“ファミキャリ!会社探訪”第74回はミクシィ

 ファミ通ドットコム内にある、ゲーム業界専門の求人サイト“ファミキャリ!”。その“ファミキャリ!”が、ゲーム業界の最前線で活躍している、各ゲームメーカーの経営陣やクリエイターの方々からお話をうかがうこのコーナー。今回はミクシィを訪問した。
 当コーナーには2度目の登場となる同社。2013年10月に国内で配信開始し、現在では台湾、香港、マカオ、中国でもプレイされている『モンスターストライク』(以下、『モンスト』)は、2019年4月24日に世界累計利用者数が5000万人を突破するなど、圧倒的な知名度と人気を誇る。今後は『モンスト』のみならず、新規ゲーム事業も展開していくということで、今回は『モンスト』担当のテルーマン氏、新規ゲーム事業担当の安藤拓道氏にお話を伺った。

安藤 拓道(あんどう ひろみち)

デジタルエンターテインメント事業本部 本部長。 大学院在学中にプロント創業者とベンチャーを立ち上げ、その後IT企業での新規事業開発責任者などを経て、起業。2016年12月に創業した会社をミクシィに売却し、ミクシィグループ入り。ミクシィではデジタルエンターテイメント事業本部の責任者として新規事業開発や投資に関わる。

テルーマン

モンスト事業本部。 2012年にミクシィに総合職として新卒入社。入社2年目に、当時開発中だったアプリ『モンスターストライク』に参加し、以降、企画職の最前線で運営・開発に携わる。“テルーマン”として動画やイベントにも出演。

ミクシィは、プロダクトを作ることにもっとも情熱のある会社

――まずは、おふたりがミクシィに入社された経緯から教えてください。

安藤私は大学院在学中に起業し、事業立ち上げ経験後に独立してベンチャー企業を経営していました。6年ほど経営して、KIDDYという、いまミクシィでやっている『家族アルバム みてね』(以下、『みてね』)と同じテーマの家族SNSをやっていました。

――じつは自分も『みてね』を使っているのですが、あれは本当に親が喜ぶアプリですよね。

安藤ありがとうございます。そこで、『みてね』チームと協力していくのが、プロダクトにとってもユーザーにとってもいいのではないかと思って、『みてね』プロデューサーの笠原(※ミクシィ創業者の笠原健治氏)と定期的に会話をしていくなかで、「いっしょにやりましょう」となりまして、私の企業をミクシィに買収していただいて、2年ほど前からミクシィに入っています。

――ミクシィ入社後はどのようなことをされているのですか?

安藤ミクシィではメディア領域で新規事業がいくつか走っていたので、それを管掌する部署を経て、エンターテインメント分野のほうに移りました。当時、XFLAGというものができて1年ほどでしたが、そこでの新規事業をひとつひとつみていって、巻き取っていくというようなことをやってきました。扱うのはゲームだけでなく、たとえばトリガーさんと組んだ映画『プロメア』などの周辺領域も含め、デジタルエンターテインメント領域の新規事業を見ています。

――なるほど。では、テルーマンさんはいかがですか?

テルーマン僕は2012年に新卒採用で入社し、今年で入社8年目になります。じつは、当初はSNSの“mixi”に関わりたくて入社しましたが、入社1年目にmixiゲームを運用している部署へ配属されました。そこでは、mixiゲームにゲームを出してくださっている会社さんに、mixiゲーム内での成功事例の共有や施策の提案をしたり、他社で出されているゲームをmixiゲームにも出してほしいという交渉をしたりしていました。

――その後、ゲーム作りを担う部署に移られたのですか?

