思っていますから。

――なるほど。

横山15年もシリーズを続けていると、やはりファンの気持ちの受け皿になるようなものが絶対に必要だと思うし、それを作る責任があると思うんです。『龍オン』には、その受け皿になってほしいという願いがあったからこそ、死んでしまったキャラクターも出そうと決めたわけで。これからも、そういう役割を担ってくれればと思っています。

――そもそも、『龍7』とはタイトルの果たすべき役割が違うわけですね。

横山そうです。『龍7』は私たちが切り拓く『龍が如く』シリーズの未来なので、ユーザーの皆さんの意にそぐわない部分も出てくると思うんです。もちろん、我々としては遊んでもらえばおもしろいと思って作っていますけどね。でも、『龍オン』はユーザーの皆さんの意見に寄りそっていいタイトルだと思うし、皆さんといっしょに育っていくのが理想だとも思っています。

――ゲームとしての立ち位置の違いは理解できました。物語の面では、2作品はどう違ってくるのでしょうか。

横山2作品のストーリーは、完全に違う世界線に分かれています。春日一番だけを見れば、『龍7』と『龍オン』ともに、バックボーンも性格も同じです。16歳で荒川組に入ったことや、その後に刑務所に入ってシャバに出てくるという流れもすべていっしょなんです。決定的に違うのは、春日一番の知らないところで起きているエピソードなんです。それが春日の運命を大きく変えることになるんですが、そのエピソードというのは、『龍7』と『龍オン』の両方を遊ばないとわからないと思います。

――できれば両方を遊んだほうがいいわけですね?

横山結果的にはそうなんですけれど、だからといって「『龍7』を遊ぶために『龍オン』をやってください」と言うつもりは毛頭ありません。『龍オン』を前提にする必要は一切ないです。ただ、『龍オン』をやっている人が『龍7』で遊んだときに「ああ、こういうふうに人との関わりかたが変わってくるのか」とか「エピソードが変わると、春日の反応が変化するのか」なんていう部分は感じてもらえると思います。

――なるほど。

横山ただ、前々から同じ時期に春日一番が主役の物語がふたつ同時に走るというのは、『龍オン』を遊んでいる方に混乱を与えてしまうんじゃないかという危惧もありました。配信のスケジュールなどでコントロールしたかったのですが、ちょうど『龍7』の情報が大量に出てくるタイミングに、第一部のクライマックスがぶつかってしまった。そこで、龍シリーズファンの方が『龍7』の世界を遊び終えるまでのしばらくの期間、『龍オン』の春日の物語はお休みして、徹底的にお客様の熱い思いに寄り添うのもいいのではないかと。それが主人公変更の理由です。

――龍司を主人公にしたのにはそんな理由もあったのですね。ところで素朴な質問なのですが、『龍オン』に登場する人物は、『龍7』に出てくるのでしょうか?

横山『龍7』と『龍オン』は舞台となる街が違うので、一番が出所してから出会う人物というのはガラリと変わります。また、荒川の息子である荒川真斗がいるかいないかという点も違っていますね。これも、2作品の違いに大きな影響を及ぼすことになります。

――では、瀬戸や北村、辻などは出てこないんですね?

横山ミツ(安村光雄)は荒川組に入ったタイミングで知り合う人物なので、彼は出てきます。けれど、ほかの人物は『龍7』には出てこないですね。神室町のどこかにはいるかもしれないですが。

――なるほど。

竹内個人的には北村などは『龍7』にも出してほしいんですけどね(笑)。

横山そこは別の物語なので。しかも、北村義一的なポジションとして足立宏一がいるし、瀬戸真弓のポジションには向田紗栄子がいるわけで。

――ではその逆で、『龍7』のキャラクターが『龍オン』に登場することはあり得るのでしょうか?

竹内クロスオーバー的な話は面白いと思いますし、ユーザーさんにも喜んでいただけるかなと思いますね。

横山その前に、『龍0』コラボや外伝モノとのコラボなどやることは山積みですから、ファンの方の思いに対して手順前後とならないようにやっていければと思います。

――なるほど。ニーズがあればいろんな過去作とのコラボも実現するかもしれない、ということですかね?

