2019年6月1日~2日、京都市勧業館みやこめっせにて開催された、日本最大級のインディーゲームの祭典BitSummit 7 Spirits。今年は初の試みとして“BitSummitワールドパビリオン”が企画された。

 ワールドパビリオンとは、世界各国がブースを構え、各国のインディーゲームや行政の取り組みなどを紹介しようというもので、今年はオランダ、カナダ、クロアチア、シンガポール、台湾、メキシコの6ヵ国が参加。各国のブースにはスタンプが置かれていて、全部集めると飲食ブースで割引が受けられるというお楽しみも。飲食ブースには、参加国ゆかりのメニューも用意された。

ワールドパビリオン参加国ブースのようす。

 さらに参加国のうち、4ヵ国による講演も開催。パネリスト4名がメインステージに姿を見せ、進行役のベン・ジャッド氏からの質問に答える形で、各国のインディーゲーム事情を語った。

登壇者

クロアチア代表
Katarina Amizic

メキシコ代表
Oscar Yasser Noriega

シンガポール代表
Reuben Sim

オランダ代表
Luite Douma

左からクロアチア、メキシコ、シンガポール、オランダのパネリストたち。

――エージェントとしていろんなデベロッパーと組んで仕事をしている立場上、興味があるので、ちょっと聞きづらい質問から。あなたの国の1人月はいくらくらいですか?

クロアチア 平均22万円くらいです。日本と比べてだいぶ低いと思います。

メキシコ どの街に住んでいるかにもよりますが、あまりクロアチアと違わないです。22万円~24万円くらいでしょうか。

シンガポール 開発資金を第三者が出資してくれたり、政府が支援してくれたりする場合はもう少し単価があがりますが、だいたい22万円くらいですね。

――お国で人気のあるインディーゲームを教えてください。

オランダ 今回、4タイトルをブースで展示しました。たとえば『Lethal League』という対戦アクション。相手をめがけてボールを打ち返すことで戦うゲームです。また、ファーミングシミュレータ要素のあるゲームなど、いろいろなタイプのタイトルを紹介しています。

メキシコ 北米に近いので、アメリカのユーザーが好むゲームですね。また、アニメなど日本の文化の影響もいろいろあって、日本人が好きそうなゲームも人気があります。ジャンルでいうと、メトロイドヴァニアと呼ばれる探索系のゲームは、とくにNintendo Switchでリリースされると大人気です。

メキシコ代表Oscar Yasser Noriega氏。

――国によっては政府が開発費を援助するような施策がありますが、あなたの国ではどうでしょう?

クロアチア 政府の文化に関わる機関が、インディーゲームをサポートしようという話が、少しずつ出ています。オーディオビジュアルという機関がありますが、来年からは50万ユーロの支援を確約しています。

シンガポール 資金援助というよりは、たとえばオフィススぺースを無料で借りられたり、イベントの会費を出してくれたり、ときどき有名なゲストスピーカーを招待したりする、といったサポートがあります。インディークリエイターの知識を増やしたり、会社立ち上げのときにサポートしてくれたりという感じです。

シンガポール代表Reuben Sim氏。

――日本のゲームはあなたの国でどんなふうに思われていますか?

シンガポール とても人気があります。以前からプレイステーションブランドが強かったので、『ファイナルファンタジー』などのJRPGが大人気です。昔から日本のアニメが放映されていることも手伝って、日本のゲームのファンはたくさんいます。

メキシコ メキシコでも40年前から日本のアニメを放送していて、日本の変わった文化への抵抗というものはなく、むしろ好まれるようになっています。どうやらアニメはゲーム業界への間接的な入口になっているようです。シンガポールと同じで『ファイナルファンタジー』などのタイトルもポピュラーですが、とくに『ドラゴンボール』のゲームが大人気ですね。

――ゲーム開発において、あなたの国が得意としている職種や分野はありますか?