テルーマン入社1年目の終わりぐらいに、自社でスマートフォンのネイティブアプリゲームを作ってみようというプロジェクトが立ち上がったんです。僕はもともとゲームが好きで、縁がなくて入社はできませんでしたが、新卒のときにはゲーム会社を受けたりもしていたんですよ。それもあって、「ゲームが好きなら作ってみれば」という言葉をもらい、チャレンジさせてもらうことになりました。ゲームは本当に好きで、いまでもファミ通さんは毎週読んでいます(笑)。

――ありがとうございます(笑)。

テルーマンそこでゲーム作りが始まったのですが、その後、先にリリースしたアプリがなかなかうまくいかなかったことや、自分たちの進めていたものがもっとも進捗が悪かったこともあり、ストップがかかってしまいました。そのときちょうど別のチームで制作されていたのが『モンスト』で、人手が足りなかったこともあり、また、ほかにすぐやることも見つからなかったので、お手伝いに入ることになりました。それが2年目の6月くらいで、そこからはずっと『モンスト』に関わって、いまに至ります。

――ちょうどブラウザゲームからスマートフォンアプリへの転換期ですね。

テルーマンパズル&ドラゴンズ』やLINEゲームの勢いがあり、弊社としても自社でスマートフォン向けにネイティブアプリを作りたい、という空気があって、そのときタイミングよくそういう事業部にいたおかげですね。いまはモンスト事業本部という、おもに『モンスト』アプリに関わる部隊のなかの、ゲーム運営部という部署に所属しています。僕の部署では、『モンスト』の企画や運用を始め、数字周りの解析をするグループや、公式サイトや公式SNSの運営を行うグループが所属しています。僕自身は、それら運営周りの全体統括をしています。また、開発やデザインなどの部署と連携していくような部署でもありますね。

――入社前後で、ミクシィさんに対しての印象はいかがでしたか?

安藤ミクシィを選んだ理由は、プロダクトを作るということに対していちばん情熱がある会社なのかな、というところでした。実際に入ってみると、恐ろしいまでにプロダクト作りが好きな会社なんですよね。『みてね』もそうなのですが、ユーザー目線で徹底的にプロダクトを作って運営していて、それは外から見ても中から見ても、強く感じますね。そういう文化があるからこそ、圧倒的にヒットするプロダクトやコンテンツを作れるのかな、と思います。

テルーマン僕は就職活動をしていたときに、当時副社長だった原田さん(※現DeNA取締役・原田明典氏)が説明会で話をしていたのを聞いて、すごくおもしろい人、おもしろい話だなと思ったんですよ。自分がSNSのmixiをかなり使っていた世代だったので、それもあって入りたいなと思ったんですよね。

『モンスト』成功の根底にあるのは“ユーザーサプライズファースト”

――さて、『モンスト』は先日、世界5000万ダウンロードを突破したと発表がありました。配信が始まってから5年以上にわたって成功が続いていますね。

テルーマン先ほどお話したように、僕もゲーム開発に関わるのは初めてだったのですが、実際半分くらいのメンバーがゲーム開発に携わるのが初めてでした。木村(※ミクシィ代表取締役社長執行役員・木村弘毅氏)が立ち上げをし、ゲーム作りのプロ中のプロである岡本吉起さんと、ゲーム分野ではほぼ素人の我々がタッグを組んで作ってきたのが『モンスト』です。いまも岡本さんの会社の方々が半分くらい、ミクシィの社員が半分くらいの割合で運営しています。ステージやキャラクターなど、ゲームの中身の部分は基本的にあちらにおまかせしつつ、とは言え、我々のプロジェクトでもあるので、アプリの改善や運営面についてはこちらもしっかりと考えながらやっています。

――初めてのゲーム開発の経験のなかで、「これはいける」という手応えを感じましたか?

テルーマン先ほど「5年以上にわたって成功が続く」とおっしゃっていただきましたが、やはり何度も難しい状況はあって、いまでも本当にまだまだ難しいと思っています。木村がよく言っているのが、“ユーザーサプライズファースト”という考えかた。当社の理念でもありますが、この考えかたは、ユーザーさんの望んでいることにただ応えるだけではなく、その期待を超えて驚かせていこう、いかに驚かせ、楽しませられるか、というような指標なんですよ。

――期待を超えるというのは、大事ですね。

テルーマン安藤の話にも出ていましたが、ユーザー目線でいろいろなことをやっていくのが僕らのスタンスです。うちの企画班はめちゃくちゃ『モンスト』をプレイしていて、それこそ『モンスト』をまったくプレイしていないものなら発言権がないくらいの勢いなんですよ(笑)。僕らもいちユーザーとしてしっかり遊んで、部署内でもプレイのレベルに差は出てくるので、実際のユーザーさんごとのやり込み度合いの違いなどを自分たちで感じたりしつつ、意見を出し合い議論をしていくなかで、いろいろな企画を採択しています。

