2019年9月5日に発表された、国民的ボードゲーム『桃太郎電鉄』(以下、『桃鉄』)シリーズの最新作『桃太郎電鉄 〜昭和 平成 令和も定番!〜』。2020年の発売に向けて開発中の本作について、中心人物となる総監督のさくまあきら氏と副監督の桝田省治氏、そして統括プロデューサーを務める岡村憲明氏に話を伺った。

さくまあきら氏

『桃鉄』シリーズの生みの親であり、開発の中心。本作でも総監督を務める。(写真中央、文中はさくま)

桝田省治氏(ますだ しょうじ)

シリーズ3作目以来、久々に『桃鉄』開発初期から参加。代表作は『俺の屍を越えてゆけ』など。(写真左、文中は桝田)

岡村憲明氏(おかむら のりあき)

コナミデジタルエンタテインメント所属。本作の統括プロデューサーで制作チームを率いる役割。『スーパーボンバーマン R』でもプロデューサーを務めた。(写真右、文中は岡村)

新生『桃鉄』誕生のきっかけ

――まずは、新作を作ることになった理由というか、きっかけを教えてください。

さくま『桃鉄』は、2017年度版(ニンテンドー3DSで発売された『桃太郎電鉄2017 たちあがれ日本!!』)でもうやめるつもりになっていました。でもその後、「やっぱり『桃鉄』は大きな画面でやりたいね」という意見が来るようになってね。  

――そこを踏み越えてのスタートだったんですね。そのあたりの経緯もぜひ。

岡村そこは、「僕の責任できちんと作れるスタッフや環境を整えますので、もう1回チャンスをいただけませんか」と。

――それで、さくまさんもOKされたと。

岡村「であれば、1回様子を見ようか」という感じのスタートでしたよね。

さくまそうだったね。

桝田KONAMIはずっと『桃鉄』を作りたがっていて、さくまさんは男の子の孫が初めて生まれたのもあって、『桃鉄』をもう1回作りたくなっていた。そのタイミングに、僕が『桃鉄』を作れるラインを用意した。この3つが揃ったから始められた。これは僕の自慢だけど、さくまさんは「二度と『桃鉄』は作らない」と言っていても、いつか「作る」と言い出すだろうと、ラインをキープしていたんだよね。

岡村そのおかげで、さくまさんに納得いただける環境ができたと思っています。

――なるほど。ちなみに、今回のタイトルはどなたが考えられたのでしょうか?

さくま前作もそうだけど、今回もタイトルは桝田くんの案だね。彼は宣伝のプロだから。

桝田昭和から令和まで続いたボードゲームというだけで十分差別化はできるんだけど、今回のタイトルはむしろ、過去よりも未来というか、3つ続いてさらにその後も、という勢いが欲しかったんだよね。

――時代を超えて、定番であり続けると。

さくまそういうことだね。

岡村ここからもう一度、新たに定番として始めようと。制作側で、変えたほうがいいのではないかと考えていた時期に、さくまさんから、「定番である必要があるんだよ」と言われたのはすごく印象に残っています。絵作りでも、いろいろなパターンを作りましたが、結果的に昔のものに近くなりました。

桝田ふつうの人だったら、シリーズの新作を作るとなったら、まず新しいイベントのネタや、絵をキレイにするアイデアを出すよね。でも、さくまさんは違って、毎回毎回、テンポを上げるためのアイデアを最初に出すんだよ。「ここのボタンを押す回数を減らしたい」とか、「ここで0.1秒縮めたい」とか、そういうのを毎回やる。20本以上も出ているシリーズだから、もうネタがないと思うんだけど、毎回やる。正直しんどいよ(笑)。でも、これは、付き合ってみて初めてわかる“定番の凄み”なんだと思う。

――まず最初にテンポの改善なんですね。

さくま1文字減らすのに、躍起になってみたり、ここのセリフは、最初の1回だけでいいとか、物件名を変えてみたり、収益率を微妙に変えてみたりと、お客さんに気づかれない部分での変更はたくさんやります。

総監督と副監督の関係とは?

――本作では、さくまさんが総監督、桝田さんが副監督となっていますが、具体的にはどのような役割を担当されているのですか?

桝田いま、“老害”という言葉があるじゃない? もう、ふたりとも老害なんだよ。僕の言ったことですら、多少ズレてても否定する人がいない。まして、さくまさんに対して言える人なんかいないんだよね。だけど、この間柄(桝田氏とさくま氏を指しながら)は「さくまさん、これ作業量のわりにおもしろくないよ」とか言える。で、この人は僕がアイデアを出してひと月くらい詰めていったものを、「やめた」って言うし。ホントに楽しいよ。この桝田先生がひと月考えたことを放り投げるんだから(笑)。

さくまこれはどうかな? ってアイデアも、桝田省治は「つまんないよ」と、はっきり言ってくれるので、楽だし、楽しいね。

――(笑)。そうやって、おふたりが中心になってゲームの仕様を決めていくんですね。

桝田さくまさんも、年を取ってポンコツになっているから、倒れたときは僕が最後までやろうと(笑)。ただ、ゲームのテンポをよくするために、イベントの出現確率とかまで細かくいじっていたりするからね、この人。多少ポンコツになろうが、24時間『桃鉄』のことを考えている人には勝てないよ(笑)。

岡村ゲームの中身については、おふたりにお任せしています。僕は、『桃鉄』をいい形で作るために集まってもらったスタッフといっしょに、うまく動くように作り上げて、おふたりに渡すという立場ですね。

桝田昔は、こんなに大きくて複雑なゲームを仕様書ナシで作っていたんだよ(笑)。だから、開発スタッフに当時作っていた人たちを何人か入れないと回らないんだよね。

岡村記録はあるんですけど、仕様書という形にはまとまっていなくて……。

――桝田さんは前作の制作にも参加されていましたが、本作では前作よりもしっかり関わっている感じですか?