クロアチア C++に長けたプログラマーが多いです。

オランダ 革新的なゲームデザインが得意かなと思います。とくにブースで展示している『ラスティレイク』ですが、この開発会社の以前のタイトルでは実写のシーンとゲームのグラフィックスを組み合わせたハイブリッドなゲームデザインがなされていました。オランダ人のクリエイティビティを示しているかと思います。ゲリラゲームズというAAA級のスタジオがあったり、インディーのスタジオもたくさんあったり、Utomicというゲームストリーミングサービスもオランダ発だったりします。いろんなスタイルのゲーム関連会社がオランダにはあり、ゲームデザインに長けていると思います。

メキシコ 教育システムがうまく機能していて、新卒のプログラミングスキルが高く、北米の大きな企業がリクルートしている状況です。アートにも強いです。

――インディーゲームには、勉強会、飲み会、親睦会などいろんなミーティングで、自分のゲームをお互い見せ合って、チームができて、本格的にゲームを作る……という流れがあるわけですが、みなさんの国には何か集まりがありますか?

シンガポール 勉強会というよりは飲み会が多いかな。インディーゲームを作っているといろいろストレスがたまるので、飲んでストレスを発散しながら自分のゲームを見せたり、見せてもらったりというのが多いです。シンガポールゲームギルドというのが、いちばん大きい集まりですね。

オランダ ゲームガーデンというカンファレンスがあって、2年前には刑務所のなかで行われました。牢屋のなかにゲームが出展されているのは、なかなかおもしろい光景です。また、私はオランダ大使館に勤めており、東京ゲームショウのオランダパビリオンに出展させるため、オランダから開発者たちを連れてきます。その機会も、クリエイターどうしの交流の場となっています。東京ゲームショウに来る方がいらしたら、オランダパビリオンを見てくださいね。

クロアチア リブートデベロップという大きなカンファレンスがあります。今年はフロムソフトウェアの宮崎英高氏と、ゲームデザイナーの上田文人氏がゲストとして招待されていました。クロアチアの開発者は無料で出展できるので、よい宣伝のチャンスであり、ほかのクリエイターと出会うチャンスかなと思っています。

クロアチア代表Katarina Amizic氏。

――最後に、国際的な視点でゲーム開発に関わっている各国のみなさんから、日本のクリエイターに対してアドバイスをお願いします。

メキシコ インディーの開発会社を立ち上げて2年が経ちます。最初は日本でクリエイターを募集していたのですが、なかなか集まらなかったのでメキシコに戻って探すことになりました。日本で、趣味程度で開発しているインディークリエイターは、もっと本格的にやってみようという気持ちが必要だと思います。趣味程度ではなかなかとんがった強いものは作れないので、インディーゲームを作るぜという気持ちが本当にあるなら、ほかのクリエイターと組んで、より大きなものを作って、いいものを作れるように独立する勇気を出したほうがいいと思います。

シンガポール インディークリエイターへのアドバイスとしては、マーケティングを軽んじてはいけないということです。ゲームがまだ未完成の段階から、マーケティングのことを考えるべき。ゲームを作るだけではなく、商品のひとつとしてどうやって売っていくかっていうのが実に大事なことです。せっかく愛を注いだ商品なので、マーケティングに対してもゲームを作ることと同じように考えるべきでしょう。

クロアチア こういうような展示会やイベントは欠かせないと思います。いろんなひとに自分の開発中のものを売り込んで客観的なアドバイスをもらうのはすごく大事なことです。いろんなイベントに行って、いろんなひとと考えをぶつけるのがいいと思います。

オランダ 自分の国ばかりを見てしまう傾向にあると思いますが、海外に目を向けることはとても大事です。オランダ人が開発したゲームで、オランダではそこまで売れていないのに、日本で売れているソフトが実際にあり、そういう可能性もあったりします。今はデジタル配信が簡単にできることもあり、ワールドワイドな市場を意識したうえでゲームを開発するべきだと思います。

オランダ代表Luite Douma氏。