2019年8月30日に任天堂から発売されたNintendo Switch(ニンテンドースイッチ)用ソフト『ASTRAL CHAIN(アストラルチェイン)』(開発はプラチナゲームズ)のレビューをお届けする。
“プラチナゲームズのアクションはすごい”という声をよく聞くが、 筆者もその印象を持っている人間のひとり。『アストラルチェイン』が初披露されたときのPVでは、 何より2体を同時に操作するデュアルアクションという発想に驚かされた。 ちょっと難しそう……という心配もあったが、 実際に触れてみると、 これが楽しい! 主人公に追従するレギオンは、基本的にはオートで戦ってくれるが、 ワンボタンで敵にぶつけたり、引き寄せたりできて、最初のうちはこの操作だけでも、 すごいことをやってる感が味わえる。
操作に慣れてきてバトルに余裕が出てくると、 チェインで敵を囲んで拘束する“チェインバインド”、敵の突進攻撃をピンと張ったチェインで弾き返す“チェイントラップ”などを使ったバトルが快感に。とくに乱戦のときなど、 あらぬ方向から見えた突進攻撃の予兆に対して、とっさに“チェイントラップ”で対応できたときの爽快感は格別。
攻撃をギリギリのところで回避するとスローモーションになる演出も気持ちよく(このあたり、 プラチナゲームズのアクションゲームっぽい!)、そこから強烈な反撃もくり出せることも手伝って、 わざと相手の攻撃を待つこともしばしば。これができるようになったから、つぎはこれを試しつつ戦ってみよう、 という意欲がどんどん湧いてくる。
プレイヤーの操作の慣れを計算したように、アクションの幅が広がっていくのも心憎い。そのなかで筆者が個人的に気に入っているのは、“ハジキアタック”。これは、レギオンにセットできるアビリティコードというアイテムの効果の一種で、 敵の攻撃を受ける寸前に相手方向にLスティックを倒すと、攻撃を弾き返せるというもの。
回避に徹する必要があるような敵の攻撃でも、“ハジキアタック”を使えば強引に切り返せたりして「俺ってすごいかも?」と、思わずうっとり。こういった攻略の幅広さも本作の魅力と言えるだろう。
ちなみに、 本作には“守護モード”という機能が用意されていて、 これはキャラクターやレギオンの複雑な操作をAIに委ねてしまおうという、『BAYONETTA(ベヨネッタ)』や『NieR:Automata(ニーア オートマタ)』などにもあったモード。
アクションに不慣れなプレイヤーのフォローが目的の機能ではあるが、 たまに「こんな発想なかった!」という動きを見せてくれることもあり、デュアルアクションの教材にもピッタリ。2体を動かすことに尻込みしている方は安心してほしいし、「俺にはそんな機能は不要だ!」と思っている方も、ぜひ一度“守護モード”を試してほしい。
本作は、 主人公の性別だけでなく、 名前や容姿まで、 細かく設定可能。 主人公は基本的にしゃべることはなく(バトル中の掛け声は出す)、会話の受け答えを自分で選択できる場面も頻繁に用意されていて、主人公と自分が重なってくることを実感できる。
また、警察署のロッカールームでは、着せ換えやアクセサリー付け換えなどのオシャレができるというのも楽しい。主人公は、イベントシーンでもカスタマイズしたままの姿で現れ、新鮮な気持ちでプレイできるので、 筆者は章が変わるたびに髪型や服装を変えてプレイしていた。
なお、 本作はいつでもクリアー済みのFILE(いわゆる章)をやり直すことができる。主人公の性別の選択は、FILEをやり直す際に変更することも可能で、男女でのセリフの違いなども気軽に確認できる。
難易度はノーマルにあたる【拮抗】(難易度は低い順に【守護】、【有利】、【拮抗】、【極限】の4種類)以上では、レッドケース(重要なバトルやイベント)ごとに評価が出るので、気軽にくり返しプレイができるというのは、高評価を追求したい筆者のようなプレイヤーにとっても、うれしいポイントだ。
フィールドの探索要素も豊富で、デュアルアクションと並び、のめり込んで遊べる要素となっている。 各FILEには、 ネウロン内やアークの街を自由に歩き回れるパートが用意されていて、買い物やアイテム探し、トレーニング場での操作練習などが可能。
この探索パートでは、犯罪を取り締まったり、困っている人々を助けたりできるのだが、こういった要素にありがちな“おつかい感”はほとんどなく、その解決方法もバラエティーに富んでいる。内緒の会話を聴き取ったり、特殊能力で妨害電波を断ち切ったり、逃げ出した犯罪者をチェインで拘束したりと、トラブル解決にもレギオンは大活躍。バトルなしでクリアーできるケースも多く、改めて振り返ると、探索パートは緊迫感のあるバトルの息抜きとしても楽しめる内容だ。
そのほかにもフィールドに隠れている猫を保護したり、人物や敵、建物をカメラで撮影してデータベースに登録、ビースト・レギオンの“ここ掘れワンワン”的な能力を使ってのアイテム探しなど、楽しめる要素はたくさん用意されている。とてもすべてを書き切れるボリュームではないが、その進捗状況はポーズメニューの“レコード”という項目から確認できるようになっている。
しかも、レコードに記載された項目を達成するごとに、報酬も手に入るというオマケ付き。職業柄、かなりねっとりと隅々まで調べながら進めたけれど、それでも見落としがたくさんあって、やり込み要素もたっぷり。建物やフィールドの装飾も細部まで凝っており、プレイヤーのあらゆる好奇心を満たす、珠玉のアクションゲームとなっている。