竹内そうですね。『龍オン』には質問箱もありますので、そちらにピックアップしてほしい人物や、どういうストーリーを読んでみたいかなど、ぜひご意見を寄せていただければと思います。

黄龍放浪記の大まかな物語と、春日の今後の物語はどうなる?

――龍司を第二部の主人公にした理由について教えていただけますか。先のお話を聞いていると、ユーザーのニーズが高いキャラクターであれば誰でも可能性があったというふうにも思えるのですが。

横山正直に言えば、峯や秋山が主人公になる可能性もありました。ただ……これまで春日一番でしばらくやってきましたけれど、「春日とは違う、ゴツいキャラクターでガンガン敵を倒すような感じで皆さん遊びたいのではないだろうか?」という推測もあって。そういう意味では、龍司が適任でした。

――ちなみに、竹内さんは横山さんといっしょにその決定を?

竹内いえ、横山から「決めたから」と(笑)。ただ、その決断は何よりもまずシリーズファンの方々に楽しんで頂こう、というREBORNプロジェクトの大方針に沿ったものなので。で、決まったからには「じゃあどんな見たことない龍司を見せてやろうか」と考え、PVでは「荒野をバイクでぶっ飛ばす龍司」や「父・郷田仁と戦おうとしている龍司」といったインパクトのあるシチュエーションを抜き出して作成しました。おおむね好評を頂いているようで、嬉しく思います。あと、過去に“黄龍伝”というイベントを開催して、そのストーリーが好評をいただきました。それも龍司が主人公になるひとつの理由になっているのかな? とも思います。

――黄龍伝では、かつて東城会にいた林が郷龍会に寝返っていた理由が描かれていましたね。

横山黄龍伝は個人的にかなり楽しめました。そのシナリオを見て龍司を主人公にしようと思ったところはあります。黄龍伝のストーリーは「これが『龍が如くZERO2』でもよかったんじゃない?」と竹内にも言っていたくらいなので。だから、すごくもったいないと思いながら、すごろくイベントのストーリーとして使ったんですよ。峯イベントも同じで、すごく良い出来でしたから「ここで出しちゃうの?」という感じでした。

――確かにおもしろかったですよね!

横山そうなんですよ。竹内は『龍が如く』の物語を深くまで知っているし、『龍が如く』ベースにした過去のキャラクターたちのスピンオフエピソードを作るのが最高にうまいと思っています。黄龍伝は私では書けなかったと思いますし。

竹内横山にはあまり褒められないのでうれしいですね(笑)。私は『龍が如く2』からシリーズの開発に参加したんですけれど、それはいちユーザーとして『龍が如く』を見ていた時期があるということで。もしかすると、それがいいほうに働いているのかもしれません。

――ああ、そうかもしれないですね。

横山竹内がどう龍司というキャラクターを主人公として動かしてくれるのか、今から楽しみです。きっとコンソール版ではできないアプローチもできるでしょからね。

――コンソール版でできないとは?

横山これはけっこうあちこちで言ってきたんですが、たとえばコンソール版の『龍が如く』では、主人公で真島を扱うのはNGなんです。なぜなら、真島は客観視してこそ生きるキャラクターだからです。主人公としてプレイするには感情移入しにくいところがある。遊んでいる人が思ってもみないようなことをやるから、おもしろいしクレイジーなのであって、真島が主人公になった時点で、絶対にそうはならないわけです。『龍が如く0 誓いの場所』でなぜ真島を主人公に出来たかというと、当時の真島が生真面目な性格設定で、作品を通じて様々な影響を受け、最終的に嶋野の狂犬と呼ばれる人格になっていくからなんですね。で、そういう観点から言うと、龍司もけっこうコンソール版では主人公NGな人なんですよ。

竹内黄龍伝でもそのように描写しましたが、龍司はあまり本心を言わない人物ですからね。逆にあけすけに本音を言いすぎて、周囲から冗談だと思われたり。つまりプレーヤー自身が龍司という人物を理解できないので依り代として操作すると違和感が生じてしまうんです。だから、コンソール版の『龍が如く』の主人公にはちょっと不向きかなと思います。

横山でも、『龍オン』であればOKなんです。このタイトルは、本人視点というより、客観的な視点で物語が進みますからね。それは利点のひとつでもあるので、今回はそれを活かせると考えています。じつは、人気があってもコンソール版で主人公に不向きな人気キャラクターというのはけっこういるんですよね。この後『龍オン』がどう続いていくかはわかりませんが、そういうキャラクターが『龍オン』で主人公になるといいなと思っています。

――逆に言えば、今後主人公になりそうにないキャラクターがピックアップされて主人公になる可能性があるということでしょうか?