桝田そうだね。前作は途中からだったからね。僕がやったのは、「もう止めた」っていうさくまさんを2、3回抑えたくらいだから(笑)。

岡村今回、チームを集めるにあたり、まず桝田さんに声を掛けさせてもらいました(笑)。

――桝田さんが最初から参加されるのは、かなり久々ですよね。

桝田貧乏神が2作目に出て、そのつぎの作品までだから、シリーズ3作目以来かな。

――ちなみに、貧乏神は、どういった形で誕生したのですか?

桝田貧乏神のアイデアはさくまさん。僕はひたすら悪行を考えていた。

さくま当時は夜中にファクスで、悪行がダーッと送られてきて(笑)。

岡村イヤなファクスですね(笑)。

さくまなかなか考えつかないよ、あの量は。

桝田でも、じつはそんなに難しくないんだよ。プレイヤーが持っているパラメーターを洗い出して、それをどういう理由で削るか、というだけだから。

気になる本作からの新要素

――本作の新しくなった要素のひとつが、キャラクターデザインだと思いますが、今回、竹浪秀行氏に決められた理由は?

岡村ゲームを定番で固めるからこそキャラクターデザインに関しては一新したい、との意向がありました。最初に思いついたのが『スーパーボンバーマンR』のキャラクターデザインをお願いした竹浪さんでした。で、こっそりと彼に桃太郎のイラストを描いてもらい、さくまさんにお見せしたら、さくまさんも気に入られたという流れですね。

――デザインを変えるというのは、最初から決まっていたんですね。竹浪さんの印象はいかがですか?

さくますごく気に入っています。竹浪くんは、一度に最低でも3パターンのイラストを描いてくれるんですよ。複数のパターンを見比べられるから、やりやすいですね。
  

――さくまさんから竹浪さんへは、どういったオーダーがあったんですか?

さくま子どもがちゃんと遊べるように、黒目が大きくてかわいいキャラクターにしてほしいと言ったくらいかな。いまはどんな絵が来るのか楽しみです。

岡村正直、キャラクターデザインを変えることに対しての怖さはありました。しかし、結果的には、竹浪さんの力もあって、これからの『桃鉄』にふさわしい、魅力的なキャラクターデザインになったと思っています。

――それから、音楽でヒャダインさんが参加されるというのも意外でした。

さくま彼は、『桃鉄』で地理を覚えたということを、かなり言ってくれていたんです。娘も好きだと言っていたのも大きいです。その縁もあって、今回音楽をお願いしました。

岡村これまでのサザンオールスターズの関口和之さんの曲から一新するというのではなく、本作の特徴的な部分や、新しくなったところにヒャダインさんの曲が追加されます。

――まだ詳しくは言えないと思いますが、システムなどで、何か新要素はあるのでしょうか?

桝田イベントは新しくなっているけど、システムはテンポアップしたところくらいで、全体のルールはまったく変わっていないよ。変える必要もないしね。

――本作の開発は、現時点でどのくらい進んでいるのですか?

岡村ふつうにサイコロを振って遊べるくらいはできています。イベントは半分くらい実装したところです。それと今回は、あらゆる素材を作り直していますので、「こんなに数があるんだ!」と驚きながら、ひとつひとつの素材を作り直しているところですね。

――ではパーツが集まれば、あとはバランス調整だけだと。発売は2020年となっていますが、もしかして意外と早い時期に?

岡村本作を、さくまさんらしい作品にするためには、しっかりした調整の期間が必要です。過去の作品に倣い、ゲームが仕上がったあと、半年くらいは調整に充てる予定です。

――となると、後ろのほうになる?

さくままあ、『桃鉄』が出る時期は、だいたい同じだから、今回もそのあたりじゃないの。定番ですから。

――だいたいわかりました(笑)。実際の調整はまだ先になるかと思いますが“『桃鉄』はこうでなくては!”という、こだわりの部分があれば教えてください。

桝田何回もやるゲームだから、何回やっても毎回違っておもしろい、というところだよね。あとは、麻雀といっしょで、ヘタな人とうまい人とやっても、ヘタな人が勝つこともある、というバランスかな。7割くらいは、うまい人が勝つと思うけど。

――シリーズの積み重ねもありますし、そのあたりのバランスは、調整で大きく変えることもないのではないですか?

桝田そうでもないんだよ。前作も最後の最後で、全部の収益率を変えたんだよ、この人。ニコッと笑って「大丈夫だよ」って言うんだけど、「その根拠って何?」って思ったよ(笑)。

――今回も、テストプレイをくり返しながら、そういった調整が続くわけですね。

桝田今回は、バランスをぶっ壊すようなものをいくつか入れたので、それをちゃんと調整しないと、というのはあるかな。

――まだまだ先は長そうですが、制作にかける皆さんの意気込みをいただけると。

桝田粛々と。

岡村制作チームとしては、できるだけ早くすべての要素を入れて、バランス調整ができる状況まで持っていきたいです。

さくま練りに練った『桃鉄』をお届けできると思います。