――開発者でありながら現役のユーザーでもあるわけですね。

テルーマンもちろん、いろいろな企画を出すなかで、ヒットするときもあれば失敗するときもあります。とくに周年イベントのように、ゲーム内の大きなアップデート情報を発表するときには、そこでどんな話をするのか、内容はどうなのか、ユーザーさんはすごく期待してくれているんですね。僕らとしても、「これなら盛り上がるぞ」、「この内容をこんな演出で発表したらすごいことになるぞ」と、発表する際は強い自信を持ってお届けしているつもりですが、期待値のぶん、ユーザーさんの反応も大きく、その反応にいつも一喜一憂させてもらっています。

――家庭用ゲームソフトと比べると、アプリゲームはユーザーとの接点も近いですから、反応も強く感じますよね。

テルーマンアプリの場合、終わりがないんですよ。先輩にも言われたことがあるのですが、リリースを迎えるタイミングになって、「ここからがヤバい」とか、「地獄の運用が始まるぞ」とか(笑)。確かにその通りで、たとえば先ほどのように、周年イベントで大きな発表をして、ユーザーさんの反応がよかったとします。でも、その発表が終わったら、すぐにそのつぎを考えないといけないんですよね。ひと安心、ということはなくて、つぎつぎに新しいことを考えないといけないわけです。

――当たり前だったクリアーの概念がないぶん、つねに発展していかないといけませんからね。

テルーマンとくに僕は“テルーマン”として動画配信やイベントにも出させてもらっているので、ユーザーさんの感情を直に肌で感じる機会をいただいています。先ほどもお話させていただいたように、僕らが想定していた通りにいい反応がもらえたときには、すごく充実感がありますし、逆に失敗してしまったときの反応も大きいです。ダイレクトに反応を受け取れるというのは、たいへんではありますけど、やりがいでもありますね。

――『モンスト』がここまでヒットしたことの要因は何だと思いますか?

テルーマンゲームの中身はもちろんですが、配信タイミングや環境もよかったと思います。配信開始当時は、まだみんなで遊ぶようなゲームが少なく、パイオニアになれたのが大きかったと思っています。長く運営してこられたという意味では、自分たちもいちユーザーという意識のもと、しっかりと『モンスト』に触れたなかで、いろいろな企画を考え、ユーザー目線での気持ちを持ち続けることを大事にしていることですかね。
 僕はチームのなかで、いちばん『モンスト』を愛している自信があります。その愛や、今後『モンスト』をどうしていきたいかという想いは、運営においてとても大事だと思います。“ユーザーサプライズファースト”というのは会社全体の話なので、もちろんそれもひとつの指標としてありつつ、『モンスト』というプロジェクトにおいては、タイトルに対する熱意、タイトルを他人事ではなく自分事として進めている、というのがポイントだと思います。コラボや新しいガチャが始まると、スタッフたちもグルグル回していますからね(笑)。

――ちなみに、テルーマンさんはこれからも『モンスト』に関わり続けていくのか、それともご自分のアイデアを新しく形にしていくような野望があったりするのでしょうか?

テルーマンいまのところ、ほかのことをやりたいという欲はまったくないですね。『モンスト』に対して自分は何ができるのか、ということしか興味がないです。リリース以前から関わり続けているという点でも、自分の責任のようなものを感じているので、ここで止めてしまうと投げ出したような気持ちになってしまうと思います。
 あとは単純に、少なくともまだ、自分自身がゼロから1を作り出すタイプではないという自覚があります。これまで1を10にしていく経験をしてきましたが、ゼロから1を作るというのは、まだ見えない部分です。いまはそこに挑戦するというよりは、『モンスト』に対する責任などの気持ちが勝っているので、永遠にかはわかりませんが、いまは少なくとも『モンスト』1本ですね。『モンスト』以外のことをやっている自分が想像できないです。