横山あるでしょうね。……田中シンジとか(笑)。

――見たい!(笑)。

竹内ひとつだけハードルがあるとすれば、どれくらい「知られざるエピソード」を挟みうる空白期間があるかですね。死んでしまった人は、とくになんですけど。存命キャラクターよりは、1段階ハードルは高まりますね。

――あー、なるほど。

横山あとは、伊達のように、つねに本編に関わってしまっているような人も、物語を作るのはなかなか難しいですよね。

――確かにそうですね。すみません、少し脱線してしまったので、龍司の話に戻します。黄龍放浪記の龍司というのは、いつぐらいのエピソードを切り取ったお話になる予定ですか?

竹内『龍が如く2』のころの龍司が30歳です。25歳くらいのときに堂島大吾と一度因縁があるのですが、それよりさらに2~3年前のエピソードになります。ですから、年齢的には22歳前後の出来事ですね。龍司は、「俺が郷龍会を継いで当然」くらいに思っていたんですけれど、郷龍会の初代会長を務めた父の郷田仁に突如「お前は破門だ」と極道社会から追放されてしまう。当て所のなくなった龍司は、そこから放浪を始める……という流れを予定しています。

――放浪先はどこになるのでしょう?

竹内何しろ放浪ですから、日本のいろんな場所を巡る予定です。そこでまだ見ぬ人物と出会うこともあれば、過去作に登場した地方の極道たちと遭遇することもあるかな、と思います。また、龍司が郷龍会を継ぐ経緯だけでなく、これまであまり多くは語られてこなかった郷田仁の知られざる側面も描いていきたいですね。PVでお見せしたように、仁が立つところとか。そういう親子の関係性の、まだ語り切れていない部分を描いてゆきたいと思っています。

――期待しています!

竹内『龍オン』のいいところのひとつは、「ちょっとやりすぎかな?」というシナリオも思い切って描けることだと思っています。コンソールで『龍が如く』シリーズを作る場合は、シナリオに紐づいて膨大なコストが発生します。主人公が新しくなれば刷新したアクションを豊富に用意したり、色んな場所を探索できる新しいステージを追加したり。だからこそ、思い切った舵取りをするには相当な決断が要ります。それとの比較論でいうと、『龍オン』はシナリオ的にいろいろな冒険ができますし、ユーザーの皆さんに見せたことがないものを披露しやすいゲームとしての体裁になっています。これは書き手としてはありがたいですね。

――なるほど。書くのも楽しそうですね。

竹内そうですね。書いていて楽しいです。もちろんコンソール版の『龍が如く』のシナリオもやりがいがありますが(笑)。

――龍司の物語をたっぷり楽しんで、それ以降に春日の物語の続きが見られるということを期待しています。まだ謎もたっぷり残っていますからね。

竹内そうですね。「Xの正体」とか。

――彼か彼女かもわかりませんが、Xの正体は気になっています。

竹内ほかにも、「荒川がなぜ東城会を裏切ったのか」「なぜ荒川は春日を撃ったのか。撃ったとき、なぜ笑ったのか」。まだまだ明かされていない謎はありますが、第一部では因縁の相手・沢城丈との決着と、神室町の奪還までを描いてひとつの区切りとしています。

――なるほど。

竹内残した謎や続きも気になるとは思うのですが、まずは次なる主人公、郷田龍司の物語をお楽しみいただければ嬉しいです。

――では竹内さん、最後に『龍オン』プレイヤーの方にコメントをいただけますか?

竹内まずは第一部を最後まで楽しんでいただきたいと思います。全てを失い、どん底まで落ちた春日一番が、再び仲間を得て、奪われたものを取り戻してゆくという物語を描いたつもりです。春日だけではなく、仲間たちもそれぞれの想いを胸に最終決戦に挑んでいきますので、“春日一味”の活躍にご期待いただければと思います。

――ありがとうございました。